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JIROの独断的日記
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2010年01月15日(金) 【追悼】オトマール・スウィトナー氏(指揮者)(その2)

◆前回に続いて。「ハンガリー舞曲」(ブラームス)、「序曲集」(ウェーバー)、モーツァルトの交響曲など。

前回、書いた通り、オトマール・スウィトナー氏は、私がちょうどクラシック音楽、特にオーケストラに興味を抱き始めた頃、

N響の名誉指揮者として、毎年来日して、振っていた。その頃の記憶があまりにも懐かしく、音楽を知り始めた頃に、

かかる名指揮者の演奏を見て、聴くことが出来た幸運を思う。だからとても一度の「追悼」で終わらせる事が出来ないのだ。


◆「斜めから見たマエストロたち」より、再度抜萃。

前回紹介した、「斜めから見たマエストロたち」、「オトマール・スウィトナー(Otmar Suiner)」の章から別の箇所を

抜萃させて頂く。

スウィトナー氏への愚問(50ページ)

スウィトナー氏がR・シュトラウスのアルプス交響曲を指揮した時のこと。オーケストラの練習を見学していた私は、

氏があの大曲を完全に頭の中に入れていて、ロクにスコアも見ないであれこれと楽員に注文をつけるのに感嘆していた。

数日後、有馬先生がスウィトナー夫妻を渋谷のステーキハウス小川軒へ招待され、私もお相伴にあづかった(引用者注:原文のまま)。

有馬先生はドイツ語の達人だったので、質問があるから通訳して下さいとお願いした。「アホなことは聞くなよ」と云われたが、

私は云った。

「マエストロはもしここにピアノがあったら、あのアルプス交響曲を楽譜を見ないで完全に弾けるのですか?」

有馬先生は苦笑しながらも極めて鄭重に尋ねて下さった。マエストロは質問が分からない様子で、1分以上も考えて一言

「ヤー」

「それ見ろ。困ってるやないか」と先生。恥をかくなら皿までもと

「では、例えば左手の3の指(引用者注:中指)はヴィオラとクラリネットで、これが続いて2(人差し指)と4(薬指)に移って、

二つの楽器が半進行する---ということも理解しながら弾いていらっしゃるのですか?」

ここではマエストロの沈黙が長かった。しばらくすると申し訳なさそうに答えた。

「勿論そうです。それが出来なかったら棒が振れませんので・・・・。」

有馬先生は「困った奴じゃ。愚問ばかり発しやがって」と云って、席を立ち「帰りまひょ」という。

お分かり頂けると思うが、つまり指揮者というのは、本来それぐらいの能力が求められるのである。

長大な交響曲を暗譜し、ピアノで弾けるなど当たり前。しかもどの指がどのパートを弾いているかを

完全に把握している。スウィトナー氏の沈黙が長かったのは、そんなことは指揮者にとって、出来て当然。

最低の条件であり、それを改めて「出来るのですか」と尋ねられたので、「???」状態になったのである。

しかし、これはオーケストラのスコアを見ると分かるが、本当に勉強していなければ、決して出来ないことである。

いや、勉強したとしても、全ての人間が出来るようになるわけではない。出来ない人は多分一生出来ない。

天賦の才と地道な勉強をずっと続けて初めて可能となる。しかし、それは繰り返すように、指揮者の前提条件であり、

謂わば「基礎的能力」である。名指揮者として歴史に名を残すためには、そこに独自の解釈・個性

(それは作曲者の意図を逸脱した出鱈目なものであってはならない)を加えて、初めて評価の対象になり得るのである。

CDを聴きながら、指揮棒を持って指揮真似をしてもそれは音楽に合わせて棒を振っているのであるから、指揮ではなく、

「指揮踊り」に過ぎない(しかし、それで楽しければ、自分の部屋でやる分には一向に構わない。


◆【音楽】ブラームス「ハンガリー舞曲集」より、何曲か。

ブラームスの交響曲も大変名作なのだが、最初、ちょっと取っつきにくいかも知れない。

ハンガリー舞曲集は、ブラームスの作品群の中でも聴きやすい。

原曲はブラームスがピアノ連弾用に書いた作品だが、一部はブラームス自身により、

他にも色々な作曲家により、全21曲がオーケストラ曲に編曲されている。Wikipediaに詳しい

これをスウィトナー=シュターツカペレ・ドレスデンで演奏したCD、ブラームス:ハンガリー舞曲集はお薦めである。

この中から、私の好みの曲を選ばせて頂いた。



ハンガリー舞曲集 第1曲 ト短調

バイオリンの低い側の弦の音が厚い響きを創り出している。

寒い冬に、森の中を風が吹きすさぶ、という光景を、私はこの曲を聞く度に思い浮かべる

(あくまで、私が勝手に抱いているイメージである)。


Hungarian Dance #1



ハンガリー舞曲集 第3曲 ヘ長調

1番と異なり長調で、田舎ののんびりした雰囲気。


Hungarian Dance #3


ハンガリー舞曲集 第4曲 嬰ヘ短調

あまり注目されないが、切ない旋律がたまらない。


Hungarian Dance #4



ハンガリー舞曲集 第5曲 ト短調

多分、ハンガリー舞曲集の中で最も良く知られている。


Hungarian Dance #5



ハンガリー舞曲集 第6曲 ニ長調

5番もそうだが、テンポの緩急がめまぐるしく変わる。


Hungarian Dance #6



ハンガリー舞曲集は色々な指揮者が録音しているが、例えば1番だけ比較しても、

テンポの変化のさせ方が全員違う。これほどはっきり違いが分かるのも珍しい。

全曲名曲でもないが、お薦めする。


◆ウェーバー序曲集から、2曲だけ。私が生まれて初めて買った「レコード」のCD版

これは、ウェーバー:序曲集である。


前回の日記・ブログで少し触れたが、私が中学生の頃、生まれて初めて小遣いを貯めて買った「LPレコード」がこれである。

その少し前にたまたま生のスウィトナー、N響で、ウェーバーの歌劇「リューベツァール」序曲を聴き、

非常に感激したため、レコードが欲しくなったのだ、と記憶している。


実は、以前一度、このCDを紹介したことがある。その際、

ウェーバー序曲集なら、もっといい録音がある。

とか、
スウィトナー=シュターツカペレ・ベルリンなら、他に名盤がある

との、ご意見を何件か頂戴した。

確かにウェーバー序曲集なら、いくらでも名盤があろう。いずれもご親切で、大変有難いのだが、

私にとっては「生まれて初めて自分で買ったクラシックのLPレコード」として、格別の思い入れがある、

ということをご斟酌頂けると幸いである。


さて、「リューベツァール」である。

今、作曲者、カール・マリア・フォン・ウェーバーを調べて分かったが、オペラとしての「リューベツァール」は断片しか残っていないそうだ。

その為かどうか分からないが、これは曲名が一定しないので困る。

「リューベツァール」「精霊の王者」「精霊の支配者」「霊界の支配者」など、コンサートで演奏されるときも、

CDに収録されているときも、色々な曲名が一定しないのだが、これらは全て

これからお聴き頂く同一の曲のことである。


序曲「精霊の王者」(リューベツァール)

途中、トランペットのコラールと、その後に続くティンパニの強打がカッコいい。



Rubezahl Overtue



もう1曲。ウェーバーのオペラの序曲で最も壮大かつ有名なのが「魔弾の射手」であるが

(冒頭のホルンの四重奏は、讃美歌になっている)、その次に有名なのが、このオベロン序曲である。

2分40秒ぐらいまで退屈に思えるかもしれないが、主部に入ると躍動的な音楽になる。


歌劇「オベロン」序曲



Oberon Overture



曲の冒頭がホルン・ソロで始まる。特別に技術的に難しいことはないが、

ここで間違えたら、全てがぶちこわしである。また、再生開始後約1分20秒。

トランペットの弱音の「ファンファーレ」があるが、弱音であるが故に気を使う。ここも間違えたら、

曲の神秘的な雰囲気が台無しとなる。簡単そうで緊張する。


◆キリが無いので、多少、端折ります。モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」、ドヴォルザーク:序曲「謝肉祭」

本当にスイトナー氏を色々聞きたかったら、CDボックスが何種類か出ていまして、それが割安なんですが、

さすがにここではお薦めしにくいので、まず、モーツァルト。


交響曲第35番「ハフナー」、36番「リンツ」、38番「プラハ」をシュターツカペレ・ドレスデンと録れたCDがあります。

交響曲第35番、第36番、第38番 スイトナー&シュターツカペレ・ドレスデン です。

この中から、第38番「プラハ」変則的でして、第3楽章に普通メヌエットをおくのですが、それが無い。全部で3楽章の交響曲です。

その終楽章(第3楽章)です


モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」終楽章



Symphony No. 38 Prague Finale



最後です。ドヴォルザークの序曲「謝肉祭」という作品があります。

あまり演奏されない気がします。以前、レコード時代には、ドヴォルザークの交響曲第8番とカップリングされていた、

ジョージセル・クリーブランド管弦楽団の名演がありましたが、CD化されたら、交響曲7番と8番がカップリングされ、

セル=クリーブランドによる「序曲:謝肉祭」はなくなってしまいました。あれも名演でしたが、

スイトナー=シュターツカペレ・ドレスデンの「新世界より」とカップリングされている。

交響曲第9番『新世界より』、序曲『謝肉祭』です。 スイトナー&シュターツカペレ・ベルリン 序曲「謝肉祭」は、

録音技術の進歩もあるのでしょうが、オーケストラの各パートがはっきりと分離して聞こえ、非常に厚い響きの

別の種類の名演です。


ドヴォルザーク:序曲『謝肉祭』作品92


A.DVORAK:Carnival Overture Op.92




あれこれ詰め込んでしまいました。まだ本当はスイトナー氏のベートーヴェンなどご紹介したいのですが、

それはまた別の機会に。それでは、失礼をいたします。

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2009年01月15日(木) 【音楽】新しい才能の発見。女性トランペット奏者、Tine Thing Helseth(ティーネ・シング・ヘルセス)。
2008年01月15日(火) 「<米シティ>2兆5000億円の追加損失」←ブッシュさん。公的資金を注入しなさい。
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