ひさしぶりの観劇。東銀座の時事通信ホールにてinnerchild(インナーチャイルド)第12回公演『アメノクニ/フルコトフミ』を観る。この劇団の作品を観るのは三回目だが、日本の成り立ち、わたしたちのルーツのような部分に根を下ろし、今とこれからのこの国のあり方を考えさせるストーリーを発信している。暗喩を多用するが、メッセージは直球、真っ向勝負。軽い気持ちで楽しむというより、背筋を正して客席に着き、突きつけられた挑戦を受け止めることを要求されるので、観るほうに覚悟と忍耐力が足りないと力負けする。妊娠4か月で観た第11回公演では眠気を誘われてしまった。
◆2006年03月08日(水) innerchild vol.11『PANGEA(パンゲア)』
◆2005年09月22日(木) innerchild vol.10『遙<ニライ>』
今回は2時間を越える大作。前の席にいた女性二人組の終演後第一声は「長かったぁ」「体感時間4時間」だったが、わたしは引き込まれた。国の命により不本意な神話を書かされることになった男が語り部だったせいだろうか。生者や死者の都合に振り回され、これから生まれる命を予言する重圧までも負わされる神話編纂者の苦悩に、書き手としての自分を重ねて観た。「私達は私達を成立させる『物語』なしでは生きていけない」のであって、そのよりどころとして神話が必要であり、歴史をでっちあげることも必要悪なのだという視点は面白い。同じことが政府のナントカ白書編纂室で囁かれても不思議ではない。
舞台は「過去、現在、未来の日本を同時通訳的にイメージした架空の王国」であるユーレンシア(大神州国)。フルコトフミとは古事記のことであり、編纂者のヤスマールは太安万侶であるが、スクリーンには第二次世界大戦と思われる記録映像が映し出され、ヤスマールの助手を務めるアレー(稗田少名)の携帯電話はアメノクニとつながっている。何かを企てているらしい不気味な存在のアメノクニはアメリカを指すようだが、その企みは明かされない。9月に上演予定の連作第二部『アメノクニ/ヤマトブミ』にて、第一部で蒔いた種が刈り取られる様子。二作品を合わせると5時間級の大河ドラマになる。蘇我氏と物部氏の対立をシェークスピアの恋愛悲劇に重ねた上杉祥三さん作・演出の『Brokenロミオとジュリエット』にも度肝を抜かれたが、神話をモチーフにこれだけ壮大な時空を超える物語を膨らませた小手伸也さんの才能と勢いにも敬服する。ヤスマールのように外からの圧力を受けて書かされるのではなく、これを書きたいという内から迸る衝動を書きつけることが大切なのだ。
思いがけない収穫だったのは、ニギヒ(物部饒日)役の尾崎恵さん。STRAYDOG公演でおなじみだったが、しばらく見ないうちに大人っぽくなり、女優としての艶を増していた。自信をまとったのだろうか、以前よりも舞台で大きく見えた。
 | innerchild vol.12 『アメノクニ/フルコトフミ〜八雲立つユーレンシア〜』 2007年1月8日〜14日 時事通信ホール 作・演出:小手伸也 【キャスト】 古澤龍児 菊岡理紗 土屋雄 三宅法仁 宍倉靖二 小手伸也 (innerchild) 進藤健太郎(無名塾) 板垣桃子 ハルカ・オース 石川カナエ 尾��恵(STRAYDOG) 小柳こずえ 三枝翠 桜子 関本なこ 関根洋子 長尾純子 馬場巧(まめや別館/ヰタ・マキ) 初谷至彦(NG企画) 【スタッフ】 舞台監督:筒井昭善・清沢伸也 舞台美術:筒井昭義・小手伸也 照明:伊藤孝 音響:尾林真理 映像:神戸ちぎ 衣装:渡辺まり メイク:萩原麻弥 小道具:桜井徹 宣伝美術:土谷朋子(Citron Works) 稽古場助手:三嶋義信 制作:赤沼かがみ(G-up)・インナーチャイルド製作部 企画・製作:innerchild
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