初日 最新 目次 MAIL HOME


I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME

2013年05月03日(金)
BOOM BOOM SATELLITES EMBRACE TOUR 2013

BOOM BOOM SATELLITES EMBRACE TOUR 2013@日本武道館

・Special website for the Budokan

・360° LIVE STREAM - Flash Player Installation

・Facebook

・映像演出を手掛けたチームflapper3 inc.のサイト

・ライヴレポート(速報) / BARKS
・ライヴレポート(詳細) / BARKS

・ライヴレポート / ナタリー

・ライヴレポート / iFLYER

・LIVE REVIEW / New Audiogram

-----

えーと長いですよ、そして毎回思うがなんでこーブンブンのこととなると気味の悪い文章になるのだろう。取扱注意、他言無用でひとつ宜しく……。

なんとなく思い立って、前日『Tomorrow Never Dies』のネイルを塗った。と言うのは嘘で、そうしようと決めていた。昨年末あのニュースが知らされた直後に買ったものだ。今回ばかりは験を担ぎたくなる。

会場へ向かう途中くろねこ二匹に遭遇。入場直前マイ苦さんに遭遇。マイ苦さんとはなんだかんだで長いつきあいになる、クラブで遊び歩いていた頃からの友人だ。ブンブンはデビューして15年。いろいろな変遷を辿って、当時ライヴ会場やクラブで会っていたひとたちとは今でも会っていたり会わなくなっていたり。ブンブン絡み以外では会っていたり、ブンブン関係なくとも会わなくなっていたり、いろいろだ。今回もその頃の友人知人たちが会場に来ているかどうか、知っていたり知らないでいたり。あの子もあのひとも会場にいるかも知れない。いないかも知れない。そして入場の列に並んでいるとき「ブンブンを知ったのはKEN ISHIIのリミクスからだったな」と思い出し、イシイくんフリークのマイ苦さんのことを思い出していたのだった。ひと混みのなかに見知った顔が突然現れたときはだからすごく驚いたし、同時に嬉しかったのだ。少し話して別れる。

一階席南三列目、ステージ真正面。インスタレーションとしても観たかった(絶対ステージごとアートにするプランでくると予想出来た)のでスタンド席を選んだが、それにしてもいい席がとれた。まあ、踊り倒せる体力に自信がなかったと言うこともあるが(笑)とにかくじっくり観たかったし聴きたかった。実際この位置は音のバランスもとてもよかった。八角形の武道館。『UMBRA』と『PHOTON』はSTUDIO八角形で制作されたな、なんてことも思い出す。そして『PHOTON』制作中、川島さんが八角形のあるロンドンから一時帰国していたことも思い出す。

もう時効だろうが、一度目のことは当時クラブ通いをしていたひとから聴いていた。一般人の自分に伝わってくるくらいだから、とりたてて隠し立てしていた訳ではなかったのだろう。ただ、作品や活動を見る目にバイアスがかかってしまうようなことを本人たちが避けたいと思っていたのは確かだろうし、だからこそこちらが騒ぎ立てることではないと思っていた。それにしても今回が三度目で、二度目は『PHOTON』のときだったとは(追記『UMBRA』のときだったようです。てことは『PHOTON』時の帰国は定期検診だったと思われる)。川島さんが帰国していたとき、友人とまさかまた…とちらりと話しはしたけれど、アルバム完成のニュースを聴き杞憂だったのだなと思っていた。それでもアルバムリリース後のAXのようなこと(一日目二日目)がある度ヒヤヒヤしていた。これ未だにことあるごとに思い出すので、余程トラウマなんだな(苦笑)。この時期(ブンブンに関しては今も、かも知れない)は熱心に音楽誌等のインタヴューを読んでいて、ふたり出席していると書いてある記事なのに中野さんのコメントしか載っていないことも多く、それも随分厳しい内容ばかりだった。中野さんの川島さんへの要求もとても高かった。『PHOTON』の歌詞は中野さんが書いたものが多い。今となってはそれがどういうことなのか、明らかにする必要はないのかも知れない。ひたすら聴いたその作品が、今でも自分にとって特別なものとなっている事実。それを信じるだけだ。

その後音楽のナリが変化したり、サポートドラマーの平井さんが辞めたり、NINE INCH NAILSの影響が色濃くなってきた。『PHOTON』前後からのバンドの変化にNINがひとつの指針になっているのは明らかで、NINは自分もとても好きなバンドなだけに困惑した。しかしパクり云々と言うことではなく、音の組み立て方、鳴らし方、リスナー参加を促すインタラクティヴな活動展開、そして実験的、攻撃的でありつつ高水準のアートとしてのライヴステージを作り上げようとする意欲と姿勢に好感が持てた。今回のステージアートは、2006年2008年のSTUDIO COASTで継続的に採用していたものの到達点のように感じた。STUDIO COASTでは音も照明も窒息する程圧が高く、それがバンドの過剰さとも合致し、感動し乍らどこかで怖いとも感じた。このハコでは収まりきらない、そう思った。それが武道館では、容れものと本人たちがやりたかったプランとのスケールがぴたりと合っていた。必要だった“規模”がある。

横幅をたっぷりとった巨大LEDフェンスが「HELTER SKELTER」で一斉に点灯されたときのインパクト!赤が目に焼き付く、どよめきと大歓声が同時に起こる。そして天井の高さが相当ないと使えない設計の照明。バトンとスタンドが一体になったようなもので、形状を変え乍らさまざまな位置に動かせる。ステージへの照明角度が自在なうえ、その骨組が放射状になったり星状になったりと動くさまも美しい。そしてだてに八角形じゃないぜ(笑)、大人数収容であり乍らステージとの距離が近い。前回の大バコ、2010年幕張イベントホールは縦長だったから尚更そう感じた。プレイヤーをそう遠く感じない。ちらりと「NINが日本でも人気あって、武道館でライヴやれてたらなあ…」と思ったのは内緒です(笑)。しかしそう思う程の空間が出来上がっていたのは確か。

これらステージセットの規模と距離感は生で観てこそだった。配信で観ればいいや、と思えるものではなかった。音に関してもそうで、曲が肌に触れるような感覚はライヴならではだ。いろいろな事情があって会場に来られなかったひとも多いと思う。その辺りにも配慮し、なおかつただライヴ中継をするだけではないさまざまな試みもあったようなので、配信ならではのよさもあったのだと思います。中野さんが大泣きした顔は現場では観られなかったですしね。それでもあの場にいられてよかったと思う。

これだけのプランの実現は、今回の川島さんのこととは直接は無関係だ。数ヶ月、いや数年前かも知れない、再々発が判るずっと前から準備を進め、そして素晴らしいステージになっていただろう。苦節十五年なんて浪花節的な悲壮感はないにしても、クラブからスタートしたバンドが武道館に、と感慨深いものになっていたと思う。しかし今回のライヴはやはり特別な意味を持つものになった。帰ってきた川島さん、それを待っていた中野さん。そしてサポートのyokoさんやスタッフたちの尽力で、この日を迎えることが出来たのだ。無事終わってくれとひたすら祈り乍ら観ていたが、それを忘れるくらい楽しい瞬間が沢山あった。楽しかった、本当に楽しかった。そして心を打たれた。バンドの集大成であると同時にこれは新譜『EMBRACE』のツアーであり、これ迄あったこと、これからあることを全て受け入れ抱きしめるような大きな世界がここにはあった。

「NINE」で、それ迄照明効果も含めた抽象映像に終始していたLEDフェンスに、抜けるような青い空と雲が映し出された。誰かが空を飛んでいる、と言うより落下している。ちいさな白い羽根がついている。フォーリンエンジェルだ。これはこういうことだったのか。そして最後の曲「STAY」、演奏するふたりの表情のアップが映る。川島さんは達観したような、中野さんは感極まったような顔をしていた。全ての曲を終え、中野さんは顔を覆った。そしてベースを持ったまま前に出てきた。スタッフに預けたかったようだが誰もとりにきてくれない。しばらく待ったあと楽器をそうっとステージの床に置いた。自分の左胸を何度も拳で叩いた。そして両手を挙げ、深い礼をした。川島さんの術後初めてふたり揃って出演した配信番組で、中野さんは「僕たちには時間がない」と言っていた。時間に限りがあると自覚したひとは強い。しかしそれを自分たちに言い聞かせ、行動し続けるタフさは想像にあまる。

これからバンドがどこへ行くかは判らない。しかしずっと聴いてきてよかった、これからも聴いていこう、彼らのやることを見ていこうと思えたライヴだった。このバンドが好きなことを誇りに思うライヴだった。

-----

その他おぼえがき。

・「DIG THE NEW BREED」で二種のマイクスタンドを並列させずにステージ両サイドに配置していたのが面白かった。並列マイクがなかったんでまさか今日digやらない?やらない訳ないよな?と若干オロオロしていたのだった
・で、前半川島さんが使った下手側のマイクスタンドに中野くんが行って、背伸び気味に唄ってるの見たときは大笑いしましたよ…ちょっとかわいかったですわ
・中野くんと言えば投げキッスを何度かしていたのにうろたえた。いや別に今回が初めてじゃないけどわあロックスター?とおろおろします(笑)

・いんやしかし「FOGBOUND」「DIG THE NEW BREED」はほんともー名曲よなー変遷含めて。どのヴァージョンも素晴らしいよ。足し算足し算で膨張していたfog〜に若干隙間を与えたヴァージョンも好き。合気道みたいな間で新しい扉を開くみたいな(意味不明の例え)
・fog〜にトライバルなリズムとrezなアウトロが加わったときの衝撃は今でもよく憶えているし、dig〜にロッキンなリズムを加えたヴァージョンが数回で姿を消したこともなんか感慨深いです…試行錯誤していたのだろうな。てかずっとしていくのだろうな
・しかしこのdigのロッキンなリズム、今振り返れば超初期の「Bike Ride To The Moon」や「Low Blow」のパターンに通じるものがあったななどと思う。こちらが音色に惑わされていたのかもなあ
・てか今だからこそ『Joyride』『OUT LOUD』のナンバーを聴いてみたいですね。今のバンドのモードで

・そしてここ数作でバンドに強力な色を加えた川島さんの歌!いやもうここ迄歌を手に入れるとは思ってなかったです正直。これは大きいよなあ……
・と言えば、中野くんもずっと唄ってたな。マイクがないところでも、川島さんと一緒に
・そうそう、「EASY ACTION」でフロアが一気にヒートアップした場面にはおおっとなった。ここすごい盛り上がりでしたね

・塗ってった爪と似た色の照明があったのが秘かに嬉しかった
・終演後神保町のボンディでごはん食べたんだけど、店内BGMでご本家The Beatlesの「HELTER SKELTER」がかかって嬉しかった

-----

セットリスト

01. ANOTHER PERFECT DAY
02. HELTER SKELTER
03. BROKEN MIRROR
04. DISCONNECTED
05. MORNING AFTER
06. BACK ON MY FEET
07. SNOW
08. EMBRACE
09. FOGBOUND
10. MOMENT I COUNT
11. EASY ACTION
12. KICK IT OUT
encore01
13. NINE
14. DIG THE NEW BREED
15. DRESS LIKE AN ANGEL
encore02
16. STAY

-----