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2002年10月13日(日)
『ポンヌフの恋人』

フランス映画、秋の散策。『ポンヌフの恋人』@ラピュタ阿佐ヶ谷


思えばスクリーンで観たことがなかったのでした。この機会を逃すとまたしばらくなさそうなので、ドキドキしながら阿佐ヶ谷へ。このラピュタ阿佐ヶ谷って、オープン当初はアニメーションの上映専門館だったのですが、最近はアニメーション以外の面白い企画上映も組んでくれています。ちなみに同じ建物内にあるフレンチベースのレストラン『山猫軒』は料理もデザートも激旨。価格設定はちと高めですが、いいとこです。今日はギターの生演奏が入っていてラッキー。

さて本編。も〜これに関しては、もはや役者がどうとか言う視点では観られなくてなあ。ドニ・ラヴァンもジュリエット・ビノシュも好きな役者だが、この作品ではアレックスとミシェルって目でしか観られない。そんでアレックスに肩入れしてしまうんだよ私は…。と言いつつ、3パターン撮られたと言うラストシーンは、採用されなかったアレックスのみが生き残るヴァージョンを観たいと言ってるひとでなしなんですが。

考えてみれば、アレックス3部作で、彼の出自が全く出てこないのはこの作品だけだ。『ボーイ・ミーツ・ガール』も『汚れた血』も、父親との関係が結構重要項目だった(そして母親の影はいつもないな)。『ポンヌフ〜』では、ミシェルもハンスも過去が語られるが、アレックスにはそれが皆無。『ボーイ〜』では父と電話で話し、『汚れた血』では父が死んでいる。そして今作は、もう身寄りすらない、自傷癖のある不眠症だ。あ、不眠症はずっとあるモチーフだな。

と言うように、ここら辺考え出すときりがなく、ますますアレックスに感情移入する訳ですよ。ミシェルの気持ちも分かるけど、やっぱ眼は治したいだろうけど、片付けておかねばならない現実問題もあるだろうけど、やっぱアレックスと一緒にいてくれよーとかな…ミシェルの眼の代償はアレックスの指だったのかなとかさ…。それもあって、話の流れとしてはアレックスのみが生き残るかふたりとも死んじゃう、もしくはふたりとも二度と会わないってのがまっとうだろうとも思う。が、採用されたビノシュの案であるラストシーンのカタルシスは、やはり何ものにも代え難いかな…「目覚めよ、パリ!」の台詞とリタ・ミツコのエンディング曲。やっぱりあのラストだろう。あくまでもハッピーエンドとは言えはしないし。

いやーそれにしてもやっぱりあの花火のシーンはスクリーンで観て嬉しかったな。映画に対する執念と愛情、テンションが焼き付いている。フィルムの状態がかなり悪く、ノイズも入りまくりだったけどそれがまた時代を感じさせて印象的でした。

そして今になって気付く、テオが出演してる!出演してるっつうか、犬なんだけど。カラックスの愛犬。あ、あれ、テオだよね!?あの白黒の。帽子を被ったような模様の。何故今迄気付かなかったんだ…て言うか、あのシーンはどうしてもアレックスとあのおじさんを見てしまうから…と自分に言い訳。テオ、数年前に死んじゃったんだよな。『ポーラX』撮影時も、カラックスとずっと一緒にいたらしいから、随分長生きしたよね。そうか、今でも動く姿を見られるのか。

カラックス、本当にもう映画は撮らないのかな。ラヴァンがここ2〜3年で映画に復帰したし、カラックスの作品もまた観たくはあるが…『ポーラX』の次となると。こちらも観るのに勇気が要りそうだ。でも、待ってはいるのだ。

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余談。映画を観る前に小沢健二の話をしていて、お茶にと入った店内で小沢健二の『ECLECTIC』がかかっててビビッた。