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2013年08月24日(土)
SNATCH Vol.6『プロジェクトB』

SNATCH Vol.6『プロジェクトB』@池袋シアターグリーン BOX in BOX THEATER

オクイさんとこの(本人曰く「面倒見てる」)劇団SNATCH。これ迄ライヴハウスやクラブでの公演を打っており、今回初めての劇場での公演だそうです。今回は脚本に楠野一郎さんを迎え、「小4の狂った夢日記のような」脚本を「小2の魂で演出」しました、とのこと。いんやこれが面白かった。

「プロジェクトA」からの〜「プロジェクトB」、で、A地区に対してB地区、このB地区が音声だと「ビーチク」な訳で、そう聴こえてしまった時点でもう勝ち!ですよね(笑)こっちもああ、そういう心持ちで観るわ!てなったわ。もう終始ニヤニヤですよ。数多のアホ小ネタを全力で振り切って演じる役者陣の若さも眩しい!楠野さんもオクイさんも無茶振りするわね…とは言うものの、その振り切りっぷりに沿う若さかと言うと、そこ迄は若くないってところにまたなんてえの、ちょっとした哀愁があってまたいいわ……。ジャッキー・チェンを全く知らないと言う訳ではない、でもきっと元ネタがピンと来ると言う世代でもない、この微妙さ加減。単に若い子が振り切ってると「ああ若いもんね」って感じですが、中途半端に若い子が振り切ってるとある種の覚悟が見えて、そこにほろりときてしまったりするのです。

とは言うものの、皆さん舞台で見せる姿勢、舞台で出す声と言う基本的なことがとてもしっかりしていて観ていて気持ちがよかった。主役の子(こないだの猫背シュージに出てた子ね)なんかぱっと見ひょろっとしてておたくな感じで「30歳の童貞のカンフーおたく」って役柄にピッタリ!てな振りをしといて、実際脱いでみると腹筋がシックスパック。「30歳の童貞のカンフーおたく」だからこその鍛錬を積んでいたのだ、とはっとする訳です。この爽快さ!アクションシーンもいいキレでした。女優陣もパンツ見せるときは思い切り見せる!溌剌と見せる!その健康的なところがとてもよかった。皆さんツラ構えがしっかりしていて、キャラクターもあって、印象に残るひとばかり。当日パンフに配役表が載ってなくて残念、あの役の子は誰?とか知りたかったのに…と思っていたらオクイさんのツイートが。そういうことだったのか〜。掲載されるのが楽しみです、彼らの今後にも注目したいなと思いました。

小ネタはとにかく満載で、私もどれだけ拾いきれたか判りませんが(『誘拐報道』ってDVD化されてなかったんですね……)80年代の日本、カンフー映画の吹替、返還前の香港、ジャッキーへの愛、などなどがみっっっっっっっちり詰まったホンで、そこかしこに楠野さんの人間性がちらつくところも愛しい。そしてこれどうすんのってな無茶転換、無茶段取りがものっそいあったと思われるホンを見事に演出したオクイさんも愛しい。あと小中学生男子の性への執着に、たいへんだよね…と思いました(笑)。

スタッフワークも素晴らしかったなー。木人の子の手がかわいかった、あのディテール!まるい!指がない!木人だから!背中にくっついてるきのこのディテールもたまらんかったです。美術のひと(仁平祐也さん)すごい。そして衣裳に小原敏博さんも参加してましたよ。オープニングから派手で、シアターグリーンのキャパをはみ出す過剰さがあってそこにもおおっとなりました。このへん意識的なプランだと思いますが、そこに立つ役者たちの過剰さは最初から狙ってやれることではなく、全力でやったからこうなっちゃったって感じがまたよかった。

はーそれにしても端々にエモい地雷が仕込んであった…うっかり泣きそうになっちゃったじゃないかこのやろう。今回の作品を最後に、オクイさんはSNATCHを離れるとのこと。あのメンバーならきっと大丈夫、これからのSNATCHに幸あれ!