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JIROの独断的日記
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2010年01月20日(水) 1月20日は、ミッシャ・エルマン(1891〜1967)という昔の有名なヴァイオリニストの誕生日です。

◆昔のヴァイオリニストです。美音でした。

しばしば、昔のヴァイオリニストは、個性的で、いまのジュリアードで習った人達はテクニックはあるけど、

つまんない、というような、ことを言います。

それほど、単純では無いと思います。今のヴァイオリニストでも、「あ、これは・・・」と音を聴いて分かる人、

弾き方の特徴(曲の解釈上の個性とでもいうのでしょうか)で、「あ、これは○○だ」と言う人はいます。

ただ、今の方が、世の中がギスギスしているのと、みんなテクニックがどんどん向上していくので、

つい、そちらの方に演奏者も聴き手も気を取られて、何だか少しカリカリしている気がします。

特にコンクールとなると、本来の演奏会じゃなくて、皆同じぐらい上手いので、ミスをした方が負け、

のような(実際はそれほど単純じゃないでしょうが)状況ですから、ピリピリしています。

でも、少しぐらい間違えたっていいですよね。全部デタラメでは、お話になりませんけど。

そのようなことを、ロシア生まれのアメリカの往年のヴァイオリニスト、ミッシャ・エルマン(1891-1967)の小品集を

聴いていると、感じます。

エルマンの美しい音は「エルマン・トーン」と呼ばれたと言われています。

私は生で聴いたことがないので、本当はどういう音だったのか、分かりませんが、

そんなの今更どうしようもないんですから、ムキになることはない。


いや、失礼。


何を独りで怒っているかというと、Wikipediaでミッシャ・エルマンの項を読んだら、

要するに上手かったのは、若い頃で、晩年はテクニックも衰えて、音色も、さほど大したことはなかったと、

珍しく情緒的な説明だったので、

何かエルマンに恨みでもあるのか?

と少々不愉快だったからです。

失礼を致しました。


◆エルマンより今の日本の若い人の方がテクニックはあるかも知れませんが・・・。

純粋に早いのを正確に弾けるかとか言うことで言ったら、それは今の学生さんの方が、

これからお聴き頂く晩年のエルマンより上手いでしょう。


そこが、逆に貴重でして、エルマンのヴァイオリンを聞くと、

音楽家というのは、テクニックは身につけなければいけませんが、

上手ければ良いというものではない、ということが分かります。


◆【音楽】アンコール集 エルマン(vn)セイガー(p) より。

CDは、AmazonでもHMVでもTowerRecordでも買えますが、Amazonだけ試聴できないので、

HMVのアンコール集 エルマン(vn)セイガー(p)と、

Towerのヴァンガード名盤選38::ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリン・マスターピースにリンクを貼っておきます。


ガヴォット(ゴセック)


Gossec Gavotte in D major



エルマン先生、1拍目から弾かないで、前の拍のウラからシンコペーションにして弾いてます。

たしか、楽譜はそうなっていないはず。でも良いんです。これぞ「エルマン節」なんです。


今時、こういう可愛い小品を弾いてくれる、プロのヴァイオリニストっていませんよね。

或る意味では、大変怖いかも知れません。プロを目指して所謂「英才教育」を受けた子など、

小学校に入学する前に弾けていたと思います。易しい曲ですから、誰でも弾けます。素人ですら、

兎に角弾くだけなら弾けます。そういう曲を大勢の前で弾くのは、間違えたらすぐにバレますから。


2曲目はこれまた泰西名曲、ドヴォルザークの「ユーモレスク」です。

N響の第1ヴァイオリンで30年弾き続けた鶴我裕子さんは、仕事ではやれ、マーラーだ、ブルックナーだ、

ショスタコーヴィッチだ、バルトークだ、と難しいのを弾いておられたのに、

著書「バイオリニストは肩が凝る」の中で、

エルマンの「ユーモレスク」を聴くと、ホッとする、

と書いています。プロですらそうなのか、と、何だかこちらもホッとしたことを思い出します。


ユーモレスク 変ト長調 Op. 101 No. 7 (ドヴォルザーク--編曲:アウグスト・ヴィルヘルミ)



Humoresques, Op. 101: No. 7 in G flat major



エルマンが来日した時、日比谷公会堂かどこかで、リサイタルがあり、

アンコールでエルマンは、この「ユーモレスク」を弾いたそうで、それを実際に見て、聴いた人によると、

今の若いヴァイオリニストだったら、照れちゃってこんなの弾きませんが、エルマンは、実に気持ちよさそうに

楽しそうに弾いたそうです。


ベートーヴェン 「ト長調のメヌエット」

お聴きになれば、「ああ、あれか。」と思われる筈です。


Minuets, WoO 10: No. 2 in G major



ここまでの曲、いずれも「ヴァイオリンが歌っ」ています。その「歌心」が、聴き手の心の琴線を震わせます。


以上は技術的には易しい曲ばかりです。このレコードは1958年にエルマンのアメリカデビュー50周年を記念して

作られたとか。


エルマンの晩年ですが、Wikipediaで批判的な文章を書いている人物は「チゴイネルワイゼンに至っては、技術が衰えているため、

難しいところは思い切りテンポを落として弾いている」という意味のことを書いていますが、私はそれはどうかな?と思います。

聴いて頂きましょう。


サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン



Sarasate Zigeunerweisen, Op. 20



ハイフェッツと比べたら、それは確かにテンポは遅いです。最後モルト・ヴィヴァーチェ。ハイフェッツは一番速いところでは、

テンポ180近い。全盛期のハイフェッツと比較したら気の毒です。

岩城宏之さんの「棒振りのカフェテラス」という本に書いてありますが、ハイフェッツですら最晩年は、

小品すら通して弾くことができず、編集でつないでいたそうですから。


エルマン先生は思いきり遅いですが、音質は乱れていないし、音を飛ばすこともない。

左手ピチカートもきちんと鳴らしている。曲の最後の最後ではアッチェレランドをかけて非常に高いポジションの音程が

狂っていない。ただ、何度も出てくる、和音が三つ続くところで、あまりにテンポを落とすし、演りたい放題なので、

これは伴奏者、ジョセフ・セイダー氏の健闘を讃えるべきでしょう。


最後です。


マスネー:歌劇「タイス」 - 第2幕 瞑想曲


Massenet Thais, Act II: Meditation



全体としてお分かり頂けたかと思いますが、エルマンの音は決して、刺激的に鳴らないのです。

録音が古いこととは無関係だと思います。奏者が常に「美しい音」をイメージいていなければ、

ヴァイオリンのみならず、どんな楽器でも良い音が出せるようにはなりませんし、それを維持できない。

エルマン氏は、一生、理想の音を追い続けていたのかも知れません。

好き好きですが、このCDはお薦めです。とにかくエルマン聴いたこと無い、じゃ、問題外でっせ。

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2008年01月20日(日) <センター試験>英語リスニング、175人が再テスト←英語の勉強は音読に尽きる。
2007年01月20日(土) 「『納豆ダイエット』は捏造」←私は「民放はやらせだ」と何度も書いています。この会社、2年前に全く同じ事をしている。
2005年01月20日(木) 「偽造カード被害(スキミング)防止、金融庁と警察庁が初協議へ。 現時点におけるスキミング対策について。
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