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2015年10月12日(月)
スーパー歌舞伎II『ワンピース』

スーパー歌舞伎II『ワンピース』@新橋演舞場

ラグビーW杯を朝迄観ていて三時間睡眠(つってもその後該当ニュースとかうとうとし乍ら観てたんで実質二時間程か)で出掛けていきましたが、やー、居眠りする暇などなかった! 原作は未読、キャラクターも巷で見掛けるものをうっすら把握している程度です。

客席や壁面迄スクリーンにするプロジェクションマッピング(上田大樹!)からポップな色彩の照明(原田保! てか直近観劇二本とも照明は原田さんだったわ)、衣装で、まるでディズニーランドのような華やかな場面が続く。そのうえ本水ド派手使いとか宙乗りとか、それ通常は大詰めで使うだろうって演舞場の機構を二幕で使い切りよった。二幕目終わったときの客席のどよめきはすごかった……近くのひとが「二幕でこれって、三幕目どうなるの」とか言ってて心のなかで強く頷いた。果たして三幕は役者の力とドラマで見せる見せきる。先代猿之助・現猿翁のスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』からの継承と感じられる演出もあり、改めて演出家・市川猿之助が見据えているヴィジョンについて思いを馳せる。そして澤瀉屋の結束力。「どう?お客、喜んでる?」。歌舞伎役者はこういうところがある、観客をとことん喜ばせ、楽しませて帰らせる使命を強く自覚している。そして伝統に裏打ちされたアイディアの抽斗を更新する。芸への信頼と献身だ。むっちゃ喜んだ。むっちゃ楽しんだ。

昨今漫画の舞台化と言うと2.5次元に代表される「再現度」が強く押し出されるが、歌舞伎で、とブチあげた時点で漫画の舞台化=ヴィジュアルを忠実に再現しませんよ、と言う前提が出来る。これは結構大きいと思った。観客の間口が拡がる。しかしそうは言うものの、歌舞伎寄りな拵えでのエースやサンジが格好よくてな……長い連載のなかから「頂上決戦」と呼ばれるパートをとりあげた構成で、所謂「旅の仲間」が揃い踏みの出番は序盤と大詰めのみ。役者の殆どが複数の役を演じる。サンジで登場した中村隼人はどちらかと言うとイナズマがメイン、ゾロの坂東巳之助もボン・クレー、スクアードこそが重要なキー。個々のキャラクターのファンからすると「えっこんだけなの?!」と思うところもあるかもしれない。

それにしても、八面六臂の活躍ってふつう一作品につきひとりに対して使う言葉だが…この作品にはそんなひとが山盛りである。猿之助さんは勿論だが、特に印象に残ったのはボン・クレーの巳之助くん。あの仕草、あの台詞まわし! テンションマックス、キレッキレです。言うこと言うことジョジョフォントでヴィジュアライズされるって言うか…「そこにシビれる! あこがれるゥ!」「貧弱ゥ!」「世界一ィィィイイイイ」みたいな(笑)歌舞伎でジョジョをやることになったら是非出演してほしいわ〜。そして本水ドバドバの場面は、隼人くんとともに文字通り身体を張っての大立ち回り(一緒に観たタさんが「若い子に任せたわね」と言っててウケた)。声がえらくハスキーになっていたので心配になったが、ご本人がブログで「全然大丈夫」と書いているので信じるしかない。そしてイワンコフの浅野和之なー! あのハジケッぷり…そのハジケッぷりを支える身体能力……あんた最高だ!!! マイムも披露して客席が「おおお?!」と湧いていた。しかもすごくいい台詞もらってた。ご本人も感じ入るところがあったのではと思う。個人的にはこの二幕、ニューカマーランドのショウアップがハイライトでした。市川猿弥のジンベエもよかったなー。

一役のみだった白ひげの市川右近、エースの福士誠治はどっしりじっくり魅せてくれた! 右近さんは武蔵坊弁慶のようでもあり、ラオウのようでもあり。福士くんは囚われの身なので一、二幕はおとなしめ、三幕が見ものです。京劇的な演出でバリバリ動くところもあり、もう鬼の形相。このハードルの高さよ……と思ったけど、それを出来ると期待されて呼ばれてるんだなあとも思いました。そして猿之助さんに抱かれて死を迎える福士くんて、『空ヲ刻ム者』の十和と伊吹再びだわと思いつつ、今回はキャラクターが真逆なので位相も変わる。美しい光景でした。

千秋楽迄どなたも怪我などしませんように、事故などありませんようにと祈るばかり。

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その他。

・エンドロールで小道具が竹田団吾だと知る。あの小道具の数々、な、納得……(笑)
・「序章の声」に中村七之助(夜は中村勘九郎とのこと)。これ事前に情報得ていて、五時間後にエンドロールで知っても「忘れとるわ!」となるのは尤もだと思いRT迄したのに忘れていた。いや、三時間睡眠だったから……

・プログラムにボンクレーやイワンコフの写真がないのが残念! 複数演じてるうちの一役しか載ってないから。後半になったら舞台写真入るのかなあ…てか舞台写真買えばよかったよ! と思う程だよ!!!
・浅野さんのイワンコフと巳之助くんのボンクレー、これな。前列中央と前列右から二人目、とキャプション入れなきゃ何がなんだか…そもそもこの絵面で歌舞伎って言うのが最高じゃないの