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2014年12月06日(土)
『新しい祝日』

イキウメ『新しい祝日』@東京芸術劇場 シアターイースト

これが今年最後に観る舞台じゃなくてよかったと思った…いろんな意味で(笑)。エチュードで作り上げていった場面を構成していったのかなと思えるところがあり、劇団としての新展開を感じました。特に会社における人間関係のあれこれには、城山羊の会(今やってる新作観たかったが、日程の都合がどうにもつかず・泣)を連想したりもしましたが、そこにセクシャリティが持ち込まれない(モチーフとしてはあっても生々しくならない)ところや、モチーフの扱い方、掘り進め方は前川さんとイキウメのカラーそのもの。

口にしたら壊れる関係、空気を読む空気、感情と理性の境界線。人間の営む社会生活とは、何によって成り立っているのだろう? むしろ原因が感情である方が方が付けやすい。配役表と役名は観劇後に見たのだが、「慈愛」「権威」「敵意」「公正」「打算」「愛憎」「真実」と名付けられた人物たちは、時間と場所を越え、さまざまな社会生活の立場で「汎一」と「道化」を取り囲む。パンいちでもある汎一は、制服を着、自分の身体と社会における役割を学んでいく。道化は汎一に近付いては離れ、その都度疑問を投げかける。正しいとされることを、自分のなかでどう飼い馴らすか。飼い馴らされた正しさは果たして真実なのか。真実は事実とどう違うのか。

出番のないときの登場人物は舞台の両端に置かれた椅子に座る。無表情で舞台を見ている。汎一と決裂した(かに見えた)道化は、その椅子にふてくされたように座り、やがては舞台に興味を失い眠ってしまう(ように見える)。「コドモ会社」にいちばんよく似合う扮装は、道化のそれだ。折り合いをつけないことと駄々をこねること、それらはとてもよく似ている。

いやーしんどい。普段口にしないように、見なかったふりを、気付かないふりをしているところに手を突っ込まれてグリグリされた気分。特に現在、絶賛年末進行中につき無の心で仕事してるからな!(笑)反面、道化や真実の言動にそうだ言ったれやったれと思ってしまう自分もいる。そんな鬱憤の晴らし方、なかなかいやなもんです。それでも道化に「もう大丈夫だな」と言われたい、そんな気もしている。同時に言われたくもない。道化を演じたのは安井さん。いやーもう流石です。『地下室の手記』上演時のコピー、「理路整然と罵詈雑言」。彼の立ち居振る舞いは理性にも感情にも訴える。彼を擁するイキウメは強い。そして「息を合わせ」る劇団員のこれまた整いっぷりに唸るやら震撼するやら。こういう、整然としたマシーン的な状況や人物に囲まれ惑いもがく人物、と言う関係性を全て生身の役者で表現するのもこの劇団の強いとこ。段ボールや折り紙を使った装置、小道具も効果的でした。