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2022年05月16日(月)
THUNDERCAT JAPAN TOUR 2022[2nd Show]

THUNDERCAT JAPAN TOUR 2022[2nd Show]@Ebisu The Garden Hall


いやもう素晴らしかった……。忘れかけてたこの気持ち〜(ポエム)! 有難う有難う!!!!! スタンディングの外タレ公演、2019年のBATTLES以来だったよ……これもガーデンホールだった。長かった……!!! まあこれで元通り、という訳ではないのが苦しく切ないところですが。アーティストと運営側に負担が大きいのは事実で、これを今後どう改善していけばいいのか、というのは考えてしまいます。それでもなんだか道筋が見えてきた感じ。

記録として延期に次ぐ延期のお知らせを並べてみますね。

・(2020.02.05)THUNDERCAT / 大注目のニューアルバム『IT IS WHAT IT IS』をひっさげ、待望のジャパンツアー開催を発表!!!┃BEATINK.COM
・(2020.04.03)Thundercat / 待望の最新アルバム『IT IS WHAT IT IS』本日発売! 延期となっていた来日ツアーの新日程が決定!┃BEATINK.COM
・(2020.05.08)Thundercat / ジャパンツアー振替公演、今週土曜からチケット再販売開始!┃BEATINK.COM
・(2021.01.06)THUNDERCAT、SQUAREPUSHER 来日公演に関するお知らせ┃BEATINK.COM

こんなん…心が折れるわ。いやいや呼び屋さんの苦労に比べれば……本当にたいへんな思いをしていただろうな……。もんやりとした日々が続くなか、Brainfeederから突然ツイートがあったりもしました。


これ見て「待つわ! こっちが挫けてどうする!」と反省した。

そして遂に今年3月。

・(2022.03.23)THUNDERCAT再振替公演日程決定!来日公演形態変更[各日2部制へ]のお知らせ┃BEATINK.COM

これ見たときも、まあ喜び過ぎてまた延期になっちゃったらツラいな〜と気持ちを抑えていたところもありました。が、2部制の割り振り受付が始まり、希望が通り、あれよあれよと日が迫り。

・(2022.04.22)THUNDERCAT / サンダーキャット再振替公演日程、追加チケット発売決定!! 特別参加のドラマーとしてルイス・コールも緊急決定!!!┃BEATINK.COM

このお知らせには流石にアガった。渡航人数を抑えるための苦肉の策かもしれないとは思ったものの、本国でのツアーにルイスは度々出演しており、その様子はSNS等で伝わっていた。ツアーで演奏されるナンバーは抑えている筈だし、ふたりのリレーションシップを考えれば全く問題ないどころかこれはすごいことになる。こんなんもう落ち着いていられるか! ルイスが来日のオファーを受けてくれたこともうれしい。ここからはもう「無事来てくれ!」と祈る日々。


この画像がアップされたときはホッとした〜。反面「ホントにふたりっきり? デュオ編成?」とも思った。その後リハ画像がアップされ、デニス・ハムがいることが判明。ということはトリオ編成だ!

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前置きが長い。さて当日、21:15開演の2nd Show。整理番号と検温チェック〜消毒〜チケットチェックイン〜ドリンクチケット交換。ドリンクはペットボトルと缶がずらりと並べてあるテーブルから好きなものをとる形式。1st Showはどうだったか判らないけど、かなりスムーズに入場出来ました。ステージ上手からルイス、サンダーキャット、デニスという並び。ルイス側3列目から観ました。フロアには50cm角のバミリ。ここから出ないというルール、押されない、割り込みされないという点でとても快適。コロナ禍以降の新ルールでよかったなあと思うことのひとつです。モッシュがないのは寂しくもあるけどね。フロア付きのスタッフが「ひとが入ると(バミリが)見えなくなるので、空いてるということが分かりづらくなります。後から来るお客さんのためにもなるべく前に詰めてください」と定期的にアナウンスしていました。

20分弱遅れての開演。割れんばかりの拍手で迎えられ、笑顔で応える雷猫ちゃん。スタートカウントも殆どなく、ぬるっと出て来てぬるっと始め、どこ迄打ち合わせてんだかってくらいの怒涛のインプロ合戦です。イントロもブリッジもアウトロも、音源の面影を探すのが難しいくらい。2018年のSONICMANIAで観たときもトリオ編成だったけど、このときはもうちょっとまったりした感じで、歌を聴かせる側面もあったように思う。今回はルイスがいるということもあってか、ビートのリミッターを外した印象。幕張のだたっ広いフロアより、こういうクラブ規模のハコで聴くと緊密さの伝達度がハンパない。これはヤバい。ヤバいヤバいヤバい。

めちゃめちゃおめかしした雷猫ちゃん、ラメラメのシャツにグリッターのネイル。高速パッセージの左指がキラキラ光り、指から星が零れるよう(ポエム)! サルエルパンツでガニ股開き、フロアを踏みしめ弾きまくる。気合のほどが窺えるオシャレっぷりですが、1st Showで履いていたロンブーを2nd Showではスニーカーに履き替えていたとのこと。確かにあのスタイルの演奏をブーツするとなると、不安定で腰にきそうだ。初日から故障しちゃたいへん、無理しないで!

それにしてもこのひと、ギターの弾き語りかってなノリでつらっつら6弦ベース弾くよね……コード弾きも多用、低音のハーモニーが美しい。あんなごっついボディであんな太いフレットをなんでこうもスムースに扱えるのか。ちなみにこのベースでした。にっこり。それにしても、あれだけ弾きまくっておいて曲間全くチューニングしてなかったけどあれはどうなってるのか。オートチューナーとかついてんのか。そんな精度のいいチューナーあるのか。エフェクターボードは手で操作する用か、腰の高さにセッティングされていました。ビートも音色も多彩。

ルイスはルイスで、ふらっと出て来ていつものブルゾン(夏でもこれ着てるよね。暑くないのか)だね〜、脱いだらいつもの白Tシャツだね〜、今日は地味だ、ね? とふと下を見ればやはりそのままでは終わらない、ケッタイなパンツを履いていたのであった。その後twitter見ててギリースーツというものだと知る。こういう既製品があるのね……昔フリーが履いてたぬいぐるみパンツくらいインパクトあるわ。

シンバルのスタンドにナットやフェルトをつけておらず、曲によってクラッシュとライドをつけ換えたりしていた。それにしてもこれだけのパワーヒッターでこのリズムキープ力。力む様子は全くないのにビートが強靭、音が鋭敏、手数は膨大。全ッ然ブレないしダレない状態がずーーーーーっと続く。対する雷猫も安定感ドッシリの16ビートを弾き続けまくるので、もうヤバい以外に何をいえばいいのか。個人的ハイライトは冒頭のツイートにも書いた「I Love Louis Cole」〜「Overtime」〜「I Love Louis Cole」。何が起こったかと思った。ノンストップで「Overtime」に入ったことにも驚いたけど、まるまるやって何事もなかったかのように「I Love Louis Cole」に戻ったところにも腰が抜けた。インタールード扱いかよ! KNOWER絡みでは、昨年末リリースされた「Satellite (Louis Cole & Genevieve Artadi)」もやりました。キー変えてないと思うんだけど、ジェネヴィーヴの音域をファルセットで軽々唄いこなす雷猫の歌唱力にも感嘆。「Government Knows」も下ネタ絡めてちらっとやりましたね(笑)、こんな形で聴けるとは。

デニスのサポートも見事で、どなたか「存在感の消し方・出し方も絶妙」と書いていたが正に、でした。EDMテイストのシンセからジャジーなエレピ、ソロもさらりと入れてくる。デュオではこうはならない、トリオだからこその拡がりです。ひとつの曲が、演奏によってこんな遠いところ迄行けるんだ。そんな場面の連続。三人とも根っからのミュージシャン。この日この場で一度しか聴けない演奏を聴かせてくれる。そうだ、それがライヴだよ。ソロやKNOWERだとキャラ(コンセプト?)重視で無表情なことが多いルイスが、終始すごい笑顔だったことも印象深かったです。セッションの悦びが滲み出ているかのようでした。

ルイスもデニスも唄えるひとなので、美しいコーラスワークも堪能。サンダーキャットの繊細でシリアスな面にもしっかり触れることが出来ました。親友マック・ミラーの死は、前述のソニマニからすぐのこと。その後ビーガンになったという話を伝え聞いていて、随分細くなった姿を画像でも見てはいましたが、やはりひと目見た第一印象は「痩せた!」。伏せ字満載のMCをして笑っていても演奏が始まると本気と書いてマジの表情になるし、それでいてフロアのこともよく見ている。終盤すうっと演奏落として「そこのひと大丈夫?」と倒れているひとがいることを知らせ、安全を確認したらそのままヌルっと演奏の続きに戻る。最初からやりなおし、とかじゃないのよ。途中から途中にシームレスに戻ったのよ。これにはシビれた。

客電がつき、終演のアナウンス。2回公演だしもう無理かな、でも諦めきれない。拍手を続けていたら出てきてくれました。アンコールは「Tokyo」と「Tron Song」!!!

Can I just stay one more day? キャー、いていて!

Don't ever wonder where i'm going. キャー、いやいや!

終わってみれば約90分のセット。そんなん普通の外タレのフルライヴと変わりませんやん……これを3日連続て。(軽々弾いてるようでいて)手は痛いんだよ〜って以前インタヴューでいってたけど(そりゃそうでしょ)、キツい条件呑んでくれて本当に有難い。きっちりメンテしてほしい…全日程終わったらちょっとはフリータイムがあるといい……そして無事帰って! 家に帰る迄が遠足です! この言葉がこれ程実感を伴う今ですよ!

すごく楽しかったけど、すごく痛みがあって、すごく優しさに溢れたライヴでした。亡くなった先人たち、友人たちとの思い出を語り継ぎ、この日を待ち望んでいた観客の思いを引き受けてくれた。愛する日本のカルチャーに敬意を払ってくれた。サンダーキャットが愛するTokyoという都市、Japanという国に住む者として、彼を幻滅させたくない、彼の思いを裏切りたくない。自分も健やかに逞しくそれなりに生きねば。そんなこと迄考えてしまった。

ジャズファンにもロック好きにもクラブ人脈にも愛される。興奮しつつ熱く語るひとたちと一緒に、長い動く歩道を歩く。そうだ、こんな時間含めてのライヴ体験だった。嬉しさを噛み締めつつ帰路に就きました。

呼んでくれたbeatinkさんsmashさん本当に有難うございます! 最終日迄皆さまご無事で!!!

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Setlist(2nd set)┃setlist.fm

01. Lost in Space / Great Scott / 22-26
02. Innerstellar Love
03. I Love Louis Cole
04. Overtime (KNOWER cover)
05. I Love Louis Cole (reprise)
06. How Sway
07. Overseas
08. Dragonball Durag
09. Satellite *
10. Black Gold (Flying Lotus cover)
11. A Fan's Mail (Tron Song Suite II) **
12. It Is What It Is
13. Them Changes **
14. Funny Thing
encore:
15. Tokyo **
16. Tron Song ***

*『Insecure – Season 5』ost
**『Drunk』
***『Apocalypse』

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*印が付いてないのは『It Is What It Is』から。そうだよ、『It Is What It Is』のツアーだったわよねとセットリストを眺めて思い出しました。出たの一昨年ですがな…長かった……。

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・Thundercat / サンダーキャット、2022年の海外アーティストのツアーの幕開けを告げる熱狂のライブ! この2年を超えて、集まったファン・日本に最大限の愛を与えた一夜!!┃BEATINK.COM
「サンダーキャットはまさに“愛を与える人”だと心から思った一夜だった」
松永良平さんによるライヴレポート。愛!

・【Live Report】 サンダーキャット – 2022年5月16日(月)/恵比寿ザ・ガーデンホール┃ベース・マガジン
「アルバムにおいては2〜3分のポップ・ソングとしてまとまっていた(中略)楽曲が、ライヴでは長尺のインプロヴィゼーションを含んだ、ほとんど別の曲のような装いで披露されていた」
「サンダーキャットの楽曲は短いフレーズやメロディの繰り返しで聴かせるものが多いが(中略)これはヒップホップ的なループ・ミュージックのアプローチであるのと同時に、ライヴでベースやキーボードによるソロ回しを可能にする構造でもあったのだということに気づかされたオーディエンスも少なくなかったのではないだろうか」
膝を打ちまくる。専門誌ならではの機材の詳細も

・いやそれにしても、ほんとbeatinkさんがんばってくれた……POSTPONEDやらRe-Postponedやら、T-Shirt何種出してたか。このただでは転ばん心意気素晴らしい。制限緩和〜解除、また制限発動のなかチケットをどのくらい出すかも、かなり難しい判断だったと思う。ひたすら感謝です

・世界で愛されるベーシスト、サンダーキャットにロングインタビュー アーティスト、オタク、黒人としての価値観と人生観┃WWDJAPAN
2020年のインタヴュー。
「もっと広く考えるとイデオロギーの話で、社会や環境が『お前には無理だ』と否定する中でも、『より高みへ上ろう』とか『なんでもできるんだ』って思わせてくれる――マンガやアニメは、黒人をより強くクリエイティブにしてくれるんだ」