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2010年03月13日(土)
『スイートリトルライズ』

『スイートリトルライズ』@シネマライズ 2F

原作は未読です。なかなかうぬうと言う作品でした。ダブル不倫の話なんだけどドロドロさは皆無、だから逆に怖い(笑)。で、個人的には主人公(妻)よりも旦那の方に共感してしまう部分が多かった。いや、うーん、でも、どっちもどっちかなあ。で、どっちもどっちだからなんだかんだあっても修復機能があって、諦めでも意地でもなく、お互いのプライドの奪い合いでもなく一緒にいられるんだろうなー。ふたりが別れてそれぞれの愛人と一緒になったとしても、絶対うまくいかないよ(断言)。

うーん、でも自分を好き!と言えるひとは、あの妻くらい迄いかないといやらしさが出ちゃうんだろうな。あの妻の自分好きっぷりは、自信やアピールに繋がらないレベルに迄それがあたりまえのことになっている(=無意識)から人間的ないやらしさが感じられない。「貪欲だ」と言われても理解出来ないくらい、それは彼女にとってあたりまえのことなのだ。で、それは、ある意味真実。自分は自分を好きでいた方がいいのはやまやまですが。

と奥歯にものがはさまったようなこの感想……(笑)。

そんなこんなでいちばん心を持ってかれたのは、妻の愛人の恋人(ひいーややこしい)の「自分だけがさびしいと思わないで」と言う台詞でした。そーのーとーおーりーだー!この子を演じた安藤サクラちゃんが素晴らしかった。出演場面はそんなに多くないのにすごい存在感。

十市さんは登場人物の中でいちばん脱ぎっぷりがよかった(笑・バレエダンサーならではのシーンも沢山あったで)。このひとだけ、何をやっているひとかってのがハッキリ示されない(ミュージシャンではありそうだが、それが生業に繋がっているのか不明)ので、ファンタジー的な面が強調された感じでした。

そうそうおとなのおとぎ話として観ればいいのではないかと思った。ビスクドールのような容貌を持ち、エゴがエゴに見えない中谷さんでないとあの妻役は厳しいし、十市さんも強引な王子様キャラで、嫉妬深いのにそれが嫌な表出にならない。夫の愛人の積極的な言動は池脇さんが演じたことで“略奪”と言う言葉からは遠くなり、ただただこのひとが好きだから、と言う印象を持たせるのに効果的だった。「雑誌によく載っている」「東京一おいしいレストラン」と言ってしまえる無邪気さも含め。いちばん人間的な迷いや困惑を見せるのがおーもりさん演じる主人公の夫。妻への本能的な怯えみたいなものから、愛人に惹かれていく過程を丁寧に表現していて、正直納得しちゃったもんなあ。絶妙なキャスティングだったと思います。

矢崎監督の徹底した画作りも、現実感から少し浮遊した美しさを捉えていたように思います。

個人的に萌えたのは、おーもりさんの寝顔がいちいちすっごいブサイクだったことだな(笑)。苦悶するいぬのような顔で寝ていたよ。

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さて初日舞台挨拶も観覧することが出来ました。中谷さん、おーもりさん、池脇さん、矢崎監督。十市さんは舞台『冬のライオン』の地方公演に出かけており欠席(残念!)。いろいろ面白かったですが、印象に残ったのは、矢崎監督の「(カメラの前で)こんなに楽に立っているひとを見たのは、趙方豪さん、ダンサーの(名前失念)だけだったんですが、大森さんが三人目」と言う言葉でした。故・趙方豪さんは矢崎監督の『三月のライオン』で兄を演じた方です。