よるの読書日記
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| 2003年08月26日(火) |
まず内面から改善ってこと? |
『美女入門』Part3 <林真理子/マガジンハウス> よくテツオ、テツオと作品中に出てくる名物美男編集者(らしい)。 ご本名を鉄尾周一さんとおっしゃるのですねぇ。苗字だったのか、 とびっくりした方は多いのではなかろうか。
さて、すると半自動的に綺麗になれると噂の恋ですが、 「恋愛したいのに、できない」「恋人が欲しいけど、できない」 なんて相談にキビシ〜イご意見も書かれてます。私としては 苦笑いしながら読むしかない感じ。いちいちおっしゃることは ごもっともなんです!でも、頑張り方が何だかよくわからないんだよー。 やっぱり恋愛したがってないのが要因でしょうか。 だって恋人いなくて困ったことないもんなー。対人関係こじれると 面倒だしなー。始まる前から終わるときのことを考えている この打算的な性格がいけないんだろうか、やっぱり。
『アブダラと空飛ぶ絨毯』<ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/徳間書店> シリーズ第二作。ですが、メインで頑張るのはタイトルロールの アブダラ君です。名前の通りのアラビアンな世界で物語は始まります。 王宮の庭ではじめて父親以外の男を見た王女様と恋に落ち、 魔物にさらわれた彼女を探しに行く、とっても千夜一夜なストーリー。 シリーズものと言うからには前作の登場人物が出てまいりますが、 誰一人としてb>素直にもとの姿では出てこないので、 いちいちこいつは怪しいとか考えているとものすごく疲れます。
そうそう、プリンセスというとプリンセス・オヴ・ウェールズとか、 ああ、王族の妃方も含まれるんだなってわかるんだけど、 王女と訳されちゃうと「子持ち?!」と、大人の私でも一瞬惑うぞ。
『自由戀愛』<岩井志麻子/中央公論新社> 醜関係。すごい言葉です。不倫と言うから何だか切なくて メロメロして金ドラな感じがするんだな。 今度からみんな、結婚してるのに他の人と付き合ってる人のことは 醜関係してると言ってほしい。おおおぞましい汚らわしい。 ことの起こりは若くて美人で夫が優しくて幸せな妻の気まぐれな善行、 から始まるのですが。 結婚生活に破れてひっそり暮らしている女学校の同級生に、 夫の秘書の仕事を紹介し、着物まで貸す。この無邪気な残酷さに 彼が密かに眉をひそめているのにも気づかない……。この描写に もうぞくぞくします。男って勝手だわー。そうそう、可愛くて たまらないと思っていた天真爛漫さがある日無神経と紙一重と気づくのね。 ずるいわ。そして、妻の着物をまとう女の暗さは秘密めいた翳りに変わる。 待望の後継ぎを孕んだ愛人は妻に、幼さの残る妻は愛人に。 今の時代だったらちょっと許せない転回はあっさりと済んでしまいます。 前半が豪快過ぎたせいか後半は波乱万丈なわりに淡々とした印象なのですが、 とにかく前半の心理戦は読み応えあります。後半の持って行き所も 酷く皮肉が利いているとは思いますが。なかなか濃い小説でした。
『吸血鬼と生きている肖像画』<赤川次郎/集英社> 最近では、主に夏、年に一度のめぐりあい。 『吸血鬼シリーズはお年頃』シリーズの最新刊です。何と21作目! 確か1冊目を買ったとき私は小学5年生だったのですが、 そんなことはどうでもいい。一応三姉妹シリーズとこれだけは 何故かしつこく読み続けているのですが、 どちらもヒロインははるか年下になってしまいました。 一応、エリカも女子高生から大学生となり(N高→ M大学→OL→主婦になって家計にピーピー言う→ キューっとなって死ぬらしい)が、全然大学を卒業する気配もなきゃ 異母弟・虎ちゃんが育つ気配もなく。羨ましい限り。 ただ、シリーズが進むほど恋愛とは遠ざかっていき、 事件解決の相棒はいつも父、というところがちょっと 報われてないような。やっぱり人種の壁は厚いんでしょうか。
ま、深く考える必要もないか。このシリーズは気楽にのんびり したいときにきっと最適です。読む娯楽。犯人誰とか気にしちゃダメ。 リラックスリラックス。ヘンな自己啓発本(読んだことないけど) よりよっぽど安らぎます。
| 2003年08月19日(火) |
同時多発的無差別英国旅行もの読書 |
『お茶しませんか?英国で』<小野まり/青春出版社> 土産物をねだるはずだった友人は結局、テロの危険が理由で周り中の 反対にあい、英国には行かないことになったと言うことです。 が、本の世界にテロはないので今も旅行物を読む私。 どういう訳か「英国」「イギリス」と書いてある旅行記を見かけると、 とりあえず手に取らずにはいられないという奇妙な条件反射が 身についてしまいました。うーん。 これはカントリーサイドもの。ナショナル・トラスト。 美しいイングリッシュ・ガーデン。アフタヌーン・ティー! ピーター・ラビットなんてもう基本中の基本ですが、 プーさんの森なんてものまであるという……。イギリスの森は奥深い。 のんびりゆったり旅した雰囲気で、表紙も可愛い。 お茶したいぞ英国で。
『能に就いて考える十二帖』<林望/東京書籍> 今からすごく恥ずかしいことを告白します。 林先生って、国文学の教授だったの?し、知らなかった。 この人を知ったのは高校時代、イギリスについての エッセイだったので、当然の如く英文学かなんかの先生だと 思い込んでおりました……先入観にもほどがある。
そんなわけで、お能です。能って謡とか仕舞とか、 お素人でも習えたりするもんらしいです。 「失せにけり〜失せにけり」ってやつ。 それはいいとして、まともに観たことがない人間にはなかなか 骨の折れる文章でしたが、頑張って読みましたよ。 内容を知らないのに、演出についての解釈を述べられても 厳しいものがありますわね。 面白かったのは、鞍馬天狗が義経をさらって何やら伝授する話、 これは全くの「惚れた弱みからである」という……。 天狗さんのお稚児趣味。妙に納得してしまう話であります。 そもそも能を大成したのは世阿弥さんだし。
『狂言サイボーグ』<野村万斎/日経新聞社> 萬斎様の著書、第二弾。前作と合わせて読めばより楽しめます。 狂言師として培われた声、姿勢、歩き方……について語られてます。 写真も満載。洒落でなく。 公演の際、パンフレットに記載されていたと思われる「ご挨拶」も 最初から収録。こうやって読むと、文章書くのお好きみたいですね。 その時その時の近況、心情について語ってらっしゃるのですごく 濃厚なバイオグラフィーになってます。ファン必見。
| 2003年08月15日(金) |
夏 アンダルシアの茄子(旨そう) |
『千尋と不思議の町』<ニュータイプ編/角川書店> ……こういうムック系っていつも「読書」とは言えないと思って 結構外すんですが。何で記録に残ってたのかな。 たぶん、ジブリのスタッフが『茄子 アンダルシアの夏』(原作)を 面白い!といってるのが面白いと思ったんだと推察されます。 それだけ……。
| 2003年08月14日(木) |
カッコいいお姉さんは好きですか |
『風よ、万里を翔けよ』<田中芳樹/中央公論社> 後にディズニー映画にもなった中国の男装ヒロイン、 木蘭(ムーラン)がヒロインの戦記もの。勝気で負けず嫌いな 女の子は大好きです。でもそれ以上に、そういう女の子を カッコいいと認めてくれる男の人って貴重だと思う。 意外と少ないんじゃないかな。 「そんなことないよ!……僕、結構叱られるの好きなんだ。」 とか言う貴方、意味が違うぞ。
『美女入門』Part2 <林真理子/マガジンハウス> 1を読んだ記録がないですが。気にしないでください。 たぶん去年のブラックシーズンに読んだんだと思います。たぶん。 林真理子ってイメージ先行とは言え、ミーハーで目立ちたがりで るんるんな人だろうと思って子供の頃は読まず嫌いだったのですが 今はやっぱり面白い作家さんだと思う。「好きな作家」と いうのとも違いますが。美しくあろうと、異性に好ましく 思われようとあがいてきた軌跡があの鋭い人間の内面洞察に 至ったのかと思うと人生無駄なことは一つもないなぁと しみじみします。 やっぱり、綺麗ってことは得なんだな、いじけてブツブツ 隅っこですねてるよりか、少しでも可愛くなろうとじたばた してる方が絶対マシなんだ。と、ポジティブになれるいい本です。 ただし、枕もとに置いておくほどの気持ちがないと、すぐ挫折します。 美への道は厳しい。最大の敵は怠け心と食い意地。
| 2003年08月10日(日) |
もっともらしいことをべらべらと |
『陰摩羅鬼の瑕』<京極夏彦/講談社ノベルス> わーーい。やっと、やっとのシリーズ最新作です。えへへ。 この作品の一部は既に世に出ていたものの、 どうなるんかなー、とわくわくしていたのは事実。 ただ、作中年表を製作するとすれば番外編の一部より前に起こってる 事件と言うことになると思います。今手元にないんで正確な表記が できないのですが。
今回はおんもらきのきず、と読みます。温泉に行った友人に、 「あ、あれ読んだ?えーと、おんもら……おんまらものきずだっけ?」 と言ったのは私(笑)。 舞台となる白樺湖は、昔 「猪苗代湖に行ってみたいな♪」 との母のリクエストに応えて父が連れて行ってくれた想い出の地です。 わが父ながらキング・オブ・ザ・イイカゲン。誤魔化されるな、母。 山道をくねくねと、途中何度も吐いた麗しい記憶も。 その強烈さは、今は大分道も良くなってるだろうけど、また行きたいとは 思えないほどにはしっかり残ってます、うふふ。 まあ私が行った時でもう20年(!)近く前ですから、作中の風景とも 現在の光景とも重ならない部分が多いでしょうが。しかも あんまり覚えてないんですよね……。
話がけものみちにそれてしまいました。このシリーズ、不機嫌な古本屋で 拝み屋、常にハイテンションで白皙の探偵、乱暴者でマッチョだけど 繊細な刑事、情緒不安定な精神科医だの奇人変人の宝庫なのですが、 一番自分に近いような気がするのが鬱病の小説家なところが何か厭。 私はあんな汗っかきではないですが。 本音は京極堂さんのように知識が豊富で口のうまい人に憧れているのですが、 読書量も少なきゃ古典の知識もわずか、更に記憶力が曖昧な私には やっぱり無理なようです(笑)。 せめて母と妹を煙に巻くくらいの弁が立てばいいのにねぇ。 ついでに次作の予定は邪魅の雫。読みは珍しくそのまんまじゃみのしずく。
| 2003年08月09日(土) |
誰も吉良を心配してない |
『四十七人の刺客』<池宮彰一郎/新潮社> 健さんの主演で映画化された作品です。色部を演じた中井貴一の 酷薄な印象がそのまま。彼にとっては吉良さんは主君の実父って だけで、敬愛や恩義の対象ではありません。大事なのは 上杉家で、その係累である吉良家に問題が生じるのは よろしくない、そういうスタンスで動いてらっしゃいます。
一方の健さん(大石)も忠義一辺倒の武士じゃありません。 お侍さんにしては資産(塩)運用がとっても上手な彼は、 プールしておいた潤沢な資金を元手に上杉家、そして時の権力者 柳沢吉保相手に情報戦を仕掛けるのであります。
吉良が主君の仇として憎いと言うよりは(それもあるけど)、 一連の事件をめぐる幕府の対応(色部さんが糸引いて柳沢さんに させたんだけど)を恨んでの討ち入りなわけで、 吉良は言わば駒なわけですね。考えてみたらそういう意味では 高齢なこともあり、ちょっと気の毒です。
『月の裏側』<恩田陸/幻冬舎文庫> これを読んだら『柳川掘割物語』を観たくなりました。 が、未だ観ておりません。しかし、これを書いていると 観たくなってきます。何だかなぁ。 恩田さんは、既に方々で言われていることで、数作しか 読んでない私があんまり威張って言うこともないんだけど、 やっぱり懐かしさ、のうまい作家さんだよね〜。 世界が運河で結ばれていて、皆が舟を使って生活していたら、 って会話があるのですが、想像してみると楽しい。 水の惑星だもの、アリな気がします。もっとも私は 船酔いもしそうなので耐えられるかわかりませんが。 そういう設定の世界も読んでみたいですね。是非。
今回の作品はSFのような、ホラーのような、どうも あらすじを説明しにくいお話なのですが(老女の連続失踪事件。 一応戻ってくるし、どうも地味な印象は否めない。) でもじわじわと面白くてがーっと読んでしまいます。 この人は登場人物の性格設定も面白いし、文章の情報量も多いし、 今のところ外れはないし特に本を買って読みたいタイプの作家さん なのですが、なるべく本を増やさないキャンペーン中(建前)の 私にとっては危険な作家さんでもあります。ふふ。
『陰陽師 生成り姫』<夢枕獏/文春文庫> なまなりひめ、とお呼びします。最初きなりかと思った。 (映画観たのに……。) そう、映画の(荒唐無稽な部分)減筆修正版。 あるいは「鉄輪」の加筆長編版。初の長編と言うことで、 初めてこのシリーズを手にとる人にも読みやすくなってます。 まず安倍晴明とは、みたいなところから始まってるので。 もちろん、文庫になるたび欠かさず買うのにいろいろ 中身を忘れちゃう私のような人にも親切設定。 映画よりも、哀切で残酷な物語になってると思います。 しつこいようだが博雅はいい男だね。普通いい人と いい男は両立しないもんなんですが、成り立っちゃってるところが 素晴らしい。
『創竜伝』12巻<田中芳樹/講談社> 実は読んでから半年以上経ってると、流石に忘れてます(笑)。 最近では書名から検索してあらすじを調べて書いたりして、おーい。 でもこれは持ってるもーん。東京駅で買ったんだ。 確か番外編だったよなー。えー。……ない。本棚?鞄?ない。ない。 大掃除したばっかりのこの部屋にっ。 旅行鞄まで探した挙げ句、二十分後にベッド下から発見。足元側。
しょうがないからもう一度読み直しました。おお、岳飛伝の 話が対談で出てら。……今思い出したよ。 三男坊と六仙(ネズミ・ネコ・ヘビ・イタチ・ハリネズミ・キツネ)との 絡みが可愛いです。全部で八仙になるそうで、それはそれで楽しみですが、 11巻も言わば番外編だった訳で、早く本編の続きが読みたいな〜、 というのが本心。だってまた忘れちゃうし。
東京の、日本一大きいと(妹が)言う本屋さんで購入。 ビルのてっぺんから地下まで店舗だったのでそうかも しれませんが、総面積で言ったら田舎の大型書店より ちょっと広い程度でなかろうか、とこっそり思った。 地価で考えるべきだったのかしら。
『パジャマでごろん』3巻<ささだあすか/白泉社> 学生結婚のカップルはるひさんと鉄太郎さんのお話最終巻。 寮を出たいはるひさんとの同棲を考えたものの 下手に親に隠す後ろめたさより正式に筋を通す面倒さを 優先した「テンションひらたい感じ」の夫婦なんですが、 それでも本人達はラブラブで楽しそう。 二人が付き合いだしたきっかけ話も収録されてますが、 出逢ったきっかけが「顔を踏まれた」「踏んだ」 って夫婦も珍しいだろうな。
『美女が野獣』2巻<マツモトトモ/白泉社> 寮ラブコメ第二弾。沢口君(寮監。ギャンブル好き。女言葉)って 男だったんだ。マンガならではのビックリだ。 美人なのに変な人の操さんの妹はやっぱり変なのに美人。 本や漫画で恋愛の傾向と対策立てちゃうところが何ともアイタタタ。 しかし男子寮(特進の賢い子多し)ののゴージャスっぷりと 女子の清貧(この場合清々しいほど貧しいの意)度の落差がすげえ。 予算の関係とは言えどうしてみんな疑問に思わないのだ。 私の知ってる寮にはわざわざ単位取らずに延々体制と戦ってる お姉さまとかよくいらしたが。とっとと社会に出て労働者として 活動する方がより大きな悪と闘えるんじゃないか?と思ったこと多数。 そういう意味では自力で(寮祭の売り上げとかお買いもの券集めるとか)、 何とかしようとする彼女達はオトナ、なのかも。
『たのもしき日本語』<吉田戦車・川崎ぶら/角川文庫> 二人の対談形式となっているこの本、日本語のたのもしさに ついて語り合うのですが、が。 「行こう。」 「行こう。」 「○○は△△だなあ。」 「……は××だと思うのさ。」 何だかこの二人の語り口、誰かに似てないか。 そう、あの陰陽師と親友に。 言葉には言霊が宿ると言うし、そう思うとますます それっぽいぞ。でも外来語のたのもしさまで言及しちゃう ところがちょっとご愛嬌。
| 2003年08月01日(金) |
みんなでおでかけ(おじいちゃんはるすばん) |
『アースシーの風 』<ル=グウィン/岩波書店> あれで終わりだって言ったじゃん!完結の筈でしょー!! と、偶然新聞の読書欄で新刊案内を見たときは思いました……。 物語はあれからさらに年月が過ぎ妻と養女と静かに暮らす ゲドは完全に好々爺。若い頃冒険に生き、平穏な老後って 何かいーですな。 そこへ亡くなった妻の悪夢を見るというハンノキが訪ねてきます。 あの世とこの世の境界の破綻の暗示。悪夢って辛いもんです。 もっとも私、最近は見ても忘れるか解釈の必要もないほど わっかりやすい夢しか見ないけど。 1〜4巻の懐かしい顔にも再会。でもまぁ、やっぱり もう児童文学の枠に組み入れるのはやめたほうがいいかもな。 4巻ほどじゃないけどさ。1〜3巻を読んだ子供達よ、 大きくなるまで我慢だ。
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