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2014年06月01日(日)
『関数ドミノ』

イキウメ『関数ドミノ』@シアタートラム

『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』を観た帰り、トラムって今何やってるのかしらーとのぞきに行く迄イキウメは円形でやってるって思ってましたよね…危ないところだった……。意図せず二日連続で三軒茶屋。

観てる間、菊地成孔の発言を思い出していました。膨大なテキストから掘り起こせないのでニュアンスを思い出して書くと、「どんなに調子よさそうでブイブイ言わせてるやつも、あなたの知らないところでイヤな思いや悲しい思いをしてる。あいつだけがどうして、なんて妬むなんて無駄なことだ」。言うに及ばず、これは自分も常日頃思っていることでもある。それでもどうしても、ネガティヴな気持ちが他者に向くってことはある。それとどうやって折り合いをつけるか。

こういうひとの妬み嫉みを超常現象として捉えるとどうよ?と言う枠組みなんですが、確かに思い当たるフシはある。あまりにも考えすぎると、常識では考えられない発想で答えを見出だそうとするんですよね。事態が落ち着いてから思い返すと何考えてたんだある訳ないやんと我に返ったりするんですが。しかしこの作品が面白いのは、そういう思い込みは実際アリなんだ、と言い切れる強さがあるところです。

証明出来るかと言えば難しいけれど、現実的には有り得ないことが起こるってことは多々ある。皆それをどこかで知っている。個人的なことで言えば言霊を信じているし、縁起は担ぐ。でも宗教やスピには厳しい。帳尻が合う人生なんかある訳がないと思っているし、こんだけお参りしたんだからこんだけお布施したんだから見返りくれよ、いい目に遭わせてくれよと思うこと自体がもう信用出来ないわ。はっ、だんだん芝居の話から外れてきている。閑話休題。イキウメは、そういった不思議な現象を理詰めで伝えようとする。そして、理詰めでは証明出来ないことがあると言うことをきちんと見せてくれる。信じると決めるのは自分だと言うことも。

観劇後早速検索してみた。ドミノ理論と言うのは確かにある。ドミノ幻想やドミノ一個に関しては、イキウメ関連のテキストでしか見付けることが出来なかった。これはヤラれた、と言う感じ。清々しい気分になった。

伊勢さんが演じた看護師のことが好きなのね。騙されてもいいんだ、それを信じると決めたのは自分だから。信じた結果願いが叶えば、それはとても素敵なことだ。

登場人物の心象を具現化する演出が舞台ならではで面白い。パスタのシーンが弟の脳内風景なのは言わずもがなだが、実際に目の前でセクシュアルな行為が展開されると距離感がとれなくなり、弟の狼狽に心が寄ってしまう。と言いつつ実はあのパスタを両端から…のとこ、『わんわん物語』を思い出してニヤニヤしてました(笑)。現実と妄想が地続きで、前後する時間が並列する空間の使い方も特色があり、ドミノを証明しようとやっきになる男が孤立していく図式が視覚化される。これも舞台ならでは。

近作での浜田さんは身体表現も含め突き抜けた役が多い。明瞭な言葉遣い、終始張った発声、そして不自然な動き。これは疲れるだろうなと思う。そう、疲れるのだ。疲れるけどこういう人物っているのだ。前向きで、実直で、素直で。つらいことは心に閉まって。いそうでいない人物を「いそう」に寄せるその献身に唸る。と思いつつあてがきだったらどうしようと思う(笑)。でも、その資質はあるんだろうな。安田さんの役は『地下室の手記』からの発展形にも感じた。常にひとを妬み、ひとを見下し、自分をも卑下する。ずっと演じるのしんどそう。ラストシーンのモノローグは圧巻。岩本さんの役は個人的に理想です、「原因と結果を調査するのが仕事」。盛さんの役もそうで、悩み乍らも冷静にものごとを捉えられるようになりたいなあ。

そして『片鱗』観たって友人と話したとき意見がバックリ分かれて気付いたんだけど、私、森下さんに騙されがちと言うか騙されてもいいやーと思ってしまうのだった。なんだろね、あの声のトーンが催眠術っぽいのかな。ここらへんもあてがきかしら…なんて思ってしまいます。

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おまけ。

前述したラストシーンの安田さん観ててこれ思い出したのねー。

・スペースサイト!『ロシア宇宙開発史 消された男たち』

で、文中にある「彼女が発信する(中略)音声記録」と言うのがこれ。恐ろしいのがこれが書き込まれた当時、引用元検索したらちゃんとあったんですよ。それが今どーやっても見付からないの!ま、ガセネタだと証明されて削除しちゃったのかも知れないですけどね。

あとトーキングヘッズ『Remain In Light』の裏ジャケにもなってるこれとか。

・世界の怪事件・怪人物『No.139 バミューダトライアングル』

イキウメぽいでしょ(笑)。いやあのひとりごとホントゾワーとした、安田さんすごい!