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2010年05月22日(土)
『鉄男 THE BULLET MAN』とか

『鉄男 THE BULLET MAN』@シネマライズ 2F

ラーメンで言えば、全部入りでした。塚本晋也全部入り。塚本監督のフィルモグラフィ全部をブチ込んだ最新作でした。あなた(誰よ)の隣に座って「ここ!ここが『ヴィタール』!」「ほらほらここは『鉄男II』!」と耳元で叫びたいくらいだが映画館でそんなことをしていたらつまみ出されてしまう。それ以前にとても気味がわるい。

例えばライド家の地下室は『HAZE』の意匠。日本家屋風の板張りの床は『双生児』、天井や壁、床を虫のように素早く走り回るさまは『ヒルコ 妖怪ハンター』『悪夢探偵』。トモロヲさんの役は『鉄男II』のコーヒーを飲む男のパロディでもある。アンソニーが美津枝のボディと対面するシーン(ファスナーを下ろすと魂の抜け殻の顔が現れる)は『ヴィタール』、ビルとビルの隙間から見える風景、「やつ」が自分の身体を誇示するシーンは『BULLET BALLET』。パート毎に分かれるブルーとイエローのカラー、登場人物の心理によって異なる色調に映る血液、黒と言う色の美しさ、等々。そして皮膚の湿り気、脚フェチ、自転車愛。徹底したアナログ手法。

とは言うものの、得意のコマ撮りを使っていない。ストーリーを貫くテーマも、20年前とは少し違う。いや、違うと言うよりは一歩踏み込んだと言うべきか。都市と肉体、容れ物としての身体、意識の行方、命への眼差し。そして9.11以降の「戦争をしたがっている、待っているひとたちがいる」と言った、はっきりと姿を現さないものに対して感じる不穏な空気、対象が曖昧な恐怖。折に触れて怖がりだと言う監督が、今こんな映画を撮ったことは至極納得出来ます。

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・このインタヴューから引用
僕は実をいうとあまりテレビを観ないし、夜中の討論番組も観ないんですけれど、ちょっとテレビをつけて人々の発言を聞いていると、戦争を体験している人がいなくなるのを手ぐすね引いて待っている人達がいるという感じがしたんです。
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20年の間にこれらの道を辿った鉄男は、破壊への憧憬を前に立ちすくむ。これは今しか撮れなかった鉄男だ。

そして映画館でこそ、の音。家でこんなん聴けるかい。効果音は勿論、石川忠さんのサントラ(ホント塚本作品と相性いい)を閉鎖的な空間で大音響で聴ける、耳だけでなく全身で音を感じられる至福感。格別です。Nine Inch Nailsが手掛けたエンディングテーマもいい。ちなみにシネマライズの初日初回は「従来6のところを9」のヴォリュームで鳴らしたそうです。舞台挨拶の際、監督が音の大きさについて問うと「まだデカくていい」が断然多く、「もう勘弁して」は監督曰く「28人ですね」(笑)。「じゃあ次回からは9.5で」と言っていました。しかし音量だけじゃなく、他のバランスもいじっているように思うんだけど、ここらへんどうやってるんだろう。音圧は結構なものでした。立川シネマシティでは井出祐昭さんと増旭さんの音響設計で聴ける仕様だそうなので、こちらへも観に行ってみようと思います。本編もだけど、NINの音がここでどう鳴るかも興味がある。

ストーリーは随分解りやすくなっています。説明も多い。アメリカ公開も決まったとのことで、ターゲットをかなり拡げているようにも感じました。しかし「やつ」についてはますます解りづらくなっている感じも。『鉄男II』では素性を明かしてましたもんね。ここらへんは初代の『鉄男』にグッと寄っています。数箇所蛇足と感じるところはあったけど、それは個人の好みかな。特にラストシーン。今後「中で暴れる」彼をどう抱えていくかの解釈に深く関わってくるので、ひっかかりはありました。

いやそれにしても塚本さん、50歳であの少年体型はすごいですね。歳相応の面差しとすごいギャップ。「やつ」の不気味さがよりアップしていました。

そしてやはりあるおかしみ、ふふふふふ。鉄化したアンソニーをゆり子が叩くとお寺の鐘ですか?てなゴ〜ンって音がしたり、ゆり子がアンソニーの鉄をはがしてあげてるシーン(かさぶたか日灼け後みたい・笑)、もうたまらん。深刻なシーンなのに満面の笑みで観てしまったよ。そしてやっぱり自転車!ホント自転車好きだな!

舞台挨拶も観ることが出来ました。塚本監督、エリック、桃生さん、中村さん、ステファン。桃生さん、かわいい!と言うか役とガラッと違う!ハツラツとしたお嬢さんと言う感じで、受け答えもハキハキ。ああ〜んこういう女の子大好き。中村さんはミステリアスな雰囲気そのままで素敵だったー。エリックはエリックだった(笑)いいヤツ!ステファンは通訳を交え、この作品に関わった経緯、参加出来た喜びを話してくれました。そして塚本監督はいつにも増して様子がおかしかった(笑)。やっと公開初日が来た!観客に届けられた!と言う高揚感と安堵感溢れる舞台挨拶。上映終了後、ロビーで見掛けた川原さんが、ホッとしたようないい顔をしていたのが印象的でした。

いやもう楽し過ぎた。あー早くリピートしたいよー。

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『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』@渋谷TOEI 1
いろいろと気が抜けて寝てしまいました……。しかし数分毎に目が醒めてまだらで観ているのにも関わらず、話の流れが見失うことがなかったのだぞ。これはどうなんだ……。三池さんもクドカンも好きなんだけど…キャストも好きなひとが揃っていたんだけど(何せほうかさんやせっちんさん迄出ている)……ううーん。
それにしても仲里依紗がかわいくてエロくてもう大変だった。仲さんに尽きる。もう仲さん大好き!いやーたまんねー!そして翔兄ィかっこえー!

そういえば『鉄男TBM』の舞台挨拶、三池監督いらしてたと聞きましたが見付けられなかったー。残念。