ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雲の向こうの遠雷が呟きさえも掻き消すから 2
 乱菊は綺麗に微笑んで顔を上げた。この答えは数えるのも嫌になるくらい繰り返し口にしていて、今はもう何の綻びもなく感慨もなく言えるように乱菊はなっていた。
 その綺麗な笑みを見て、弓親は皮肉を含んだ顔で薄く笑う。
「ふぅん……僕は、そういった腐れ縁の奴がいるから君は何か吹っ切れないところがあるのかと思っていたよ」
「吹っ切れないって、何よ?」
「別に。たいしたことじゃないさ。ただ、そう感じていただけのことだよ。何かあるのかなーって、さ」
 そう言って弓親は何かを振り落とすように勢いよく立ち上がった。乱菊は弓親を見上げる。逆光の影の中、弓親は微かに微笑んだ。
「僕から見れば、君も阿散井も同じようなもんだってことさ。単純に見えるのに、どこかややこしい。じゃ、そろそろ戻らないと一角にどやされるから、僕はもう戻るよ。君も早く帰りなよ」
「……うん、そうするわ」
 乱菊の返事に弓親は普段通りに笑い、端に置いてあった紙袋を手にとってくるりと背を向けた。乱菊は傘の下に腰掛けたまま、その遠ざかる背を見送る。急に雑踏のざわめきが聞こえだした。行き交う人の影に弓親の姿が紛れ込み消えていく。
 乱菊は影が縫いつけられたようにじっとしていた。しばらく、そのまま動かなかった。




目次

07月06日(木)
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