よるの読書日記
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『天河伝説殺人事件』<内田康夫/角川文庫>の 昔から、能や狂言、文楽に関心だけはある私です。 一度生で見てみたいんだけどなぁ。 音楽の時間で歌舞伎をチラッとやったこともありますが、 いかんせん音楽の先生だって声楽とかピアノとか 西洋音楽しかやってない人がなるのが当たり前だから さわりしかやらなくて、すごく不満だった。 今、別の意味で何かと話題なのが狂言の世界。 それで『萬斎でござる』<野村萬斎/朝日新聞社>を 読んでみました。
好きなんですよこの人、 『花の乱』(1994年NHK大河ドラマ)の頃から。 これデヴューしたての松たか子がヒロイン日野富子の 少女時代を演じてまして、なーんて可憐で清楚で 凛として高貴な美少女なんだ〜とうっとり見てました。 どれ位耽溺していたかと言うと、15歳から20歳までを 彼女が演じて、「二年後」の字幕とともに 三田佳子が出てきた瞬間に見るのを止めたくらい(笑)。
生い立ちから現在に至るまで、万斎氏が語ったこと と和泉流の歴史とか狂言まめ知識を 誰かがきちんとまとめたと言う感じのご本ですが、 なかなか興味深い本でした。 彼も姉二人の後に生まれた唯一の男子なのですね。 どっかの家族構成に似てますね…妹がいるのは違うけど。 ついでにどっかの亀井静香似のおばちゃんが 歯ぎしりして羨ましがりそうなことに、 彼は弱冠十八歳で「世界のクロサワ」に見初められて 映画出演しているのです。しかも本当は 狂言指導をしていた万斎氏の父上に依頼して 十歳前後の能楽師の子供を捜していたそうで、 あの完璧主義者が当初の思惑を曲げてでも 使うことを決めたと言うのがすごい。 その頃未来の宗家は御年八歳。 何でうちの子も推薦しなかったのよ!位には 思っているに違いない(笑)。
そういうことを言うための本じゃないけど、 大体2つの観点から読み取って結論から言うと、 和泉元彌氏が宗家だと思ってるのは 和泉さんちだけのようです。 社団法人能楽協会、和泉流職分会、宗家会が 認めるところの宗家はいないとちゃんと書いてある。
本来門外不出の貴重な台本を見せて もらえるようになるのも二十代後半で、 つまりそれまでは半人前と言うこと。 いくら早熟でも二十歳で宗家は早すぎると言えるでしょう。
それにそもそもプロは40人程度、専業者はさらに その半分以下の小さな世界なんだとか。 当然みんな親戚状態。 簡略な系図なので誤解かもしれませんが、 元彌氏と万斎氏はまた従兄弟に当たるようです。 と言うか、和泉流の宗家って二人の祖父の代には 絶えちゃってて、養子に入って名跡を 継いだのが初世万斎の息子で和泉氏の祖父にあたります。 つまり「自分は宗家の息子だから、自分が宗家だ」 という理屈はかなり苦しいのですね。 宗家の息子なのは間違いないけど世襲と言う 前提はとっくに途絶えてるわけだし、 技術も父ちゃんの死以降野放しの彼と、 みっちりお師匠さんについて修行した 他の若手狂言師のどちらが上なのでしょう? 人望もなさそうだしねぇ。 とりあえずテレビで犬の鳴き声をやるのは止めて欲しいわ、 馬鹿っぽいから。
――で万斎氏に戻りますが、『陰陽師』も そのうち観たいなぁ。映画行きそびれまして。 もうビデオになってるのかな? 去年秋晴明神社に行ったとき ビラがあったから……ぐえっ、 あれから何ヶ月経ってるんだよ、と 時間の流れの速さに呆然としてみたり。
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