2007年05月14日(月)  遠山真学塾で『障害者権利条約』勉強会

『障害者権利条約』の勉強会についての記事を別々の新聞で目にしたのは先月のこと。昨年12月13日に国連総会で満場一致で採決され、今年3月に国連本部で署名式があり、82か国が批准予定だという条約だが、日本は国内法が未整備という理由でサインをせず、政府の公式日本語訳もいつ上がってくるかわからない状況。ならば自分たちで訳しつつ、どんな内容の条約なのか勉強してみよう、と呼びかけているのが遠山真学塾という数学教室だった。

数学と条約の組み合わせを意外に感じたが、自閉症、ダウン症、発達障害などの子どもたちに数学や算数をとっかかりにして学ぶ楽しさを伝えている塾だとわかった。アンテナに二度引っかかったのも何かの縁と思い、早速問い合わせてみると、記事の反響で4月の勉強会は定員に達しており、5月はどうでしょうと言われて、ひと月待ったのだった。

集まった8人ほどがロの字型に組んだ長机を囲み、まずは司会進行役を務める塾の主宰者、小笠毅さんが自己紹介。「もともとは教育とは畑違いのところにいまして」。不二家を辞めて再就職した出版社で担当したのが、水道方式と呼ばれる数学学習法を開発した遠山 啓氏。その先生の教えを継ぐ形で学習塾をはじめることになったのだとか。「まさか自分が子どもを教えることになるとは思ってませんでした。わっはっは」「英語も全然わかりませんので、皆さんのお知恵を拝借と思いまして。わっはっは」。大きな声の関西弁で実によくしゃべる。裏表がなさそうな人だ。関西人の数学教師ということで、父イマセンとイメージが重なった。

続いて、配られた「Article24 -Education(第24条 教育)」の日本語訳を試み、「inclusive education」をどう訳したか、各自が発表。inclusive はしばしば「包括的」と訳されるけれど、そもそもこの言葉自体なじみが薄く、わかりにくい。「包むという漢字があるので、風呂敷みたいに包み込むイメージかなあと思ったりしてるんですが」と小笠先生。「みんな一緒の教育」「混在、ごちゃまぜの教育」などと訳す人によって言葉が違うのが面白い。

わたしは「反対語はexclusive=排他的だなあ」と考えて「分け隔てのない」「誰でもどうぞ」などとプリントの片隅にメモをしていたが、二つ隣の席の女性が「inclusiveは風呂敷を包むのではなく、風呂敷を開いた状態なんですね」と言うのを聞いて、なるほどうまいこと言う、と感心した。包み込まれては、はじかれる人が出てくる。開いたままなら、誰でも受け入れられる。風呂敷なら厚みもほとんどないから、敷居のような段差もない。単に英語を日本語に置き換えるだけでなく、条約に込められた思いを読み解こうとする作業は、貴重な体験となった。条約の原文全文が掲載されたブックレット『若者と語る 「障害者権利条約』は遠山真学塾から購入できる。

風呂敷発言の女性は英語を仕事にされている方かなと思ったら、勉強会の後、「今度、翻訳本が出るんです」と小笠先生に話しているのが聞こえたので、帰りのエレベーターで一緒になったときに「さっきちらっと聞こえたんですが、なんという本ですか」と話しかけ、一緒に電車に乗り込んだ。上原裕美子さんという翻訳家さんで、6月に刊行される『わが子と歩む道―「障害」をもつ子どもの親になるということ 』(シンディ・ダウリング他)の翻訳を手がけたことから今日の勉強会に興味を持たれたそう。ひとつ前に手がけた翻訳本は『母と娘 ふたりの風景』。「親子もの専門ってわけじゃないんですけど、たまたま続いたんです」。わたしにとっては子育ては旬の話題なので、二冊ともぜひ読んでみたい。名刺サイズの新聞記事からあたらしい人につながり、本につながり、本を読めばまた新たな発見があるかもしれない。行ってよかった。

2005年05月14日(土)  病は気まで 『ぎっくり背中』の女
2002年05月14日(火)  戯曲

<<<前の日記  次の日記>>>


My追加