ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雲の向こうの遠雷が呟きさえも掻き消すから 3-1
隊首会は定期的に行われている。
急を要する事件が起きない限り、隊首会は淡々と、弛緩した雰囲気で行われる。十三隊を束ねる山本総隊長から事務的な連絡がされ、それぞれの隊長が己の隊であったことを報告するだけだ。ときおり、十三隊全体で執り行う事があるとそれについて会議をするが、それも数年に一度のことだった。巨大な虚が現れたり、大群が現れることなど滅多になかったし、あったとしてもそれはすぐに十三隊全体に報告されるから、このような隊首会で目新しい大きな事件が報告され、議論されることはそうあることではなかった。
山本総隊長の言葉で会が終了となる。隊長達はそれぞれ話をしたり、足早に部屋から出ていったりして部屋はざわめきだした。
今日の隊首会には藍染は不在だった。南流魂街の戌吊付近で正体不明の虚が出現し、流魂街での虚討伐の担当が廻っていた五番隊から隊長がそれに出向いた、と山本総隊長が簡単に説明した。その虚について刑軍も束ねている砕蜂が、隊長格が必要だと斥候が判断したことを補足説明する。こういうことは希にあったから、誰も何も思わないようだった。ただ剣八が一人、自分が行きたかったと悔しそうにこぼした。それを聞いてギンは薄く笑った。
藍染が戻るまであと一日はあるはずだった。ギンは扉の向こうに消えようとしている白哉の背を追って部屋を出た。白哉は慌てる様子もなく、しかし決して馴れ合おうともしない背で廊下を歩いている。
「六番隊長さん」
声を掛けると白哉は鷹揚に振り向いた。
「何だ」
ギンはゆったりと白哉に並ぶ。そしてへらりと軽い軽い笑みを浮かべた。
「そないに早う戻りはっても仕事仰山せなあかへんやないの。ええ天気やさかい、話しぃひんかなあ思うて」
「用事が特にないならば、私は戻るぞ」
ギンの提案をばっさりと斬り捨てて白哉は背を向けようとする。それを慌てることなく、ギンは、
「こう早う戻りはったら、阿散井君も気ぃ休まれへんやろ。隊長さんにこう余裕あらへんと、あの子も大変やなあ」
と言った。白哉は動きを止め、ゆっくりと振り返る。顔は無表情だが、眼はギンをじろりと睨んでいる。
「余裕がないわけではない。ただ兄とする話など持ち合わせてないだけだ」
「うわ、取り付くしまもあらへんわ」
ギンはへらへらと笑い、一歩だけ白哉に体を寄せた。
「別に何でもええやないの。天気でも、噂話でも、身内の自慢話でも」
そしてギンは慎重にさりげなく言葉を継いだ。
「せっかく可愛らしい義妹さんもいはるんやしなあ」
ギンはそのままルキアの話を続けようとして、白哉の様子に口を閉じた。白哉の無表情がわずかに揺らいでいた。すぐに白哉は普段通りの綺麗な無表情になったが、眼だけは固くギンを睨んでいる。ルキアの様子を窺おうとしていたギンは、一瞬だけ言葉を選ぶのに逡巡する。そのとき、背後から、
「白哉」
と浮竹の声がした。振り返ると浮竹が青白い顔でこちらに歩み寄ってくるところだった。
「よう、話の途中にすまんな」
「いや、どうせ無駄話だ」
顔色とはうらはらに快活に笑う浮竹に白哉は無表情で言葉を返す。ギンはへらりと笑ってみせる。
「ひどいわあ、六番隊長さん。無駄やなんて」
「有益な話をしていたわけではないだろう。浮竹、何用だ」
ギンの言葉には目もくれず、白哉は浮竹に身体ごと向いた。浮竹は苦笑しつつも両手を袖に入れて欄干に寄りかかる。話が長くなることを感じ取り、仕方なくギンは、
「ほな、ボクはこのへんで」
と離れようとした。しかし浮竹は片手を出して横に振る。
「いや、丁度良いから市丸もいてくれないか。吉良にはうちの小椿が伝えているから」
笑っているが浮竹の目は真剣で、ギンは後ずさった身体を再び前に戻す。浮竹の言葉から察するに、浮竹は最初から市丸に話をする予定でいたようだった。市丸は首を傾げた。浮竹は白哉に眼を向ける。
「白哉、さすがに隣接している地区担当の隊長には耳に入れてもらうことにするぞ。動く前に情報を集めたい」
「別に。ルキアの上司は兄だ。兄の判断に任せる」
白哉は全く表情を崩さずに淡々と答えた。その言葉に浮竹は少し眉を寄せたが、何も言わずにギンを振り返る。
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07月07日(金)
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