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2002年03月24日(日)
ハシゴデー

例によってネタバレバレバレです。

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『害虫』@ユーロスペース2

「駆け抜けたからセーフ。下手に立ち止まると轢かれて死んじゃう」。

後半、主人公サチ子がヒッチハイクで乗ったトラックの運転手が、飛び出してきたネコをかろうじてよけた後に言ったこの台詞が話の骨だと思うんですが、その「駆け抜ける」速度感と言うものは世代によって確実に違う。疾走する少女の90数分が、こちらの体感では2時間以上に感じられた。展開はテンポよく進んでいたと思うんだけど、時間が長く感じられたのはやっぱりこっちが歳をとっているからか。

この話に関してだけじゃないが、人生全て運だと(自分は)思っているので、主人公が害虫なのかそうでないのか、これも運だと思うんだよなあ。親があのひとなのも、その親の恋人に襲われるのも、家一軒燃やしちゃうのもたまたま運で。とはいえ運と言うのは選べるものでもある。結局は自分に返ってくる。それを環境のせいにするのはズルイと思うんですが。特に加害者となると。まあどっちが被害者でどっちが加害者だってのも視点によって違いますけども。甘いですか。そうですか。まあ私見ですから。

宮崎あおいさんの、ふてくされて見える地顔がハマッていた。その分、時々ふっと見せる笑顔がかわいかったなあ。夏子役の蒼井優さん、どこかで…と思っていたら『リリイ・シュシュのすべて』で、ウリをさせられて自殺しちゃうコを演じてたコだった(確かそうだったと)…うわー…。今回もこんなだし、不憫な…(泣)いつか幸せになる役をやってくれー。伊勢谷友介くんてこんなに滑舌悪かったっけ、ワザと?寺島進さんは高度なサブリミナル出演だったようで、どこに出てたかわかりまへんでした、トホホ。木下ほうかさんは、登場人物中珍しい“いい人”でよかったざんす。リンゴくれたしな。

あと脚の撮影に随分拘りを感じた。『月光の囁き』からの手法を踏襲したこの監督のカラーなのか、それとももともと脚フェチなのか(笑)。女子の脚ってのはいいやねえ〜。

さて目当ての大森南朋くんは役名「ラブホテルの男」。ダメな大人ですよ。ダメっぷり炸裂ですよ。でもグレーのスーツ姿が似合ってて背が高くて格好いいのよ。ダメな大人だけどな。「サチ子、逃げろ!」って思ったけどな。

開演30分前に行ったのにかろうじて座れたと言う感じ、立ち見も出ていて盛況です。よかったよかった。5月のユーロスペースで公開の、『溺れる人』のチラシが出来上がって置いてあったので、大喜びで分捕る。うわおう塚本さんスッテキ〜!『クロエ』のチラシもゲット。うわおう塚本さんかっこい〜い!公開が待ち遠しい。

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『Laundry<ランドリー>』@シネ・アミューズWEST

「あんたもああいうのばっかり観てないで、たまには心が洗われるものを観なよ」と連れて行かれました。どういう意味よ…。こちらも1時間以上前に整理券を確保したのにギリギリ、いちばん後ろの端っこで、画面の下1/5が見えなかった。字幕ものじゃなくてよかった。

ええ、ええ、心洗われましたですよ。窪塚洋介くんが〜!ぎゃーおまえかわいいんじゃ〜!てなもんで。黒目部(勝手に創部してます)部長の本領発揮です。トンガリ帽子が何故こんなに似合うんじゃ〜!これを目深に被っているから、眉がかくれてますます黒目が際立ちますよ!ああそんな目で見るな!自分のヨゴレを自覚させられるわ!食べるものもスパゲティナポリタンだったり、「救急車って速い?」って聞いたり、うわー天使だ!天使がここにいるよ!白いし!

ちっちゃい頃マンホールに落ちて頭にキズがあるテルは、ばあさんの経営しているコインランドリーで見張り番をしている。下着が盗まれないように、洗濯物を見張っているのだ。そこに洗濯をしにやってくる水絵。ばあさんは彼女を女ギツネと言う。テルはまんま彼女のことを、心の中で「女ギツネ」と呼ぶ。勿論悪意は皆無。女ギツネが忘れたワンピースを届けるために、テルは知らない街へ向かう。

現実には有り得ないだろうこの物語を、観客も了承している優しさがある。いいじゃん、映画だから。こういう映画って観たいじゃん。そうは言うものの、水絵は逮捕されちゃったり結構容赦ない部分もあるんですけど。TVを素手で万引きすればそら捕まります。彼女はひょっとしたら将来テルを裏切る事があるかもしれない。ズルい、甘い、でもこの物語はそれでいい。

いちばんいいひとってサリー(内藤剛志さん)だったよなあ。仕事も家も車も何もかもふたりにあげちゃったもんな。で、「俺はいいひとじゃないんだそ。ちょっとばかりお前らのことが気に入ったんだ」。テルの「ほっとけない」っぷりに引き付けられたとしても、このひとの照れあったかさは魅力的だった。のんべえだしね。愛すべきキャラクターでした。鳩を飛ばすって職業もナイス。

テル役の窪塚くんのハマリッぷりがもうねー。ごはんもペンも左だったのは役柄上?「ほっとけない」キャラ全開です。いい時期に撮ったなあ。ルックスの面も含め、その時にしか撮れないものが撮れたと思う。水絵役の小雪さんも、眉間の皺が繊細さ=神経質さに針が触れている感じで、ああ、水たまりに落ちるよ、とか、ああ、また万引きするよってこっちがハラハラしちゃってな。強い女のイメージがあったので、こういう危なっかしい役もハマるんだーとますます好きになりましたよん。それにしてもふたりとも美白女王で大変です。しろー。鳩も白いし。画面が眩しくて目が潰れそうです。あー晴れた空っていいなあ、笑顔っていいなあ、ひとを信じるっていいなあ。

ホントのところ、テルは知覚障害者なのか天使なのか?ホントに頭にはキズがあるのか?ホントに帽子をとったらヒキツケを起こすのか?ああ、帽子を取りてえ!でもホントにヒキツケ起こしちゃったら可哀想だし。雨の中テルが倒れ、その後ランドリーに集った人々の鳥瞰シーンがあった時は「あ、死んだ」と思ったんだけど、ラストシーンで、彼は水絵を待って旗を振っている。そう、ホントのところどうでもいいんだ、彼が天使でもそうでなくても。そういう優しい映画なんだ。日射しは暖かいけど風はちょっと冷たい、春先にいいものを観た。

『害虫』に出ていた石丸謙二郎さんがこちらにも出ていてちょっと笑った。以前邦画3本ハシゴした時に全部田中要次さんが出ていた時もおかしかったが、SBP(スーパーバイプレイヤー)は皆いつでも大忙しだ。

ところでシネ・アミューズWEST(青い部屋の方)って『MONDAY』やってる頃階上の物音が聞こえるって苦情出てましたが、今でも聞こえるんだね。結局対策ってないんですかね。

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わああ、予告編が20分近くあったのでもう20:55過ぎてるよ!遅刻だあ!…そうです今日はあと1プログラム観るのです。それについてはまた明日。