2013年07月07日(日)  沈黙のち行列のち冊子(実践女子大学講演・後日談)

6月25日に講演を行った実践女子大学文学科国文学科から厚みのある封書が届いた。

納められていたのは、紐で綴じられた冊子。

表紙を開くと、学生の皆さんが書いた講演の感想だった。



感想を後から頂戴したことはこれまでもあったけれど、こんな佇まいで届いたのは初めてで、小学校の頃にもらった「クラスのみんなからの誕生日おめでとうカード」を思い出して、うれしくなった。

提出された感想文をコピーして、切りそろえて、綴じる。
そのひと手間がありがたい。

200通ぐらいあるのだろうか。
全部読み終えるのに、一時間かかった。
一人一人が書くのに費やした時間を足し上げると、その何倍もになるはず。

講演の手応えを、「沈黙のち行列(実践女子大学講演・後編)」と題して2013年06月26日(水)の日記 に書いた。

「十人いれば十通り、百人いれば百通り」の受け止め方がある、と感じたのだけれど、一人一人筆跡も言葉遣いも感じたことも違う感想に目を通していると、本当にそうだなあと感じる。

もちろん、好みの傾向はあった。

映画『パコダテ人』の「しっぽは欠点じゃなくて、おまけ」、ドラマ「ビターシュガー」の「未来からの逆算で今を生きるんじゃなくて今生きている一瞬一瞬を積み重ねていきたい」、小説「ブレーンストーミングティーン」の「宝物はあなたの中にある。それを宝の山にするのも宝の持ちぐされにするのもあなた次第」といった言葉が心に残ったと書いた人が多かった。

    

これから進路を決める学生には、将来への希望と同じぐらい不安もある。だから、自分を前向きにとらえ、力づける言葉がことさら必要なのだろう。

「石ころを宝石に」というベタなタイトル、「なんで?」と「そんで?」という大阪弁を使った連想ゲームの説明についても、好意的に受け止めてくれた人が多かった。

「脚本を書くというのは、もっと難しいことだと思っていたけれど、最初から宝石は落ちていなくて、石ころを磨いて光らせるということがわかった」
「自分にも書けそうな気がした」
「今までなんとなくドラマを見ていたが、何を伝えようとしているのかに注目して見てみたい」
「原作とドラマが違うなと思うことがよくあったが、連想ゲームで考えた結果なのだとわかった」
「なんで?そんで?と連想するのは、脚本だけでなく、サークル活動や自分を知る上でも役に立ちそう」
といった「意識の変化」を綴った感想が多かった。

「良かった」「面白かった」「役に立った」といった手放しの褒め言葉はもちろんうれしいのだけど、他の人が使わない言葉で伝えられる感想もまた、はっとさせられる。

たとえば、「聞いていて、こそばゆかった」という感想。
肯定的な感想の最後の一文だったので、「あなたたちにはまだまだ可能性がある」というメッセージへの照れなのかもしれないし、わたしの前向き過ぎる発言への「あんな歯の浮くようなことなかなか言えない」という印象なのかもしれない。

「こそばゆい」という感想をもらったのは初めてで、新鮮で、印象に残った。

「文学的というより商業的」なので、文学部の講演としてふさわしいかどうかは疑問だが、これからの人生には役に立ちそうな話だった、という感想もあった。

脚本家の間でも「商業性か芸術性か?」はよく議論になる。
より観客を集められるようなわかりやすく間口の広いエンターテイメントを作るのか、一部の人にしか受け入れられなくてもいいからストイックな芸術作品を作るのか、と。
わたしの作品は、多くの人に届くことを意識しているから前者となる。

そのことを見抜いて指摘した、この学生さんの視点は「個性」であり「強み」であり、大切にしてほしいと思う。

「出産のときまでネタを集めていたのはすごいと思った」という感想もいくつかあって、わたしそんな話したっけと思い出した。講演で話すことは大まかには決めているけれど、その日のノリで持ち出す話題が変わる。でも、講演中は夢中なので、何を話したのか忘れていることも多い。

それから、わたしが「楽しそう」だという感想がとても多かった。
「楽しそうに仕事の話をするので、脚本家が楽しい仕事なのだと思った」
「言葉を愛しているのが、よく伝わった」
そんな風に言ってもらえたのが、うれしかった。

脚本の仕事も、子育ても、「楽しそう」だとまわりに思ってもらえたら、それだけでもっと楽しくなる気がするし、大人になっても、いくつになっても、「そのままのあなたでいいんだよ」と誰かから言われるだけで、チカラが出る。

実践女子大学国文学科の皆さん、わたしの石ころを転がして、磨いて、光らせてくれて、ありがとうございます。

宝ものは、あなたたちの中にある!


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