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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ポーツマス国際観艦式:現地新聞等から

たいへんお待たせいたしました。今さら何を…という感がありますが、6月28日英国のポーツマスで開催されたトラファルガー海戦記念国際観艦式について、BBCニュースと、タイムズ紙の記事から、その概要をお伝えします。

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雨模様のあいにくの天気にもかかわらず、何千人もがポーツマスを訪れ、礼砲と花火がトラファルガー200周年を彩った。
これに先出ち、国際観艦式が行われ、エリザベス女王とエジンバラ公はHMSエンデュアランスでポーツマスを出航し、36カ国、167隻の軍艦、商船、帆船を観閲された。エンデュアランス号には、ジョン・レイド国防相、第一海軍卿サー・アラン・ウェスト提督(海軍大将)が同乗、チャールズ皇太子はHMSスコットから、アンドリュー王子はHMSエンタープライズ艦上にあった。

午後には帆船パレードが、また空軍のアクロバットチーム・レッドアローズや歴代の名機による航空ショーも行われた。

女王陛下はその後、HMSインヴィンシブル(空母)艦上で行われたレセプション・パーティに出席され、各国の艦船がこれほどまで大規模に参集したことは、1805年の海戦にて戦死したネルソン提督と、海に生きる者達の絆に対する、何よりの証であるとのメッセージを発表した。
「ネルソン提督の船乗りとしての類い希なる資質、指導力と人間性、危機に際して示したその勇気は、今日においても海に生きる者たちの間に受け継がれ共有されているものです。これ以上素晴らしい遺産を、彼は望み得なかったことでしょう」

夕方からは、実際の帆船を舞台にした大がかりな歴史スペクタクルショーと花火が会場を盛り上げた。
ネルソン提督に扮した俳優Alex Naylorが小型のカッター船で港を離れ、ビクトリー号に見立てた19世紀フリゲート艦の復元帆船グランド・ターク(TVドラマ「ホーンブロワー」の主演帆船)に移乗するシーンが再現された。

以上、BBC News June 29 "Thousnads see Trafalger 'battle'"、The Times online June 29 "World armada recalls a day of victory and death at sea"より抜粋。
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まぁまぁ、インディファティガブル号(グランド・ターク号)がビクトリー号の役を演じるとは、それはそれは大変な名誉を…、
まったくサプライズ号ったらサンディエゴでのん気に修理している場合じゃないわよ、というあせりと、グランド・タークに一抹のうらやましさを感じたのは管理人だけでしょうか?

トラファルガー海戦は、イギリスのフランス・スペイン連合軍に対する勝利を祝う祭典ですが、さて負けた側のフランスはどうなのでしょう?

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ポーツマスのイベントでは、実際の海戦を再現するゲームを行われたが、イギリス対フランスではなく青チーム対赤チームという形をとった。これはフランス側に配慮した結果である。
しかし、28日の観艦式当日、参集した艦船の中で一番の威容を誇っていたのは、フランス軍艦であった――彼女の名はシャルル・ド・ゴール、フランス海軍が誇る原子力空母である。
フランス海軍は、今回の国際観艦式に、6隻を派遣した。

フランス空母にはエスコート役のイギリス・フリゲート艦が随伴したが、それは「我々の狙撃兵がネルソン提督を狙わないように監視するためさ」フランス海軍の水兵からこんな冗談が飛び出した。
しかし空母シャルル・ド・ゴールのXavier Mgne艦長は、ネルソン提督の優れた戦術とその指導性は、フランス海軍からも賞賛に値するものだと語る。
「イギリス軍とともに、今回の式典を祝うことができるのは幸福なことだ。トラファルガー海戦は過去のこと、今われわれはヨーロッパ連合という共通の未来を見据えている。ヨーロッパ各国の防衛協力を推進しなければならない」

もっともフランス国内では、トラファルガー海戦など気にもとめられていないようだ。「トラファルガー海戦では敗北したが、その数週間後に我々は、アウテルリッツ会戦で勝利をおさめ、ナポレオンはヨーロッパの覇者となったのだから」と語るのはパリ海事博物館のBruno Ponsonnet館長。

街角でインタビューされたあるフランス人ビジネスマンは、「トラファルガー? 知らないフランス人はいないと思うよ。ナポレオンの艦船をイギリスが打ち破った戦いだろう? ロンドンのトラファルガー広場には行ったことがあるしね。でもふつう、もし街角でフランス人に『イギリス人とは?』という質問を向けたら、誰でも答えは『友人』というものになるんじゃないかな、例え政治的な問題がどうあろうともね」と答えていた。

BBC News June 28 "France accepts Trafalgar legacy"より抜粋。
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なんだかこの記事を読んでちょっと考えてしまったんですよね。
たぶん同じ質問をベルリンでしても、答えは「友人」になると思うんですよ、ヨーロッパなら。
でももし同じ質問を、東京とソウルと北京でしたら、たぶんそういう答えにはならないでしょう?(東京でも、誰でもそう答えるとは言い切れませんもの)
例え政治的な問題がどうあろうと「友人」だろう?と街角レベルで言えるというのは、すごいですよね。
ヨーロッパをうらやましいと思うとともに、「われわれもアジアという共通の未来を見据えている」と言える時代が、早く来てくれるといいなぁと願うのでした。


2005年07月16日(土)