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2002年10月14日(月)
日本総合悲劇協会 Vol.3『業音』

日本総合悲劇協会 Vol.3『業音』@草月ホール


ラッキーにもチケット譲って頂きました。原宿のお友達、有難うございましたー!お大事になさってください。

いやあ…凄かった。久々に松尾さんの本気(と書いてマジ)を観た気が…そんでまたその本気を体現する役者さんも凄かったです。以下ネタバレしてます。

一発屋のアイドル歌手、荻野目慶子は業界から消え、痴呆の母親の介護を続け借金まみれになる。介護をテーマにした演歌を売り出そうと皆川が話を持ってくる。が、母親が死んでしまい、介護を売りにしたい歌手とマネジャーは困り果て、車のトランクに遺体を乗せて走る。運転中メールが入って荻野目は返信に夢中になり、松尾の妻・志摩を撥ねる。志摩は脳を損傷、植物状態になる。演歌歌手として再出発するため、事を内密にしたい荻野目と皆川は、松尾の要求をのむことにする。松尾は志摩に監視されていないと存在意義をなくしてしまうペシミストで、自殺に走りがちになる。志摩の魂を荻野目の身体に入れることを条件に、ふたりは身体の関係を持ち、結果子供が出来る。その頃、志摩は意識を取り戻す。

友和は26歳まで孤児院にいた同性愛者で、子孫を残す方法が見付からず自分のコピーを作るのに躍起になっている。片桐はホームレスで痴呆になりかけているところを拾われ、コピーのひとりを務めている。宇都宮からアイドルになる為に上京して来た兄妹・克夫と粥はスカウトされることもなく、皆川の事務所に入る資金集めと騙されて売春を始める。そのうち克夫は友和のコピーに、粥はエイズになっていく。保険証がないので病院に行けない。事務所に入れば保険証が貰える。粥は売春相手に病気を伝染し続ける。実は荻野目は母親の介護をしていると言いつつ、母親の年金を食いつぶしている。松尾に恋するようになった荻野目は、志摩のある条件をのみ、松尾と15分の“デート”がしたいと申し出る。業音はケツの穴から聞こえてくる。踊り子はどのシーンにも顔を出し、場を見守る。

字面にすると結構悲劇だ。確かに悲劇ではあるんだろう。大体やってるのがニッソーヒだし。が、これを笑って観られてしまう。笑いに逃げているのではなく、実際笑えてしまう。これらは日常茶飯事かも知れない。ナレーションにあったように、親がパチンコに夢中になって、車内に置き去りにされた子供が簡単に死ぬ程ひとの命は軽い。志摩が撥ねられる原因にもなったメールの内容は、保険証(身分証明書)がなくレンタルビデオ屋の会員になれない克夫に、荻野目が『マトリックス』のビデオを見せてやるよと言ったやりとりだ。役名と実名をほぼ同じに設定し、実際に舞台に載せる悪意と覚悟。

役者はとにかく素晴らしかった。特に女優陣。全く無駄がない。今年は2本荻野目さんの舞台を観ているが、どちらも大当たり。他にこの役を出来るひとはいないだろう。片桐はいりさんも伊勢志摩さんも超然としていた。平岩紙さんの投げやりさも切実で、最後のシーンは涙も出なかった。そういう湿気を許さないのだ。踊り子の康本雅子さんは『リア王』の道化を連想させた。美しく、醜い全てをただ見ている。

超然と滑稽とは素晴らしい舞台に必ず出てくる図式で、以前松本人志氏が言っていたが、「男が全裸になったら笑えるけど、女がなったら笑えない」現象を、技として乗りこなしている。松尾さんをはじめ男優は皆脱いだ。ウケるウケる。女優は荻野目さんが脱いだ。序盤は全く笑えない。しかし終盤の脱ぎは笑える。笑ったあとに皆黙りこくる。必然性すら笑いに転化する。しかし全裸でのアクションが激しいシーンもあり、カーテンコールの時に松尾さんがちょっと足を引きずっていたのが心配。無事楽日を迎えられますように。

入り口でカメラチェックがあるなど会場はものものしい雰囲気で、開演前から緊張感があった。いい“デート”だった。


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■例のベスト盤
発売日がどんどん早まってるなー。このままだと10月中に出そうだ。「You Know You're Right」がネットに流出しまくってるので、レコード会社も焦ってるんだろうか。日に日に発売日が変わっていくので、ニュース並に毎日チェックしとかないとわかんなくなるよ!ベスト盤=コートニー、ボックスセット=クリス&デイヴの持ち分のようなので、ベスト盤を選曲したのってコートニーなんかね。なんか、わからんでもないけどこの選曲。