2009年10月21日(水)  『文化力―日本の底力』〜鎖国と軍縮と島国比較

8月に仲間入りさせてもらった「日本道」の勉強会。第1回で大いに刺激を受けた(>>>日記)ものの9月の第2回は都合がつかず欠席し、2か月ぶり2度目の参加となった今回、、またしてもアンテナのあちこちをくすぐられ、濃密な一時間半を過ごせた。

静岡県知事になった川勝平太氏の『文化力―日本の底力』の、今日は「第2性近代世界システムと日本」を読む。「西洋の覇権国家の変遷」「ヨーロッパの軍拡と日本の軍縮」という二つの項に分かれている。それぞれのタイトルからしてものものしく、普段わたしが手に取る本とは異質で、だからこそ一人では消化吸収が難しい。発表者の皆さんがレジュメをまとめ、発表されるのを聞いて、なるほどそういうことなのかと読み返すと、ずいぶん消化が良くなる。

16世紀の覇権国はスペイン、17世紀はオランダ、18世紀はフランス、19世紀はイギリス、20世紀はアメリカ。では21世紀は? 本には書かれていないけれど、一同の答えは「中国」。

鎖国は当時金銀銅がザクザク採れた日本がそれらを守るため、「よその国から物を買うよりは自給自足!」に励み、外国を閉め出したという見方は、目からウロコ。国内に「ない」から外へ向かうのであり、国内に「ある」から閉じる。武士の「士」は「徳のある人物」の意味で、士道が当時の日本を軍縮に向かわせたというのも面白い。「士の下に心をつけると、志になる」「昔のお百姓さんは午前中は稼ぎ、午後は働く=畑をラクにする、といった」などという意見が出る。ほほう。

双方がトクをする「win-win」の考え方は江戸時代にあったのだとか、ワークショップやディベートは寺小屋の時代からやってたとか、今の日本はリーダー不在だと言われるけど、黒船が来たとき、「トップと話がしたい」とペリーに言われて、地元の一役人が「その国にはその国のやり方がある」と押し切ったとか、教養豊富な皆さんの話を聞きかじり、ちょっと歴史通になった気分を味わう。

最後の発表者は日本とイギリスの島国比較を披露。イギリスの面積は日本の約3分の2で、人口は約半分。国家成立は日本の紀元前660年神武天皇の即位が世界最古で、イギリスの1066年ウィリアム王征服は世界3番目の古さだという。このあたり、歴史で習った記憶が抜け落ちているのだけど、日本が世界最古の国だと習ったのかどうか……。

江戸時代260年に両国が何をやっていたかの比較も面白い。日本が島原の乱以降は武器を捨てて元禄文化を花開かせたのに対し、イギリスは発表者が数えたところ16回の戦争をしていて、そこに長州、薩摩との戦いは入っていない。平和が文化を育てるのだとしたら、この時代のイギリスの文化はどうなっていかのか、興味が湧く。米英戦争で焼けた大統領官邸を再建したとき、焼け残っていた焦げた外壁を白く塗ったことから「ホワイトハウス」と呼ばれるようになったそう。

発表が終わると、意見交換。「歴史を書いて残せたのは権力者だけの時代もあった。記録をうのみにしてはいけない」と言う人があれば、「平和平和と言っている時代は平和が危うかったりする」「明るい農村ってスローガン出してた頃の農村って暗かったのよねえ」などと意見が出る。「赤穂浪士の忠臣蔵だって塩の専売権の取り合いという視点で見ると、討ち入りを口実にお家取り壊しをしたように見えるわよねえ」。歴史の話を今日の新聞記事の話題のように話す人たちをすごいと思う。

わたしは、「江戸時代は富国強兵ではなく富国有徳だった」という著者の指摘に共感し、希望を持ったことを述べ、先日のパンの絵コンテスト(>>>日記)で思い出したマフマルバフ監督のスピーチを紹介した。

次回は「第3章 日本文明の底力」。いよいよ発表者のお鉢が回ってきて、「物産複合から見る文明システム」の項を担当することに。原作を読んでエッセンスをまとめる作業とは異種格闘のようで、普段使わない筋肉を使うことになりそう。

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