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2006年11月22日(水)
『タンゴ・冬の終わりに』+α

『タンゴ・冬の終わりに』@シアターコクーン

スズカツさんがいらしてました。やー、まつげが数えられるくらい近くで見てしまった。やっぱりシマリスみたいだったよやまこさん!何ですか、初日に行けなかった私へのプレゼントですか…違いますよ……しっかりしろ自分………。

いきなりこれから書くか。まあそんなことがあったり、前の席のひとが上演中に(!)席を立って孔雀の羽根を拾いに行ったり(……)、近くの席のひとがひとりごとを言ったりすると言う集中しづらい環境でしたが!で・し・た・が!

素晴らしい舞台でした。今年の蜷川さんの中ではベスト。間違いなくベスト!

突如戸川純の「パンク蛹化の女」が鳴り響く。あまりの異物感に観客はギョッとして辺りを見回す。「蛹化の女」も遠藤ミチロウの「カノン」とともに全編で使われるのだが、導入にパンクヴァージョンを使うところがウマい。何が起こるんだ?と戸惑う中暗転、続いて大歓声が舞台上から聴こえてくる。明るくなると目の前にはひと、ひと、ひと。約80人の観客が、寂れた映画館を満員にしている。舞台上の観客たちはこちらを向いて笑い、泣き叫び、怒り、さまざまな感情をぶつけてくる。

もうこれで完全に持っていかれました。蜷川さんの演出でよく使われる手法ではありますが、このパワーはいつにも増してすごいものだった。

この観客たちは、ある種の敗北をつきつけられ、絶望に満ちた顔で映画館を去る。しかし彼等はラストシーンでここに戻ってくる。今度は笑顔で、大きく手を振って。おーい、おーいと大声で叫びながら。

「俳優は蜃気楼のようなもの」、言葉を持たない。しかしひとの書いた言葉は、俳優の肉体を通して新しい力を持つ。それを体現するキャスティングです。堤さん、段田さん、秋山さんは本当に素晴らしい!現実世界に生きる苦しさ、幸福、狂気と同居する正気。自在のコントロールで次々と感情を引き出し、それを舞台上から投げてくる。「生活する」ひとの代表とも言える高橋くんと毬谷さんもすごくよかったな。常盤さんは華があって、登場シーンは本当にはっとさせられる美しさ。台詞まわしや声の力が、他のキャストと格段に差があったのが残念。

時は戻らない。美しさは永遠ではない。身体は衰え、命は尽きる。こういう話を観たり読んだりする度に、必ず思い出す。「HEY HEY, MY MY」の“It's better to burn out than fade away”と言うフレーズ。

しかし、歳をとり、愛したひとを失い、廃墟と化した映画館を去るぎんはとても美しかった。彼女はまだ生きて行く。そして観客席のひとたちは、笑顔でそれを送り出す。まだ生きる、まだ生きる。

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■『哀しい予感』チラシ情報更新
サウンドデザインで飴屋さんの参加が決まっています。こりゃー戦争になるなー。楽しみです

■『トーチソングトリロジー』初日
『欲望という名の電車』速報チラシが折り込まれていたとのこと。来年11月、青山円形劇場。1年先ですがもー細かい日程決まる迄この月には他の予定入れない!そして来年迄元気で生きていられますようにー出演者、スタッフの皆さんもですが自分もな!

■で、その初日
さとしさんがカーテンコールでスズカツさんにチューしようとしたってマジですか(笑)