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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
「M&C」DVD、2枚組特典ディスク付7月23日発売

「M&C」のDVD発売が決定しました。2枚組、US、UK版同様のコレクターズエディションでメイキング・削除シーン付きです。
字幕は英語と日本語、日本語吹き替え付き(声優キャストはまだ不明)です。

発売日は2004年7月23日(金)…なんと「ホーンブロワー」の発売日と同日です。
発売元:ソニーピクチャーズ・エンタティメント
価格:4,179円(税込)

ソニーピクチャーズのHPにはまだ紹介が上がっていませんが、こちらでパッケージ・デザインを見ることができます。このデザインは、UK版ともUS版とも微妙に違いますね。

さあ皆さん!> 5月のお給料(バイト料)が出たら、福沢諭吉先生を1枚、こぶたの貯金箱に取りのけましょう。
6月のお給料が出たら更に1枚。
これで貴方も(給料日直前にもかかわらず)7月23日にインディファティガブル号とサプライズ号に再会できます。お店に予約にGO!
(「ホーンブロワー」はハピネット・ピクチャーズから発売、4枚組15,960円(税込)です。)

US版DVD特典を半分まで見ましたが、削除シーンは皆、惜しいと思われるものばかり、ひとつのエピソードとして完結している「Sea Monsters(海の魔物)」。
「Shipboard Life(艦の日常)」では、今ではすっかり顔馴染みになった水兵さんや候補生、海兵隊長が、とても「らしい」顔をのぞかせます。博物学ファンはガラパゴスの珍しいカツオドリを、帆船ファンは美しい美しいサプライズ(ローズ)の没カットを、堪能することができます。

原作ファンに嬉しいのは、マウアットの詩の暗唱と、毎巻恒例艦長水泳が復活していることでしょうか?
いやしかし艦長、泳いでる時は髪を結ばずにほどいているんですね。あれだと髪が目の前に来てしまって、邪魔なんじゃないかと思うのですが、でも原作を読んだら「海水が髪を梳くにまかせ」とありましたから、もしかして昔はああやって髪を天然に洗ったとか???(まさかね?ほんと?)
ちなみに、艦長が腰に差している短刀と、甲板で海兵隊長が構えていたマスケット銃は鮫対策です。でも虎と戦うマキシマスがあったのですから、鮫と戦う艦長も……。

「マルチカメラアングル」という映像特典については、これまであまり重要だと思ったことがなかったのですが、「M&C」のように細部にまで神経の行き届いた群像劇の場合は、大変貴重な映像特典になります。
単に役者さんを別の角度から見ただけのものではなく、例えば冒頭の奇襲攻撃時の砲列甲板のマルチアングルなどは、数台のカメラが同時にまわって、サプライズ号側の砲撃準備→アケロンから着弾→一部の砲列がやられプリングスが脳震盪を起こすが戦闘準備は続行→砲撃、の混乱の中にも秩序のある状態をあますところなく捕らえています。
プリングスが倒れてカラミーが水兵に指示を出し、副長を下へ治療に運ばせブレイクニーを伝令に走らせている間も、無傷の例えばドゥードルが砲術長を務める砲撃班は迅速に作業を続行、ドゥードルは点火索を手にかけて命令を待っているので、指示を終えたカラミーが指揮に戻って来た時には準備万端整っている、という様子がわかります。

「Hnndred Days」製作ドキュメント……100日間というタイトルは、原作20巻の原題ですが、実際の撮影は2002年6月半ばから12月半ばまでの6ヶ月がかかっています。ドキュメントではクランクイン前の撮影用サプライズ号の建造、映像編集後のサウンドトラック録音も追っていますので、もちろん100日を軽く超えるドキュメンタリーです。

このドキュメンタリーでは様々な珍しい映像を見ることができます。
撮影用にプールに建造されたサプライズ号の下には油圧装置が設置されていて、自在に揺れを起こすことができるのですが、鏡のような水面で波がないのに、撮影中の船だけが大揺れをしている…というのは何とも不思議な光景でした。

サウンドトラックの録音は、全映像の編集後に行われているのですね。指揮台のクリストファー・ゴードンの前にはビデオモニターがあって、彼はモニターの映像を見ながらオーケストラの指揮をしています。
コンサートマスターはリチャード・トネッティ。室内楽団での活動が多いトネッティは、オーケストラのコンサートマスター役を十分に楽しんだようです。
エンディング冒頭の曲(またはマチュリンがガラパゴスでアケロン号を発見する時の曲)…バイオリン・ソロで始まり弦楽器が徐々に同調していく曲…の録音風景が収録されていまして、トネッティの妙技にはため息です。

メイキングの面白さというのは、役を演じる俳優と、俳優本人の二つの顔が見られることだと思うのですが、時代モノの場合は特にこのギャップが大きいので面白い。
日本の時代劇で裃を着た武士が堅さを崩さないように、19世紀の士官には海軍であれ陸軍であれ、一種独特の格式があります。部下をファーストネームで呼びオヤジギャグをとばしている艦長とて独特の威厳があり、カメラが止まった瞬間に、艦長の殻が割れて気さくなラッセル・クロウに戻るところは見物です。もっと落差が激しいのはポール・ベタニーで、マチュリンのコスチュームのままで撮影の合間に、スティーブンにはありえないひょうきんな反応を示されると、頭が混乱しそうになります。
おすすめは最終シーン…艦長室でボッケリーニを演奏するシーンのおまけ。ギターはお得意な主演の2人が、完全にギター弾きの(クラシックにありえない)ノリでバイオリンとチェロを弾き、スタッフがフラメンコまがいを踊っているおまけがついています。

この落差…は「ホーンブロワー」のメイキングでも存分に楽しめますので、こちらのDVDも是非是非おすすめです。
眉間に皺を寄せて威厳を保っている海軍士官たちって、オフで素直に笑っていると、全然感じが違うんですよね(とくにヨアン・グリフィスとリー・イングルビー)。

ああ…しかし、たった一つ希望をくぢかれたこと…やっぱり削除シーンにもなかったか、ナマケモノ。
3巻のあのシーンがどうしても見たかったんです。FOX社の公式ホームページの艦長日誌にはナマケモノの記述があったんですよ。だから撮るだけは撮ったと思っていたのに。実はやっぱり、撮っていなかったのでしょうか?
そうそう、猫だ猿だと議論になっていた、マチュリン先生の部屋にいる黒い生き物は、しらふの猿でした。

ま、ともかくもご覧になってみてください。本当に宝箱のような特典ディスクです。


2004年05月07日(金)