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2019年01月15日(火)
BO NINGEN × 空間現代

BO NINGEN × 空間現代@Shibuya WWW

貴重なBO NINGENのライヴ。在英日本人によるバンドにつき、来日公演ですからね。それにしても来日のタイミングが独特だ。新譜リリースに合わせてとかツアー組んで、ではなくメンバーの里帰りに合わせてやっているような印象です。盆暮れ年度末のイメージがついてしまった(笑)。そんな感じなのでスケジュールが読めない。いつも一ヶ月くらい前にいきなり告知があってやって来る。滞在期間中メンバーはそれぞれ個人でオファーを受けるので、あちこちでライヴやったりDJやったりしています。網羅するのは至難の業。特にTaigenくんは「○月○日迄日本にいるんで、オファーありましたら!」とガンガン予定を入れてくるので突発のものも多い。追いつけねえ! というわけで今回バンドのみに絞ったんですが、数少ない東京でのライヴ2本のうち1本が昨年末のソウルセットと被りましてん。もうここしかない! これ逃したらまたいつ観られるか分からない! と連休明けにいそいそと渋谷へ。

先攻は空間現代。まず曲の境目がわからなかった。ひょっとしたら一曲だったのかもしれない、ときどきインターミッションらしきものがあったけど、第一楽章と第二楽章の間みたいなものだったのかな。カウント、リズム、リフが絡み合い、時折ヴォーカルが入る。このヴォーカルも、歌ではなく短いセンテンスのリリックを叫んだり囁いたりする形式。こちらが「ああ、こういう展開なのか」と思い始めた頃にいきなり叫ばれたりするのでビクッとする。聴き手を甘やかしません(笑)。戸惑いもあったかな、観客は静かに聴き入っている。全ての曲が終わり、Gのひとが「有難うございました」と挨拶するとようやく歓声と拍手が起こった。最初から最後迄緊張感が途切れませんでした。演劇界隈からも注目され、ストイックといわれるのも成程という、道場破りが集って道場開いたみたいなバンド。54-71を思い出してしまう……。坂本龍一ともコラボしてるんだよね。新譜はステファン・オマリー(SUNN O))))のレーベルから出るそうです。

さてBoさんです。空間現代とはどんな縁かと思えば、なんとTaigenくんと野口さんが小学校の同級生だったんですって。最近になってわかったそうで、音楽をやっていることも知らなかったとのこと。「今こうやって共演出来るの、すごくうれしい」といっていました。

TaigenくんのSNSを見ている方はご存知でしょうが、彼すごいエモな方で(本人も自覚している)。すごい日本に愛着を持っていて、帰国する前から泣きそうになっているし、イギリスに帰る日(なんかどっちも「帰」だからややこしいな)が近づくにつれどんどん言動が不安定になっていく。日本にいたいという気持ちと、しかし自分たちの音楽で勝負するならイギリスと拠点にしておかねば、という気持ち(おそらく)に、いつも引き裂かれている。命がけで音楽に取り組んでいるんだなあと思います。BO NINGENのサウンドにはLED ZEPPELINやDEEP PURPLE等ゴリッゴリの骨太ブリティッシュハードロックのルーツを感じるけど、リリックとヴォーカルが入るとイギリスにも日本にもフォロアーが思い浮かばない唯一無二のものになる。Taigenくんの「エモい」言動だけを知っていても、バンドサウンドだけ聴いていても惑わされるばかり。このバンドの凄さは実際にライヴを体験してみないとわからないかもしれない。

エフェクターを駆使して攻撃的なリフをガンガン投げてくるYukiくんと、ラップトップも使いエッジの効いたリフを繰り出すKoheiくん、ジョン・ボーナム並みの過重労働を課されている(笑)Monちゃん。強靭な音のなか、プレイヤーとしては相当巧者なTaigenくんのベースが泳ぐ。うわっ、きた!!! という瞬間が訪れる。爆発的なグルーヴ。PAも最高。10分以上続くアウトロのなか、服を脱いだTaigenくんがスピーカーによじのぼる。フロアを見おろし、踊る(といっていいのかあの動き……)彼は何かの儀式を行なっているかのよう。この音がいつ迄も続けばいいのに、と思う反面、Monちゃんが死にそうになってるように見えるのでいやいや終わりはないといかんとも思う。ついでにいうと自分も音圧のせいかむせて咳がとまらなくなってたので、オエーもんちゃんがんばれ私もがんばれと、楽しいやら苦しいやらで終盤は悶絶して聴いていた。

集中のあまり? 予定時間より早く曲をやりきってしまい、終盤「どうするあと何やる?」とオロっと地声で話し合ってました。演奏とのギャップに笑ってしまった。MCする時間も惜しいって感じだったものね、その数少ないMCでは「全て音楽で語りきりたいと思います」といっていた。パフォーマンスへの没入ぶりがときにナルシスティックにすら映るTaigenくんですが、スピーカー上からフロアに手を伸ばす様子は、オーディエンスと繋がりたい一心のようにも見える。実のところは本人にしかわからないが、少なくとも聴き手をおいてけぼりにはしないひとです。

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この画ヅラ見てもどんな音だか……というか、それ以前に何が何だかわからないでしょう?(笑)これがBO NINGENです! 気になる方は是非ライヴで!


おまけ。灰野さんを仲人に(?)山川冬樹さんと是非共演してもらいたい



2019年01月14日(月)
『LITE 15th』

15th Anniversary LIVE “LITE 15th”@LIQUIDROOM ebisu



「年をまたいで16年目に入ってしまいました(笑)」ということで、15〜16周年おめでとうございます! 和気藹藹のお祝いムードになるかと思いきや、本意気の対バンモードで阿鼻叫喚。笑いがとまらないライヴ始めです。幸先いいな! LITEでなければこのメンツは集まらなかった、LITEのお祝いだから皆が殺気すらまとって本気で潰しにきた。いや、潰してないけど。結果めちゃめちゃ濃密なイヴェントになりました。それはもう、フェスかというくらい。

息をするように嘘をつく先輩方が揃いましたよ。「ひとんとこのお祝いにはよく呼ばれるんですけど、誰も僕らのことは祝ってくれないんですよね。終戦の年に結成しました。玉音放送を聞いたあとですね。機材は進駐軍からもらったやつなのでボロボロです」とボヤくtoeパイセン、「僕らも20年ってとこなんですけど、10年くらい休んでたんでね……」と謙虚なdownyパイセン、「実は同期なんだけど先輩扱いされてる。ま、内臓年齢はウチらのが遥か上をいくんですけど。toeは戦後からっていってましたけどウチには戦前からのひとがいます(栗原さんのこと)」とむちゃくちゃいいよるSOIL&"PIMP"SESSIONSパイセン。ときどきホントのこともまじっていますので、各自ご確認を。1バンド40分程の持ち時間(主催のLITEは1時間強)なのに満足度の高いこと高いこと、イヴェントにつきアンコールが出来るのはトリだけなので、だったらアンコールの声も出せなくしてやるわいという圧倒的な演奏ばかりでした。こええ! 皆さんスタイリッシュなのにどうしてこうも破壊力あるかね。

だいじなことなので二回いうけどLITEだからこのメンツを集められたともいえる。よっしゃあいつらが15周年、駆けつけたる! という感じ。みんなの弟分だなあ。しかしかわいがる/かわいがられてるだけじゃ済まさねえぞというシーンの切磋琢磨と信頼関係が根底にある。ハードコアのアティテュードを持ち、海外からのリリースやツアーにも積極的。ソイル以外はインディペンデントで活動の基盤をしっかり築いている。ジャズ、パンク、マス、変則ビート、エフェクトとエレクトロの融合。サウンドカラーはさまざまだけど、しっかり繋がっている。武田さんの「だから売り切れるっていったでしょ! チケット買うなら早めにって!」「というか、このメンツで売り切れなかったら日本のシーンは危ない(未来はない、だったかな?)」という言葉に、シーンへの敬意と誇りが感じられました。

ちなみにこの日、ロビーにファンの方々から花スタンドが届いていた。こういう距離間もLITEらしくて微笑ましかったし、きちんとそのことに触れてお礼をいうところもLITEらしくてジーンときてた。この勤勉さが、先輩方やファンから愛される所以でもあるだろうな。律義なバンドカラーは演奏にも反映されている。各々のスキル、テクニックもさること乍ら、合わせたときの「一丸力」が強力。彼らと同じくらい、もしくはもっと巧いひとたちが集まって、同じ曲を演奏しても決して同じ出音にはならない。個別の活動も多いのに、集まるとその一蓮托生ぶりに驚かされる。後述の座談会で、武田さんが「プレイヤー個々はそんなに特別うまいわけではないと思うんです。でもバンドの曲をやたら練習しちゃうんですよ。(中略)譜面に起こせないから、体で覚えるしかなくて」「運動と一緒で、1年くらい曲をやらないでいると、忘れちゃう」と仰ってますが、アスリートといってもいい日々の鍛錬による結晶は、見事なサインプレーが決まったときのボールゲームのような爽快感と高揚をもたらす。「体で覚え」ているから、プレイヤーの気迫が音に直結する。曲がいきものになる。PAも申し分なし。

クリックに合わせてやっているのにドライヴ感満点の「Blizzard」「ZONE」といった最新作から、定番のあれやこれ迄。あっという間に時間が過ぎる。絶対あると信じていたタブくん参加の「D」にはガッツポーズ。終わってみれば「7Day Cicada」も「100 Million Rainbows」もやってない〜、早い! 短い! と思ったものの、〆が「Phantasia」というこれ以上ない幕切れ。toeのMCで山㟢さんが「長きにわたっておつかれさまでした……あれ? 俺いっちゃいけないこといった?」といっていたのを受けて「俺ら解散させられちゃうのかなと思った」そうですが(笑・私も「えっ、ひょっとして今日解散発表するの?」とヒヤッとしたのよ……)これからも活動は続きます。20周年があるとしたら、今度は後輩たちを呼ぶこともあるかもしれませんね。

これからアルバムのレコーディングに入るそうで、今年も目(耳)が離せないLITE。そういえば先月、Jロビンズ(!!!)のスタジオでなんか録ったらしいので、お披露目を楽しみに待ってます!

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セットリスト┃LiveFans

01. Ef
02. Human Gift
03. Image Game
04. Blizzard
05. Zone
06. Echolocation
07. D(w/タブゾンビ)
08. Bond
09. Infinite Mirror
10. Contemporary Disease
encore
11. I miss seeing all
12. Phantasia

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オフィシャルから「Phantasia」動画来た。体で覚えた演奏は日々成長し、曲が怪物に化けることも。この瞬間がたまらない


タブくんが「D」の動画あげてくれた〜

・LITE、toe、downy、SOILによる競演の宴「LITE 15th」大盛況┃音楽ナタリー
レポート。全出演者のセットリストも(有難い!)

・「LITE 15th」インタヴュー・進化を重ねてきたバンドの“未完成”な15年とこれから┃音楽ナタリー
・「LITE 15th」開催記念|武田信幸(LITE)、タブゾンビ(SOIL&"PIMP"SESSIONS)、青木ロビン(downy)、美濃隆章(toe)座談会┃音楽ナタリー
54-71の話が出てるのうれしい! 本人たちは執着なかったようだけど、まいた種はデカいぜ


ようやくdownyを観られた。お初は『After Hours ’17』だったが、このときはフロア激混みでちゃんとライヴを体験出来なかった。その後青木裕さんが亡くなった。再始動ライヴにこの場を選んでくれたこと、とても嬉しい。「春と修羅」〜「海の静寂」の音と映像の洪水、忘れられない

SUNNOVAさんは裕さんがライヴをお休みしているとき、彼のギターデータをAbleton Live + Pushで再現するサポートメンバー。この日裕さんの音はステージにいたし、これからもいるのだ、きっと。新曲が増えていくとどうなるかわからないけど



2019年01月10日(木)
『鈴木勝秀(suzukatz.)-190110/ホロン』

『鈴木勝秀(suzukatz.)-190110/ホロン』@SARAVAH Tokyo


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reading:篠井英介
music:大嶋吾郎
text:鈴木勝秀
lighting:倉本泰史
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サラヴァがクローズとのことで、久しぶりかつ(ここでは?)最後のこのシリーズ。ZAZOUS THEATER『Thirst』で、『オイディプス王』とともに引用された『ホロン革命』がテキストです。

スズカツさんも登壇しMacBookを操作。ステージ上の成り立ちは高円寺でやった横川タダヒコとの『TWO OF US』に近い感じでした。ただ、このときは各々やってることが視覚化されていたんだけど、今回はスズカツさんが何やってるか全然わからんかった(笑)。ノイズ/アンビエント担当かな? その場でテキストを抽出して篠井さんに指示を出してるのかな、とも思ったけど、篠井さんは綴じられていない数枚のプリントしか手にしておらず、モニター等を見る様子もなかったので、テキスト自体はあらかじめ用意されたものだったのだろう。篠井さんのリーディングと大嶋さんの演奏+ヴォーカルの丁々発止が聴けました。

余談だがスズカツさんと大嶋さんのMacBookを見乍ら、Macのりんごが光らなくなったのってある種の損失よねー。かわいくない。などと思う。スズカツさんはAppleの新製品に目がないひとのようなのでおそらく最新版。光ってませんでした(笑)。それにしても、すっかりMacも「ライヴで使える」機材になったなー。こういうところにも隔世の感が。先日90年代のクラブ事情を振り返る機会があったんですが、LIVE PA(当時ってライヴには「PA」ってついてたよねえ)でそりゃもうしょっちゅう音止まってましたもんね。

閑話休題。風邪をひいていた篠井さん、人力トーカーを駆使して? 地声なのに「Dig The New Breed」みたいなヴォーカルに(わかるひとだけわかってなたとえ)なっていていとたのし。いやいやご本人たいへんだったでしょうが、倍音がノイズみたいになっててすごい味わい深かったんですよこれが。テキストの内容がアレ(著者のケストラーは、これを書き上げたあと夫人とともに自死している)なので、時折人間じゃない何かが語っているようにも聴こえる、というか、そう聴きたいと思っているんだなあというこちら側の願望も自覚。『虐殺器官』を連想するセンテンスもあり、これは実際に『虐殺器官』からの引用なのか、それとも『ホロン革命』にあった文言か……伊藤計劃はケストラーの著書を読んでいたかな、と思ったりする。伊藤さんも今では鬼籍のひとだ。28年前に(ひぃ)『Thirst』を観ていたときには考えなかったことだなあ。このとき既にケストラーは故人で、伊藤さんはまだデビューしていない。ケストラーと伊藤さんが生きていたら、今の世のなかをどう思うかな。

なんて考えると、定番の「Wish You Were Here」にもまた新しい深読みが出来るものです。ピンク・フロイド、ベートーベン、アート・リンゼイ、坂本龍一、キング・クリムゾン、といった引用に、聴けば聴く程そのとおりですとしかいいようのないテキスト。頭の上にもくもくと暗雲が浮かんでくる。しかしそれを瞬時に吹き飛ばし、見える筈のない日差しを見せてくれる幕切れが用意されていました。篠井さんのクリアな笑い声。ライヴの醍醐味というか、生きもののしたたかさを見た思い。いやはや痛快。

終演後珍しく? スズカツさんが長いご挨拶。厳密にクローズドとはいわないけど、こういう公演に好き好んでやってくる(笑)観客への感謝やら何やら。楽しゅうございました、観劇(パフォーマンス?)始めがこの公演とは縁起がいいやね。

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・『機械の中の幽霊』アーサー・ケストラー┃読書メーター
メモ。伊藤計劃の名前、出てくるなあ。これ未読なんで探してみよう

・伊藤計劃:第弐位相┃はてなダイアリー
で、最近も話してたんだけど、はてなダイアリーがもうすぐサービス終了するのですがここどうなるのかねって。自動的にはてなブログに移行するとはなってるけど、当然まんまではないわけで。コメントとかはとんじゃうそうだし。
だいたいのweb(に限らないか)サービスは二十年くらいで寿命がくるというのが見えてきたなあ

・本の街の路地に生きた猫 ひっそり、愛され25年┃Sippo(『猫びより』の特集より)
サラヴァの前にこちらへ。大好きな喫茶店。平日営業なのでなかなか行けないのだけど、時間を見つけては長年通っている。ここじゃないと、というメニューと居心地。マスターとマダムのお人柄も大好き。ミーコさんにもよく和ませてもらいました。ひっそり、という言葉がぴったり。正直「拡散」されないといいな、なんて思うこともあり。でも今回こうして記事になったのは嬉しいな。内容もその辺りを大事にしたもので好感。
スズカツさんいうところの「ラボ」もプリマベーラも、菊地成孔いうところの方舟です。といいつつこういうところにボソッと書いてしまうのがワタシのダメなとこですな

・いやさ、菊地さんがメルマガでこないだ書いてたこととスズカツさんが今回話したことに共通するところがあってね。メルマガの内容はクローズドなものなのでここには書かないし、今回のサラヴァの話もクローズドなものといえる。でもとても楽しい時間だったので、忘れたときのために内容ではなく心情を書き残しておきます(笑)