2005年05月14日(土)  病は気まで 『ぎっくり背中』の女

■いつも背中を丸め、うつむいて暗い顔をしている知人がいた。「なんで彼はあんな辛そうなんだろね」とわたしが言うと、「あの子、腰が悪いのよ」と共通の友人が言った。腰が痛くたって、もう少し明るい顔すればいいのに、と正直思った。ごめんなさい、T君。今ならあなたの気持ちが痛いほどわかる。本当に痛いほど。体の一点が痛いだけで、背中は丸まり、視線はうつむき、表情はこわばる。「病は気から」というが、「病は気まで」もまた真なりと身をもって実感している。■背中に突然痛みを感じたのは水曜の夜。木曜日、会社で「背中が痛い」と言っていると、「胃が痛いと背中に来るよ」「急性膵炎になったとき、背中が痛くなった」などと同僚たちに脅され、胃腸科で検査を受け、痛み止めをもらう。金曜になって痛みはますますひどくなり、ベッドから起き上がるときも悲鳴を上げるほどに。午前中はハッピーな商品のハッピーなTVCFをプレゼンすることになっていたが、開口一番、背中が痛いことを断り、「もしわたしがハッピーに見えなかったら、気持ちではなく背中のせいです」と言い訳。午後から検査結果を聞きに行ったところ、内臓の異常はとくに見られないと言われ、別な病院の整形外科へ。レントゲンを2枚撮ったが「背骨がちょっと曲がっているけど、痛みのせいかもしれない」と曖昧な診断結果。そのまま帰されそうになったので、「背骨を手で押さえているとマシなんですけど」と訴えると、湿布をして、バストバンドなるもので胸部を縛り上げてくれた。それまでは背骨と筋肉の間に隙間ができているような感覚で、ときどき背骨が梯子を外されたようにガクンとなり、その隙間に流し込むような痛みが走った。締め付けられたことで背骨と筋肉のグラついた感じがなくなり、ずいぶんラクになる。サラシを巻いたような状態になるので、「胸がつぶれますよ」とお医者様はバストバンドを巻くことに気遣ってくれたが、会社に戻っても誰も変化に気づかなかった。元からつぶれているらしい。■すっかり治った気になって一夜明けた今朝、なぜか症状は悪化。激痛が走り、一歩も踏み出せない。まるでぎっくり腰の背中版だなあと思い、試しに「ぎっくり背中」で検索すると、全国に仲間が多数いることがわかる。「ぎっくり背中」としか呼べない状態になった人がいるわいるわ、その体験談を読むと、わたしの症状にまさにそっくり。お医者様はどうしたものかと首を捻るばかりだったが、体験者は実に雄弁。「湿布を貼ったり冷やしたりすると良くなった」という声が多く、「お風呂は逆効果」の警告もある。良かれと思って朝風呂まで浴びてしまったのが裏目に出たらしい。湿布を貼り、バンドを巻き、痛み止めを飲み、ようやく歩けるようになるが、思い出したように痛みの津波が押し寄せる。かがむと痛い、笑うと痛い。お金はかかるし、好きなことはできないし、いいことなし。「ぎっくり背中の女」なんて、ろくなネタになりそうにないし。棚から牡丹餅的発見と言えば、幼い頃、母が伝授してくれた「足の指で床のものをつかまえる方法」が思いがけず役に立ったこと。ハンガーも紙袋も携帯電話も上手につまめる。それにしても、わが家はどうして何もかも床に落ちているのか。そして、娘にかがめない日が来ることを母は予期していたのだろうか。ぎっくり腰と同じく、ぎっくり背中もふとした弾みで引き起こされ、くしゃみだけでなる人もいるという。わたしの場合、水曜の夜の記憶をたどると、溜めに溜めた古新聞を7袋出していた。自業自得か。

2002年05月14日(火)  戯曲

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