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2017年06月13日(火)
『仕事の前にシンナーを吸うな、』(たったひとつのコント)

シティボーイズ and 三木聡『仕事の前にシンナーを吸うな、』(たったひとつのコント)@よみうり大手町ホール

一昨年の『燃えるゴミ』でひとまず(いいはる)定期公演を終了したシティボーイズが、ライヴをやるよという発表したのは四月のことでした。第一報をPCの画面から見たとき、声をあげそうになりました。いや多分声出てた。そんで多分ちょっと涙出た。この時点で演出・構成に三木聡、演出補に坪田塁、ゲストにライス、と発表されていました。これが盛り上がらずにいられますか。

少しずつ詳細が明らかになり、公演期間三日かあ、短いな、でもマチソワじゃなくてソワソワ(18:30と20:30)? なんだかんだで五公演もぶっこむのな、制作鬼だな……いやまて、18:30と20:30? 上演時間短い? どういうこと? なんてハラハラドキドキの日々。コント一本、ゲストのライスのコント一本、そしてカーテンコール(フリートーク)という内容でした。ソワソワになったのは、まことさんが平日昼間にやっているラジオ帯番組の都合ですね。つってもおじいちゃんたちに無茶させますね……。

しかし遅いソワレは社会人にやさしい。仕事を終えて、大手町のカフェでちょっと軽食つまんでからコントを観にいくなんて、オシャレな大人の遊びみたいでいいじゃな〜い? なんて出かけていきましたが、実際は入った店で料理がなかなか出てこず、開演ギリギリに駆け込むことになりました。キマらん。

よみうり大手町ホールは、以前スズカツさん演出の『We are ウォンテッド!』で来たことがあるとこでした。四月にはKAJALLAの『裸の王様』が日経ホールで上演されていたし、考えてみれば大企業は大概自社ビルにカンファレンスホールを持っているのだった。どちらのホールにも座席に引き出し式の机がついていて、どちらも開演前に「机は出さないでください」とアナウンスがあった。面白がって机を出していた大人たちが、いそいそと元に戻していく(笑)。劇場不足が嘆かれる昨今、こういうハコでのエンタメ公演が増えていくかもしれないな、なんて思いました。もともと用途が違うので本格的な照明や装置は組めないだろうし、客席も段差が低かったりと舞台鑑賞に最適ではないのですが。そしてこういうオフィス街は、周辺の飲食店が土日曜に開いてない。そりゃそうだわね……。公演が増えるなら、そのあたりの対応策も考えねばなあなんて思ったいち観客でした。

前置きが長い、さて開演ですヨ! タイトルからしておいおいというアレでしたが、薬物依存者更生施設ものでした。その時点でどっから幻覚でどっから妄想かというラインなんぞどうでもよくなる。そこへ加齢要素が加わってくる。記憶力が曖昧になり、勘違いも増える。場面や時間がとぶ。あるがままですよ。そういうものなんですよ。それらをついつい順序だて、辻褄を合わせようとしてしまう自分にも笑えてしまう。序盤、皆さん滑舌がかなりあやうくてハラハラしましたが、そこをすかさず指摘して罵り合う三人(というか主にきたろうさんとまことさん)。『燃えるゴミ』のとき、きたろうさんが「『ボロボロになったシティボーイズも観たい』ってお客さんも意外と多いんです。『だったら、本物のボロボロを見せてやるよ!』って感じ」とインタヴューに応えていたのを思い出し、遠慮なく笑う。てか幕が開いた時点で遠慮も気遣いも忘れてる。ボケネタに笑い、へりくつをこねるとしよりに笑い、うごかなくなる身体を笑う。

同時に、ステージにあるものひとつひとつにシビれる。まずオープニング、照明が灯り浮かび上がったステージの光景がもうとてつもなく格好よかった。レンジがチンと鳴るのを待っているまことのポーズ、それをテーブルから見ているきたろうのポーズ。サイズがぴったりの、洗練されたベストとパンツ。照明を含めた舞台の色彩、耳に残る音楽、出ハケのスピードとリズム、シュールなやりとりがするりとなじむ言葉の間。これこれこれですよ、このスタイリッシュなステージ! そんななかのらりくらりといやなことをいうきたろう、カッカしてるまこと、そこへ爆弾をおとしまくるしげる。これぞ、これぞシティボーイズ!!! ドカンとくる笑いも時折あるけど、上演中どよどよクスクスといった笑いが帯状に続くのも彼らならでは。泣くし笑うし。待ってたし。そう、まことの言葉を信じて、「じゃあ、また」を信じて待ってたし。

欠かさず観に行くようになったのは『ラ ハッスルきのこショー』からなので、三木聡とシティボーイズが組んだものを実際に観られたのは『NOT FOUND 非常識な青空』だけだったこともあり、懐かしさだけでなく憧れのものが観られた、という思いもありました。今回大ウケしていた「ビン蓋ジャム」はそれより前の公演に出てきたネタだったそうで、「あっ!」と言った感じで客席がわいたときには意味がわからなかったけど、きっと前にあったものなんだろうな、それだけ観続けているお客さんが多いんだなあなんてまた胸が熱くなったりしました。シティボーイズは映像に公演を残してる。ステージは絶対ライヴでといったポリシーがある訳ではないが、それらを観てはいない。この先、本当に公演を打たなくなったら映像でも観たくなるだろうなと思う。そのときが来てほしくないので、映像で「ビン蓋ジャム」を観るのはまだ先になりそう。なってくれ。

今回の音楽誰だろう、また涼太さんかなと思っていたら実際そうで、しかも本人によるピアノ生演奏。長く公演を続けてきた彼らからのプレゼントのように思えて、こういうところにもジーンときた。こんなに笑える感慨があるなんて、彼らのコントを観続けていなければ知ることもなかったかもしれないな。そこにもまたジーンときた。おじいちゃんが三人揃ってコントやってるのが観られてうれしい、コント一本だけとか、こういう小規模(つってもそれなりの中劇場だが)でも、不定期でもいいから続けてほしい、続いてほしい。白く輝くフリスクとともに、目に焼き付けた光景の数々。その残像を噛み締めつつ、「びんぶたジャ〜ム〜♪」のふしまわしを脳内で再生しつつ、またの機会を待ってます。

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・ライスも面白かったです! 毎回若手を呼んでくるところも好き〜

・WOWOWのカメラ入ってたのでオンエアあるみたいですよ。しかし毎回思うことだが、あれオンエア出来るのかな…いろいろと……

・別の回にいったポンチさんとこまごまネタを照会したのだがあまり一致しない。どこ迄がホンにあったものなのか、段取りどおりだったのか、どこからがアドリブ(というか事故)なのかの区別がつかない。同じ作品を観たのかすら疑わしくなってくるゆらぎの多さよ…最高……



終演後に知ったエピソード。ほろり