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2003年12月26日(金) JY: 高円宮杯 全国大会 ヴェルディ戦

03年12月26日14:00開始 西が丘サッカー場
 高円宮杯 第15回全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会 決勝トーナメント準決勝
 対 ヴェルディジュニアユース ※35分ハーフ
 天候:曇

▼布陣
−−−−−−町田−−長沢−−−−−−

− 杉山和 −−−−−−−−−小泉−−

−−−−−−神田−−池田−−−−−−

− 桑原卓 −佐野−−岩本−−渥美−−

−−−−−−− 山崎晃 −−−−−−−

控え:吉田、桑原彬、田村、小出、滝戸、望月雄、山崎竜
交代:後半00分:池田→山崎竜(長沢をボランチ、山崎竜をFWへ)

ヴェルディジュニアユース:

−−−−−森本−−征矢−−−−−

−−−新福−−−−− 高橋賢 −−

−−−−−村杉− 高橋大 −−−−

−落合−−金沢−−笠松−−古川−

−−−−−−−中根−−−−−−−

交代:前半11分:征矢→皆川、後半20分:高橋大→柴田、後半28分:皆川→宮川
   後半35分:笠松→小坂


▼試合展開

 清水は、高円宮杯東海大会以降のベストメンバーを組んだ。F東京に勝った面子で、勢いの持続を期待したい。対戦相手のヴェルディは、最強世代のF東京に隠れた感はあるが、それに劣らぬ好チームである。彼ら自身は、東京予選でライバルに負けてしまったため、ナイキカップ全国の舞台に立つことはなく、清水との対戦戦歴もない(と思う)。しかし、一つ下の学年が全国で準優勝したため、世界大会に出場(全国大会のカテゴリはU-14、世界はU-15)。チームの成績は6位に終わったが、にも関わらず大会MVPに輝いた森本の名は、世界のユースヤクザに知れ渡ることになった。両チームの他に下馬評の高かったF東京・広島が既に敗北したため、この試合は事実上の決勝戦として、注目を浴びることになる。


(西が丘サッカー場の特性上、横からの入場。サッカー場を含む、国立スポーツ科学センターは取り壊しの計画があるらしく、周囲では撤回を求める署名活動が行われていた)

[前半]
 寸評:互いに中盤の寄せが早く、潰し合いに終始した渋い展開。清水は前の試合のFC東京戦に比べると、特にサイドの2人の思い切りが足りず、ボランチ2枚が出し所に手間取って、カットされることが多い。一方のヴェルディは、起点になる存在=森本がいる分だけ、有利。森本は期待に応え、精力的に中盤に顔を出して繋ぎ役にもなり、古き良きヨミウリスタイルでゴールを目指した。前半も半分が過ぎると、個人技で上回るヴェルディが、散発的に好機を作るようになるが、山崎晃・岩本・佐野で築くトライアングルも強固で、ゴールを許さず。展開の速さを活かしたい清水だが、ヴェルディのボランチ以下の6枚は、李ヴェルディを思わせるほどソリッドな組織と個人を誇り、それを許さない。前半終了間際に、小泉の突破から上げたクロスが引っ掛かって、長沢がボレーで狙う場面があったが、クロスバー。スコアレスで折り返す。

ヴェルディ     清水エスパルス
5(2) シュート 1(0) ×長沢
6(3) 右クロス 2(1) ×小泉、○小泉
3(1) 左クロス 1(0) ×杉和
0(0) 右側CK 0(0)
0(0) 左側CK 1(0) ×神田
0(−)  犯OS  4(−) ・杉和、・町田、・杉和、・佐野
5(1) ファウル 5(0) ・町田、・杉和、・長沢、・小泉、・岩本

[後半]

(後半16分、神田の左CKを跳ね返す森本。三種年代では絶対の高さで、守備にも貢献)

 22分:ヴェルディの大きな高いロングボール、落下地点に先回りしたのは佐野だが、ダイレクトクリアのミスを恐れたのか、1度バウンドするのを待つ。しかし、佐野の想像以上に高く弾んだボールに処理を手間取り、その隙に一気に皆川が距離を詰めて、佐野を背負う。反転しようとする皆川と奪おうとする佐野が競り合うが、尚も処理にもたつき、その間に懸命に戻ってきた桑原卓が、2人の間に入ってカット。が、もつれ合って桑原卓と皆川が倒れた隙に、走り込んできた森本がボールを掻っ浚い、PA内。DFの裏でフリーでボールを持ったU-15代表選手が外すはずもなく、ヴェルディが先制する。

 寸評:最初の5分は前半の流れのまま、ヴェルディは高橋賢らがドリブルとショートパスで、素早くゴールに迫ったが、次第に疲れから森本の運動量が落ちると繋げなくなり、展開速度で上回る清水が徐々に持ち直す。ヴェルディのロングボールは、佐野・岩本が、悉く跳ね返していた。だが、そのロングボールのクリアミスから失点すると、加藤監督は岩本・長沢をそれぞれ一列ずつ上げる、3−4−3を指示。けれども、慣れないパワープレーはむしろ、ヴェルディに絶好のカウンターを与えるだけに終わった。足を痛めた様子の佐野はロングボールを蹴れず、最終ラインからのボールは長身の長沢・山崎竜・町田に届く前に跳ね返されて、結局、同点後はシュートの1本も、CKの1本も打てないまま、03年清水エスパルスJrユース、最後の全国大会は幕を閉じた。

ヴェルディ     清水エスパルス
10(5) シュート 3(1) ○山竜、×町田、×町田
5(2) 右クロス 1(0) ×小泉
5(1) 左クロス 4(0) ×桑卓、×杉和、×神田、×岩本
3(0) 右側CK 0(0)
0(0) 左側CK 3(0) ×神田、×神田、×神田
0(−)  犯OS  3(−) ・杉和、・杉和
8(1) ファウル 7(1) ・小泉、・山竜、・渥美、・渥美、・小泉、・神田、×渥美


(深々と頭を下げたまま顔を上げられない、2003年度清水エスパルスJrユース主将、岩本大。前日の大瀧に面影が重なる)


(笑顔のない表彰式。Who Wants It?)


(そして、表彰写真。この悔しさは、昇格してユースでぶつけてくれ、たらいいなあ)


▼試合結果

清水エスパルスジュニアユース 0−1 ヴェルディジュニアユース
 得点:後半22分:ヴェ・森本貴幸
 警告:前半07分:清水・長沢駿 (ラフプレイ)
    後半30分:ヴェ・宮川貴司(ラフプレイ)


▼選手寸評

[私撰MVP]
●岩本大 70分間出場
 長身森本と、互いに敢えて「柔らかさ」で勝負する対決は、見応えがあった。岩本自身は、巧さに幾度か翻弄されつつも、読みとカバーリングの速さで凌いでいた。最後の悔し涙は、必ず成長の糧になるはず。

[私撰MIP]
●山崎晃太 70分間出場
 岩本や佐野が上手くコースを切ってるせいもあるが、シュートに対する反応で、抜群の鋭さを示した。ヨミウリのように、分かりやすいドリブルシュートに対して、絶妙の距離と位置を保っている。

●佐野克彦 70分間出場
 後半のロングボール攻撃に対しては、正に鉄壁。ドリブルでの勝負にも、全く負けていない。自らのミスが決勝失点を導いてしまったが、足を痛めながらも最後まで勇戦した姿を、褒め称えたい。

[個人的好印象選手(相手方)]
 森本貴幸(中3):巧くて強くてデカい、河田兄@スタムダンクのような選手。攻撃の要にて、全て。
 笠松亮太(中3):奔放な攻撃を支えたソリッドなDF。高さに加え、抜群のカバースピードも有する。



2003年12月25日(木) Jユース杯 決勝トーナメント ジェフユナイテッド市原戦

03年12月25日13:30開始 長居第2陸上競技場
 第11回Jユースカップ2003 Jリーグユース選手権大会 決勝トーナメント準決勝
 対 ジェフユナイテッド市原ユース ※45分ハーフ
 天候:晴

▼布陣
−−−−−−阿部− 篠田悠 −−−−−

− 鈴木真 −−−−−−−−−大瀧−−

−−−−− 山本真 −枝村−−−−−−

− 高野美 −高柳−−石垣−−森安−−

−−−−−−− 山本海 −−−−−−−

控え:前田、杉山雄、篠田大、上埜、岡村、柴田、谷野
交代:後半15分:篠田悠輔→杉山雄也(そのままFWに)

ジェフユナイテッド市原ユース:

−−−−−−−−菊池−−−−−−−−

−−−−−−川淵−−伊藤−−−−−−

−−小西−−半田−−八角−−小泉−−

−−−− 林 −−秋葉−−竹田−−−−

−−−−−−−−塚原−−−−−−−−

控え:瀧本、中山、岩山、尾野、本田、矢代、務臺
交代:後半28分:小泉→岩山


▼試合展開

 築館監督はクラブ選手権の浦和戦、村越と真司が出場停止と怪我で出られなくなると、一挙に1年生5人を先発で起用するという大胆策を採ったが、結果として賭けは失敗に終わり、0−4の完敗を喫している。そうした経緯もあって、注目されたメンバーだが、大方の予想通り、出場停止の村越に代わって石垣が先発し、代わりのDFとして杉山雄也がベンチに入るだけに留まった。とはいえ、篠田悠輔や高野美臣の台頭もあって、先発した1年生は4人を数える。だが、普通に見えたメンバーに、大方の予想を裏切る罠が仕掛けられてることを知る由もなかった。
 一方の市原は、不動のメンバー。チーム得点王、鈴木良が1回戦で怪我で離脱してしまったが、彼の外れた2回戦でも、ヴェルディ相手に4−1の完勝を遂げ、不安を払拭している。市原とは、チビッ子のテクニックを活かすサッカーという点で共通するところが多く、共に長所を消し合って、中盤の潰し合いになることが多い。昨年冬の対決では、前半16分に喫したミスによる失点により、潰しに専念した市原に、主導権を奪われる結果となった。しかし、175cmを越える選手が7人を数える清水に、3バック&マンマークによる堅守速攻で勝ち上がってきた市原、今回は若干が違いそうな気配である。
 J's Goal の事前レビューは、こちら


(今年2度目の準決勝に臨むイレブン。堂々と中央で腕を組むブンちゃんに、3年間の(特に精神面の)成長の跡が見られる)


[前半]
 立ち上がりは清水。開始0分に、枝村のパスを受けた大瀧が中盤のスペースを突いてドリブルミドルを放つと、3分には真希の突破からCKの好機、そして6分には得意の対角線フィードからの展開が飛び出す。大きく右に張った大瀧が受けて戻すと、そのスペースに入ってきた森安が右クロス。DFのクリアを、PAの手前にいた真希が拾ってミドルは、殆ど弾道の浮かない強シュートが、ゴール左ポストを舐めるように外れた。直後には、GK海人のロングキックを受けた枝村が、真希のヒールでのリターンからワンツーで抜け出し、早くも3本目のシュートを放っている。
 だが、守備布陣を布く市原としても、中盤での清水の優勢は、覚悟の上だったろう。市原は竹田を阿部に、林を悠輔に厳重マークを付けたが、更に念入りなことに秋葉をスイーパーとして後方のスペースを消し、最も危険な阿部の裏への飛び出しを、未然に防いでいた。両翼の小泉・小西の位置も低く、5−2−3といった内容で、攻撃時は素早く前線の3人に当てる、縦に速いソリッドな戦術を採用。9分と12分には、川淵が単独突破からDFの寄せに構わず、強引にミドルを放っている。13分、菊池が高柳とロングボールの競り合いに勝って、伊藤が裏に抜け出した場面は、美臣の素早いカバーに防がれるが、そこからの右CKでGK海人がカブり、ファーの秋葉が頭で合わせた(枠上)。
 清水は中盤の数的有利のため、市原は展開の速さのため、攻撃ゾーンの手前まではボールを運べるのだが、そこからは相手の守備の枚数が整っていて、打開できない。審判の神経質な笛もあって、双方、オフェンスファウルが激増。特に清水は、この試合、一つもDFゾーンでのファウルを犯さずに、15回ものFKを与えている。個人能力で上回る清水が、21分に真希の突破から枝村、25分にGK海人のロングキックに悠輔が潰れて阿部と、ミドルで狙った場面はあったが、あれよあれよと時計は30分を回っていった。

 しかし、34分、阿部の突破から右CKを掴んだ清水は、大瀧のキックにニアで悠輔が僅かに頭ですらせ、GK塚原が逆を取られる決定機。ゴールファーに控えていたDFが掻き出すと、PA外で拾ってドリブルでDFの網を切り裂いた枝村だが、GK塚原の素早い飛び出しに阻まれる。更に37分、森安の右スローインを大瀧が戻し、暫く持たされていた森安が、突如としてPA内に小さく、鋭く、横パスを送る。そこに、いつの間にか流れてきた悠輔が、刹那の足の振りから、角度10度シュート。緩慢な展開からは信じられないほどの苛烈なボールだったが、GK塚原が辛くも弾いた。市原は、秋葉がより危険な阿部の飛び出しをケアしている時間が長く、一方で悠輔はちょこまか動くものの、林が1対1で殆ど上回っており、その油断を突かれたものであった。消えてるように見えても、悠輔は一瞬の仕事ができる、正しくストライカーである。
 何はともあれ、塚原の機敏な動きで凌いだ市原は41分、ロングボールにGK海人と石垣の呼吸が合わず、ゴール方向への危険なクリアとなって、期せずして右CKを得る。小西が蹴ったボールはDFが跳ね返したが、小泉が拾って右アーリークロス。それがPA内に残っていた市原選手の足下に入るが、反転して正にシュートを放とうかというところで、清水のクリアが間に合った。その後、44分に大瀧がスローイングで戻したボールを、森安が右45度からドリブルミドルを放つ場面があったが、GK塚原が際どくCKに逃れる。結局、前半はスコアレスのまま、試合は折り返しに。清水優勢、は確かだが、市原から見れば、前半スコアレスで折り返したのは、事前の計算通りというところだろう。…って、大分戦と同じ展開じゃん。勝負は後半へ。

市原        清水エスパルスユース
4(1) シュート 10(4) ×大瀧、×真希、×枝村、×枝村、○阿部、○悠輔
               ○悠輔、○森安
2(1) 右クロス 4(1) ×森安、○森安、×大瀧、×森安
3(0) 左クロス 3(0) ×美臣、×美臣、×真司
3(2) 右側CK 2(1) ○大瀧、×大瀧
0(0) 左側CK 1(1) ○枝村
6(−)  犯OS  0(−)
10(2) ファウル 10(0) ・阿部、・悠輔、・悠輔、・阿部、・真希。・悠輔、・阿部、・悠輔
               ・悠輔、・真司

 ◎は得点/得点に繋がったもの。○は枠内/味方に繋がったもの。
 ×は枠外/味方に繋がらなかったもの/DFゾーン(フィールドの自陣側1/3)での反則。
 ( )内は◎と○の総計、ファウルのみ×の総計

[後半]
 開始2分、市原のロングボールから伊藤が単独、裏を取るが、GK海人がお株の素早い飛び出しで、それを未然に防いだ。に、思われたが、ペナルティーラインの確認に戸惑ったのか、188cmの海人とのクロスプレーに競り勝ったのは、なんと168cmの伊藤の方。放ったシュートが、転々と空っぽのゴールに引き寄せられると、しかし、高柳がカバーし、何とか失点を逃れる。


(被決定機後の5分、真司のクロスがカットされて得た左CK。枝村のキックに石垣が合わせたが、ヘッドは枠上に。ペースを取り戻せない)

 けれども、市原はこれで立ち上がりのペースを掴む。前半の終盤にも、裏への狙いを強めていた市原だが、その時は清水のオフサイドトラップに、際どく阻まれていた。それが、ミスで動揺したのか、清水は集中力を乱して、全くオフサイドを奪えなくなる。攻める市原だが、それでもチャンスメイクの時点でアウトサイドの選手が森安・美臣の清水SBを突破することができず、徐々に清水が流れを取り戻していった。13分、自陣右サイドに流れた清水のクリアミスを市原・川淵が追い掛けるが、真希がそれをカバー、まず川淵を背中でスクリーンする。そして、ゴールライン手前で体重を川淵に預けながら体を右に開き、ロブで森安へ。が、ボールが渡ったのは、市原の左WBの小西の足下。想像外の格好でのターンオーバーにマークに付くのが遅れ、フリーで上げた左クロスを、高柳の背後でファーの菊池が頭で合わせる。振られたGK海人も間に合わず、思わぬ形で市原が先制する。0−1。

 反撃したい清水だが、4人+1人(秋葉)で防ぐ市原DFを、どうしても突破できない。清水SBと市原WBとの対決では、清水側が鉄壁を築いており、そのWBの裏を左右MFが狙いたいところだが、突破口となるべき真司が絶不調。J's Goal では「「1人で何とかしてください」という状況でしかボールを受けられな」かったとあるが、和田・太田・高木純・日高と「一人で何とかできる」サイドプレイヤーを育ててきたのが、清水エスパルスユースなのである。一方、大瀧の場合、そもそもタイプでないのもあるが、左足に持ち替えて後ろに切り返す場面が多く、縦への突破が皆無。FW2人は孤立していた。
 ここで築館監督は、185cmの長身、杉山雄也を用意。交代するのは、篠田悠輔。筆者の周囲では、悠輔のゴール前のセンスは、膠着状態を破るには不可欠ではないか、との疑問の声も多かったが、筆者は「雄也を右SBに入れて、森安をボランチ、真希か真司をFWに入れるのだろう」と、交代の趣旨を説明。事実、東海プリンスの静学戦では、ボランチの位置から森安がミドルで勝ち越し弾を決めている。ところが…。
 雄也の入ったのは、そのまま悠輔の位置、FW。雄也がエスパルスでFWをやるのは、少なくとも公式戦では、記憶にない。確かに阿部の地上戦の速さを活かすため、ポストプレーヤーと組ますのは悪くないアイデアであり、市原DFが高さに欠けるのも事実である。だが、この試合の問題は、そもそも空中戦で勝負できるボールが入っていないこと。戦術の経験値的にも、清水の選手達は単純な放り込みに慣れていない。
 結局、清水の選手達は、特にプレースタイルを変えることはなく、雄也のポストが目立つ場面は殆どなかった。交代の意図が今ひとつ活かされてない状態なわけだが、それでも好機を創り出すのだから、さすがである。20分、大瀧のスローインを裏に抜けながら受けた枝村が、ゴールライン上のドリブルで一人抜いて、右クロス。DFに弾かれたのを、阿部が反転シュートで狙うが、枠を捉えない。21分、大瀧の右クロスをクリアされ、森安のスローイン。受けた大瀧、ここまで悉く左足に持ち替えてたのだが、この場面は逆に左足インサイドフックで縦に抉り、遂に右足での右クロス。大瀧にシンクロした阿部が、ファーに素早く飛び込んで頭で反らせたが、GK塚本も横っ飛びでディフレクトし、CKに逃れる。22分、枝村の左CKはニアでDFがクリアしたが、PA外で拾ったのは真希。詰め寄るDFを一人、弾むようなサイドステップで外すと、PA手前中央から弾丸ミドルが一直線に放たれた。ブラインドになったか、GK塚本の反応は完全に狂い、ゴール右に突き刺さる。1−1。

 想定したパワープレーからではなかったとはいえ同点に追いつき、交代の“目的”は果たした清水。次の動きが注目されたが、雄也はそのままFWを務め、特攻状態が継続される。結果論ではあるが、同点後にFWの放ったシュートが1本もなかったことを考えると、普段のサッカーでどこまでできるか、試してみるべきだったと思うが…。清水は、悠輔が抜けたため、2トップが共に前線に張る時間が長くなり、トップ下(バイタルエリア)から中盤の底までの広大なエリアを両ボランチ(+大瀧)だけで見ることになった。元より市原は、5−2−3と言うべき、堅守速攻体勢で、中盤中央は薄い。そのため、中盤のスペースがぽっかり空いて、互いに簡単にボールは前線まで運べるのだが、逆に最終ラインが揃っていて、それを崩せなかった。
 同点後は暫く、市原が反発する時間帯となったが、35Mを越える位置からのミドル2本と、八角のパスから半田がトラップミスにめげず、2段シュートを放った程度。


(後半27分、八角の蹴った市原・左CKのチャンスも、ニアで石垣?が跳ね返す)

 すると、30分、森安?の対角線フィードから真司が抜け出し、クロスに飛び込んだ枝村がDF2枚のブロックを割り込むようにボレーを狙うが、コースを外れる。続けて34分、大瀧の低い右クロスに林が空振りし、ゴールエリア内の雄也に届くが、スイーパーの秋葉がトラップが乱れた隙に、鋭いスライディングでクリア。一方の市原は40分、伊藤の左スローインから、半田が左クロスを送り込むと、川淵がDFに体を寄せられながら、踏ん張って右足を合わせたがが、威力なく、GK海人。市原の好機はそのぐらいだったが、清水も一押しが足りない。
 ならばと、42分、枝村が阿部とのワンツーで30Mミドルを放つ(GKキャッチ)と、続けざまに阿部が突破口となって右サイドを突き崩し、クロスを入れるがファーで小泉がクリア。それを拾った枝村、慌てて距離を詰める林を華麗かつ痛快な切り返しで翻弄し、中央に移動しながら試合を決める15Mミドルを放った。だが、GK塚原が自らの瞬発力を全開にし、CKにディフレクトする。最後に頼れる枝村だが、2分強のロスタイムにも両者決め手なく、遂に試合終了の笛。大分戦に引き続き、PKで勝負を決めることとなった。

市原        清水エスパルスユース
7(4) シュート 8(5) ×石垣、○枝村、×阿部、○阿部、◎真希、×枝村、○枝村、○枝村
4(0) 右クロス 8(1) ×大瀧、×枝村、×大瀧、○大瀧、×大瀧、×大瀧、×大瀧、×阿部
7(2) 左クロス 2(0) ×阿部、×美臣
2(0) 右側CK 1(0) ×大瀧
0(0) 左側CK 4(2) ○枝村、×枝村、×枝村、○枝村
4(−)  犯OS  3(−) ・阿部、・悠輔、・阿部
1(0) ファウル 5(0) ・大瀧、・阿部、・悠輔、・雄也、・阿部

[PK戦]

(完全にGKの裏を突いた枝村のキックは、僅かに枠の右へと…)

先攻・市原:○八角、○半田、○小西、○伊藤、○川淵 | ○秋葉、○菊池、○竹田、○林
後攻・清水:○森安、○真希、○高柳、○阿部、○大瀧 | ○雄也、○真司、○石垣、×枝村


(深々と頭を下げる、2003年清水エスパルスユース主将、大瀧義史。その右から、海人、森安、阿部、枝村、雄也、真希、高柳、真司、石垣、美臣)


▼試合結果

清水エスパルスユース 1−1 ジェフユナイテッド市原ユース
      (PK戦 8−9)
 得点:後半13分:市原・菊池匡樹(小西雄士・左クロス)
    後半22分:清水・山本真希
 警告:前半39分:清水・鈴木真司(ラフプレイ)


▼選手寸評

[私撰MVP]
●高野美臣 90分間出場:クロス3(左3)
 大分戦の汚名を返上する盤石ぶり。対面の小泉との1対1を食い止めただけでなく、高柳のチェックに対応し、盛んに中央へカバーリングに入った。焦らずに、リスクを考えた守備ができていた。

[私撰MIP]
●森安洋文 90分間出場:シュート1(枠内1)、クロス3(右3、成功1)
 小西に対してフィジカルで完全に上回り、完膚無きまでに押し潰した。攻撃の第一司令塔の役割も果たしたが、ボールを持った場面で焦りと色気が出たのか、手段と目的が曖昧だったのが残念。

●山本真希 90分間出場:シュート2(枠内1、得点1)
 失点に繋がったミスが評価を一段階下げたが、同点弾は見るものに強烈な印象を残した。細かいパスミスが散見されるも、相変わらず攻守に精力的な運動量は、新人(新人だったのだ!)離れしている。

[個人的好印象選手(相手方)]
 竹田忠嗣(2年):阿部のマークを全う。ポストはともかく、裏への飛び出しは秋葉と2人で封印した。
 塚原晃太郎(3年):瞬発力に支えられた素晴らしいシュートへの反応で、ミドルを次々に叩き落とす。



2003年12月24日(水) JY: 高円宮杯 全国大会 FC東京戦

03年12月24日14:00開始 新横浜国際総合競技場
 高円宮杯 第15回全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会 決勝トーナメント1回戦
 対 FC東京U-15 ※35分ハーフ
 天候:晴、観客数:488人

▼布陣
−−−−−−町田−−長沢−−−−−−

− 杉山和 −−−−−−−−−小泉−−

−−−−−−神田−−池田−−−−−−

− 桑原卓 −佐野−−岩本−−渥美−−

−−−−−−− 山崎晃 −−−−−−−

控え:吉田、桑原彬、田村、小出、滝戸、望月雄、山崎竜
交代:後半18分:小泉→田村(そのまま右MFに)

FC東京U-15:

−−−−−−蓮見−−蛯原−−−−−−

−−−−−−−−萩原−−−−−−−−

−−−−寺島−−中野−−稲葉−−−−

−−森村−−近藤−−高橋−−椋原−−

−−−−−−−−権田−−−−−−−−

交代:後半00分:蓮見→山同、後半20分:蛯原→岡田、後半30分:寺島→大竹
   後半35分:山同→吉本


▼試合展開

 中学生年代における静岡−東京の対決は、南葛中−東邦中以来の伝統を持つ一戦である(笑)。この学年の清水エスパルスとFC東京の対決としては、ナイキプレミアカップが初顔合わせとなった。その試合は0−1での惜敗ではあったが、清水は「展開が遅く、バリエーションに欠ける。最後はロングボールで放り込むだけ」と、内容面で酷評を受けることになった。その後、冬のジュビロカップでも一度対決し、そこでも0−1で敗北。そして、F東京のこの学年は、その後、公式戦では正規の時間内では一度も負けてないという(未確認)、伝説的なチームに成長している。夏のクラブ選手権では、再戦の一つ前(準決勝)で敗退した清水、遂に待ち望んだリベンジの機会が到来した。
 清水は、予選リーグで温存されていた佐野・池田、札幌戦で出場停止を消化した岩本が復帰し、ベストメンバーを組んだ。一方のF東京は、主将であり、U-15代表の主軸の吉本が怪我のため、漸くベンチに復帰したところ。名古屋の吉田に続き、長沢とこの学年を代表するCBとの対決は、先送りとなった。だが、このエリートチームで2年生ながら先発を掴んだ、杉山和と椋原の対決は、注目だろう。
 しかし、1年半前のナイキカップに比べ、清水は4名、F東京は3名の選手が、スタメンを入れ替わっている。両チームの層の厚さ、如何ばかりか。

[前半]
 寸評:前日とは見違える動きを見せる清水が、試合の機先を制す。サイド攻撃という決まった形のある清水は、両ボランチの展開力と長沢の確かなポストを起点として、次々と好機を創り出す。特に右サイド、小泉のキレは、歴戦のF東京DFすら振り回し、渥美も積極的な動きでそれを支援した。だが、トレスボランチ、特に体を張る稲葉と巧みな足技でプレスをいなす中野を軸に、次第にF東京も反攻。逆に清水の右サイドを、森村が狙うようになる。前半の後半からは、ペースは完全に拮抗し、PAの周囲で激しい潰し合いが展開された。だが、中学生年代とは思えないほどレベルの高い試合は、例えゴール前の場面は少なくとも、観客を飽きさせることはなかった。

FC東京      清水エスパルス
3(1) シュート 7(3) ×長沢、○長沢、○桑卓、○町田、×池田、×池田、×小泉
3(2) 右クロス 8(2) ×小泉、×小泉、○渥美、×渥美、○小泉、×小泉、×渥美、×小泉
4(0) 左クロス 5(1) ○町田、×佐野、×杉和、×池田、×桑卓
3(1) 右側CK 1(0) ×池田
0(0) 左側CK 2(0) ×池田、×池田
1(−)  犯OS  0(−)
8(1) ファウル 6(1) ・杉和、×渥美、・杉和、・長沢、・町田、・渥美

[後半]

(後半開始早々、右サイドからの攻撃をクリアされるが、セカンドボールを競り合う池田。攻撃の枚数が、この試合に対する意気込みを物語る。CBの岩本も、ラインを相手陣内にまで押し上げた)


(25分、池田の左CKを岩本・田村がニアで潰れながら中央に流したが、味方選手に繋がる前にクリアされる)

 31分:セカンドボールを右MFの田村が中央に絞って拾うと、体を寄せられながらも反転して、左へ展開。杉山和が加速しながら受けるが、F東京(椋原?)が進路を塞いでドリブルをブロックする。が、そこに杉山和と連動して動き出していた桑原卓が詰め寄り、勢いのままに再奪取。すぐさま左に叩くと、動き直していた杉山和が、フリーで裏に抜け、左サイドを十分に抉った。満を持して上げたマイナスの高速クロスに、我先にと駆け込む町田・長沢・池田。味方との競走に勝った町田が、速度を緩めてニアで右足をアウトで合わせ、遂に均衡破れる。1−0。


(チーム全員で喜びを爆発させた清水の選手が、急ぎ自陣に戻る。喜びの輪に参加できないGKの山崎晃が、少し可哀想だ(苦笑))

 寸評:前半の後半以上に、拮抗した内容。体力の消耗に伴い、徐々に中盤にスペースが空き出すのだが、それ以上に両軍の集中力が上回り、清水の場合、5分の杉山和のシュート以降、26分間も次のシュートが生まれなかった。互いに攻撃の起点を作れない中、清水は田村の投入と桑原卓の攻撃参加によって、なおもサイド攻撃に拘り、一方のF東京は、前線の豊富な駒を入れ替えて、打開を図る。すると、31分、清水はターンオーバーから凄まじい展開の速さと厚みにおいて、遂にF東京の牙城を崩した。F東京は最後、怪我に泣いた主将の吉本を前線に入れるが、むしろ焦りから清水にカウンターを許してしまい、一歩及ばず。激戦を制したのは、清水の判断の速さだった。
 ペリマンの言葉だったか、「ダンスは一人では踊れない」というものがある。素晴らしい試合を見せるには、素晴らしい相手(ペア)が必要だ、という意味だ。これだけの試合が見られたのも、F東京が素晴らしいチームだったから。次のヴェルディも強敵だが、F東京のためにも、必ず頂点に立ってもらいたい。

FC東京      清水エスパルス
5(1) シュート 4(1) ×長沢、×杉和、◎町田、×田村
3(0) 右クロス 3(1) ○渥美、×渥美、×田村
2(0) 左クロス 2(2) ○杉和、◎杉和
1(1) 右側CK 1(0) ×池田
1(0) 左側CK 1(0) ×池田
4(−)  犯OS  3(−) ・町田、・町田、・長沢
5(0) ファウル 6(1) ・神田、・杉和、・小泉、×池田、・桑卓、・渥美


▼試合結果

清水エスパルスジュニアユース 1−0 FC東京U-15
 得点:後半31分:清水 ・町田朋弥(杉山和毅・左クロス)
 警告:後半16分:清水 ・小泉慶治(ラフプレイ)
    後半29分:F東京・寺島尚彦(ラフプレイ)


▼選手寸評

[私撰MVP]
●佐野克彦 70分間出場:クロス1(左1)
 空中戦の強さは言うに及ばず、高い身体能力と巧みな体捌きで、F東京の地上突破を次々と潰す。岩本の支援を受け、正に鉄壁。桑原卓を自由に攻めさせながら、その左サイドのカバーも実にお見事だった。

[私撰MIP]
●杉山和毅 70分間出場:アシスト1、シュート1、クロス3(左3、成功2)
 荒削りながら、中2にして既に、ドリブル突破からのクロスの自分の形を築いている選手。動き出しの修正も怠ることなく、微妙に変化を付ける桑原卓のキックの真価を、十分に引き出した。

●池田康彦 70分間出場:シュート2、クロス1(左1)
 燻し銀。F東京の巧緻なトップ下に正対し、判断と運動量で起点を作らせなかった。キープと展開の使い分けにも長け、同じく技術と運動量を兼備する神田とのコンビは、安定感があった。

[個人的好印象選手(相手方)]
 中野遼太郎(中3):高いキープ力で清水序盤の攻勢を徐々に沈静化、しぶとく反攻の機会を創出した。
 権田修一(中3):圧倒的な身体能力で清水のクロスを次々と撃沈。正確なキックで攻撃の起点にも。

 ここの挙げなかった選手でも、非常にレベルの高い試合ながら、そのレベルに相応しくない選手は全くいなかった。唯一、気持ちが空回りしてるかに思えた町田だが、その彼が決勝点を奪うのだから、分からないものである。同時に、身体的には未完成の選手が多く、両軍の選手の将来を、否応なく期待してしまう試合だった。

 なお、FC東京サポのFCサンタさんが、素晴らしい観戦記を書かれてますので、合わせてどうぞ。



2003年12月23日(火) JY: 高円宮杯 全国大会 コンサドーレ札幌戦

03年12月23日12:00開始 茨城県立カシマサッカースタジアム
 高円宮杯 第15回全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会
 対 コンサドーレ札幌U-15 ※35分ハーフ
 天候:晴、観客数:390人

▼布陣
−−−−−−町田− 山崎竜 −−−−−

−−小出−−−−−−−−−−小泉−−

−−−−−−長沢−−神田−−−−−−

− 桑原卓 −佐野−−渥美− 桑原彬 −

−−−−−−− 山崎晃 −−−−−−−

控え:吉田、小関、池田、田村、杉山和、滝戸、望月雄
交代:後半09分:小出 →杉山和(そのまま左MFに)
   後半15分:山崎竜→滝戸 (そのままFWに)
   後半18分:神田 →池田 (そのままボランチに)
   後半27分:小泉 →田村 (そのまま右MFに)

コンサドーレ札幌U-15

−−−−−−青木−−大西−−−−−−

−−−−長沼−− 岡 −−谷山−−−−

−−−−−−−−大野−−−−−−−−

−−久松−−廣中−−村松−−安藤−−

−−−−−−−−塚本−−−−−−−−

控え:佐々木、高橋、山本、藤井、佐藤、武田、福岡
交代:後半20分:大西→福岡、後半22分:谷山→武田、後半28分:久松→高橋
   後半34分:長沼・青木→山本・佐藤


▼試合展開

 この試合、清水は既に予選通過を決定済み、ドロー以上で首位通過となる。この時点で2位の札幌は、ドロー以上で予選通過が決まる。振り返ると、清水の方にどこか予選調和である、ドローを狙う気持ちがあったように思えるのだ。そうした気持ちになった理由があるとすれば、やはり主将の岩本の出場停止が大きいだろう。岩本不在時はゲームキャプテンを務める池田(ナイキカップの時の主将)も、ベンチに温存。卓越したリーダーシップを有する2人の欠場は、目に見えないところで大きく響いた。この試合のゲームキャプテンは、長沢。また、このところ好調の杉山和に代わり、久々に小出が先発を飾っている。
 一方の札幌。見たのは、緒戦のびんご戦だけだが、その時はボックスで組んでいた中盤を、ダイヤモンドに変えている。その時、FWを務めていた岡をトップ下に配置したのを見る通り、攻撃的な布陣と考えて良いだろう。このあたり、試合に臨む姿勢に、温度差を感じたが…、さて。

[前半]

(前半27分に掴んだ右CKも、小出のキックは、札幌(6)大野らに跳ね返される。山崎竜がリバウンドを追うも、チャンスに繋がらず)

 寸評:序盤、受けて立った清水に対し、サポの声援に応えた札幌が機先を制す。目が覚めない、といった様相の清水は、守りの意識のためか、岩本不在のためか、最終ラインが普段よりもかなり低く、大きく空いたバイタルエリアを岡に有効に利用され、最短距離での攻撃を赦すことになった。それでも、高いレベルでチェックとカバーの役割分担のできている最終ラインは、GK山崎晃の好守にも助けられ、無失点で折り返す。攻撃では、自然と得意のサイド攻撃の出発点が低くなり、勝負するエリアに届く前に潰される場面が目に付いた。

札幌U-15      清水エスパルス
6(2) シュート 1(0) ×長沢
4(1) 右クロス 1(0) ×小泉
1(1) 左クロス 1(0) ×桑卓
0(0) 右側CK 1(0) ×小出
3(0) 左側CK 0(0)
3(−)  犯OS  0(−)
3(0) ファウル 4(1) ×小出、・小泉、・桑卓、・小泉

[後半]
 01分:札幌、久松が桑原彬のチェックをターンして抜きに掛かったところ、後方から小泉がカバーに入ったが、これがファウルとなり、PAの左から札幌がFKの好機を掴む。蹴るのは、右SBの安藤。意表を突く低く速いグランダーのボールを、ニアで岡が股の間にスルー。これに惑わされた清水DFがクリアできずに見送ると、ファーの長沢の後ろから長沼が駆け込み、インサイドで合わせて、札幌が先制する。0−1。


(札幌のトリックセットプレー、股抜きスルーの瞬間)

 07分:安藤の左CK。蹴ったボールはミスキックなのか、殆ど曲がらず、中途半端にゴールラインの寸前を平行移動する。これはGK山崎晃が掴みに行くが、微妙な回転が掛かっていたのか、痛恨の後逸。嘲笑うようにネットに吸い込まれ、札幌が大きな追加点を得る。0−2。

 寸評:立ち上がり、落ち着かない間にトリックプレーで失点すると、不運な形で立て続けに2失点目。これで漸く目の覚めた清水は、杉山和の投入も起爆剤となって、高い位置からの縦に速い波状攻撃を繰り広げるようになるが、PA内を固める札幌DFに跳ね返され続けた。守備では、ダブルボランチが共に前掛かりになってしまったことで、岡に自由な活躍の場を与えることになる。それでも、前半と後半の内容の違いは、このチームは受けては駄目、リスクを負って前掛かりに攻めてこそ、攻守に真価を発揮できることを、再認識させられるものであった。

札幌U-15      清水エスパルス
9(5) シュート 6(2) ○桑彬、×山竜、×長沢、×町田、○池田、×池田
0(0) 右クロス 4(0) ×桑彬、×小泉、×滝戸、×田村
1(0) 左クロス 10(1) ×桑卓、×小出、×桑卓、○杉和、×杉和、×池田、×杉和、×長沢
               ×杉和、×杉和
0(0) 右側CK 1(0) ×小出
1(1) 左側CK 2(0) ×小出、×小出
1(−)  犯OS  2(−) ・杉和、・杉和
8(1) ファウル 5(2) ×小泉、・町田、×桑彬、・町田、・長沢


(試合後、観客席に頭を下げる選手たち)


▼試合結果

清水エスパルスジュニアユース 0−2 コンサドーレ札幌U-15
 得点:後半01分:札幌・長沼恭平(安藤謙佑)
    後半07分:札幌・安藤謙佑


▼選手寸評

[私撰MVP]
●桑原卓哉 70分出場 クロス4(左4)
 競り合いの強さと果敢なドリブル突破で直線的な動きを見つつ、微妙に変化させた前方フィードで相手に動きを絞らせなかった。苦手としていた地上戦における守備の1対1において、進境著しい。

[私撰MIP]
●佐野克彦 70分出場
 個の競り合いとカバーリングの広さの双方で、ほぼ完璧な守備内容。身体能力と運動能力の双方に恵まれ、清水では珍しく、受けて立っても突進する相手を確実に潰すことができる。クリアの精度は課題。

●桑原彬 70分出場 シュート1(枠内1)、クロス1(右1)
 時折弱さを見せる強引な突破にも、綻びを見せなかった。また、この日はカバーリングが冴え、CBの裏からその前のバイタルエリアまで、広く繕った。そのまま中央で第三の司令塔として、ビルドアップも。

[個人的好印象選手(相手方)]
 岡揚一(中3):自らのミドルに加え、次々に繰り出すスルーパスに非凡なセンスを示す。キレキレ。
 安藤謙佑(中3):緩急自在のキックで1ゴール1アシスト。清水の攻撃の鍵、小出を完全に封印した。


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03年12月23日14:00開始 茨城県立カシマサッカースタジアム
 高円宮杯 第15回全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会
 FC東京U-15 対 京都パープルサンガジュニアユース ※35分ハーフ
 天候:晴、観客数:352人

▼布陣
FC東京U-15               京都パープルサンガジュニアユース
−−−−−−山同−−蛯原−−−−−−   −−−−−− 森 −−満生−−−−−−
−−−−−−−−萩原−−−−−−−−   −−−−−−−−恒松−−−−−−−−
−−−−寺島−−中野−−稲葉−−−−   −−鍬田− 吉田拓 −三戸−−北村−−
−−森村−−近藤−−高橋−−椋原−−   −−− 吉田龍 −北川−−内田−−−−
−−−−−−−−権田−−−−−−−−   −−−−−−−−寺石−−−−−−−−
交代:後半00分:山同→蓮見        交代:前半22分:森 →寺田、恒松→安田
   後半26分:萩原→城間           後半00分:寺田→恒松、満生→金沢
   後半32分:寺島→大竹           後半08分:吉田拓→森
   後半34分:蛯原→岡田           後半10分:安田→中島
                        後半18分:鍬田→寺田
                        後半22分:北川→蒲生
                        後半27分:北村→旭
                        後半31分:三戸→中村


▼試合展開

 後半05分:F東京、森村の左CKは京都DFが跳ね返したが、F東京の二次攻撃。京都は果敢にラインを上げるが、下がってクリアを自ら拾った森村へのプレッシャーが、あまりに遅かった。こうなると、高いDFラインは、むしろ不必要に相手に利用されるスペースを空けているだけ。森村がロブのように高く上げたボールに、ラインの駆け引きをしていた高橋が駆け込むと、落ちてくるボールをボレーで合わせる。難しいシュートだったが、見事な制御でニアに蹴り込み、遂にF東京が均衡を破る。1−0。

 後半32分:F東京、中盤中央ゴール40M程でFKを得る。が、京都は最終ラインの3人だけをPA内に残し、F東京の方が枚数が多いという、特攻状態。直接、PA内に放り込んだボールは、稲葉が合わせきれず、吉田龍のカバーが間に合う。が、クリアを空振り。体勢を崩した吉田龍を尻目に、稲葉が今度こそ強シュートで合わせて、試合を決める「次の1点」は、F東京が奪った。

 試合寸評:試合全体を見れば、個人能力の総和の差で圧倒的に上回る、F東京の優勢は否めない。特に2トップ+トップ下の3人は自由自在、むしろ自由自在に過ぎた感すらある。だが、京都は人に強い内田・吉田龍の2CBにスイーパーを置くシステムで耐え凌ぎつつ、1本のロングパスから恒松を軸に、何度も跳ね返されようが、粘り強くカウンターのチャンスを狙い続けた。ベンチも自由交代というルールを存分に活かし、失点後は極端に前線に人数を集める、放胆な采配を示した。最終的にはミスから2失点目を食らったが、その勇戦は称すべきかな。

FC東京           京都パープルサンガ
8(5)/8(6) シュート 3(1)/7(4)
3(0)/2(0) 右クロス 1(0)/3(0)
5(1)/5(1) 左クロス 2(1)/1(1)
0(0)/0(0) 右側CK 0(0)/2(0)
2(1)/4(1) 左側CK 0(0)/1(0)
1(−)/1(−)  犯OS  0(−)/0(−)
2(1)/3(1) ファウル 3(0)/2(1)
 ※左が前半/右が後半、( )内は枠内SH、味方に繋がった数、DFゾーン(フィールドの自陣側1/3)での反則


▼試合結果

FC東京U-15 2−0 京都パープルサンガジュニアユース
 得点:後半05分:東京・高橋太希(森村昂太・スルーパス)
    後半32分:東京・稲葉基希
 警告:後半12分:東京・山同亮 (ラフプレイ)


▼選手寸評

[個人的好印象選手]
 高橋太希(東京・中3):貴重な先制点を挙げた一方、守備では機動力と体の使い方の巧さを示した。
 森村昂太(東京・中3):キックの豊富さと動き出しの精力さで、F東京の攻撃に変化を付けた。
 内田匡哉(京都・中3):ストッパーとしての役割を全う。対地対空共に、1対1では無敗を誇った。
 恒松清隆(京都・中3):突破とポストの双方で起点に。キック精度で唯一、F東京に対抗できた存在。



2003年12月21日(日) Jユース杯 決勝トーナメント 大分トリニータ戦

03年12月21日13:30開始 長居第2陸上競技場
 第11回Jユースカップ2003 Jリーグユース選手権大会 決勝トーナメント2回戦
 対 大分トリニータU-18 ※45分ハーフ
 天候:晴

▼布陣
−−−−−−阿部− 篠田悠 −−−−−

− 鈴木真 −−−−−−−−−大瀧−−

−−−−− 山本真 −枝村−−−−−−

− 高野美 −高柳−−村越−−森安−−

−−−−−−− 山本海 −−−−−−−

控え:前田、石垣、篠田大、上埜、岡村、柴田、谷野
交代:後半36分:高野美臣→柴田和也(真司を左SB、大瀧を左MF、柴田を右MFへ)
   後半44分:篠田悠輔→石垣勝矢(阿部の1トップ、石垣をCBへ)

大分トリニータU-18:

−−−−−−− 河野貴 −−−−−−−

−−−−−−河内−−石田−−−−−−

−−−−三好−−吉良−−福元−−−−

−−尾崎−− 東 −−西澤−−中川−−

−−−−−−−−西川−−−−−−−−

交代:前半31分:河野貴→島田、後半00分:島田→小手川、後半07分:石田→甲斐


▼試合展開

 夏の再戦となった、大分戦。前回は痛み分けに終わったが、今回は記録上はともかく、勝ち残るのは1チームである。その夏の対戦は、皇甫官(ファンボ・カン)氏の果敢な指揮に振り回された試合だった。1−0という点差ながら、圧倒的な攻勢で前半を折り返した清水は後半、CBの吉良を1トップにポジションチェンジする仰天采配に振り回され、石田・小手川・甲斐らの愚直なまでの飛び出しが、最後はPKという形となり、追いつかれたのだった。
 清水のスタメンは、G大阪戦と変わらず。夏から比べると色々と変わったメンバーだが、大分はそれ以上に大きく変わっている。特に、FWかCBかと注目された吉良は今回、中盤の底での起用、相変わらず恐るべし、皇甫官。とはいえ、戦う選手が同じである以上、スタイルがそう簡単に変わるものではない。自分の形を出せた方が、勝利を掴むことになるだろう。

[前半]
 立ち上がりは大分。開始1分、石田の右クロスを河野が頭で合わせ、オープニングシュートを記録する。受けて立った清水は、若干よろめきながらも食い止め、徐々に反撃開始。6分、森安が右クロスのクリアを自ら拾い、枝村とのワンツーから清水の初シュートを放つ。8分には、大分・東のファウルで、大分陣内やや右、40M程でのFK。両選手がPA内で構えるが、森安が中央へグラウンダーで転がすと、受けた真希がダッシュ、大きく空いた中央のスペースを前進し、急加速の勢いに乗って30Mドリブルミドル。強烈な低い弾道にGK西川も反応しながら、ボールを落とす。殺到した悠輔と接触し、悠輔のファウルとなったが、西川は痛んで2分弱、治療に費やした。
 苛烈な飛び道具の衝撃が、流れを清水に引き戻す。12分、美臣の対角線フィードを大瀧が足で落とすと、真希が右に流し、森安のスルーパスは、阿部が滑って合わせられず。しかし、清水らしい、長短と緩急でパスを使い分ける、流れるようなプレーだった。13分、中盤で枝村がボールを奪った瞬間、素早く動き出した阿部に、間を入れず枝村が足下にパスを入れる。攻→守の切替に遅れた大分守備陣を、正に蹴散らす勢いで強引に突破した阿部は、周囲を微妙な間合いで囲まれた状態から、スルーパス。これに反応した悠輔、両CBの左に併走した状態から、スッと裏に入ってパスを受け、DFを背負う。思わず足を出した西澤?に悠輔は転倒、PKを奪取した。蹴るのはチーム随一のプレースキッカー、主将の大瀧。左足インサイドでゴール右下隅を狙う、敢えて正直なキックは、コースは完璧だったが、GK西川に完璧に読まれた。先制の絶好機を喪う。

 PK失敗。昨年、クラブユース最強を謳われたチームが、敢えなく高円宮で緒戦敗退したのも、PK失敗後の動揺から失点を犯したのが大きかった。この日も大分に攻勢を許し、15分にはロングボールを河内が村越から競り落としたのを、河野が頭で右に繋ぎ、石田がPA右角でボレーを合わせている(枠外)。だが、中盤の構成力で上回る清水は、右サイドで起点を作る大瀧を軸に、中盤の底からの対角線フィードと森安の果敢な攻め上がりで、流れを引き戻す。23分には、中盤の底で奪った真希からのクサビを、枝村が三好を背負いながらキープし、右の森安に戻す。すぐさま縦に低くフィードすると、阿部が反転から裏に抜け掛けた状態で、右30度20M、後ろからのボールをダイレクトで合わせた。ネットを揺らすが、それはニアサイドネットの外側。
 その後も、枝村・真希のクサビと悠輔の巧みな足技ポストプレーで、中央からも起点を作る清水だが、31分、早くも皇甫官監督が動く。村越・高柳に競り負ける場面の目立った河野を下げ、大分でフィジカル最強を誇る吉良を、最前線へ。その効果は、主に清水の攻撃面で表れた。吉良が村越・高柳に対抗して譲らないため、森安・美臣が3トップの両翼、河内・石田に対して下がってしまい、攻撃に絡めなくなったのである。清水の攻撃から厚みが失われ、一方で不用のファウルで大分にFKを与えるなど、繋げない焦りも見られるようになった。
 しかし、次第に大分の3トップに慣れてきた清水は、両SBが大胆に攻め上がることで、優位に立つ。43分、アンティシペーションから奪った美臣が、勢いのまま攻撃参加。途中、福元のチェックに引っ掛かるが、体勢を崩さなかった美臣が、強引に突破して中に切れ込み、真司とワンツーを狙う。PA手前で、リターンが再び大分DF(西澤?)に交錯するが、こぼれを先に美臣が反応し、これを右に流すと、大瀧がキックフェイントで尾崎と東を翻弄してPA内に切れ込み、シュート。今度はGK西川に反応を許さなかったが、ボールはバーに弾き返された。悠輔が再びそれを詰めに行ったが、オフサイド。その後、程なくして、前半終了。清水優勢、は確かだが、大分から見れば、前半スコアレスで折り返したのは、事前の計算通りというところだろう。勝負は後半へ。

大分U-18      清水エスパルスユース
6(1) シュート 7(2) ×森安、○真希、○大瀧、×阿部、×枝村、×真司、×大瀧
2(1) 右クロス 7(0) ×森安、×大瀧、×大瀧、×大瀧、×大瀧、×大瀧、×森安
2(1) 左クロス 3(0) ×真希、×真司、×美臣
1(0) 右側CK 2(1) ○大瀧、×大瀧
0(0) 左側CK 0(0)
0(−)  犯OS  1(−) ・悠輔
8(3) ファウル 10(5) ・悠輔、・大瀧、×美臣、・阿部、×森安、×村越、×美臣、・真司
               ・阿部、・悠輔、×森安

 ◎は得点/得点に繋がったもの。○は枠内/味方に繋がったもの。
 ×は枠外/味方に繋がらなかったもの/DFゾーン(フィールドの自陣側1/3)での反則。
 ( )内は◎と○の総計、ファウルのみ×の総計

[後半]
 勝負の後半。大分で恐ろしいのは、何よりも監督・皇甫官の勝負に拘る姿勢だ。後半開始と同時に、前半に投入した島田を僅か14分間の出場で下げ、切り札・小手川を投入し、システムを4−2−3−1に切り替えた。すると試合は、杉山茂樹か狂喜乱舞しそうなぐらい、大分ペースに変わる。大分は、中央でフィジカルに強い吉良と足技に長けた河内が良い補完関係を築けており、清水の左右SBが内に絞る機会が増えたことで、その大外をスピードのある石田、小手川、甲斐らに使われることになった。
 3分には、ロングフィードを河内が競り落とし、清水DFが釣られた隙に、小手川が右へ流したボールから石田が飛び出す。が、シュートは宇宙開発。5分、トップ湘南戦の失点場面のように、右SB中川の1本の60M級ダイアゴナルフィードから、左に開いて石田が抜け出す。しかし、右利きの石田は内に切れ込んでしまい、そのことで村越に追い付かれて強引に潰れされた(村越に警告)。颯爽とボールに向かうは、「大分のチラベル」西川周作。夏の対戦では、壁に当ててしまい、危うくカウンターを許すところだったが…、


(西川キック!)

 壁の上を越えたボールは、GK海人の腕を越えて急激に落ちるが、クロスバーに激突する。だが、西川キックに魅せられた会場に後押しされるように、直後の8分にも、真司の不用意な横パスを小手川がカット。そのまま裏に抜け出し掛けるが、GK海人が得意のオープンプレーでタッチ外に蹴り出し、万難を排した。かに思われたが、スローイングのリスタートから、いとも簡単に河内が右サイドを突破。高柳が釣り出されて希薄となったPA内に右クロスが入ると、甲斐がワントラップから小さな体を小気味よく回転させて、シュートを放つ。ゴールまで5Mもない至近距離、だが、GK海人の瞬発力が上回り、横っ飛びでCKへとディフレクトした。

 13分、大分がクリアしたボールを拾いに戻った真司、それをダイレクトでサイドチェンジ。右に張った大瀧がボールを後ろに叩くと、真希が受け、低い弾道で右クロスを送る。ニアの阿部が僅かに軌跡を変えると、中央の悠輔には合わず(スルー?)、だがファーに枝村が飛び込み、ゴール右に狙い澄まして、シュート。が、今度はGK西川が瞬発力を示し、横っ飛びで弾き返す。
 これが契機となって、清水の両ボランチが展開力と機動力を遺憾なく発揮。この時間帯、中盤を支配したことで、最終ラインも4対4の引っ張り合いに上回っていた。16分、真希が単独突破からボールを戻して、追走していた枝村のミドルは右に外れ、18分、大分・尾崎のハンドで得たハーフラインからの森安のFKを、PA内で阿部が頭で後ろにすらすも、GK西川が落ち着いてキャッチ。24分、枝村が巧みに緩急を付けて右サイドを突破、上げた右クロスは東に跳ね返されるが、悠輔がいち早く反応して粘り、枝村が拾って戻したボールを真希が左足ミドルでファーを狙ったが、これもGK西川がキャッチした。

 だが27分、河内のスルーパスにオフサイド崩れから、小手川が右サイドを突破。上げた右クロスは村越が跳ね返したが、清水の左サイドは限界を迎える。32分、ロングボールを吉良が落とし、拾った河内がスルーパスを狙うという決まり切ったパターンが、またも鮮やかに決まる。なにしろ、通算5度目。美臣は小手川を見ていたのだが、その後ろから中川が完全フリーで抜け出した。ゴールライン際まで抉った中川は、クロスコースを切った高柳を弾むようなステップで交わして、ゴール10M右45度という絶好の位置で、フリーに。ジ・エンド、と誰もが思ったが、肝心のシュートが宇宙開発。またも相手のミスに救われた。
 清水は32分、枝村のスルーパスから、足の止まり掛けていた西澤を反転速度で簡単に振り切って、阿部がダイレクトで左足を合わせたが、威力なくGK。これが最後の好機となったが、押し込む大分も疲れからか、プレーに精度を欠く。焦りと苛立ちも相まって互いにファウルが増え、興奮する観客が大絶叫する姿も(相手は高校生なんだから、落ち着いて)。だが、44分、ロングフィードから左サイドに抜け出した大分選手(甲斐?河内?)を村越が後ろから引き倒し、警告、2枚目で退場。焦点は、清水が凌いでPK戦に持ち込めるかに移った。
 とはいえ、疲労する大分の攻撃も、引いた清水を崩せるだけの迫力に欠けた。左SB・真司のクリアミスから、吉良に通算6度目のサイド突破を許し、上げたクロスを小手川が合わせたが、これも枠を捉えない。勝敗はPK戦に持ち込まれた。

大分U-18      清水エスパルスユース
5(1) シュート 6(4) ○枝村、×枝村、○阿部、○真希、○阿部、×森安
8(2) 右クロス 6(1) ○真希、×森安、×森安、×枝村、×大瀧、×森安
4(0) 左クロス 2(0) ×悠輔、×真司
2(0) 右側CK 1(0) ×大瀧
1(0) 左側CK 0(0)
1(−)  犯OS  1(−) ・枝村
13(3) ファウル 18(2) ・枝村、・村越、・森安、×村越、・悠輔、・阿部、・真司、・大瀧
               ・真希、・真司、・森安、・美臣、・枝村、・阿部、・森安、・悠輔
               ×村越、・阿部

[PK戦]

(西川キック!@2回目)

先攻・大分:○尾崎、×中川、○西澤、○西川、○小手川 | ×三好
後攻・清水:×枝村、○真希、○高柳、○阿部、○大瀧  | ○森安


(抱き合った森安と海人を押し潰したイレブン。…そして、残酷な悲喜の構図)

 次の対戦は、市原と1年前のリベンジ戦。市原ユースから見れば、兄(トップ:清水1V−0市原)と弟(Jrユース:清水3−0市原舞浜)の雪辱戦である。


▼試合結果

清水エスパルスユース 0−0 大分トリニータU-18
      (PK戦 5−4)
 警告:後半5分:清水・村越大三 (ラフプレイ)
    後半19分:清水・高野美臣 (ラフプレイ)
    後半40分:大分・小手川正忠(ラフプレイ)
    後半44分:清水・村越大三 (反スポーツ的行為)
 退場:後半44分:清水・村越大三 (警告2回)


▼選手寸評

[私撰MVP]
●山本真希:90分間出場、シュート2(枠内2)、クロス2(右1左1、成功1)
 劣勢になるほど目立つ男、山本真希。迫力あるドリブルとミドル砲という「個人の力」で攻撃に活力を与える一方、守備でも肝心な場面で組織の穴に、必ずカバーに入る姿があった。前半の大瀧とPK戦1本目の枝村と、名手2人を連続して止めた西川を、最初に破ったのも彼である。

[私撰MIP]
●山本海人:90分間出場
 代名詞である「ありえないセーヴ」は1度だけだったが、平面と空間の双方で、広い守備範囲が際立った。DFが相手ドリブルに手を焼き、大分のFKが嵩む中、単純なPA内への放り込みは全てシャットアウト。課題があるとすれば、相手ドリブル突破に対し、有効な対処法をコーチングできなかった点か。

●高柳亮太:90分間出場
 最低3人は前線に残る大分に対し、数的に有利でない状況が多く、吉良に起点は作られた。が、それ以上の仕事はさせなかった。地上戦でも、中央突破を許さず。むしろ左の美臣の裏を繕う機会が多かったが、そちらは辛うじて及第点というところか。もう少し、ラインの上下をハッキリさせたかった。

[個人的好印象選手(相手方)]
 西川周作(2年):セービングは普通に良いGKの域だが、やはりそのキックは凶器。「攻」守で貢献。
 中川裕智(3年):対面の真司を完封するに留まらず、走力を活かして積極的に攻撃に絡んだ。


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03年12月21日11:00開始 長居第2陸上競技場
 第11回Jユースカップ2003 Jリーグユース選手権大会 決勝トーナメント2回戦
 FC東京U-18 対 セレッソ大阪U-18 ※45分ハーフ

▼布陣
FC東京U-18               セレッソ大阪U-18
−−−−−− 李 −−永露−−−−−−   −−−−−−−−坂本−−−−−−−−
−−−−福田−−−−−−村田−−−−   −−−−山城−−日比−−中山−−−−
−−−−−−鎌田−−山田−−−−−−   −−−−− 宇佐美 −前川−−−−−−
−−宮崎− 高橋知 −富田−−原田−−   −−楠本− 小野原 −武田−−中浜−−
−−−−−−−−山本−−−−−−−−   −−−−−−−−稲田−−−−−−−−
交代:後半00分:福田→斉藤        交代:後半07分:日比 →下釜
   後半38分:永露→仲            後半16分:宇佐美→日下
   後半40分:村田→林


▼試合展開

 前半44分:F東京、村田?あたりから出た小さなロビングパスに対して、李がラインの裏に抜け出すが、CBも手堅く動きに対応。と、李はワントラップで付きまとうDFの裏に小さくボールを転がすと、VTRの2倍速を見るような超加速。一瞬で裏に抜け、次の一瞬でゴールを決めた、一瞬の出来事。1−0。それまで李は、殆ど消えていたのだが。

 後半44分:C大阪、左サイドのスローインから強引にクロスを入れると、坂本?が競り落としたものの、混戦。どうにかC大阪が後ろに戻し、下釜がダイレクトでシュート。低い弾道のボールは、奇跡的に誰にも弾き返されず、ブラインドとなったGK山本の反応は、明らかに遅れていた。1−1。そして、試合終了の笛。土壇場の同点劇で、試合はPK戦に持ち込まれた。

FC東京U-18         セレッソ大阪U-18
5(2)/1(0) シュート 7(2)/9(4)
3(1)/4(1) 右クロス 1(1)/1(0)
1(0)/2(0) 左クロス 4(1)/4(1)
1(1)/1(0) 右側CK 0(0)/3(1)
0(0)/0(0) 左側CK 1(0)/0(0)
0(−)/4(−)  犯OS  0(−)/2(−)
5(1)/5(0) ファウル 14(3)/9(0)


[PK戦]
先攻・F東京:○高橋知、○李、 ○鎌田、○仲、 ×富田
後攻・C大阪:○小野原、○山城、○中浜、○前川、○下釜

 試合寸評:前半はC大阪ペース。1トップ坂本の下で3人が、自由に動き回ってチャンスメイクするが、中央突破を偏重する非効率な攻撃は、F東京の地道な集中力に跳ね返される。前半終了直前、李の個人能力で先制したF東京は、後半は余裕の堅守速攻モード。試合の分水嶺となったのは、後半38分の原田の退場。李一人残して引き籠もったF東京は、日比と違ってMFの仕事に専念していた下釜に、一つ高い位置で活躍の場を与えてしまう。そして、その下釜が奇跡的なシュートを決めると、そのままPK戦でも勝利。85分間、F東京の手のひらの上で踊らされた感すらあったC大阪だが、最後に痛烈な反発力を示した。


▼試合結果

 FC東京U-18 1−1 セレッソ大阪U-18
   (PK戦 4−5)
 得点:前半44分:F東京・李忠成
    後半44分:C大阪・下釜雄志
 警告:前半19分:C大阪・中浜雅之(非スポーツ的行為)
    前半20分:C大阪・楠本晋也(非スポーツ的行為)
    前半21分:F東京・鎌田次郎(ラフプレイ?)
    前半31分:F東京・原田圭 (非スポーツ的行為)
    後半38分:F東京・原田圭 (遅延行為)
    後半43分:C大阪・下釜雄志(異議)
 退場:後半38分:F東京・原田圭 (警告2回)


▼選手寸評

[個人的好印象選手]
 鎌田次郎(F東京・高3):自由に動くC大阪のトップ下の3枚を、丁寧に潰し続けた、F東京の明神。
 下釜雄志(C大阪・高3):一本調子の攻撃に変化を与え、同点弾、そして決勝PK。正にMVP。



2003年12月14日(日) Jユース杯 決勝トーナメント ガンバ大阪戦

03年12月14日15:30開始 万博記念競技場
 第11回Jユースカップ2003 Jリーグユース選手権大会 決勝トーナメント1回戦
 対 ガンバ大阪ユース ※45分ハーフ
 天候:晴

▼布陣
−−−−−−阿部− 篠田悠 −−−−−

− 鈴木真 −−−−−−−−−大瀧−−

−−−−− 山本真 −枝村−−−−−−

− 高野美 −高柳−−村越−−森安−−

−−−−−−− 山本海 −−−−−−−

控え:前田、石垣、篠田大、上埜、岡村、柴田、八木
交代:後半30分:鈴木真司 →柴田和也 (大瀧を左MF、柴田を右MFへ)
   後半34分:篠田悠輔 →八木和秀 (そのままFWに)
   後半35分:枝村匠馬 →岡村総一郎(大瀧をボランチ、岡村を左MFへ)
   後半46分:阿部文一朗→上埜健太 (そのままFWに)

ガンバ大阪ユース:

−−−−−−江口−−三木−−−−−−

−−−−家長−−寺田−−松岡−−−−

−−−−−−−− 與 −−−−−−−−

−−森山−− 牧 −−丹羽−−河内−−

−−−−−−−−三橋−−−−−−−−

控え:東、野村、伊藤、安田、横谷、岡本、出口
交代:後半00分:牧→伊藤、後半09分:江口→出口、後半29分:松岡→横谷、後半34分:河内→安田


▼試合展開
[関西でのガンバユース(クラブユース三大大会+α)] 38戦34勝3分1敗、157得点30失点
 03Jユース杯予選  ○2-1F東京、○2-0甲府、 ○3-0磐田
 03関西プリンス   ○1-0阪朝鮮、○3-2水口、 ○3-2滝川二、△1-1久御山、○5-0一条、 ○8-0海南、 ○3-2神戸
           ○2-0京都、 ○7-1滝川二
 03関西クラブ選手権 ○2-0C大阪、○2-0京都、 ○7-2神戸
 02Jユース杯決勝  ○3-0愛知、 ○4-0F東京、○2-1市原、 ○5-0広島 
 02Jユース杯予選  ○4-2京都、 △1-1C大阪、○3-0名古屋、○6-0神戸
 02関西クラブ選手権 ○2-1C大阪、○4-1京都、 ○7-0神戸
 02U-18関西リーグ  ○5-3C大阪、○4-1大谷、 ○7-0弘陵、 ○5-0海南、 ○1-0耳成、 ○8-1阪金光、○5-0守山北
 01Jユース杯決勝  ○4-0船橋、 △3-3柏(PK負)
 01Jユース杯予選  ●2-5大分、 ○2-1福岡  ○19-1鳥栖

 以上が、ガンバユース、最近の「関西」での主な公式戦の成績である。J村でのクラブ選手権は、意外に脆さを見せるガンバだが、関西では強いとか強くないとかのレベルを超越している。ギャバンの魔空空間並みに、関西では能力3倍になってそうだ。なにしろ、最後に負けたのが2001年9月30日の大分戦。その後、12月23日の柏戦でPK負けしたが、そこから数えても721日間負けなし。寺田・家長・三木・丹羽など、著名なタレントを揃える実力チームを相手に、関西不敗の幻想をも打ち破ることが求められる。正直、3年生のラストゲームを見る覚悟で、大阪への遠征を決意したのであった。
 ガンバは、ほぼ予想通りのスタメン。このところ、2年生の出口が起用されることが多かったが、江口→出口の途中交代は、ガンバの「お約束」なので、どちらが先発したとしても、大差ない。一方、清水は先日、学芸大への推薦合格が報道された高柳が、実に6試合振りに戦列復帰。村越・石垣は共に高い身体・運動能力を誇るDFだが、互いに前に出ての潰しを得手としており、特徴の重なるところが多かった。後方でのカバーリングに長ける高柳の存在は、想像以上に大きい。しかし、前線の6人の攻撃タレントを如何に配列するかという課題は、未解決のまま。この日は、今ひとつ機能しなかった予選最終戦の布陣のまま、レフティの大瀧を右MFに起用して、試合に臨むことになった。


(左から大瀧、海人、阿部、真希、村越、美臣、枝村、悠輔、真司、森安、高柳)

[前半]
 試合は静かな立ち上がり。アウェイの清水は、天皇杯逆転勝利したガンバサポの名残が残るスタジアムで、右MFに配置されたレフティの大瀧、久々にスタメンに復帰した高柳が、感覚を取り戻そうかとするようにボールを回す。特に右サイドは、阿部・悠輔・森安が積極的に絡んでパスを受け、大瀧が左に持ち替えて攻撃を滞らせないように、との意図が見えた。一方、ガンバも強引な攻撃は少なく、0分に清水・大瀧が、9分にガンバは家長がFKからシュートを狙った程度で、時間だけが過ぎていく。ただ一つ、8分に家長がリスタートを邪魔して警告を受けたのは、頂けなかったが。
 14分、右スローインから森安がクサビ、阿部がポスト、再び森安が20Mミドル(枠外)といった辺りから、試合は動き出す。15分、ガンバは寺田が、右サイドから足下にボールが吸い付くようなドリブルで、小さくターンしてチェックを振り切る。と、次の瞬間、スルーパス。阿吽のタイミングで抜け出した三木が、PA内右45度からシュートを放つが、GK海人の胸にすっぽりと納まり、彼を脅かすには至らない。今度は清水。枝村の30Mダイアゴナルフィードを、PA右角で大瀧が左足を振り上げて中央に叩き、丹羽より頭一つ高い阿部が後ろに戻す。上がってきた森安が前に送ると、PAの右角から回り込みながら阿部が抜け出し、ダイレクトでシュートを放つが、GK三橋が処理。ドリブルとショートパスが主体のガンバと、長短と緩急のパスを使い分ける清水との、対照的な攻撃だった。
 18分に、ガンバは江口が強引にドリブルで振り向いてミドルを放つが、枠外。再び今度は清水の番。22分、中盤の底で奪った真希が、枝村との小さなワンツーでスピードに乗り、前に突っ掛けたかに思うと、一転、40Mの弾丸スルーパス。反応するのはエースの阿部、真希とボールの方(左)に気を取られた丹羽に対し、裏(右)からS字を描くように回り込んで抜け出す。一気に丹羽を置き去りにした阿部は、完成された得点パターンの自信のままに、冷静にファーに流し込む。1−0。清水が先制する。

 追い掛けたいガンバだが、引き気味になった清水に対し、変わらぬショートパスとドリブルのサッカーを繰り返す。展開が遅い上に、フィールドの幅を使って清水の最終ラインを分散させる意図も少ないため、PA手前で2、3のパスを繋いでも、結局は人垣に絡め取られる場面が目立った。一方の清水は、得意のサイド攻撃よりも、縦に速く、少ない人数で「攻め切る」ことを志向する。清水の速い攻撃に、ガンバは焦りのためか、反則が増え、なかなか攻めに出ることができない。
 34分、森安のクサビをPA右角の悠輔が中央に流して阿部のポストを、丹羽が後ろから押し倒し、清水のFK。悪質なファウルではなかったこともあり、リードを許す展開に堪忍袋の緒が切れ始めた会場からは、ブーイング。騒然とした中、大瀧?(真希?)のクイックリスタートに抜け出したのは、抜け目ない男、枝村。が、唯二反応したGK三橋が距離を詰め、無理矢理放ったシュートはゴール左ニアに外れる。
 その前後にも、32分に大瀧のFKから真希のミドル、35分にFKを真希、36分に枝村の左CKと沸かせる場面を作った清水。40分には、中盤の底に絞った森安のロングフィードを大瀧が受け、切り返して戻すと、枝村がダイレクトで速いスルーパス。後ろ向きの阿部が前に向き直しながら、ダイレクトで合わせたが、ゴール右に外れる。阿部や悠輔が前線から厳しくプレスする清水を前に、パスの繋がらないガンバは、ますます個人技偏重の傾向。ロスタイムに寺田が枝村のチェックを掻い潜って25Mミドルを放ったのが、唯一の好機と言える程度で、それも左上に外れ、アウェイの清水がリードして折り返す。

G大阪       清水エスパルス
6(2) シュート 8(3) ○大瀧、×森安、○阿部、◎阿部、×真希、×枝村、×阿部、×枝村
2(0) 右クロス 7(0) ×阿部、×阿部、×阿部、×悠輔、×森安、×森安、×悠輔
2(0) 左クロス 3(0) ×真司、×真希、×真司
1(1) 右側CK 2(0) ×大瀧、×大瀧
0(0) 左側CK 2(0) ×枝村、×枝村
0(−)  犯OS  0(−)
10(2) ファウル 7(2) ・悠輔、・真司、×村越、・森安、×高柳、・森安、・阿部

 シュート: ◎は得点、○は枠内、×は枠外。( )内は◎と○の総計
 左右クロス:クロスとは45度以内の角度でサイドから送り込まれるパス。距離の短いものを除く。
       ◎は得点に繋がったもの、○は味方に繋がったもの(但しPAの外に流れたものを除く)
       ( )内は◎と○の総計
 左右CK: ◎は得点に繋がったもの、○は味方に繋がったもの(但しPAの外に流れたものを除く)
       ( )内は◎と○の総計
 ファウル: ×はDFゾーン(フィールドの自陣側1/3)での反則、( )内は×の総計

[後半]
 後半も、序盤は清水の潰しからノーリスクの攻撃が目立ち、清水的には、巧く時間を無駄遣いさせていた状況だった。だが、後半9分、江口→出口の交代を機に動きが出はじめ、10分には、家長の柔らかいロビングパスを、三木が高柳に競り勝って右に流す。すると、179cmの出口と170cmの美臣のミスマッチ。ポジショニングに優れ、丁寧なヘッドのできる美臣だが、その場ジャンプの競り合いでは如何ともし難く、出口がもう一つ右に落とすと、そこにいつの間にか與(あたえ)が走り込む。右45度から20Mミドルを放ったが、GK正面。ガンバは直後にも、スルーパスを受けた出口が、村越に体を寄せられながら強引にシュートを放ったが、やはりGK海人がキャッチ。三井寿@スラムダンクではないが、「ウチのGKは海人だぜ?」。流れの中で、左右の揺さぶりなしにゴールを許すGKではない。逆に清水は11分、中盤の底の枝村?の対角線フィードを受けて、大瀧がスルーパス、それに阿部が抜け出しながらダイレクトで合わせたが、GK三橋正面。2本のパスで好機を作る清水、実に対照的。
 しかし、ガンバは12分、家長が軽くワンタッチしてから急加速するフェイントで、森安を抜き去る。この時は大瀧の素早いカバーリングで、左CKに逃れるが、その天才を示し始める。ガンバは松岡・家長をサイドに張らせた上で勝負させることで、清水DFの分断を図る。16分には、枝村のチェックを外した松岡の右クロスを、ファーで森安が対空迎撃するが、これを家長が拾って、高速クロス。今度は、GK海人の素早い横っ飛びが阻んだが、鋭さを増す。17分、そのキャッチしたボールを、海人が前方へロングキック。空中戦の競り合いから、中盤やや右に流れた枝村に収まった。枝村は暫し、タイミングを図ると、柔らかいスルーパス。計ったような飛距離のパスに、ゴールラインの寸前で追いついた大瀧。でも、「え、大瀧はレフティ…?」。が、大瀧の「右足」ダイレクトでのクロスは、魔法が掛かったように、DF・GKのクリアできない高さで、ふわりと軌跡を描く。ファーで待つ阿部は、Jrユースからの6年間、大瀧のパスを何百回もそうしてきたように、ただ頭で押し込むだけで良かった。2−0。

 2点を追い掛けることになったガンバは21分、遂に速攻を志向する。自陣右から中盤中央へのミドルパスは、やや長かったが、寺田がダイレクトボレースルーパスの超美技。抜け出した家長は必死にカバーに戻った森安に対峙すると、左足アウトでちょこんとボールを動かし、体を沈めて急加速する。森安の反射より素早く突破した家長は、低く速いマイナスの左クロス。だが、高柳と村越の密着された三木・出口は、最後は足を投げ出すも届かず、ボールはファーに流れていく。それを見届けた家長は、ゴール横のペットボトルを蹴り上げた。天才故の儚さなのか、家長はこの後、急速に輝きを失っていく。
 流れは変わり、再び清水の縦に速い攻撃ばかりが、目立つようになる。中盤の底から、枝村・真希が対角線フィードを主に右サイドに送り、キープ力のある大瀧が溜めを作って、戻したところを森安や真希がミドルで狙う展開。


(突破口としては望むべくもないが、卓越した技術で高い位置に攻撃の起点を作った大瀧。阿部と森安が、パスを受けに近寄る)

 しかし、フォアプレスを繰り返してきた清水にも疲労が目立ち始め、28分に真司がピッチの外で治療すると、結局戻れずに30分に交代。それも束の間、今度は悠輔が足を攣って、自ら外に出る。そんな中で32分、PA内の混戦から仕切り直し、背を向けたまま下がってきた阿部が右に流す。すると、密集したPAから釣り出された左SBの森山を、柴田は切り返してスカッと抜き去って、マイナス45度に小さく折り返し。PA内で受けた枝村、ボレーで合わせると見せて、細かい切り返しでCB伊藤を突破するが、シュート体勢で丹羽?に引っ掛かる。が、そのこぼれ球を悠輔、落ち着いて押し込んで、3−0。いつの間にかピッチに復帰していた悠輔は、決定的な3点目を置き土産に、34分には八木と交代した。

 試合の大勢は決まり、清水はもう攻撃はお休み。公式戦では滝川二高戦以来、8試合連続で逃している完封の達成に、焦点は移った。が、やはり清水の終盤は落ち着かない。38分、寺田とのワンツーで縦に抜けた家長が、森安をまたも“ちょこん&急加速”のフェイントで抜き去り、左クロス。だが、高柳に引っ掛かり、軌道のズレたパスを横谷がPA手前からミドルで狙ったが、これもGK海人を脅かすには至らない。39分、スッと最終ラインから下がった三木が、PA手前でロングフィードを頭を捻って裏に落とす、テクニカルなポストプレー。これがピタリと出口の足下に落ちるが、シュートを空振り。焦ったか、清水DFもクリアを空振ったが、すぐに2トップへ体を寄せ、最後はGK海人が落ち着いてボールをキャッチした。
 その後、42分、森安との競り合いでファウルを採られた家長が、起き上がろうとする森安を後ろから押し倒して、当然警告、そして累積2枚目で退場。チームメイトより3分早く、03年シーズンを終えた。それでも44分、岡村のファウルから中央30M程のFK、與が直接狙ったシュートがゴールの左上を僅に外れる、危ない場面。ロスタイムにも、寺田がドリブルから同期の三木へ、ユースでの「ラストパス」。三木は果敢にゴールを狙ったが、枠上に外れ、試合終了。ガンバは結局、PA内で放ったシュートが2、3本しかなく、清水が2回戦に駒を進めた。

G大阪       清水エスパルス
6(3) シュート 7(4) ○阿部、◎阿部、○大瀧、×森安、×真希、◎悠輔、×大瀧
2(0) 右クロス 3(2) ◎大瀧、×大瀧、○柴田
5(0) 左クロス 0(0)
1(1) 右側CK 1(1) ○大瀧
2(0) 左側CK 0(0)
1(−)  犯OS  0(−)
7(2) ファウル 6(1) ・阿部、・真司、・森安、・村越、・阿部、×岡村


(見事な勝利を飾った選手達が、珍しく声出しのあったサポ集団に挨拶。むしろ静岡の試合だと見守ってるサポが多いのだけれど、昨年の埼玉での試合でも声出しがあったなあ)

 次の対戦は、大分トリニータU-18と夏の再戦


▼試合結果

清水エスパルスユース 3−0 ガンバ大阪ユース
 得点:前半22分:清水 ・阿部文一朗(山本真希・スルーパス)
    後半17分:清水 ・阿部文一朗(大瀧義史・右クロス)
    後半32分:清水 ・篠田悠輔 (なし)
 警告:前半08分:ガンバ・家長昭博 (遅延行為)
    後半09分:ガンバ・河内 剛 (反スポーツ的行為)
    後半42分:ガンバ・家長昭博 (反スポーツ的行為)
 退場:後半42分:ガンバ・家長昭博 (警告2回)


▼選手寸評

[私撰MVP]
●高柳亮太 90分間出場
 個人のパフォーマンスも悪くなかったが、高柳の存在価値を証明した試合。彼の堅実なカバーリングな支えられて、他の最終ライン、特に村越は溌剌、安心して前での潰しに専念できた。下がってのポストは許したが、三木との空中戦にも遅れを見せず、ガンバの中央突破をPAの手前で遮断した。

[私撰MIP]
●阿部文一朗 89分間出場:シュート5(枠内4、得点2)、クロス3(右3)
 「得点」という役割を全う。先制した上にアウェイということで、拙速を尊ぶ展開が多かったが、厳しいパスを着実にシュートという結果に結びつけた。先制点は、須藤ジャパンの中核であった丹羽の裏を食わしたオフ・ザ・ボールの賜物であり、ブンのユース3年間の成長を象徴するものである。

●枝村匠馬 80分間出場:シュート2
 真希との共同作業の成果と言うべきだが、なんだかんだで3得点に絡んだ枝村。守備も(枝村にしては)精力的で、攻撃の場面ではフィールドに広く、起点を作っている。得意の低く速い対角線フィードだけでなく、独特の柔らかさで急所を突いた。チームが引き気味だったこともあって、枝村度は70%程度。

[個人的好印象選手(相手方)]
 寺田紳一(3年):巧い選手は多いが、局面を変化させるセンスを感じたのは寺田。ドリブルから次の展開が速い。
 與貴行(2年):死にそうなぐらい走って「黄金の中盤」を一人で支えた選手。攻撃にも第三の動きで顔を出した。



2003年12月13日(土) JY: 高円宮杯 全国大会 ジェフユナイテッド市原舞浜戦

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03年12月13日14:00開始 名古屋市港サッカー場
 高円宮杯 第15回全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会
 対 ジェフユナイテッド市原ジュニアユース舞浜 ※35分ハーフ

▼布陣
−−−−−−町田− 山崎竜 −−−−−

− 杉山和 −−−−−−−−−小泉−−

−−−−−−長沢−−神田−−−−−−

− 桑原卓 −岩本−−渥美− 桑原彬 −

−−−−−−− 山崎晃 −−−−−−−

控え:吉田、佐野、池田、田村、小出、滝戸、望月雄
交代:後半28分:山崎竜→滝戸 (そのままFWに)
   後半31分:杉山和→小出 (そのまま左MFに)
   後半34分:長沢 →望月雄(滝戸をボランチ、望月をFWへ)

ジェフユナイテッド市原ジュニアユース舞浜:

−−−−−−松尾−−大西−−−−−−

−−−−得平−−酒本− 佐藤岳 −−−

−−−−−−− 星野優 −−−−−−−

−−金子−−岩澤− 星野剛 −蓮沼−−

−−−−−−−−河上−−−−−−−−

控え:瀧本、柿内、子安、中島、三浦、小井土、石福
交代:後半00分:金子→中島、得平→柿内、松尾→石橋、後半13分:佐藤岳→子安
   後半30分:酒本→小井土


▼試合展開

 夏は準決勝で対戦し、0−0のまま、PK戦4−5で、清水が敗れた。押し気味に進めながら、次第に焦りから主導権を奪われていった試合であった。ジュビロカップも含めてPK戦で対舞浜2連敗中の清水、最後のリベンジの機会である。
 しかし、静岡県ジュニアユースリーグ(中部地域)という大会に、静学・清商・清水東など県内有力高の1年生チームと共に参加している清水は、神田や杉山和の台頭など貴重な経験を積んだ一方、U-15代表歴のある池田・佐野が負傷してしまう。2人はアップにも参加し、ベンチ入りもしたが、先発からは外れ、本来はSBの166cm渥美をCBで起用する苦しい布陣に。また夏の対戦では出場停止や怪我人がいたため、先発は大きく5人が入れ替わることになった。他方の舞浜は、夏に出場停止だった正GK格の河上へと代わった以外は、変化無し。とはいえ、夏の対戦では、控えの瀧本はMVP級の活躍だったのだが。変化か継続か、どちらが勝敗を分けるだろうか。


(左から岩本、長沢、町田、山崎晃、神田、杉和、桑彬、渥美、山崎竜、桑卓、小泉)

[前半]
 10分:小泉と絡みながら中盤中央から突っ掛けた神田が、PA手前からスルーパスを狙うが、これは星野剛が下がりながら跳ね返す。だが、クリアが小さく、しかも星野剛が下がったことでバイタルエリアにスペースが生まれ、自ら拾った神田がスペースに侵入、PA内からシュート。ゴール上部を狙った精密なシュートだったが、これはGK河上がパンチングで反応。そのクリアの次の瞬間、PAの外から小泉が跳び上がってダイレクトで跳ね返す。アクロバティックなボレーが空のゴールに突き刺さり、清水が先制。1−0。


(27分、舞浜は星野剛の左CKをファーで金子が合わせたが、山崎竜が身を挺してブロック)

 総評:慣れない布陣の清水は、立ち上がりは杉山和の単独突破に頼り、様子見の様相だった。だが、神田が豊富な運動量で各所でボールに絡み、丁寧なパスで攻撃に厚みを加えると、徐々に優勢に。その神田が起点となって、先制点が生まれる。その後の清水は、4−2−4とも言える極端な布陣で、大きな守備円で包み込み、プレスの場面では急に円の一部を縮小させ、舞浜の攻撃を封じ込める。攻撃の場面では、4トップの突破と抜け出しに頼る縦に速い展開で、効率的に相手を脅かした。が、2トップが、決定機(PA内で前を向いてフリー)を3、4回は外すという、異常な効率の悪さを示して、追加点を奪えない。舞浜は桑卓のサイドを右SBの蓮沼が狙うが、岩本のカバーリングと渥美の跳ね返しに阻まれ、1−0で前半を折り返した。

市原舞浜      清水エスパルス
5(2) シュート 7(3) ×町田、○神田、◎小泉、○町田、×山崎、×山崎、×長沢
5(1) 右クロス 0(0)
1(0) 左クロス 4(2) ×桑卓、×杉山、○杉山、○杉山
1(0) 右側CK 0(0)
2(0) 左側CK 0(0)
3(−)  犯OS  2(−) ・??、・杉山
5(0) ファウル 11(2) ・桑彬、・岩本、・神田、・小泉、・岩本、×桑彬、・渥美、・町田
               ・岩本、×神田、・町田


[後半]
 02分:桑原卓?から対角線に長いボールが出されるが、それは左SB蓮沼の守備範囲、だったが、目測を誤って、ヘッドは空振り。元々、フィードの受け手として走り込んでいた小泉、裏でゆとりを持って、これを受ける。フリーの小泉は内側に軽く切れ込むと、味方とGKの飛び出しを待って、低く速い右クロス。町田がGKと逆サイドのファーに余裕で流し込み、2−0。町田、喜びを爆発。


(狂喜の町田はベンチで加藤監督と抱き合った後、渥美・神田・長沢に迎えられる。が、注目すべきは写真右の岩本。実は右が清水のベンチ側。CBの岩本は逆サイドの清水ベンチに駆けつけ、既に町田と喜びを分かち合って、守備に戻るところなのだ(笑))


(12分、神田の左CKをファーで岩本が折り返したが、舞浜DFがクリアする)

 20分:最終ラインの岩本が、アンティシペーションから中盤の底でボールをカット、小さく横に叩くと、自らは勢いのまま、大胆に攻め上がる。神田?からのパスは一見、長すぎたかに思えたが、加速する岩本は左サイドを深く抉り、ゴールライン際で追いつく。一度切り返して溜めた後、狙いを定めた左クロスに町田が頭で合わせたが、それは読んだGK河上が反応。しかし、弾いたボールは運悪く町田の体に弾き返され、ゴールへと吸い込まれた。3−0。

 総評:後半は、慣れない左SBに戸惑ったのか、舞浜の蓮沼がロングフィードへの処理を誤り、あっさりと清水が追加点を重ねて始まる。舞浜はその蓮沼を軸に、今度は兄の桑彬のサイドを攻めるのだが、機動力のある渥美・神田・小泉の包囲網に嵌って、ボール支配の割には好機に繋がらない。20分に岩本の大胆な攻め上がりから、3点差の安全圏に逃れた清水は、疲労と選手交代もあって、後はのんびりまったりモード。某女史が楽しみにしていた小出などは、結局、ワンタッチもしなかったそうだ(爆)。相手にボールを回させながら、要所だけは締めて、余裕で逃げ切った。佐野と池田がいなくても余裕で逃げ切れるところが、ユースとの違い(苦笑)。唯一、何故か妙に不平不満を許さない主審に、何でもない異議?で岩本と神田が警告を受けた点のみが、悔やまれる。

市原舞浜      清水エスパルス
4(2) シュート 5(2) ◎町田、×山崎、×岩本、×長沢、◎町田
2(0) 右クロス 4(2) ◎小泉、○小泉、×小泉、×小泉
5(0) 左クロス 4(2) ×町田、×杉山、◎岩本、○桑卓
0(0) 右側CK 0(0)
1(0) 左側CK 1(1) ○神田
1(−)  犯OS  1(−) ・杉山
7(1) ファウル 9(0) ・神田、・岩本、・桑卓、・小泉、・町田、・岩本、・町田、・??
               ・小泉


(リベンジ達成の図。今ひとつ自信がないが、左から小泉、桑卓、渥美、山崎晃、望月、小出、桑彬、滝戸、神田、町田、岩本か)


▼試合結果

清水エスパルスジュニアユース 3−0 ジェフユナイテッド市原ジュニアユース舞浜
 得点:前半10分:清水・小泉慶治(なし)
    後半02分:清水・町田朋弥(小泉慶治・右クロス)
    後半20分:清水・小泉慶治(岩本大 ・左クロス)
 警告:後半08分:清水・岩本大 (異議?)
    後半12分:清水・神田和哉(異議?)


▼選手寸評

[私撰MVP]
●岩本大 70分出場:シュート1、クロス1(左1、成功1)
 前後左右を広く応対するカバーリングと、競り勝つだけでなく的確に次の展開に繋げるクリア、そして最終ラインの統率において、高い知性を示した。だが、それに加えて、思い切った攻め上がりから丁寧な左クロスで決定的な3点目まで演出。出場停止のまま敗退した夏の無念を晴らし、文句なしのMVP。

[私撰MIP]
●渥美直人 70分出場
 佐野の怪我で空いたCBを、166cmの渥美が埋める。危険な賭けにも思われたが、爆発的な瞬発力で幾度となく対空迎撃に成功し、その速さを活かした機動力と相まって盤石を築いた。渥美は怪我の影響で、夏は控えに甘んじたのだが、慣れないポジションながら自分の良さを前面に出して、雪辱した。

●小泉慶治 70分出場:シュート1(枠内1、得点1)、クロス4(右4、成功2)
 前半はドリブルも少なく、クロス0と余り目立たなかった小泉だが、終わってみれば1得点1アシストと大きく結果に貢献。先制点のテクニカルなボレーは、小泉の先鋭さの真骨頂だろう。引き気味の中、カウンターの軸として機能した。小泉も疲労骨折の疑いで夏は出遅れたが、今回のリベンジ劇を主演した一人。

 他にも、突破口となった杉山和、その杉山和を巧みに操った桑原卓、攻守に精力的だった神田、相変わらずシュート以外は完璧の山崎竜、対照的に2得点の町田と、好調を感じさせる選手が多かった。


[個人的好印象選手(相手方)]
 酒本勝多(中3):舞浜の決定機に酒本の姿あり。精力的な運動量と、質の高いキックが目立った。
 蓮沼優(中3):前半は右SB、後半は左SB。舞浜の攻撃サイドは、常に攻め上がる彼がいた。


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03年12月13日12:00開始 名古屋市港サッカー場
 高円宮杯 第15回全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会
 コンサドーレ札幌U-15 対 サンフレッチェびんごジュニアユースFC ※35分ハーフ

▼布陣
コンサドーレ札幌U-15           サンフレッチェびんごジュニアユースFC
−−−−−−大西−− 岡 −−−−−−   −−−−−−井上−−高山−−−−−−
−−谷山−−−−−−−−−−佐藤−−   −−−−−−−−木本−−−−−−−−
−−−−−−大野−−長沼−−−−−−   −−室田−−小畠−−大田− 川井田 −
−−久松−−廣中−−谷川−−安藤−−   −−−−上谷−−新開−−永福−−−−
−−−−−−−−塚本−−−−−−−−   −−−−−−−−宮本−−−−−−−−
交代:前半25分:佐藤→藤井        交代:後半18分:木本 →大西
   後半00分:谷川→村松                川井田→小西
   後半12分:藤井→高橋           後半31分:高山 →西本
   後半25分:大西→青木           後半35分:大田 →木本
   後半33分:谷山→山本


▼試合展開
 後半5分:びんご、札幌は大西がオフェンスファウルを採られ、自陣右からFK。大きなキックを競り合いの中、双方が処理を誤り、バウンドするボールに最初に追いついた井上は、気づけば裏に抜け出した状態に。GKとの1対1から、そのままファーに流し込んで、びんごが先制する。0−1。
 後半28分:札幌、3バックの左外に回り込んだ岡が、中央からの展開からフリーでパスを受け、左30度15M程からシュート。しかし、キックミスを犯し、ファーに外れる軌跡になってしまう。だが、カバーした永福は慌ててしまったのか、インサイドで右足を差し出してしまい、ゴールに押し込んでしまう結果となる。1−1。

 寸評:ゴール30M前迄は鮮やかにボールを回すが、それ以降は跳ね返される札幌と、回数は少ないが、縦に速い攻撃で、フィジカルで上回ってゴール前まで攻め入るびんご。前半は風上の札幌が優位に試合を進めたが、後半は順風に立ったびんごが一本のパスで先制する。以後は、焦りの見える札幌を、びんごが丹念に潰して時間を経過させていったが、逃げ切れるかに見えたところで、不運なオウンゴールで同点に。緒戦のプレッシャーなのか、共に落ち着かない展開だった。

コンサドーレ札幌       サンフレッチェびんご
4(0)/4(0) シュート 2(1)/4(2)
2(1)/6(0) 右クロス 0(0)/3(0)
1(0)/1(1) 左クロス 1(1)/3(0)
1(0)/1(0) 右側CK 0(0)/1(1)
1(0)/0(0) 左側CK 0(0)/2(0)
3(−)/3(−)  犯OS  1(−)/1(−)
6(3)/3(0) ファウル 9(1)/6(1)
 ※左が前半/右が後半、( )内は枠内SH、味方に繋がった数、DFゾーン(フィールドの自陣側1/3)での反則


▼試合結果
 コンサドーレ札幌U-15 1−1 サンフレッチェびんごジュニアユースFC
 得点:後半09分:びんご・井上琢也(永福永伍?・FK)
    後半28分:札幌 ・オウンゴール
 警告:前半16分:札幌 ・谷川瑞樹(ラフプレイ)
    後半21分:札幌 ・久松秀樹(?)


▼選手寸評

[個人的好印象選手]
 廣中辰哉(札幌・中3):幅広いくカバーリングするセンスが光る、岩本っぽいCB。
 安藤謙佑(札幌・中3):精力的で面白いキックを持った攻撃の核だが、局面打開能力が今ひとつ。
 新開輝(びんご・中3):強靱な対空迎撃を有するびんごの最後の砦。クロスを弾き続けた。
 井上琢也(びんご・中3):足下で一度、持ってしまう傾向はあるが、ドリブル・キック共に質は高い。



2003年12月07日(日) Jユース杯 決勝トーナメント 展望

清水エスパルスユース

予選リーグDグループ2位、8年連続8回目(決勝トーナメント)[静岡県] 監督・築館範男

 Group of 「D」eath を3勝1分2敗、7グループの2位チームの中で5番目の成績と、どうにか予選通過に成功した。度々言っていることだが、少数主義で、自然と下級生の起用が多くなる清水の場合、彼らがユースに慣れてきた秋から冬に、本領を発揮することが多かった。だが、今年の清水は「死のグループ」にも関わらず、高円宮杯後に大胆に世代交代を敢行。特に高柳・篠田大の抜けた最終ラインは、CBの石垣・村越が共に前に出て強いタイプだけに、組織的なカバーリングに欠けて、度々乱れることになった。
 リスクを冒してでも世代交代を着手にしたのには、やはりプリンスリーグの導入のためだろう。今年のプリンスでは、高校勢や、同じクラブ勢でも夏に昇格しない3年生が引退する磐田や名古屋に対し、戦力の「層」で劣るところがあった。プリンスを勝ち抜き、ユース年代最高峰の高円宮杯に出場することによる経験値は、選手を大きく成長させる。今後は、プリンス→高円宮杯を中心に置いた育成スケジュールが、組まれることになりそうだ。
 そのため、今年の集大成となった高円宮杯の頃に比べ、現時点の実力は若干落ちる。選手の入れ替えのあった最終ラインだけでなく、中盤以上でもメンバーの組み替えでバランスを崩すことがあり、組織の成熟度はかなり落ちた。とはいえ、試行錯誤しつつ、予選通過の結果を出したことは大きい。山本真はチームの鍵を握る選手に成長し、篠田悠の高い決定力によって、阿部を抑えれば何とかなるチームではなくなった。石垣の空中戦はセットプレーにおいて大きな武器であり、防具である。高野美や岡村も含めて、伸びしろのある彼らが、激戦区であった予選を通過した勢いのままに勝ち進めば、高円宮杯のチームを越えることも可能だろう。全ては優勝候補筆頭、ガンバ相手の緒戦次第である。


■選手名簿
 別記参照方


■基本フォーメーション(名前の横は学年)

−−−−−−−阿部3−− 篠田悠1 −−−−−−

−鈴木真2−−−−−−−−−−−−−山本真1−
                  (上埜2)
−−−−−−−大瀧3−−−枝村2−−−−−−−

−高野美1−−村越2−−−石垣1−−−森安3−
(岡村2)
−−−−−−−−− 山本海3 −−−−−−−−−

 以上は、Jユースカップの出場時間11傑を、筆者がベストと考える布陣に組んだもの。実際に上記で戦ったことは一度もない。出場時間の12位以下は、岡村、篠田大、上埜、谷野、前田、高柳、柴田と続く。柴田が八木や獅子内と、受験勉強に励んだ高柳(学芸大への推薦に合格したそうで。おめでとうございます)が杉山雄あたりと入れ替わる可能性はあるが、この7名が有力な控え候補と言ってよいだろう。
 予選を通して、築館監督は、阿部・大瀧・鈴木真・枝村・篠田悠・山本真という、各年代トップクラスである攻撃のタレントを共存させるのに非常に苦慮しており、大瀧は左右MF・ボランチ・左SB、鈴木真がFW・左右MF・ボランチ、篠田悠がFWと右MFと、様々なポジションで試されている。大瀧・枝村で組む際の守備の軽さ、鈴木真がMFとして連携に難を抱える点、山本真の総合力と運動量を活かすには自由に動けるボランチがベストなことなどが、監督を悩ませるのだろう。が、個人的には上記を推す。枝村には走らせる役割を担わせることで覚醒を期待できるし、山本真の縦への突破力はサイドでこそ活きるものだと思うのだ。なお、鈴木真を左MFで使うのであれば、左SBは同期であり、劣らぬスピードで鈴木真に対応できる岡村を推す。
 なお、予選グループ最終戦で枝村と鈴木真が通算2枚目の警告を受けており、出場停止が決勝トーナメントにも及ぶようであれば、大幅な修正を求められる。左がMFを大瀧で、SBに岡村か篠田大、ボランチを森安と山本真、右がMFに上埜か谷野か柴田で、SBに高野美というのが、考えられる線か。


■主力選手
10:阿部文一朗 予選540分出場5得点。ポストやサイド突破もあるが、やはりエース。得点こそが仕事。▲○#
08:大瀧 義史 予選540分出場3得点。緩急自在の魔法の左足と粘りを武器に、最後の大会に挑む闘将。○#
03:村越 大三 予選540分出場2得点。闘志と声で統率する新・DFリーダー。潰れることを厭わない。
11:枝村 匠馬 予選540分出場1得点。展開力と得点力を兼備する現代型ボランチ。考える前に走れ! ▲◇#
24:鈴木 真司 予選539分出場。判断と走力の恐るべきスピードは、誰にも止められない。味方さえも。#
07:森安 洋文 予選450分出場。力強い競り合いと繊細なキックを持つ右SB。ミドル砲の精度は驚異。○
01:山本 海人 予選411分出場。確実なコーチングと、ありえない反射的セーヴでDFを支える守護神。△#
02:石垣 勝矢 予選388分出場。1年生ながら最強を誇る空中戦で、攻守に貢献するCB。足下も確か。
27:篠田 悠輔 予選341分出場3得点。冷静かつ狡猾に、ゴールを決めることに集中する、正しくFW。
15:山本 真希 予選270分出場。比肩ない運動量と総合力で、あらゆる場面に、あらゆるプレーで貢献。□!#
19:高野 美臣 予選258分出場。守備の基礎が確かな左右SB。ダイレクトクリアに判断と技術が光る。

17:岡村総一郎 予選213分出場。真司にも応対する高速で、サイド80Mを何度も往復するレフティ。
05:篠田 大輔 予選186分出場。着実な守備から、大胆な飛び出し、そしてクロスが真髄の左SB。
13:上埜 健太 予選152分出場。大瀧が左なら、魔法の右足は上埜。スピードのある突破もできる。
25:谷野 由紘 予選134分出場。1対1と周囲を見ての動きに長け、攻守に信頼できる万能型MF。
21:前田 陽平 予選129分出場。シュートに対する機敏な動きが魅力のGK。ロングキックも正確。  □!

△…U-18日本代表、▲…U-18日本代表候補
◇…U-17日本代表
□…U-16日本代表
○…静岡県国体少年選抜
#…二種登録
!…ナショナルトレセンU-16


■出身現役Jリーガー・チームプロフィール
 別記参照方。


■出場までの軌跡
09月21日:○3−1 湘南ベルマーレ(神奈川) 得点:阿部2、村越
10月25日:●1−2 柏レイソルY (千葉)  得点:阿部
11月01日:○3−1 湘南ベルマーレ(神奈川) 得点:村越、篠田悠、阿部
11月03日:●1−2 横浜FMユース(神奈川) 得点:大瀧
11月09日:○3−2 横浜FMユース(神奈川) 得点:大瀧、阿部、枝村
10月16日:△3−3 柏レイソルY (千葉)  得点:篠田悠2、大瀧

[参考・高円宮杯]
ベスト8(4試合2勝1分1敗)、得点8失点6(3位)
 得点者:阿部6、枝村2、谷野、獅子内、村越
 得点占有率:阿部135%、枝村125%、村越100%、獅子内20%、谷野20%


■試合展望
■ガンバ大阪ユース(Eグループ1位:4勝2敗、11年連続11回目(決勝トーナメント))
 最近の大会:03年高円宮杯  ・グループリーグ3位(予選敗退)
       03年クラブ選手権・ベスト8
       02年Jユース杯 ・優勝
 最近の対戦:○3−0 2001.08.05・クラブ選手権5位決定戦
       ●0−1 2000.12.29・Jユースカップ決勝
 対戦の予定:12月14日(日) 15:30 万博競技場

−−−−−出口−−三木−−−−−
−−−家長−−寺田−−松岡−−−
−−−−−−− 與 −−−−−−−
−森山−− 牧 −−丹羽−−河内−
−−−−−−−三橋−−−−−−−

 Jユースカップ決勝トーナメントに8大会連続出場の清水と、11大会連続(全大会)出場のガンバだが、何故か1度しか対決したことがない。その一度が3年前の決勝、ガンバが1−0で清水の三世代制覇の野望を打ち崩している。翌年夏のクラブ選手権、高円宮杯出場権を賭けた5位決定戦で再び対戦、今度は清水が3−0で雪辱した。その試合、ガンバのFW浅野の欠場もあって、阿部と三木の1年生大型FWの対決が実現したが、阿部が先制点を叩き込んだのに対し、三木はシュート0の屈辱を味わっている。他には、清水は対面の西村を封じる重責を果たした枝村と鈴木真が中学生ながら出場、ガンバでは寺田がボランチで出場したものの、前半で交代というやはり屈辱を味わっている。更に枝村は、3年前のJユースカップ決勝を知る、両チームで唯一の選手である(当時中学2年生)。
 今年のガンバの特徴は、何と言っても「黄金の中盤」。背丈はないが、4人共に優れた足下の技術を宿し、センスに溢れたショートパスとドリブルで幻惑しつつ、中央突破を仕掛ける。三木を軸とした2トップのポストプレーも冴え、丹羽に率いられた最終ラインも果敢に高い位置を保つため、中盤は重厚な厚みを誇る。何しろ、あの静学が、中盤勝負では完全に制圧されたのだ。同時に、一瞬の隙を突き崩す、寺田や家長の凶悪なミドルやアーリークロスにも要注意。一方で、サイドアタックの回数は少なく、ゴール前では決定力不足の傾向もある。
 予選を通じて殆どメンバーを変えず、熟成度を増してきたガンバは、ただでさえ「人の利」で清水を上回るだけでなく、トップの天皇杯の後座という、圧倒的な地の利も得ている。清水としては、せめて「天の利」があることを祈りたいものだ。昇格を決めた阿部と山本海が「あたっている」かに、拠る所は大きい。戦術的には、山本真を中盤の潰しで使うか、それともサイド攻撃の突破口として使うかが、重大な選択になるだろう。


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ひかる。 @H.P. [MAIL]

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