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2026年01月25日(日) ■
将門塚と菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール
菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール コンサート2026@大手町三井ホール大手町三井ホールって初めて行くな、どこだっけと調べたら平将門の首塚のお隣さんだった〜そして皇居ビュー 「魚になるまで」ってPTAでは初演だっけ? いやー素晴らしかった(いつも素晴らしいが)[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Jan 26, 2026 at 0:28 ホールが入っているOTEMACHI ONE(三井物産ビル)、散歩で何度か行ってたとこだったわ。将門塚にもその都度お参りしている。人一倍宗教とスピに厳しく伝承と信仰を重んじる人間なので、お参りはちゃんとするんです。 ----- 菊地成孔(cond/sax/vo/perc/cdj)/ 林正樹(pf)/ 鳥越啓介(cb)/ 早川純(bdn)/ 堀米綾(hpf)/ 田中倫明(perc)/ 大儀見元(perc)/ 牛山玲名(vn1)、田島華乃(vn2)、舘泉礼一(va)/ 関口将史(vc) ----- 2026年のPTA、最初の仕事は将門の鎮魂から(違う)。この時期のコンサートというと雪のBLUE NOTE を思い出すなあ。冬に聴くPTAは格別。 カンファレンスホールとしても使われる(というか場所柄そっちがメインなのか)会場ということもあってか、座席が可動式。前方のブロックは平場にパイプ椅子を並べた状態で、段差がない。前列に大柄の男性が座ったので視界がかなり分割されてしまったが、真正面かつ立奏の鳥越さんはガッツリ見えた。無理せず見えたのは林さん、菊地さん、大儀見さん。懸命に首を伸ばして見えたのは早川さんと田中さん。堀米さんとストリングスの4人はほぼ見えず(泣)。音はよかった! 『天使乃恥部』のリリパ(1日目 、2日目 )以来のPTAだったので、鉄板のセットリストをリラックスして聴けた。とはいうものの、ここ数年クインテットのレパートリーだった「魚になるまで」をやったのにはシビれた。SNSでご本人が予告していたので「ええ、あれをオルケスタの編成で!?」と楽しみにしていたのだが、いやこれがまた最高だった。ストリングスが入るとエレガンスが増す! リリックの怖さが際立つ! 夜の高速マジ怖い! クインテットのスリリングさとは違う肌触り! なんというかリンチの映画を観ているような(それはあなたが先週『インランド・エンパイア』 を観たからでは)……しかもそっから「CARAVAGGIO」に繋げよった。おおお! 「京マチ子の夜」アウトロや「Killing Time」のアウトロ、「ルペ・ベレスの葬儀」導入の早川ソロ(「東京-ブエノスアイレス」の変奏かな)前に「Le Rita」を挟み、展開が増えていたのも新鮮。メンバーが固定されている強さは柔軟性を生み、瞬間瞬間の揺らぎ=訛りが楽団全体でほぼ同時に起こるという光景を何度も目にする。「Killing〜」のブリッジ後って、以前はズレてしまったらリカバリに時間がかかっていた記憶があるけど、今は「そういう構成」として聴けるものになっている。 それにしても今夜の鳥越−田中−大儀見ラインは恐ろしかったですね。いつもだが。3人とも満面の笑みで。田中さんと大儀見さんがやり合ってるとき、鳥越さんが「このひとたち何やってるのよ……」と吹き出したりもしていた。ここに林さんがハンドクラップで加わるのも楽しい。といえばこの日の林さん、ソロをはじめ全体的にリズム感が変わっていてその都度瞠目。 『New York Hell Sonic Ballet』ってエポックだったよなあ。林、早川、鳥越の三氏(菊地さん曰く同期)が揃ったことが、このオルケスタが続く要因のひとつになったように思う。林さんと鳥越さんの「楽団のリズムを体得した上でどれだけ遊べる(=自由に演奏が出来る)か」具合、この10年で大化けしましたもんね。そのおかげで(?)腕を買われて皆さん売れっ子になっていき、スケジューリングが難しくなるのだが。菊地さんが「自分は何も頭抜けたものはないが(謙遜)、こういう素晴らしいミュージシャンと出会える才能を持っている」みたいなこといっていたけど、それは慧眼というんだよ! あとこんな猛獣みたいなひとたちをまとめられる才能が頭抜けてるだろう! えっそれって猛獣使いってこと? まあ菊地さんが猛獣だからな(真顔で)。 それと近年つくづく思うのは、クラシックの演奏って同じ楽曲でも指揮者によってエラい印象変わったりするじゃないですか。それだよ(どれ)! 楽譜は残る、楽器もPAシステムも残る、でもこの演奏は今ここにいる指揮者と演奏家でしか生まれないもの。このスリリングな「合奏」を、他の誰で聴けるというのだ。PTAの楽曲は将門塚のように遺り続けてほしいものですが(無理矢理繋げる)、こんな指揮者のふたり目なんていつどこに出現するんだよ〜。 なんてことをいつにも増して痛感したのは、年齢の話から田中さんが「あとどのくらいやれるかな、いつまでやれるかな」なんていい出したから。それを受けた菊地さん、「わかる、俺もそう思うもん」。その後近年の鉄板MC、養子になりたいネタに移行して笑わせてましたが、時折ふと入るこういう会話に切なくなってしまう。田中さんはジャパニーズサルサのオリジネイターですが、その話から「本来のサルサマナーと違うなーって思い乍らやってるでしょ」「そう、翻訳し乍らやってる感じ」「でしょ? ごめんね変なのやらせて」みたいな会話も興味深かった。そのジャンルが日本に輸入された黎明期に現場にいて、それが日本独自の文化とミックスされていく歴史を目撃とともに体験し体得している演奏家が、この楽曲を演奏するからこうなるんだよ。他に誰がやれるっていうんだよ。こうとかそうとかばっかりいってるが。という訳で歴史だいじ、積ん読のこれもいい加減読まな……。・『欲望という名の音楽 狂気と騒乱の世紀が生んだジャズ』二階堂尚┃草思社 御多分に洩れずPTAも中国公演が中止になったそうで、その分日本公演が一本増えたとのこと(夏にスタンディングだって。楽しみ)。昨春のNKDS中国ツアー(北京、上海)はとても盛り上がったそうなので、PTAでも行ければよかったのにね。珠也さんなんて秋にも北京に行って、その現場で公演を中止にされちゃった んだよね…半年でこうも状況が変わるなんてなあ……。その話の流れで「この楽団のメンバーを全員揃えられるスケジュール組むのがどんなにたいへんか判るでしょ? 7日間押さえられるなんて奇跡だったんだよ! スケジュールは林さんと鳥越くんが握っている! 俺のスケジュールは林さん次第!」とかいい出してウケた。そこから「家で『徹子の部屋』観てたらゲストが小野リサさんで、ピアノが置いてあるからま、まさか……と見てたら林さんが! 林さんが出てきた! 『徹子の部屋』に林さんが! 俺ひとりで部屋でひっくり返った!」とかいう話になってなおウケた。林さんは終始ニコニコと困った顔をしてた。林さんいじりも恒例になりつつある。 つーか7日間押さえてたってことは複数箇所まわるんだったんだろうなあ。残念ね……。 それはともかく、戦前と戦後はPTA、戦中はdcprgが担当しているという話には妙に納得させられてしまったのだった。カナリヤだもんねこのひと。今dcprgが不在ということが、災禍となるか福音となるか。久しぶりに唄われた(私は多分初めて聴いた)「戦前と戦後」に戦慄するとともに、早くこの曲を呑気に聴ける時代(=戦後。でも戦後は戦中を通過せずして来ないのよなあ……)が来てほしいと強く願う。といいつつ「ハンドマイクで唄ってる!」と妙なところに反応もしてしまう。非常時の呑気って命取りだけど、そのおかげで命拾いすることもあるよな。 そういえば菊地さん、「昨日『Catch 22』やったんだけど」っていってた。なんだと、クインテットでやったの(前日KAMATA JAZZ にクインテットで出ていた)!? 今dcprgのナンバーが演奏されることの恐怖よ、もはや今は戦中なんだなと実感。悲しい。 (20260201追記:この方のツイートによると 「アンコールで菊地成孔クインテットに須川崇志と石若駿呼んで7人のセッション」 で「Catch 22」をやったとのこと) その他。 ・スーツはフルオーダーメイド、靴もフルオーダーメイド、ボウタイは洋服の青山 ・家に忘れてきたそうです ----- setlist 01. 闘争のエチカ 02. 京マチ子の夜 03. 魚になるまで 04. CARAVAGGIO 05. 嵐が丘 06. 色悪 07. Killing Time 08. Le Rita 09. ルぺ・べレスの葬儀 encore 10. 戦前と戦後 11. 大空位時代のためのレチタティーヴォ 12. 大空位時代 -----・将門塚(スポット紹介)┃Visit Chiyoda 千代田区の観光情報公式サイトでも紹介されています。高層ビル群に囲まれた塚の風景は一見の価値あり。お近くにお越しの際は是非寄ってみてくださいね・「平将門の首塚」が大手町の超一等地から撤去できない「ゾクリ」とするワケ┃ダイヤモンド・オンライン 『正直不動産』を思い出してニッコリ。こういうのだいじよね……オカルトノリでどうこういうようなものではないのよ、やっぱりこういう言い伝えがある場所をおろそかにしちゃいかんのよ
2026年01月21日(水) ■
『28年後… 白骨の神殿』
『28年後… 白骨の神殿』@TOHOシネマズ新宿 スクリーン11私もレイフファインズのように困難な世をDIYで日々乗り切り、音楽を愛し、ひとに優しくいたいと思いました…って何、めちゃめちゃいい話だったよ!? 途中すっごいツイストするけど!? なんだったのあれ🤤最高か(ポスター撮ったらうまいこと十字の光みたいなのが入った)『28年後… 白骨の神殿』[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Jan 22, 2026 at 0:24 『28』シリーズは、ジェレミー・レナーが出ているからという理由で『28週後…』だけ観ています。DVD鑑賞だったので感想書いてないけど、これもとても面白かった。非常時の人間性が露わになるというか……感染者を封じ込めるために街ごとナパーム弾で焼き尽くすシーンが今でも忘れられない。非感染者もろとも焼いちゃう。ああ、こうやって火が拡がるんだ、悠長にバケツリレーなんかやってたら丸焼けだわと納得させられるだけのリアルな恐ろしさがありました。 今作は『28日後…』『28週後…』『28年後…』に続く4作目。『28年後…』だけで2作あるんですよね(ややこしい)。そして『28年後…』は三部作になるということで、次回があるようです。レイフ・ファインズが出ているからという理由で、前作を観ていないまま映画館へ。というかレイフは前作にも出てるんだけど見逃したままです。 一応基本知識として、今シリーズの「ウイルス感染者」は所謂「ゾンビ」ではなく、通常のゾンビ(何それ)とは違い死んでません。病人なのよね。だから治療法さえ見つかればなんとかなる筈なんだけど、感染から発症のスピードがあまりにも早いので医療が追いつかず、感染源を閉鎖・隔離するしかない。世界から見捨てられたイギリスは、文明も産業も28年前で止まったまま。これがわかっていれば話に乗れる。 という訳でなんだなんだというシーンから始まりますが、まあ大丈夫。ちゃんと流れは掴める。こんな荒廃した世界では、力のあるひとについていけば喰いっぱぐれないし、逆らうことは出来ないよなあ。で、こんな世界になっちゃったら、こういうエセカリスマが出てくるよなあ……と思っていたが、あれ? こいつなんか見憶えがあるな……ジミー・サヴィルじゃん! イギリスのジャニー喜多川! そうとわかるくらい見てくれを寄せてる。髪型、服装、間違いなく彼を連想させる見た目になってる。大体名前もそのまんまジミーじゃねえか、最悪だ。 暗澹たる気分になる。子どもが生き延びるためにはこんな大人に支配されるしかないのか。そんでこんな環境にいたら、そりゃ理性も倫理もバグるわな。この子たちに知識を得られる機会があれば、道徳心を育む場があれば……。あー世も末だ。早くこいつに罰が下されないかなー。死なないかなー(ヒドい)。いや、死んだら苦しまなくて済むようになるから、「死んじまえじゃなく生きちまえ」(©松尾スズキ)だなー、一生苦しめ。と念じ乍ら観る(もっとヒドい)。 一方レイフ演じるケルソン医師は、あばら屋で暮らし、日々薬を調合し、レコードを聴き、書物を読み、死者を弔い、その骨で神殿をつくっている。……と書くとつましい暮らしのようですが、この神殿の規模がまあすごい。こんだけ死んだんかとも思うし、それをひとりで全部つくったこのひとも相当ヤバいというか常軌を逸してるんですが、まあこんな世の中なのでな。そんなある日、ケルソンはひとりの感染者と出会います。その風貌からサムソンと名付けられた彼は、ケルソンの投薬により凶暴性を抑制することが出来るようになります。ケルソンは医師の観点から、サムソンの治療が可能なのではないかと思い始め……。 ケルソンのキャラクターがとにかく魅力的。医師としてはそれかなりヤバくね? と思うところもあるけれど、こんな世の中では(こればっかり)安息を得るためモルヒネ使い放題で何が悪い! 一周まわってこんなニンゲンになりたーい! と思わせてくれます。音楽の趣味も最高。イギリスは28年前でカルチャーも止まっているので、ケルソンのレコードコレクションには新譜がない訳よ。Duran Duran大好きっ子なのよ。もう好感度爆上がりですよ、彼が若い頃から愛聴してたものなんだなあなんて思って。それを日々おうちでかけてふんふん唄ったり踊ったりする。その昔鴻上尚史にとんでもない音痴だとバラされた(『ドン・キホーテの休日』 参照)レイフですがそんなことないわよ! おうたもダンスも素敵よ! ジミーズを迎えたお祭り(!?)ではIron Maidenかけちゃう。PAシステムを自作! 火を使った演出も自作! 魔法の粉(?)も自作! 久々の来客がうれしくて張り切ったんだなーってのが伝わってきて泣いちゃう! ジミーズは爆音のなか踊りまくるケルソンをポカーンと見ているのだけど、途中からハイになって笑っちゃう。ワタシこの子らと同じ顔で観てたわきっと……。この子たちも心の底から笑ったのって久しぶりだったんじゃなかろうか。そう考えるとまたせつない。 そんなこんなでケルソンとカリスマが対決、色々あって決着。カリスマのトラウマも昇華される。彼も幼少の心の傷がなかったらこうはならなかった訳で……テレタビーズのエピソードが切ない。あんなに「生きちまえ」と思っていた彼も、もとからこんなだった訳じゃなかったんだよ! あんなとかこんなとかばっかりいってますが! 総じてニンゲンは憎らしく、同時に愛おしいものですね。ジャック・オコンネルのド怪演、素晴らしかったです。 それにしたって「こんな世界」は今と地続き。現実も世も末。『28週後…』を観たときよりもその思いはより強くなっている。人間が人間であるためには、“知識を得て、心を開き、自転車に乗れ!”とSOUL FLOWER UNIONの歌を口ずさむばかりです。ニンゲンを諦めず、ちいさなことからひとつずつ。涙。 ところでレイフ以外のキャスト知らずに行ったんですが、最後の最後にキリアン・マーフィーが出てきてたまげた。えっこれは次回の布石? いや次回ってか一周まわったのか(キリアンは『28日後…』の主役)……そう考えるとウワーンてなるな。『28年後…』第3作がどうなるのか楽しみになりました。ニンゲンを信じたいよー! -----・「外国人」がじつは「日本のカラオケ」に対して不満に思っていること(鴻上 尚史)┃外国人が見たニッポン 現代新書 鴻上さんここでもレイフのカラオケ話書いてた、アルメイダ劇場が来日したときのエピソードです。よっぽど印象に残ったのでしょう、「ホテル・カリフォルニア」を唄うレイフ・ファインズ……同席していた真田広之さんは椅子から滑り落ちそうになった、とのこと(…)
2026年01月17日(土) ■
total stage produce『サド侯爵夫人』
total stage produce『サド侯爵夫人』@紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAあの美文がこうもするする理解とともに耳に入ってくるか。演者の力量がないと成り立たない見事な舞台でした。三島由紀夫が観たらどういうかな。あのシーンにヴィジュアルを与えたことについての感想も聞いてみたいなあ……『サド侯爵夫人』[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Jan 17, 2026 at 21:29 感想を読んでまわっていたら、初日はかなり台詞が不安定だったらしい。人間だもの、プロといえどもいくら稽古を積んでも観客が入った初日というものはやはり感覚が変わりますよね……という訳でちいさい声でいうと、仕上がった時期に観られてよかったかも。ここ迄台詞がスパスパ頭に入ってくる三島戯曲は滅多にない。 そもそも三島戯曲は文学としての戯曲だという印象が強く、三島自身が実際の上演に納得することなどあるのだろうかとすら思ってしまうことが多い。どんな上演があっても「ふふん、やはり私の書いた文章を超えるものにはならないな」と思っていそうな……。全ての情景を文章で表現出来るという作家の自負を感じる。そこが魅力でもある。 それでも演劇人たちは三島戯曲に挑む。あの美しい言葉を自身の肉体を器として響かせたい、あの情景を舞台で表現したい。宮本亞門は、三島に挑み続ける演出家だ。今回の上演は、「天の時・地の利・人の和」が揃ったといっていいものではないだろうか。宮本さんの元に集った、三島の「美」を舞台に載せられる演者とスタッフは、「今」しか出来ない作品をつくりあげた。 配役は成宮寛貴(ルネ=サド侯爵夫人)、東出昌大(サン・フォン伯爵夫人)、三浦涼介(アンヌ=ルネの妹)、大鶴佐助(シミアーヌ男爵夫人)、首藤康之(シャルロット=モントルイユ家の家政婦)、加藤雅也(モントルイユ夫人=ルネの母親)。ホンはアレンジされており、通常なら3時間を超える上演時間を2時間に凝縮。 入場すると、既に音が鳴っている(音響:鹿野英之)。地響きのようなノイズ。これから始まる舞台が不穏と緊張に満ちたものであることを暗示するような音だ。舞台奥には8本の円柱が半円状に配置され、天井と舞台中央には穴が空いている(美術:久保田悠人)。宣伝美術(加藤賢策)でも「円=穴」は強調されていた。「円」は三島いうところの惑星の運行を示すものだろうが、その円を穴で表しているのは何故だろう。実際に舞台を観ると合点がいく。サド侯爵の不在を表す「穴」、夫の帰りを待ち続けるルネの心の「穴」、そしてサン・フォン伯爵夫人の語りとルネの語りから浮かび上がる、女性器としての「穴」(ルネが母にいい放つ「鍵穴」が決定打でもある)だ。モノトーンの美術は光によって色を変える(照明:佐藤啓)。 それぞれの人物像を象徴するヴィジュアル(衣裳:ツグエダユキエ、ヘアメイク:山本絵里子)も見事。漆黒が基調。サン・フォン伯爵夫人のBDSM(B=Bondage、D=Discipline、SM=Sadism & Masochism)、モントルイユ夫人の威厳と老いを包む喪服のようなドレス、アンヌのアクティヴなゴシックファッション(山田さんの容姿を際立たせるもので、THE 矢沢あい作画だった!)、襟も袖も詰まったシミアーヌ男爵夫人の修道服、使用人シャルロットの寝巻きのようなワンピース。ルネ以外の人物は、幕間にスーツへと着替え舞台を歩きまわる。そんな迫力に満ちた黒に囲まれ、ルネだけは一見質素にすら見える純白のドレスで通す。しかし彼女は最後に“脱皮”する。そこには黒も白もなく、肉体の色だけがある。 この、三島台詞に対抗するかのようなヴィジュアルをもってあの美文を語るのだから、役者に強度がないと務まらない。サン・フォン伯爵夫人に東出さんをキャスティングしたのが大当たりだった。あの身体にボンデージ、姿勢のよさ、声の強さ。超然とした佇まいに息を呑む。悪徳の栄えだ。後半、自身に悦びをもたらした饗宴について語るサン・フォン伯爵夫人が纏う真紅のマントは、その後彼女が流す血の色を予見しているようでもあった。それは翻って、狩猟で生きる糧を得る東出さん自身をも映し出したように思えた。個人的に唸ったのは加藤さん。過度なメイクもなく、ウィッグもなく、しなを作ることもない。しかし彼女の身体は“母親”であり“家長”だった。第1幕(1772年)、第2幕(1778年)、第3幕は(1790年=フランス革命勃発後9ヶ月)と、経年の変化を表現する技量にも脱帽。身体はひとまわりちいさくなったように見え、声のトーンもしわがれたように聴こえた。それでも言葉はしっかりと耳に届く。 聖職者でありつつ最も俗で、美徳の不幸そのものを感じさせたシミアーヌ男爵夫人を演じた大鶴さん、無邪気であると同時に生きる術を知っていて、姉への慈しみを持ち続けるアンヌを演じた山田さんも、心に焼き付くような演技を見せてくれた。首藤さんは民衆を代表するシャルロット。ナレーターとして舞台と観客を繋いだ。作品の時代背景や、この戯曲が三島自決の5年前に書かれたことを解説する。後ろ盾を失いつつあるモントルイユ家を軽蔑するかのような「はい」の繰り返しには迫力があった。 時代も社会情勢も劇的に変化していくなか、強烈なキャラクターに囲まれ、様々な因習を突きつけられるルネ。妻とは、貴族とは、女性とは……。それでも彼女は自分で自分の生き方を選択する。「アルフォンスは、私だったのです」と宣言し、その後老醜を晒したアルフォンスの肉体に別れを告げる。夫の目指す「永遠」の果てに何があるのか、神に尋ねるためだ。 蛹が蝶になるかのように、異形が翼を得て翔び立つように光に向かって歩いていくルネ。肉体を鍛え上げた末に自決へと至った三島に、幕切れの成宮さんの肉体を重ねて見る。同時に彼は、俗世のガワを脱ぎ捨て生まれ変わったルネをも見せてくれた。 前述の「ヴィジュアルを与えたシーン」は人間テーブル。サン・フォン伯爵夫人の語りから想像を膨らませるであろうところが、今回は舞台奥でその饗宴が視覚化された。ここがいちばん三島に観てもらいたかった、三島の感想を聞きたいと思ったシーン。澁澤龍彦が喜びそうなシーンでもあった。くっそなんでふたりとも死んでんだよ。作品は永遠の命を得ているのに。 オールメールの『サド侯爵夫人』は2008年に鈴木勝秀演出で観て以来(初日 、楽日 )。このとき耳に入った「ほんっと、これって目で読む台詞だよね、耳で聴く台詞じゃないわ。でもちゃんと耳に入って来た!」という観客の言葉を忘れられないでいる。こうした舞台にはなかなか出会えない。そんな作品がまたひとつ増えたことがうれしいし、当時自分が抱いた解釈が更新されたことがうれしい。何度観ても気づきがある。宮本さんが演出する三島作品はいつも刺さる。 そして成宮さん、おかえりなさい。あなたが再び舞台に立つ姿を観られたことが本当にうれしい。 -----・これが新たなミシマ世界…成宮寛貴主演「サド侯爵夫人」に宮本亞門が手応え┃ステージナタリー 宮本:なかなかこの戯曲で生でぶつかっていくエネルギーが生まれないので、語尾や、あえて衣裳やメイクもすべて省きました。三島さんの気持ちが一番染みいるように、そして中身がお客さんに届くように持っていきたいと。 衣裳やメイクをデコラティヴにしなかったの、とても良い効果だった。演じる側はそれに頼れないので怖いかもしれないな(それがいい) ・成宮さんは12年ぶりの舞台とのこと。『太陽2068』 以来だったんだなー。今回の舞台、蜷川さんにも観てもらいたかったな
2026年01月16日(金) ■
18年ぶりのJOY HEIGHTS
JOY HEIGHTS@baroom(演奏中に地声で)中村「さっきどうやったっけーッ!!!」もも「思い出そうとするなーッ!!!」18年ぶりのJOY HEIGHTS最高でございました!!! 名古屋と京都でもやるってよ!!![image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Jan 17, 2026 at 0:55 ほぼインプロで2セット、キーワードっぽいのはあったみたいだけど皆でそれってどうだったっけ? とかいってたところにtatsuが淡々とリフ出しするもんだから達也さんが「ひとりだけ憶えてるひとがいるーッ」といって大ウケ。tatsu流石やで……。 ----- 大友良英(1959生):g 中村達也(1965生):drs 百々和宏(1972生):g tatsu(1967生):b ----- メモとして生年入れておいた(後述)。こうして見ると50〜70年代と幅広い年齢層ではないの。 という訳で、なんと18年ぶりだそうです。「UNITでやったよねえってさっき楽屋で話してたんだけど」と達也さんがいってた。行った行った〜 。当時おおともっちは自分がおっさんなことを気にしていたが、18年経った今は皆おっさんです! 観てるこっちもおばさんです! 大丈夫! しかしあのー、大友さん『あまちゃん』の音楽やって以降なんかいでたちがシュッとしましたよね(笑)ライヴ以外で人前に出ることが増えたせいだろうか。 しかしこのくらいの歳になってくると、全員無事で揃うこと自体が奇跡のようなものなので、ひたすら感謝感謝ですよ。皆元気でよかった。 baroomは円形のセンターステージで、客席もステージをぐるりと取り囲む配置。便宜上客席入口を起点として、時計まわりに中村、大友、百々、tatsuという並び。全員向かい合って演奏。私の席は大友さんの真後ろ。よって大友さんは背中しか見えず。大友さん用のモニターもこっちを向いているので音は直撃。しかし真向かいのtatsuのアンプもこっちを向いているのでベースの音もバッキバキに届く。ドラムは元々の音がデカいのでやはりバッキバキ。百々くんの音がいちばん捉えづらかった。結果今どこ弾いてる? といちばん百々くんを見ていた。視覚の助けを借りて聴いていると、かなりサイケデリック/エクスペリメンタルな音を出しつつキーになるリフを出していた。格好いい! JOY HEIGHTSの名にふさわしい、どこ迄アガるのという展開続き。展開展開また展開、これ以上? まだ先がある? の連続。18年前と変わらない瑞々しさと多幸感。毎日が本番、毎日が練習。全員がずっと現役で、全員がずっとライヴを主戦場にしている(と思う)。そりゃ18年ぶりでもJOY HEIGHTSでしかないダイナミックな音を出せる。 大友さんは前回ttも使っていたが、今回はgに専念。摩弦用の弓をかなりの頻度で使っていた。マレットも置いてあったけどそれは使わないままだったかな。tatsuも今回はエレベ一本。基本インプロなので、リハはやったものの誰からどう出る、みたいなものはぶっつけ本番ぽかった。なので前述ツイートのような「どうやったっけ」というやりとりがある(笑)。2ndセットの冒頭なんて、達也さんがドラムセットをじーっと見たり撫でたりして何も始めず(いや、これも仕掛けだったのかもしれないが)、他の3人も静かにチューニングを続けてしばしの間シーンとなる。そこで達也さんがひとこと、「……このまま誰も何もしなかったりして」。場内爆笑。それもインプロですなってかもはや現代音楽? MCは達也さん。「司会の中村達也でございます」とかいってた。てか他が喋らなすぎ。達也さんは気配りのひとなので、曲間の静けさが耐えられない感じであった。とはいうもののtatsuはもともと喋るひとじゃないし、おおともっちも自分のバンドじゃなければ進行しなくていいので喋らずニコニコしてるばかりだし、という感じなので、必然的に中村さんは百々くんに話しかけることになる。「ももくん今日は呑まなくていいの?」「呑んでません!」とか。ももくんがシラフ、貴重(笑)。そのぎこちなさに反して、全員めちゃめちゃ楽しそうだった、何しろtatsuが笑いましたから。達也さんの「(インプロの王)吉田達也呼んでこい!」にも大ウケ。大友さんも終盤ちいさな声で「ヒャハハ、楽しい、楽し〜い」」と呟いておられました。 といえば一曲ディック・デイルの「Misirlou」からdipの「9souls」に展開していくような曲があってあれば萌えたわー。「ヤマジ!!!」と心のなかで叫んだ。ここらへんのシーンの繋がりを勝手に感じてじんわりくる。ギターはリフ、ギターはコード。 ところで達也さんが「もう50代はももくんだけでーす!」っていってて、そんなバカな、tatsuも50代の筈よ? と気になって調べてみたんだが、実際tatsuはまだ50代だったんだが、来年還暦であった。達也さん数え年でいった? そうか、tatsuも還暦か……ちょっと信じられん。このひとある時点から見掛けが全然変わってない。 -----開演前は撮影OKだったので。目の前がおおともっちのセッティング[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Jan 17, 2026 at 2:58 最初で最後のbaroomになるかなあ、閉まっちゃうのホントに惜しい。音響といい雰囲気といい、めちゃめちゃいいハコだった。やはり立地が問題なのか? 渋谷と六本木の丁度中間くらいのとこ。レッドシューズの近く。どの駅から行っても徒歩15分↑かな。まあバスもあるけど…タクシー使う手もあるけど……。 開演時間に間に合わないしと諦めた平日の公演結構あったんですよね。ライヴだから遅刻してもなんとかなるかな、と思ったこともあったけど、今日行ってみてこれは厳しいと実感。指定席で、入口はステージの真後ろ一箇所。席によっては演者の目の前を横切らないと辿り着けない。演劇に遅刻するくらいハードル高かった。 運営会社移転に伴い閉店とのことなので、移転後いい場所があったら復活してほしいと今から願っているけれど、この円形のステージを設置出来るスペースはなかなか見つからないだろう。残念です ・といえば、zaikoがQRコード提示になってて助かった(オフラインで使える)。以前はスワイプ(もぎり)方式だったよね? それとも興行主によって変わるんだろうか。予約方法がzaikoというところもbaroomの公演に二の足を踏む理由のひとつだったんだが……。今回も「入場時に施設内のWi-Fiが使えなければポケットWi-Fiを持参しますが、どうでしょう?」って問い合わせして、「受付付近でご使用いただけるWi-Fiはございます。チケットご購入時のお名前でもチェックイン可能でございます」とお返事頂いてたのに(素晴らしいアテンド)拍子抜けだった。いつからそうだったんだ〜知ってたら行けた公演沢山あったよ! 紙チケ出さないとこは皆QRコード提示にしてほしい〜
2026年01月12日(月) ■
『インランド・エンパイア 4K』
『インランド・エンパイア 4K』@ヒューマントラストシネマ有楽町 シアター1いっつもエンドロールで泣いちゃうのよ〜ふたりのローラが投げキッス交わすところでブワッとな! 大好き! 『インランド・エンパイア 4K』(今回このシーンをメインヴィジュアルにしたのすごい)[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Jan 12, 2026 at 19:43 初公開 から約20年、新宿ガーデンシネマも今はもうありません。名前は変われどこの場所で映画館が存続しているのはうれしいこと(ガーデンシネマ→角川シネマ→EJアニメシアター→今はkino cinema)。そして、亡くなって一年のデイヴィッド・リンチの作品が、こうして公開されるのもうれしいこと。リンチ最後の長編映画が4Kになって再登場、監修も本人が手掛けています。 という訳で劇場で観るのもこのとき以来だったんだが、初見の高揚感、多幸感、絶望感はフレッシュなまま色褪せることがなかった。いや〜かわらんわー、いや〜わからんわー。リンチのあたまのなかをこうして見せてもらえることの幸せを噛みしめまくる。 いつも観る度そうだった、と我に返るんだけどこれジェレミー・アイアンズやジュリア・オーモンドが出てるのよね。中の人誰だっけ? と思うくらい違和感なくリンチの国の住人になっているのでその都度忘れる。もともとリンチの国の住人だとこちらが勝手に思っているのはローラ・ダーン(最高! めっちゃ格好いい! 大好き!)とジャスティン・セロウ、グレイス・ザブリスキー、そして『マルホランド・ドライブ』 のおふたり、ローラ・エレナ・ハリングとナオミ・ワッツ(ワッツは声の出演)。皆が皆、リンチの国で生き生きと泳いでいる。裕木奈江も印象的。 4Kになっての変化みたいなものは素人目にはわからず(…)。そしてこないだの『ポンヌフの恋人 4K』 もそうだったけど、4Kにしても劇場が2K迄の設備しかないという(池袋のグランドシネマサンシャインだと4Kで観られる)。作品の素晴らしさは変わりませんが! ちょっと画面にメリハリがついたような気はした。以前は見つけられなかった「あっ、向こうにひとがいる!」「ここにもいたんだ!」と気付いた場面が数箇所あった。意図的な闇の昏さと、意図せず潰れてしまった闇の違いがわかったような、わからないような。先述の、今回メインヴィジュアルになった「このシーン」も一瞬なんですよね。それを捉えられるようにもなっていた…かな……。 劇場で観られることの至福といえば音。これもリマスターによって多少グレードアップしたのかな? 音楽、生活音、抽象音。とにかくずっと音が鳴っている。それを耳に入れ乍ら映像に没頭してこその今作、という思いをますます強くしました。劇場で観られる幸せよ。何度でも幸せという。劇場はどの時代にも、どの世界にも存在し続けていてほしい。 リンチはこれ以降長編映画を撮らなかった。20年後に彼は亡くなった。20年前の遺作ともいえる『インランド・エンパイア』のエンドロールは永遠に素晴らしい。ハリングが現れる、彼女がダーンへキスを投げ、ダーンがキスを返す。永遠に残るふたりの交感。こうしてリンチはフィルモグラフィーに幕を引いたのだ。 -----そして帰宅後見直すこれ。川勝さん有難う 今回のパンフはこれから熟読します[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Jan 12, 2026 at 19:46 鑑賞後の頭の交通整理に。ほんと川勝さん素晴らしい仕事残してくれたよね……20年後にもこうやって読み返されていることが、あの世にも伝わればいいのにな ロンTが素敵だったので公開2日目に新宿で買ったんだけど、翌週には新宿でも有楽町でも売り切れてたヨ! 先に買っといてよかった! ・字幕の「あなた」が一箇所「あたな」になっていた。でもリンチの映画なので意図的に間違えてるのかと深読みしてしまうのだった・映画「ストレイト・ストーリー」の脚本・編集を担当したメアリー・スウィーニーが語る「デヴィッド・リンチの創造性」┃WWDJAPAN 彼はこちらが作業する合間にも絵を描き、家具を作り、写真を撮り、文章を書いていたから。まさに“アートマシーン”でした。(中略)生涯その生き方を貫き続けた。亡くなる直前にも、パソコンでちょっとしたAIアートを作成していたくらいです。本当に一度も止まることがなかった。彼と人生を共にした家族や私たち仲間にとって、彼は常に尽きることのないインスピレーションの源でした。 そういえば観てない『ストレイト・ストーリー』。これを機に、といいつつきっとまずは『インランド・エンパイア』を観に行ってしまうなー …と呟いてたんだけど、その通りになった。いや、観る気はある……でも今観ると泣いちゃいそう
2026年01月09日(金) ■
『YADANG/ヤダン』公開記念来日舞台挨拶付き上映
『YADANG/ヤダン』公開記念来日舞台挨拶付き上映@バルト9 シアター9残業になってヒヤヒヤしたがギリ間に合った、よかった… えっこれめちゃめちゃ面白いぞ! ノワールだ! こういうの久々でないの!? ヘジンさんにもやっと会えた〜 『YADANG/ヤダン』[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Jan 10, 2026 at 1:29 昨秋の『コリアン・シネマ・ウィーク 2025』で公式初来日だったユ・ヘジンさん。舞台挨拶は倍率10倍(!)の激戦で勿論外れましたし、今回カン・ハヌルさんも一緒なのでまたダメかも……と戦々恐々だったのですが当たったよ〜! 原題『야당(ヤダン/野党)』、英題『Yadang: The Snitch』2025年、ファン・ビョングク監督作品。検察と麻薬組織、どちらからも頼りにされどちらからも疎まれる闇社会の仲介人「ヤダン」。そこへ検察に手柄を横取りされた警察も絡んできて……? 消されかけたヤダンの起死回生、そして逆襲。おおおそうなるか、そっちに行くか! こっこれは“華麗なるリベンジ”! 検察への忠誠か、警察との絆(?)か…なにこれ『新しき世界』(キャッチコピー「“父”への忠誠か、“兄”との絆か。」)みたいじゃない! “ヒョン”がキーワードってとこもさあ! あと小道具の使い方な! 兄弟の契りを交わした証のライターがそんな……巧い! 痛快だけど後味はほろ苦。正義は勝つという話ではないけど、落とし前はしっかりつく。バディが途中で変わってからのドライヴっぷりがすごい。最後迄どっちに転ぶかわからない展開でハラハラしたよ。全滅のバッドエンドか、それとも? というスリルが中弛みせずずっと続く。重いテーマを扱ってい乍ら、軽快さがある。 クスリダメゼッタイなんだけど(薬物に囚われた人間がどこ迄醜悪になれるかもつまびらかにする)、彼らがクスリに手を出すことになった経緯や背景、社会復帰を許さない世間の陰湿さをも見逃さず描く。立ち直ったとしても傷が癒えることはなく、いつまたスリップするかの恐怖と闘い乍ら生きていく。しかしどこかに必ず、立ち直ることをサポートしてくれるひとはいる。命を落としたあの子たちは、最後にちょっとだけ大人を、世界を信じていいと思った筈。そうであってほしい。だってさあの場面、不可抗力というか偶発的なアクシデントだったじゃん。刑事さん悪くないじゃん…でも言い訳しないで謝ってさ……守ってやれなかったことに対してちゃんと謝って。そういう大人がいたってことをあの子たちは知ることが出来たのだ。 役者が揃ってイキイキしていた。ハヌルさんすごい! 『空と風と星の詩人』 で尹東柱を演じたひとだと気づいたのは帰宅後だった……ちょ、まるで違う! わかんなかった! 薬物中毒になる前のおぼこっぷり、ヤダンになってからのイケイケドンドンっぷり、復讐に立ち上がってからのやり手っぷり……道を外れた人物が、閉ざされた将来をこうして切り拓いていくのか。それを見せてくれた。 ヘジンさんは出世欲にまみれた検事役。よかった(悪かった)なー。しれっとした顔でヒドい指示出すなお前。「韓国の検事は大統領の運命をも左右できる」と言い放つシーンにはシビれた。いい台詞! 今回悪い意味で使われてたけどな!(笑)でも故郷の母ちゃんのためにもがんばんなきゃ! 偉くなんなきゃ! って背景がこのひとにもあって、どこから道を間違えてしまったんだろう、という哀愁もしっかり感じさせる人物像になっててよかった。あの現場に大統領候補のアホ息子がいなければ、ずっとヤダンとやってけたかも知れないのにね。 そして刑事役のパク・ヘジュンがめちゃよかった。“皇帝”ってネーミングもいいし、皇帝と呼ぶにはあまりにも熱く泥臭い現場の人間ってところもいい。家族思いのところもいい、パーマあててる♡ところもいい。いや、直近で観たのが『ソウルの春』 だったからさ…序盤は「盧泰愚のくせに〜!」とメラメラして観てたけど、なんだよめっちゃ粋な役じゃん! いいイメージで上書きされたわ。舞台挨拶来てほしかったな! ダークなのに爽快、バイオレンス描写も満載(開巻でR-15って出てえっそうなの? と思えば……)、韓国映画におけるカーアクションは迫力あり過ぎてめちゃ怖いという思いをまた更新。いや本当にこれは面白かったです! -----・輝国山人の韓国映画 YADANG/ヤダン いつもお世話になっております。あのアホ息子を演じたリュ・ギョンスは今後注目していこうと思った〜。ラリってるときの顔がリアルでなあ。あの、まともに応対してますよって顔してるのに目がイッてる感じ。いやーホントにアホの子だった(ほめてる)。ちょっと宮沢氷魚に顔立ちが似ていますね ・余談。あのボカシのシーン、本国でもボカシ入ってたんだろうか ----- さて舞台挨拶。計5回中最後の回だったためか、皆さんヘンなテンションになってておかしかった。おつかれさまでした! 上映前だったため、安心と信頼の司会・古家正亨さんが、ああっネタバレ出来ない、ああっいえない! ハヌルさんはビフォーアフターでこんなに変わるんですよ! とか悶えてたけど、観終わった今は確かにこれは…いえんなあ……と思ったわ……。以下、印象的だったところをおぼえがき。 ・ステージに上がる前にぐるっと通路を歩いてハイタッチ。歓声と悲鳴があがる。おふたりともシュッとしてる〜オシャレ〜 ・撮影中のコンディションを維持するためにやったこと ハヌル:何もしてません……しました!(何を) ヘジン:健康を維持するために、毎日お酒を呑みました(爆笑)。それ以外だと、毎日欠かさずジョギングをしています。旅行先でも欠かさず。今朝も走りました --- ハヌルさん昨秋も皇居の周りをジョギングしたっていってたね ・好きな日本食 ハヌル:油そば、矢場とんのみそかつ 監督:寿司、うどん ヘジン:具体的なものではないんですが、韓国だと釜山へ行くKTX、日本だと新幹線ですね。それに乗って景色を見乍ら駅弁を食べるのが好きです --- 日本に来てから「お寿司もう食べました?」と訊かれた監督、「いや、今朝来てずっと舞台挨拶だったので……」。古家さんが「聞きましたか関係者の皆さん! このあと用意されてるんですよね!」とかいっててウケた ・抽選で当たったふたりが壇上にあがりチェキ会。同時に握手会になる。客も慣れて…ないか……? 皆さん日本語を交え乍ら話してくれました。最後の撮影タイムでは、ヘジンさん「お元気ですかー!」ハヌルさん「私は元気でーす!」古家さん「何故か中山美穂さんが招喚されております」とかいって大ウケ。『Love Letter』は韓国でとても愛されている日本映画。日本文化開放が1998年で、『Love Letter』は1999年に公開されたそうですが、それ以前(日本公開は1995年)から「お元気ですか」は流行語にもなっていたと聞いたことがあるぞ。ブートで観ているひとが多かったとか(笑)。昨年の4Kリバイバルも人気だったそうです。 SNSで質問を募集したり、事前に「プレゼントがあるのでA4サイズのものが入る袋などを持ってきてください」とお知らせしてくれたり(サイン(印刷)入りのミニポスターでした)と至れり尽くせりの配給Showgateさん有難う〜。客席を撮影するときに「観ないと、ヤダ〜ン」といわされたのはご愛嬌。その後「そろそろ終了です」といわれたときには心からの「やだ〜(ん)」の声があちこちから湧いてました。 隣席のひとがドラマを沢山観るハヌルさんのファンでヘジンさんのことを知らず、こちらは映画をよく観るヘジンさん好きでハヌルさんのことを知らなかったのでお互い情報交換などして楽しかった。「ハヌルさんの作品初めて観るかも〜」なんて話しちゃったよ。尹東柱だよ! 素晴らしい役者さんでした、他の作品もチェックしていきます!・『YADANG/ヤダン』カン・ハヌル&ユ・ヘジンのハイタッチに会場熱狂!興奮でいっぱいの会場を見渡し「本当に光栄」┃MOVIE WALKER PRESS ハイタッチ会あったんだ、これは何回目のなのかな? それぞれ違う趣向で進行したみたいですごい
2026年01月04日(日) ■
『rockin'on sonic 2026』
『rockin'on sonic 2026』@幕張メッセ国際展示場PSBキャンセルでライフがゼロになったが当初の60分から急遽80分セットに組み直してくれた(運営にも感謝)アンダワが素晴らしかったのでもういいですニールははよ体調なおして〜 軽井澤ソフトは毎度うま〜い[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Jan 5, 2026 at 0:03 こちらは大満足でしたがバックステージはてんやわんやだっただろうなあ。おつかれさまでした……。 ----- 第1回の様子はこちら(1日目 、2日目 )。とても楽しく快適だったので今年も参加。しかし第2回にして不安がいっぱい(笑)。続いてほしいのだが(来年もやりますと発表されていたが)今後どうかなー。 まず開催が1日になった。第1回が赤字だったのでチケット代が上がった(主催が公言)。まあそれはいい、日程に年始の休日がうまいこと重ならなかったというのもあるし、昨今の円安で外タレ呼ぶのもたいへんでしょう。しかし昨年は関東で単独公演なかったじゃん。東京のみのフェスだから関西は単独やるよってことで納得してたのよ。ところが。 PET SHOP BOYSとUNDERWORLDが出るし、と行くことを決めたんだけど、その後どっちも東京での単独が発表。アンダワのMLには入っているので先行発売のお知らせが来たんだけど、仕事始めの日だしチケット代考えると両方は無理だな、フェスでガッツリ見るよと流しちゃったんですよね。で、仕事のバタバタもあってタイムテーブルが発表されたことを知らず、友人に「アンダワ1時間しかないんで行くのやめるわ」といわれ……60分!? 嘘だろアンダワが60分て! 短い! 短過ぎる! じゃあ単独行くじゃん! と慌ててチェックしたときにはもうチケットは売り切れており(豊洲PITだしそれはそう)…そんな短いと思わなかったんだよ……酷いよ……。 あと洋楽オンリーのフェスですってことで始めたのに第2回にして邦楽が入ったことも、あーひとつブッキングがポシャったんだろうなあと邪推しちゃいますよね。「洋楽フェスであることを強調して始まったrockin’on sonicが、今回、ずっと真夜中でいいのに。に出演をオファーしたのには明確な意志があります」とか尤もなステートメント出してましたが、そうなるとサマソニと変わらないじゃん。先が思いやられる。ずとまよは悪くない。 セトリを被らせないことについては今後も死守してほしいです。何でもかんでも詰め込まず、余裕を持ってほしい〜。それだと利益が出ないのかも知れないけど。頼むよ! PSB単独も予算の都合上諦めて、もうこちらに全振りしますよと幕張へ。開場時間をとっくに過ぎているのに長蛇の入場列。スタッフがペットショップボーイズは〜払い戻しは〜と拡声器で話して…いる……? 待て待て待てなんだってと近づいてみれば張り紙が。ニール体調不良につきドタキャンであった。SNSを見てみるとアナウンスは12:30過ぎ。それに伴い開場も遅れたらしい。PSBのアカウントを見ると、ウイルス性胃腸炎とのことでした。2002年以来 のPSBが夢と消えた。……いや、仕方がない。人間だもの。おじいちゃんだもの。無理させたらいかん。単独は開催されるといいですね……。 という訳で心が折れたのでフルで観たのはふたつのみ。しかしそのふたつがすごくよかったです! もういい! -----■KNEECAP(GALAXY STAGE) わーいお初ですよ。webでの情報しか知らないけど(すまん曲もwebで聴いた限りです)観てみたかった。冒頭“FREE PALESTINE”と、それに類するメッセージがスクリーンに映し出され歓声が上がる。その後パレスチナ国旗は何度も映し出され、ガザを解放せよとのアジも続く。フロアの反応はまちまちでちょっと戸惑いも。分断を目の当たりにした感じ。とはいうものの、彼ら目当てで観に来た客なので思いはある程度共有出来ていたようにも思います。観客のなかにはパレスチナ国旗を持ってきているひと、クーフィーヤを身につけているひとも結構いました。 2MC1DJだけどDJはMCも兼任。2MCはイキのいい若者、DJはもうちょっと年長さんかな。教師でもあるので先生と呼んじゃう。2MCはサングラス、先生はアイルランド国旗柄のマスク(IRAですね…)。ひとりはサングラスを外しましたが、あとのふたりは顔を見せないままだった。活動内容からして覆面でいたい理由があるのかななどとちょっと考える。 白人の3MCというとBEASTIE BOYSを思い出してしまう世代なんですが、やっぱMCが3人いるっていいですね。掛け合いにレイヤーが増えて格好いい。とはいうものの、英語とアイルランド語のミックスでラップするので殆ど聴き取れない。申し訳ない。 怖そうなので(笑)後方から観ていたんだけど、最前列のひとがKNEECAPロゴをあしらった日の丸に祝来日と書かれた旗を持ってきていたらしく、先生がそれを受け取る場面がスクリーンに映し出される。先生は旗を掲げたあとDJブースに飾ってくれる。あーこれ、例の国旗損壊罪とやらが成立しちゃったらなんやかやいう奴が出てくるんだろうな。ほんとやだ。侮辱かどうかなんて体制側がでっち上げられるじゃん。スパイ防止法も一緒だよ。治安維持法がどんなだったか学べよ。そんなことも考え乍ら観ました。お気楽には楽しめない。でもこういう存在は絶対に必要。 先生がいちばん動きまわってて、何度もフロアに飛び込んでクラウドサーフしてワーギャーとなる。何度もモッシュピットを作ってくれ! といっていたけど、それに対するフロアの反応が鈍かったのは残念(追記:前方ではモッシュピット出来てたらしい)。RO主催のフェスというのもあるし、客の年齢層が高いので自衛が働きますね…てか怪我したら回復遅いので後々響くのよ……(笑)でも本人たちは「安全に」モッシュする術を心得ているし、それを推奨しているのだから、もうちょっとはっちゃけてもよかったかもしれない。単独はもっと盛り上がるといい。終演後スクリーンに「ダイブやモッシュなどの危険行為は一切禁止致します」って注意書きが映ってウケた。出演者は該当しないってことで。 ----- このあと物販を見に行ったが、アンダワは全てが完売であった。もうちょっと沢山持ってきてくれ……。飲食エリアはいつでもどこでも空席があって素晴らしい。ごはんやおやつなど食べぼんやり。Aphex Twinのロゴ入りロンTを着た幼児がいて二度見などする。マーチでキッズライン出すとこ増えたよね、アーティストとともにリスナーも歳を重ねていくのよ〜美しい光景だわ。ずとまよの音漏れを聴き乍らまったり。「こんなに集まってくれて有難うございます」「誰も来てくれないんじゃなかと思ってました」とかいってて、さぞや不安だったでしょうね……としみじみ。盛り上がってたみたいだしよかった。 -----■UNDERWORLD(GALAXY STAGE) スタート時間に(見たくなかった)山崎洋一郎が現れる。「メンバーに相談したところ、急遽20分長くやってくれることになりました! よってスタートが遅れます、もう少しお待ちください。それに伴いTRAVISもスタート時間を遅らせます。彼らも1曲多くやってくれるそうです!」地響きのような大歓声。 没頭したかったので前に行く。しかしアンダワは以前フジでえれえ治安の悪いとこに入り込んでしまった トラウマがあり、すぐに逃げられるところを確保しときたいな…端っこの前方には行けるな……と下手側の3列目くらいを確保。時間を追うごとに密集度は増したが、割り込みはないしずっと踊れるスペースがあった。盛り上がりつつも落ち着きを失わない年齢層(無茶するとあとに響くからというのもある)、落ち着くわー。 とはいうものの、赤い靴は履いたら脱げません。ワーとかギャーとかいいつつずっと笑っていた。昨夏のBoiler Room(後述)を踏襲した(というかここから再構成したのかな)セトリで「Dark & Long (Dark Train)」からスタート、じわじわあげて2曲めが「Two Months Off」。二ヶ月の休暇! おま、連休最終日にこれを聴かされる気持ちがわかるかー! 最悪だー! 最高だー! くっそやっぱ単独行きてえー! もう遅いー! と心のなかで叫び乍ら口では“you bring light in”を繰り返すのだった。カールの声はほんとなんか出てる、鎮静効果と覚醒効果の両方がある。もはやマントラ。お経とも呪文ともいう。続いて「Cowgirl」きた、最高だー! くっそやっぱ(以下繰り返し)。 近年はカールとリックのイチャイチャぶりがすごいのだが、スモークがすごくてそこら辺はあまり見えなかった。でも卓につきっきりのリックのまわりをカールがぴったり寄り添う場面も結構あった。もうなんていうの、絆としかいいようがないね! 仲のよい老人(老人いうな)を見ると「これからもずっと元気で! ずっと一緒にいて!」と手を合わせたくなる。てかあまりの尊さ(+多大なる感謝)に実際何度もステージに向かって手を合わせた。拝みたいその姿。 曲数を増やしたかどうかは実際のところ判らないけど、展開部分というかイントロブリッジアウトロを増やしている感じはした。これがまた最高だったんだがってかこれがないとハードテクノはさあ! クラブミュージックはさあ! 流れだいじ! 『Beaucoup Fish』からのナンバー多めでニコニコ。私の血肉になっているアルバム。 終わってみれば「60分なんて、どうするつもりだったの……」と思ってしまうパーフェクトな80分。間延びせず、しかし緩急はしっかりあり、それでいて怒涛の進行。数えきれない程の修羅場を潜り抜けてきたであろうふたりは涼しい顔でフロアを踊らせる。68歳と66歳ってことをときどき思い出して我に返る。ホントにすごいよ……。 「Pearl's Girl」やってくれたのに狂喜したんだけど、終盤だったので急遽入れたナンバーだったのだろうか。翌日の単独用(やってた)から持ってきたのかな。にしても、短時間でよくぞここ迄……だってどうにかなりませんかって話来たのって開場後とかだったんじゃないの? そこから数時間で仕込みも変えてさ……もう感謝しかないよ! “they bring light in”だよ! 有難う有難う! カールは最後にいつもフロアに向かって“you, are, beautiful.”といってくれて、それ聴くといつも泣いちゃうんだけど、こっちからするとカールとリックこそが“beautiful”だし、“they bring light in”なのだ。 --- Setlist(setlist.fm より、現場のセトリ画像はこちら 。シェア有難うございます!) 01. Dark & Long (Dark Train) 02. Two Months Off 03. Cowgirl 04. and the colour red 05. King of Snake 06. Kittens 07. Border Country 08. Arpeggio12 09. Pearl's Girl (Tin There) 10. Moaner 11. Born Slippy (NUXX) ---・Underworld | Boiler Room: London VIDEO Boiler Roomこれね。カールとリックがずーーーーーっとイチャイチャイチャイチャしておりこちらも幸せな気分になるので張っておく。これくらいちまっとした(つってもいつものBoiler Roomとは違って、通常の観客エリアにもオーディエンスがいるのだが)空間でやるのって珍しいので新鮮でもあった。つくづく大バコの鳴らし方を知ってるどベテラン、これからも元気でフロアに光をもたらしてほしい。“they bring light in”、ね