2008年10月21日(火)  満を持して『ザ・マジックアワー』 

面白いよと何人にすすめられたかわからない『ザ・マジックアワー』をついに新文芸座でつかまえる。ちょうど今、三谷幸喜さんのエッセイ『オンリー・ミー―私だけを』を読んでいて抱腹絶倒中で、血中三谷ワールド値が急上昇しているところ。『ザ・マジックアワー』を観るには打ってつけのタイミングなのでは、とおめでたい気持ちで客席へ。映画が始まり、妻夫木聡演じる若い男がヤクザの親分の愛人を寝取り、命を助けてもらう代わりに伝説の殺し屋を連れて来いと命じられる。期限は5日で、日めくりカレンダーがめくられていく絵になる。その日付が10月17日、18日、19日と読めた。もしかしたら一日ぐらい誤差があるのかもしれないのだけど、咄嗟に「期日の5日目は10月21日、今日のことではないか」と思って、今日これを観ることが運命づけられていたんだと一人で舞い上がった。

内容のほうは、三谷作品らしい笑いに声を上げて笑わせてもらいつつ、ちりばめられた伏線が見事に結実したラストがすがすがしくて、「いいもの見せてもらったー」という深い満足感があった。町並みはセットで時代設定もどこか現実離れしていて、芝居がかった物語なのに、「くたばってたまるか」と映画の中の時間を必死に生きている登場人物たちの人生には真実味があった。CMの端役をやりながらもう一度「マジックアワー」の好機を狙っているかつての名スターが、佐藤浩市演じる売れない役者に心意気を語った後、出番を知らせに来たスタッフに名前ではなく「おじいちゃん」と呼ばれる場面が強く印象に残った。エッセイ『オンリー・ミー』には脚本家として売れ始めた頃の三谷さんのドタバタ、ジタバタが詰まっているのだけど、その実体験があるから、ドタバタ、ジタバタと生きることのおかしみとかなしみをこの上なく愛おしく描けるのだろう。そう納得した。

2006年10月21日(土)  5本目の映画『天使の卵』初日
2005年10月21日(金)  小さな冷蔵庫 大きな冷蔵庫
2002年10月21日(月)  アウシュビッツの爪痕

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