2009年03月07日(土)  イタリアの風に吹かれる会

新潟で働きながら子育てしているコピーライター時代の先輩、クリピロ様が上京するというので、代々木のイル・ペンティートというピザが自慢のお店に集まる。この店にしたのは、「イタリアの風に吹かれたい」とクリピロ様のリクエストがあったからとのこと。集まったのは、広告会社の同僚だったミチヨ様、ヤマムロ様、わたしと、ヤマムロ様の大学時代の友人でクリピロ様とは旅行仲間のカヨちゃんとスガ嬢。

クリピロ様はミチヨ様を見るなり、「おお、ニュウカン!」と歓声を上げ、「ニュウカン管理官」に変身。入管ではなく乳間で、美しき谷間をそう称する。「このごろ、すっかりニュウカンマダム(有閑ではなく乳間)よ」とミチヨ様。下着のようなキャミソールドレスの下に着けるのは「黒の水着」が自然なラインを出せるとのこと。勉強にはなるが、わたしの土管体型では参考にはできない。「産後しばらくはわたしも巨乳だったんですけど」と言うと、「いくつぐらいまであげられるの?」とヤマムロ様。「子どもがいくつ(何歳)になるまで母乳をあげられるの?」という意味の質問で、わたしもそう理解したのだけど、「2サイズぐらいは上げられるよ。BカップがDカップに」とクリピロ様。母になっても思考回路は女、ごリッパです。

満席の店内は活気にあふれ、汗ばむ陽気で、「ここをローマと思おう!」とクリピロ様。乾杯はスパークリングワイン。「泡見ると、この二人興奮するから」とヤマムロ様がわたしとクリピロ様を指差す。泡度数の低い生活をしている子育て中の二人。でも、「子どもを置いて、夜出歩くのなんて、いつぶりだろ」とクリピロ様が遠い目をして言うのを聞くと、わたしはずいぶん出歩かせてもらっているなと思う。昨秋に『セックス・アンド・ザ・シティ』の映画が先行公開されたときもクリピロ様は上京して六本木ヒルズで鑑賞した後、人一倍はじけて泡グラスを空けていたらしい。

「イタリアの風吹いてる?」と言いながら、焼きたての薄焼きピザを頬張り、よく飲み、よくしゃべる。今も広告会社に残っているミチヨ様とヤマムロ様の話は、映画やドラマの業界よりも弾けていて、映画やドラマよりもドラマティックで、『セックス・アンド・ザ・シティ』を地で行っている。広告業界はかなり不景気で、わたしがいた会社も大変な状況らしいけれど、お姉様たちは相変わらず威勢が良くて、頼もしい。

別れた彼氏から食事や貢ぎ物をされることを「手切れ金」ではなく「退職金」あるいは「年金」と呼ぶ話(つきあっていた若い頃は貧乏だった彼氏が出世して金回りが良くなると、恩返しされる)。「女は性格別に島に振り分けられる」話(「ニューハーフ島」「ボーイッシュ島」「手づくり島」「魔女島」などがあり、自己完結していて営業力がある者はニューハーフ島、自己完結しているが営業力がない者は手づくり島行きとなる。わたしは手づくりが得意ではないけれど、営業力に欠けるため手づくり島行きらしい)。興味深い女子ネタを集めて一冊の本が書けそうだし、ドラマにもなりそう。部下の男の子たちが震え上がり、得意先にも気を遣われているというヤマムロ様、そのヤマムロ様が「ミチヨ様」と呼ぶせいで、むちゃくちゃ恐ろしい人と思われてひれ伏されているミチヨ様は、そのままキャラクターに使えそう。

「パリの『ハワイ』という名のヴェトナム料理屋でコリアンに話しかけられて」というクリピロ様の思い出話も面白かった。クリピロ様が夢中で麺をすする横で、ミチヨ様は精一杯の愛嬌をふりまいて、コリアン旅行客の話し相手を務めていたらしい。クリエイターでありながら天性の営業力を発揮してしまうミチヨ嬢はニューハーフ島の住人。加齢に反比例して年々美しくなるその秘訣を聞かれて、「美は努力」と言い放つ、「オンナ力」の磨き方と活かし方の鑑のような人。先日カヨちゃんとヤマムロ様が今夜のお店に来たときにミチヨ様の噂をしていたのを、あまりの大声とその内容のインパクトにシェフが記憶していて、「もっと感じの悪い人を想像してたら、かわいい人だったんですね。お近づきのしるしに」と人数分のアイスピーチティーをごちそうしてくれた。ピザもワインもデザートも会話もおいしくて、イタリアの風をしっかり感じた。

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