つなび。まえりの本棚(日記に出てた本はココに) can't be alive without you. why don't I miss you まえりの覚え書きリンク集。 四畳半? 人形プログはココ。 FROM 携帯 よゆう入稿
2002年12月23日(月) ハルナさんに捧げるシム若善。

 僕は雪の中を子供の手をひいて歩きながら、いったい自分はどこに行きたいのだろうかと自問自答を繰り返していた。
 子供の手は冷たい。
 強く握ればギュッと雪が溶けて締まるような音がするから、強く掴むことは出来なかった。
「じんぐるべぇる、じんぐるべぇる」
 子供は一人楽しげにクリスマスを祝う歌を歌っていた。
「まま。まぁま」
 じゃれるような声がして、足早に歩こうとする僕の身体にもたれ掛かるように甘えてきた。
「もう少しだ」
 そういって、子供の姿を視界に入れないように、僕は歩く速度を速めようとする。

 念願が叶っての養子だったのだ。若宮は思っていた以上に喜んでいたし、勿論僕も心の底から家族が増えることを喜んでいた。
 なのにこの仕打ちは何だって言うんだろう。

 ギシ、ギシ。

 家を出る頃から降り出した雪は、今はもう辺りの闇さえも白くかき消されそうな吹雪に変わろうとしていた。そろそろ若宮が家に帰ってくる時間だった。あの置いてきた手紙を読んだ頃だろうか。

「まぁま?」

 不安そうな声に、僕は手をひいていた子供の顔をついつい見てしまった。

「・・・まぁま、かなしいの?」
 
 愛らしい顔をした子供の首から下は、雪だるまでしかなかった。

* * *

 ・・・三日三晩、寝ずに育てた僕達の子供は雪だるまだった。
 男の子だから”来須”という名を用意していた。人並みに幸せな家庭を持つ自分の姿を空想して、少し照れくさいような甘い気持ちを味わっていたというのに、こんなことってあるだろうか?
 僕は咄嗟に子供の手をギュッと掴んで、この子を捨てに行こうと思った。
 ・・・コレは悪い夢に違いない。そうだ、なかったことにしてしまおうと思ってしまった。家から一歩外に出ると、街はクリスマスのために用意された雪がチラチラと舞い落ちて、枯葉が舞っていた冬空を華やかな純白で覆いだしていたのだ。
 ゴロゴロと音を立てながら子供は横を歩いてた。
 雪だるまは足跡を残さない。
 だからあの若宮と暮らすあの家からここに至るまでの道程にも、僕の足跡しか残ってはいないのだ。僕の革靴がつけた足跡だけが、ポツポツとこの白い雪を汚すように跡を残しているんだろう。それももうきっと、こんな吹雪では砂糖がけされたケーキのように消されていってるんだろうな、と苦く思う。

 あの手紙を読んで、若宮はどうすることを選ぶのだろう。

 選択件は残してきた。
 だから僕はただこの子の手をひいて、あの家から遠く遠く離れていくことしか今はできない。
「もういいよ。まぁまはもういいよ」
 家を出てから初めて僕と目が合うと、雪だるまの子供は小首を傾げるようにして僕を見てきた。

「”来須”はいらないこなの。”来須”はしっているの」
 まるで人形のように表情なく、ぽつりと子供は言った。
 ・・・その子が吐く息は白くて。

「・・・いらないこだから、ボタンをおしてけしてしまっていいよ?」  

 ああ、こんなに息を白くして、きっと寒いに違いないと思って、僕はその場にしゃがみ込んで、雪だるまの子供を抱きしめた。当たり前だったが、子供の身体は冷たくて。その小さな肩に寄せた僕の頬は雪に当たって冷たさにあまりにキリキリした。

「・・・いらない子なんていないよ。いらない子なんていないんだよ」

 雪で出来た小さな肩に涙を零しながら、僕は小さな声で子供にそう伝えた。本当はもっと早くに、こんな所まで連れてくる前にそう言ってやらなければならなかったのに。

 僕は初めて、心の底から若宮が早く追いかけてきてくれればいいのにと思った。僕達に追いついて、あの中途半端に甘い笑顔で(さぁ一緒に帰りましょう)と言ってくれればいいのと、本当に心の底から願っていた。



ハルナさんの日記があんまりにも面白すぎたので書いてみた”シム若善と初めての子供”でした・・・。悪いなぁとは思ったんだけど死ぬほど笑いましたよ。「ありえへん!」と叫んでみたね。なんで雪だるまのデータなんか入れたまま、子供を作ったりするのだろう・・・(遠い目)。
あんまり面白かったので電話してて出来たのがこの話でした。雪だるまの子供を捨てようとするハルナさんの心の葛藤を描いてみました(悪趣味)。だってあの人、『フリーズした瞬間、すっごく複雑な気持ちだった・・・』とか言うんだもの!むしろ雪だるまを大切に育てて欲しかったです。子供が溶けてしまうといけないので、水風呂と冷房の日々が続くシム若善家。ある意味ポエムだと思われ・・・。

もし私がシムをする日が来たら、同じ過ちは繰り返すまいと思ったよ。教訓、ともいう。


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