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2019年08月31日(土)
『ASH&Dライブ2019』

『ASH&Dライブ2019』@北とぴあ さくらホール


しかも正装。どよめく観客。幕が開いたときの「???!!!???」って空気、忘れられん。

いやあ……さあどんな球がくるか、カーブか、シンカーかフォークか、とミットを構えて待っていたらバスケットボールが飛んできた(©原田宗典)みたいな心境でした。そういえばここのさくらホール、吹奏楽とかの室内クラシック演奏会でしか来たことがなかった。そりゃグランドピアノ二台用意出来るわ。で、そのグランドピアノ二台に耐えうるセリもあるわ。舞台機構知ったら使いたくなるわ。しかしASH&Dのライブでそれを見るとは思わなかったよ……。構成・演出はふじきみつ彦と向田邦彦。いいもの観た〜、有難う!


高佐さんがリハの動画あげてくれました。何度も観ちゃう…格好いい……。すっごい練習しただろうな……。

実は涼太マネはすぐ判ったんだけど、もうひとりが誰か最初は判らなくて。ギースのおふたり、舞台では『10月突然大豆のごとく』でしか観たことがなかったので、高佐さんにこんなスペックがあるとは存じ上げず……。ちなみに後半のコントではハープ(サウルハープってやつ? ペダルのないタイプの)も演奏していて驚いた。このときは、古代ギリシャのひとみたいな月桂冠と白い衣裳でした。やだ似合う。

ちなみに元ネタはこれです。YMOの代表曲でもありますが、ピアノver.のこっちですね。

・tong poo

ほぼ完コピ。これは坂本龍一ひとり(と自動演奏)のver.で、教授と矢野顕子が連弾してるver.もありますが、今回の二重奏ver.は矢野顕子と上原ひろみの演奏を参考にしたと思われます。グランドピアノを二台向かい合わせにしたセッティングもそうですし。私もライヴで聴いた憶えあるんだよな、いつだったかな……。

前述したリハ動画にもありますが、演奏終盤にセリが下がりピアノが降りていく。ステージ奥の暗闇を見つめると、まことさんとムロさんが立っている。わあっと起こる拍手をしばし受け、ふたりがゆっくり歩み出る……というオープニングでした。うれしいやらおかしいやらですよ。バツの悪そうなまことさんとムロさん、「こんな恥ずかしいオープニングあるかよ」。いやー笑った笑った。改めてご挨拶とオープニングトーク。『モーゴの人々』の話もちょっと出ましたね、あれがムロさんのASH&D初仕事だったのか…今思えば貴重なものを観たな……。まことさんもムロさんの大ブレイクには驚いていたようで「君、すごいねー」なんていってましたわ。ちょっと前、シティボーイズ好きな友人と「ムロさんもはやASH&Dの稼ぎ頭だね、大きな事務所に移籍しちゃったらどうしよう、おじいちゃんたちを支えて!」なんて冗談で話してたんだけど、いやいやホント、よかったね。

さて最初のコントはなんだ? と気を改めてミットを構える。繰り広げられたのは斉木さんと久本さんのカニエビカラオケショー。今度はセパタクローのボールが飛んできた気分であった。カオスに陥る観客。斉木さんの歌が強烈過ぎて、歌詞の内容が全然頭に入ってこない。久本さんがなんとか軌道に乗せようとするんだけど、相手が規格外過ぎて全然円滑に進まない。歌のお兄さんとお姉さんがエビとカニの扮装(でいいのか、あれ?)で歌を唄い、客席を練り歩きたいやきを配り、もうこの歳なんで引退するとかしないとかひと悶着あり、訳がわからないまま大団円を迎える。あれは何だったんだろう、今でも咀嚼出来ない。ちなみにたいやき配り、あとで二階にも行きますからねといっていた。やさしい。実際行ってた。でもステージ上で行われてるコントとは全然関係ないタイミングで現れて配り出したので、二階席が騒ぎになってた。一階席からは全く様子が見えないので何がなんだかわからない。『東海道四谷怪談』で、歌舞伎座各所にお岩さんが現れたときの感じに近い。

続いて出てきたラブレターズ。「……やりづれえなー」「なんでこの出順なんだよ」とボソリ、これが大ウケ。わかる、わかるよ。しかしヤクルトレディコントは正攻法でめちゃめちゃ面白く、そうだよな、コントライブってこういうものなんじゃないのか、そもそも……とホッとする。そういう意味ではラブレターズと阿佐ヶ谷姉妹、ザ・ギースはたよりになる(笑)。下着泥棒、SLクラブネタ面白かった。素直に楽しかった。阿佐ヶ谷姉妹の「ガリ色のドレス」最高、ギース尾関さんのSL嬢のコスチューム最高。

しかしふりかえってみれば「“コント”ライブ」とは銘打ってなかったな。ライブにもいろいろあるのだと思い知りました。ASH&Dは芸人さんも役者さんも所属している事務所ですが、ライブに出るからには何か披露しなければならない(というか社員も出演しとるがな)。ムロさんときたろうさんは出所ネタのふたり芝居をやり、田本さんは尾崎豊の「I Love You」を唄い乍らトランプタワー(大統領じゃない方のトランプね)を作った。歌はうまかったがタワーは途中で崩れた。そして夙川さんと古関さんが提出したのはふたり芝居という名のほぼ実録であった。恐ろしくて書けない。というか「桑野さん」の話、以前『有吉反省会』で観たことがあったのでなんとか落ち着いていられたが、初見のひとはさぞや戦慄したであろう。悲鳴もあがってましたね(微笑)。ちなみに古関さんはきたろうさんのご子息なんですが、大竹さんとこの涼太マネといい、もともと不思議な事務所だったがこれからどうなっていくのだろうという期待…期待だろうか……不安? いや、それも違う。見当がつかない。行く末を見守りたい(笑)。

さあ、トリはシティボーイズ。きたろうさんちに初孫が生まれ、それを斉木さんとまことさんが見に来るというコント『赤ん坊待ち』。赤ん坊は不在で、帰りを待っている間三人があーだこーだとグダグダする。きたろうさんは赤ん坊になり、赤ん坊はポットになる。空の、あるいはポットを寝かせたベビーベッドを覗き込む三人。不条理な展開、何ひとつ解決しないままの暗転。ああ、これは『ゴドーを待ちながら』だ。暗闇のなか、この場にいられた幸運をしみじみ噛みしめる。シティボーイズのライブを観始めて二十年というところ。勿論もっと昔から、結成当初から観続けているひとたちもいる。こんなコントが観られる未来を思い描いていたひとはどのくらいいるだろう? そしてそれが実現するなんてことを。

台本どおりか間違えたのか区別のつかない台詞、それをたしなめる言葉もアドリブなのかどうか。もはやそれが「あたりまえ」。そしてそれが、面白い。シティボーイズが続いていること、三人が舞台に立っていること。コントをやっていること。それは本当にちいさな確率だ。年老いた身体と、重ねた人生経験と、長い時間をかけて培われた関係がないと表現しえないコント。彼らにしか出来ないコント。

ちなみに今回シティボーイズにコントをやってほしいと進言したのはムロさんだったそうです。もう手を合わせる思い、有難う有難う。まことさんが「シティボーイズの最後のコントがこれか!」といってさびしくもなりましたが、そんなこといわずにたまにでいいからやってくださいよ。またやりたいな、と思ってくれたらうれしいな。

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よだん。この日風間杜夫さんがいらしてたんですが、最後のトークのとき俺の本の音声版を風間に朗読してもらったんだ、風間来てるよな、風間〜! と客席に呼びかけ、立ち上がった風間さんに再び風間〜! 風間〜! と何度も名前を呼び乍ら両手をぶんぶん振っていたまことさんちょうかわいかった。