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2011年07月22日(金)
『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』

『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』@UPLINK FACTORY

トレパネーションのドキュメンタリー。日本では山本英夫さんの『ホムンクルス』から一気に認知度があがったようです。自分も『ホムンクルス』からトレパネーションのことを知りました。

トレパネーションとは頭蓋穿孔のこと。歴史を遡ると石器時代から行われており、人類最古の手術とも言われているそうです。当時は悪魔祓い等の呪術的な意味合いもあったようですが、穴を空けることにより頭蓋内圧が変わり脳内血流量が上がるのは事実で、現代では脳梗塞等の治療の一環として行われているそうです。映画はそのトレパネーションの歴史から実践者の体験談、科学的根拠を探る医療関係者や学者のインタヴューで構成されており、55分と言う中編乍らかなり濃く多岐に渡る内容。詳しい解説はこちら→・VOBO『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』

今作に出てくる実践者と言うのは、トレパネーションを病気の治療としてではなく、未知の才能を解放するためであったり、ハイになるために穴を空けたと言うひとたちです。目的が目的なので保険も利かず、自力で空けた(!)ひとばかりで(ひとりだけ事故による怪我の治療のため一時的に穴を空け、その後塞ぐ施術を行った女性がいました)、皆「自分でやるのはオススメしない」と言う(笑)。そりゃねえ…。で、オススメしないので合法的に、保険の範囲内で手術が行えるようになればいいねーと言っていました。今では医師を斡旋するネットワークも出来ているそうです。

で、実際効果はあったのか?常にハッピーだとか、走るのが気持ちよくなった、とのこと。前述の穴を塞いだ女性は「以前の気分のよさはもう取り戻せないでしょう」と言っていました。狂信的な雰囲気はなく、「すごくいいよ!空けなよ!」みたくまくしたてるひとは皆無。皆さんとても落ち着いてインタヴューに応えている。これは興味深かったー。バート・フーゲスやアマンダ・フィールディングは'60〜'70年代に穴を空けて、今も元気に暮らしている訳です。学者さんたちによると「科学的根拠はない。プラシーボ効果としては考えられる」とのこと。しかし思い込みと言うものの力は大きいですからね。

うーむ、これは「死ななきゃオッケー」とファッションで空けるひとが出てきてもおかしくない。と言うかもういるんじゃないかな。タトゥーやボディピアス等の身体改造の延長と考えられなくもない。極端な話、審美歯科やネイルサロンに行くのとそんなに差がないような気もする。それはひとそれぞれですねえ。派閥とかありそう……。「そんなのはロックじゃない!」みたく「そんなのは正しいトレパネーションじゃない!」とか(笑)なんだ正しいって。

閑話休題。ジョン・レノンがヨーコとともに「チャクラを開きたい、トレパネーションを実践したい」とフーゲスのもとにやってきたエピソードも印象的でした。フーゲスは「あなたのチャクラはもう開いているから新たに穴を空ける必要はない」と断ったとのこと。これはスピリチュアル的な意味合いもあったのでしょうが、実際にジョンがメトピックだったかも知れないと言う解釈もあるそうです。赤ちゃんって頭蓋骨の縫合部が閉じてなくて、押すとぺこっとへこみますよね。成長するにつれ閉じていくのですが、塞がりきらないひともいるんだそうです。これがメトピック。

果たしてジョンがメトピックであったとして、それが彼の音楽の才能に影響を与えていたかは判りません。しかし身体に何らかの改造を施すことで(脳も身体の器官ですからね)新しい可能性が増えるかも、とジョンが思ったのは確かなのでしょう。第三者からすると「あなたそんなことしなくても充分でしょうが!」て思うけどね…(笑)。ポール・マッカートニーのインタヴューもちょっと引用されていました。「ジョンにトレパネーションに誘われたんだけど、僕は懐疑的だから『君がやってみてよかったら知らせてくれよ』って応えたんだ」だって(笑)。

クンダリーニの話も出てきたし、ペリー・ファレル辺りが興味を持っててもおかしくないなあ。ドラッグもそうだけど、アーティストは自分の未知の可能性をどんな手段を使ってでも探りたいのかも知れないですね。そこには快楽もあるのだろうけど。

ああっ全然まとまらない!いやしかし非常に興味深い内容でした。術中の映像もあるのでグロいの苦手なひとにはオススメ出来ませんが面白かったです。逆にショックメンタリーを期待してきたひとには物足りないと思います。

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よだん。

・山本英夫さんがいらしてて場内ざわっとなる。以前見たときよりも随分痩せた印象(普段から細いのにね)だったが相変わらずイケメンであった。こんなイケメンが何故あんな話を思いつくのか……(いや顔関係ないから)

・トークは皆さん噛み合わなくて進行の方が大変そうでした(苦笑)。アナウンスされていたゲストのひとり、エリック・ボシック(『鉄男 THE BULLET MAN』の主役さん)が出てこなかった。それについての説明がなかったのが残念だったな…時間の都合で途中で出てしまったんだけど、後半出たのかな?