「ミナ ペルホネン」のデザイナー皆川明さんのトークセッションに行ってきました。
「ファッションとサステナビリティ〜ミナ ペルホネンといっしょに考える、ちょっと未来のファッションのこと〜」というお題でした。 リコロンと京都カラスマ大学と同志社大学が主催。 トークセッションのお相手は、京都精華大学講師の蘆田裕史先生。 お二人共、シンプルな白シャツ姿でした。 デザイナーというと、個性の強いトンガった人をイメージしてたのですが 皆川さんは自然体の、ふんわりした方でした。 蘆田先生は、読み込んで付箋を貼りまくった皆川さんの著書を片手に、トークをすすめられました。 ミナペルホネンは京都にも直営店のあるファッションブランド。 20年前、皆川さんが一人で始められたそうです。
★デザイナーになるきっかけ 皆川「高校時代、陸上をしていて、ファッションの道に進むことは全く考えてなかった。 高校卒業後、バックパックでヨーロッパを旅行していたところ、パリでファッションショーのバイトをしたことがきっかけ」
★デザイン学校へ。 皆川「文化服装学院の夜学へ進みますが、課題ができず、1年留年。 ファッションショーに出す服も友人に縫ってもらい、 3年間で、自分で作った服は1着だけです」
★ファッション業界への疑問 皆川「不器用だったから逆に、自分は何年やればプロになれるだろう? と興味がわきました。 セールはどうしてあんなに割引できるのか? 早いサイクルで流行が移り変わる世の中でいいの? といった疑問から、服だけではなく、システムを作ることを考えました。 ミナペルホネンではセールをしていません」
★ハギレ 皆川「ミナペルホネンでは4年くらい前から、 ハギレでバッグを作ったり、ハギレの詰め合わせをお店で売っています。 薄利で倒産していく生地屋さんが多く、アイデアがあっても形にできない人が増える。 モノづくりの現場がダメになっていくと思いました」
★レンタル 皆川「ファッションブランドとして変わった試みですが、ミナペルホネンの服はレンタルしてます。 糸から作ったりしているので高価な服が多く、学生さんにはなかなか買ってもらえない。 でも、着てもらわないと良さはわかりませんので」
★循環 皆川「究極の目標は、服を長く使ってもらって、循環しなくても良い社会。 今、椅子をつくってますが、裏地は違う色にしています。 10年経ってすりきれたら違う色が出てきて楽しめるように」
★永続性 皆川「洋服は、好きだから着るもので、丈夫だから着るということはない。 トレンドと関係なく美しいもの。主観が大事」
★ファストファッションが流行っているけど、買い手についてどう思う? 皆川「どうも思わない。 作り手が、魅力ある商品を作れるかどうかの方が問題。 安さ速さがもてはやされるのは、作り手の問題だと思う。 長く使う良さを体験してもらい、人生が楽しくなることを伝えられていない。 手間がかかってるから美しい、というのは違う気がするけど、やはり、美しいものは手がかかっていると思う」
★東京以外のお店を、京都と松本に出したのはどうして? 皆川「古い町並みが好き。ローカルの良さがある。 京都は昭和2年のビル、松本は築100年の元薬局に出店してます」
★ファッション教育について思うことは? 皆川「近江商人の三方よし(売り手・買い手・社会)という言葉がありますが、 私は、作り手(デザイナー・工場)の満足も大事だと思います。 家具屋だった祖父母から学びました。 ミナペルフォネンでは、生産の工程を見せる展覧会をしています」
★いい服ってどんな服? 皆川「感情的に満足。使ってる時に幸せ。機能として優れている」
<客席からの質問>
■ミナペルホネンの一番の魅力とは? 皆川「自分たちの最善を尽くしてることです。 でも、魅力はお客さんが思うことなので、自分たちから言うことはないです」
■永続性のある商品だと、経済が動かなくなるのでは? 皆川「それでも、好きなものを長く使って、感情が満足する方がいいと思う」
■着物のいいところは? 皆川「着物は、余り布が出ず、100%使えるところがいいです。修理して、長く使えますし」
■着物から、洋服に取り入れたい部分は? 皆川「洋服って、色・素材感でスタイリングするものですが、 着物だと、季節感・場所にあったストーリーでスタイリングできるところです ブラウスとスカートとバッグを、草原・空・鳥の柄にしてみるなど、ストーリー性を洋服で表現できるといいですね」
■ハギレを売った利益の使い道は? 皆川「児童福祉施設の進学支援をしてます。年間に二人、大学に進学しました」
■実体験が大事ということを伝えるために、何かしてますか? 皆川「何もしてないです。 無理に働きかけても意味がないので。 自分が良かったと思うことを言うのみです。 私は手に覚えるのが遅くて、幼稚園の頃、泥団子をつくるのも苦手でした。 ただ、ゆっくり覚えるから、その分工夫をします。 専門学校時代も、部分縫いが綺麗に縫えなかった。 今は、図案と形のみ決めてます。 みんなの得意を集めればいいと思います。 安く沢山作ってる人とは競争しない。 今のやり方が性格に向いてると思います」
<感想> 長く先のことまで考えて作ってるんだな(椅子の話にビックリ)ということと、 優しい話し方で、押しが弱いのが印象的です。 でも、人がついてくるんですね。
「作り手の満足が大事」。潰れたブランドもいっぱいある中で、理想を20年貫き通してるって凄いことです。 デザイナーって、デザインだけじゃなくて生き方とか思想も売ってるのですね。
<会場にて> 司会の持木さんが、ミナペルホネンの着物を着てはって、超可愛かった!! 写真じゃ伝わりにくいんですけど、 近くで見ると、花柄の総刺繍なんですよ。 色も綺麗だし細工は細かいし、素敵すぎる。 帯も刺繍です。可愛い。

私は、後ろに座ってた方から、「帯可愛いですね。どうやって結んでるんですか? 帯留めは自分で作ったんですか?」と色々聞かれました。 (こちらのブログの方でした)
隣に座ってた方は銘仙をリメイクしたワンピースを着てはって、可愛かったです。 お客さん9割方女性でしたが、可愛い方が多かったなぁ。
帰りは、寺町通を歩いて、新島会館から河原町駅まで帰りました。 後ろを学生3人組が歩いていて、ファッション業界の未来や「皆川さんの話が聞けてよかった」ってことを、熱く語ってはって、微笑ましかったです。
<今日のコーディネート> そらこさんの半幅帯。

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