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JIROの独断的日記
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2010年10月11日(月) 「ハーバード白熱教室」所感、というか「議論」について。

◆何だかエラく話題になっていますね。

NHKの番組概要から。

創立1636年、アメリカ建国よりも古いハーバード大学の歴史上、履修学生の数が最高記録を更新した授業がある。

政治哲学のマイケル・サンデル教授の授業「Justice(正義)」である。

大学の劇場でもある大教室は、毎回1000人を超える学生がぎっしり埋まる。

あまりの人気ぶりにハーバード大学では、授業非公開という原則を覆し、この授業の公開に踏み切った。

ハーバード大学の授業が一般の目に触れるのは、史上初めてのことである。



サンデル教授は、私たちが日々の生活の中で直面する難問において、「君ならどうするか?何が正しい行いなのか?その理由は?」と、

学生に投げかけ、活発な議論を引き出し、その判断の倫理的正当性を問うていく。

マイケル・ジョーダンやビル・ゲイツはその仕事で、すでに社会に貢献しているのになぜ税金を納めなければならないのか。

また代理出産、同性愛結婚、人権など最近のアメリカ社会を揺るがす倫理問題も題材となる。

絶対的な答えがないこのような問題に、世界から選りすぐられた、さまざまな人種、社会的背景を持った学生が

大教室で意見を戦わせる授業は、ソクラテス方式(講義ではなく、教員と学生との闊達な対話で進められる授業形式)の

教育の最高の実例と言われている。

一つ細かいことですが、指摘しておきます。色文字の部分。
ハーバード大学の授業が一般の目に触れるのは、史上初めてのことである。

これは、明らかに間違っています。かつて駐日米国大使を務めた、ハーバード大学教授で、

東洋史、特に日本史の専門家、日本語・中国語ペラペラの、エドウィン・O・ライシャワー博士

博士がハーバードで最後の講義を行ったとき、NHK教育でもその全てが、
「ライシャワー教授の最終講義」

として放送されました。ですから、「ハーバード大学の授業が一般の目に触れるのは、史上初めて」

ではありません。今のNHKスタッフはあの頃まだ子供で覚えていないのでしょうが、

よく、記録を調べれば分かるはず。私は大変よく覚えています。

まあ、それは事の本質ではありません。


◆マイケル・サンデル教授の講義の進め方は大変上手いし、テーマも興味深いです。

マイケル・サンデル教授は、ハーバードの講義の様子を日本で放送したら、

大評判になったので、これは日本でもやったら儲かると思ったのでしょう(冗談、冗談)。

8月に東大でも同じような「講義」を行ったのですね。その模様が、

10月10日(日)「戦争責任を考える」で放送されました。こういう答えが出ない問題を哲学的に

考えることは大切なのです。特に若い頃に一度そう言うことをしないと、物事を真剣に考えない人が

出来てしまいます(そしてよく考えないで、選挙で投票するから、とんでもないことになります)。


なるほど、マイケル・サンデル教授は、議論の仲介役としては、とても有能です。相対立する意見を引き出し、

ここで、こういうことをいったら、また、こういう反応があるであろう、ということも、計算できている。

経歴見ましたけど、やはりこういう頭が良い人は、ほぼ100パーセントユダヤ人ですね。彼もそうです。


設問が実に上手い。

自分が生まれる前に自国民が行った行為に対して、道徳的責任はあるのか?

など、非常に難しい。答えが出ません。

彼はあくまでも冷静に、
日本人が1930年代に東南アジアの人々を抑圧したことに対して、現代の日本人は謝罪すべきなのか?

とか、
原爆を投下したことに関して、オバマ大統領は日本に謝罪すべきなのであろうか。

など、割と卑近な例を持ち出しました。日本の学生諸君は、日本がアジアに対して時代を超えて謝罪するべきだ、という意見が

多かったのですが、私は、サンデル教授は、そういう例をだすならば、もっと範囲を拡げないと狡いなあ、と感じました。


ネイティブアメリカンを殺してアメリカを白人の国にしたことに対して、

ピルグリム・ファーザーズの子孫達は、ネイティブ・アメリカンに永遠に謝り続けなければならないし、

西欧のキリスト教徒が、異教徒イスラム教国からの聖地エルサレムを奪還せよ、とのローマ教皇の命を受けて

エルサレムに向かう途中、滅茶苦茶なことをしていますね。略奪し、女性を犯し、子供や年寄りを殺し、街を破壊しました。

平和に暮らしていた人達の所にいきなり殴り込みをかけたのです。今時、日本のヤクザだってそんなことはしない。

しかし、十字軍は、とても人間のやることとは云えない蛮行を、ローマ教皇から「よくやった」と褒められました。

ヨーロッパ人は永遠に中東の人々に謝罪するべきではないでしょうか。


また、欧米人は400年以上もアフリカの黒人を人間と見なさず、物として売買していました。

アメリカは、第3代大統領、トーマス・ジェファーソンの「アメリカ独立宣言」(1776年)で、
全ての人間は平等に造られている

といいながら、そのあと100年も奴隷売買を止めなかったのですよ?リンカーンが出て来てやっと本当に

止めたのです。

これらを考えたら、全ての欧米諸国はアフリカの黒人を数百年にわたり奴隷とした扱ってきた事実に対して、

いくら謝っても謝り足りないのではないでしょうか?全ヨーロッパ人が一生、アフリカに向かって土下座し続けても

過去は、消えません。

また、いつも日本人に戦争中虐められたという韓国人ですが、ベトナム戦争に参戦し、ベトナム人を虐殺してます。

殺す度に、死体から耳を切り取りホルマリン漬けにしていた話などが残っています。


◆議論はどのようにも誘導出来てしまうのです。

マイケル・サンデル教授の講義は上手い、といいましたが、

自分が生まれる前に自国民が行った行為に対して、道徳的責任はあるのか?

を考える材料として、日本人が戦時中、東南アジアでしでかしたとされる蛮行と、アメリカの日本への原爆投下、

という二つの例しか出さないのと、このように世界中の民族が何か過去において「悪いことをしている」ことを

認識した場合では、答えが異なると思います。


◆議論は、口が達者な方が「勝者」になりやすいけど、それが正しいとは限りません。

「議論によって、自分とは違う意見を知ることが出来る」とか「相手の言葉で自分でも気が付かなかった事に気付く」とか、

一般に「議論する」ことは良いこととされています。そういう言い古された言葉は大抵知っています。

以下は、それを踏まえた上での私の所感です。


私自身は、議論が「ためになった」と感じたことはありません。

物事を考える事は大切です。だからこのように、稚拙ですが、毎日ブログで世の中の事に関して、

それに対する他の人の意見は元にせず、自分でゼロから考えを積み上げています。

しかし、議論というのは落ちついて考える事ができません。

時間がどんどん流れていきます。ああいう状況ではゆっくり物事を考えて、良い意見を出す人よりも、

とりあえず、手際よく、尤もらしい意見を、大きな声でワーッとアピール出来る人が有利なのです。

ですが、何でも速ければいいというものではありません。その場ですぐに音声言語として表現出来なくても、

じっくり考えて、思慮深い意見を述べる人もいます。


NHKは上手い具合にブームにあやかって、既にDVD化を決定してますね。

NHK DVD ハーバード白熱教室こういう番組にしては例外的なほど早い。

しかし、議論や哲学は、マイケル・サンデル教授のそれが全てではありません。

また、人間必ず議論しなければならない、という論理の正当性は証明できません。


ただ、一つだけご参考までに。

哲学という場合は少々難しいけれども、特に若い諸君は、時間が有るうちに、西洋哲学史を勉強しておくと、

良いでしょう。バートランド・ラッセルの西洋哲学史(1)(2)(3)を薦めます。

私は大学の一般教養課程で、この本を翻訳した市井三郎先生から哲学史の講義を受け、

大変、興味深かった事を覚えています。

いきなり、カントとかヘーゲルとか読んでも分からないです。

興味が有るならば、まず哲学史全体を俯瞰した方が良いと思います。

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