よるの読書日記
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『きみはペット』8<小川彌生/講談社> 巻頭は引き続き香港旅情編。さすがに一緒に泊まってると ボッケーな先輩にもスミレちゃんの壊れっぷりがわかってきた みたいなとこが可笑しい。カナヅチで海嫌いなのにモモのこと 考えだすと手すりに乗り出して潮風に吹かれてるし(笑)。
他の回のストーリーもとっても充実したいい1冊です。 戦争回顧+犬ものなんてかなり秀逸な出来では。 人にしろペットにしろ、優しくすればたぶん応えてくれるし、 大切なものや慈しみたい存在があったら自分のことも もっと大事に思うものなのかも。 記憶喪失なんてわりとベタな展開のものもありますが、 ずるずるやらないできっぱり1話で収めることでなかなか 読み応えを保ってると思う。 しかしその分か、本筋である最終話の引きがとっても激しくて、 今後どうなるのかすごく心配です。早く続き出ないかな。
| 2003年09月28日(日) |
緊急 追悼企画的感想文 |
『キネマ旬砲』<鷺沢萠/角川書店> 書こうとしてたら訃報にびっくり。朝になって死因が判明して 二度びっくり。(2004.4.14) 公式サイトでは最近、風邪で体調が悪いって書かれていたけれど、 難読人名の話題で盛り上がってた人が、ふーむ。 発見されるまで愛犬コマちゃんはどうしてたんだろう、と思うと 更に胸が痛みます。思えば大学卒業間近、勉強の合間に(嘘付け) めくる図書館の雑誌で楽しみにしてたのが週刊朝日のナンシー関さんの コラムとキネマ旬報の鷺沢さんのエッセイだった。 因縁めいていて悲しい。
で、そのエッセイが単行本化されているとのことで読んだのが この本です。ハリウッド俳優を「目が青いから人を喰うと思う」 「指人形みたい」「鼻ソケットさん」「宅のアル(妻気取り)」 と、向こうが日本語読めないことをいいことに担当編集嬢と 一緒になってこき下ろす痛快エッセイ。 挿絵描かれてる方のコメントも結構辛らつで楽しい。 今後の映画評なんかも絶対読んでみたかったな。
あーあ、何だか近況報告とか読んでただけに知人のことのように ショック。それなのにずっと萌と書いてめぐむさんだと思ってた。 ごめんなさい。
『木更津キャッツアイ』<宮藤官九郎/角川書店> ドラマは見てなかったんだけど、気にはなってたので シナリオ本を読みました。 思ってた通りハチャメチャでした。面白かったです。 謎な設定はいろいろありますが子供5人か6人産んで ストリッパーやってるとしたら、ギネス物ですローズ姐さん。 普通あるだろう妊娠線とかあれこれ。 全部産み捨てにして平然としてることとか、不思議な人だ。 卵で産んだのかも。 100%フィクションなのでいいんですがね。
『昨晩お会いしましょう』<田口ランディ/幻冬舎> SEX描写満載でちょっとべっくらこいた短編集。 もっとメロウな恋愛小説なのかと勝手に思ってたのですが。 行為はあってもあんまりラブな感じでもなかったな。 欲望があるのは恥ずかしいことじゃないけど そればっかりあっても仕方ないだろう。 と、思う自分の青さにほっとした(笑)。
| 2003年09月23日(火) |
家庭円満から世界平和 |
『恐怖の総和』下<トム・クランシー/文春文庫> 冷戦下における核戦争の危機より女同士のバトルの方が 面白いんだよな、私には。 ライアン夫婦は和解、仕掛けた女にも一矢報いることができて 良かった、良かった。 しかし核兵器って密造できるもんなんですねー。 イラクからは出てこなかったけどな。でも世界のあちこちで こっそりあるんだろうなー。怖いね。
『恐怖の総和』上<トム・クランシー/文春文庫> 映画『トータル・フィアーズ』を観たのですが、おいおい お前被爆してないか?と思ったので原作を読んでみました。 が、またしてもやられた。ジャック・ライアンのシリーズは かなり何作も出ていて、ハリソン・フォードで映画になっていたり するのですが、今度のはベン・アフレックで一気に若返り、 結婚前で仕事も下っ端なライアンだったのでかなり初期の作品だと 踏んでいたのに原作では2児のパパだった。(前読んだ作品 では3児のパパ。) 何だかアレコレ功績も建ててるしお金もあるし、妬まれて 陥れられて奥さんとも危機で大変です。
あ、ちなみに映画そのものはそう面白くもなかったです。 モーガン・フリーマンは素敵だけどね。
『みんなの秘密』<林真理子/講談社> 不倫から人殺しまで、みんなが秘密を抱えてる。 父→娘→不倫相手→妻→隣人、のようにリレー形式に なっている短編集。そうするとAは本気だが、Bは遊び、なんて 図式が露骨に見えちゃったりして、人間って残酷。
秘密、という言葉がもう魅力を持っていると思う。 自分一人の秘密を持っている時、それは宝玉のように 胸の中にある。特別に許す相手にだけ教えられるもの。 二人だけの秘密ね、と約束することが、排他と結びつき、 世界は二人だけのものになる、のでは。 ただしこれは異性間に限られますが。同性同士というのは、 また別の趣があるもんです。
和泉流 仲の悪さも お家芸 よる
『太郎冠者を生きる』<野村万作/白水社> おっと、思わず詠んでしまったよ、ふふふ。 萬斎様への愛が嵩じてこんなものまで読んでしまいました。 狐役者とも呼ばれるお父上・万作様のご本でございます。 初代萬斎(万作氏、十九世宗家らの祖父にあたるお方)の ご苦労話もあるのですが、公演の日に頼んでおいた同じ流派の 助っ人が来なくて能楽の人たちに助けてもらった、なんて エピソードも。昔からいがみ合ってたんですね……。
本業は狂言だけど、いろんな分野にチャレンジする、というのは お父様の代からの役者魂なのですね。 一度は狂言の道からはみ出して、外の世界から眺めても やっぱり狂言はすごいんだと気づいて戻ってきてるというのも 大きいと思う。
蛇足ですがタイトルはたろうかじゃ、と発音してください。 ちゃんとそれで変換できます。賢いぞパソコン。
| 2003年09月18日(木) |
切り取られた空間の静寂 |
『能と茶の湯』<種田道一/淡交社> お能と茶道というのはとても密接な繋がりがあるそうです。 どっちも中性から長く伝わってるものですしね。 この本も、裏千家公開講座の講義録で、著者の種田氏は 金剛流の能楽師、というとてもタイトルに偽りなしの内容。 季節別の能の演目なんかも載っていて、面白かったです。
『陋巷に在り』13 <酒見健一/新潮社> 最終巻のようです。最後の一行まで、えっこれで終わりなの? って思いましたが、そういう終わり方でいいのかも。 顔回という人は孔子の最愛の弟子であり、まあ早世して 相当師を嘆かせたというのも有名な話で何度も作中でも 触れられていたわけでありますが、んー。 最近挙動不審ね、でもまだ言わないで……と 「恋人に別の女ができて別れを告げられる三十分前」 みたいな覚悟の決め方していたら 「田舎の老母が倒れて、医者は長くないって言ってる。 せめて安心させて逝かせてやりたいんだ……。」 と言われた長すぎる春のOLの気分であります。 何言ってんだか。
『あやかし』<高橋克彦/双葉社> 英国から舞台が始まるこの物語、はっきり言って作者の 想像力炸裂なお話です。 かぐや姫はエイリアンだったとかまあそおいう感じ。 スケールの大きさに 「んな、だらな〜。」と富山弁で突っ込みを入れつつも トンデモ小説扱いして放り出さずに済んだのは、やはりこれも 作家の筆力というものですかねぇ。 英国で遭遇した怪異、東北の旧家に伝わる奇妙な言い伝え、 謎の天変地異。要所要所はおいしいのですが、全部入ると 欲張りすぎてる気もしないではない。 ワタシは鈍感なので、エグイ描写とかたいてい平気なのですが、 異形の存在が人皮被るというのはさすがに鳥肌立ちました。 何だか質感とか異臭まで想像しちゃった、ぐえ。
『三谷幸喜のありふれた生活』2<三谷幸喜/朝日新聞社> WOWOWでやってくれた舞台の裏話が多く収録されていて、 あー大変だったんだね三谷君、頑張ったね!と思いました。 奥さんと犬猫との生活ぶりは相変わらず。でも、お母さんが 入院されたり、親友が亡くなったり、私生活でも不幸があって、 かと思うと酒井美紀に父性愛感じちゃったり、微妙に 中年の哀愁を感じますなー。
登場人物は日本演劇界を背負って立つほどの豪華な面々ばかり、 書いてる本人も日本一舞台のチケット取るのが難しい脚本家で ありながら、日々の生活は本当に淡々としてます。 やろうと思えば銀座のクラブでドンチャン騒ぎとか、赤坂の料亭で 芸者呼んでわーわーとか、いくらでもできそうなものなのに 奢って庶民感覚を無くさないところがエライ。 ついでに一見皮肉屋に見えますが、意外にこの人不器用で 泣き虫なんですな。大河ドラマも是非頑張ってほしいです。
『睡蓮の長いまどろみ』下<宮本輝/文藝春秋> 蓮と睡蓮は別物だそうです。知りませんでした。 ボタンの掛け違いというか、ビリヤードの打ち損ねというか、 世の中思いもかけない出来事がその後の人生にも大きく 響くことがあるのですね。 そしてまた、ありがちな失敗やささいな嘘が 自分の人生に最後までしがらみや戒めとして残ったり、 ひどいことには他人の人生を狂わせたりする。
何となく哲学的な気分になる一篇でした。
『睡蓮の長いまどろみ』上<宮本輝/文藝春秋> 昔、休み時間に文庫を読んでいたら英文学の先生に 「随分地味なもの読んでるんだね。」 と目を丸くされた。近親相姦のどこが地味なんだろう、 と思ったけど黙ってました。 宮本輝で思い出すのはもう一つ、ある作品でうちの妹の名を 例にあげて登場人物にハイカラすぎて、ヘンな名前、 年取ったらどうすんだと言わせていて密かなショックを 受けました。いいじゃないか可愛い名前のばあさんがいても。 ま、その分姉の私の名前は音はともかく字面が硬いですが。 幕末の志士に一人くらいいそうな感じ。あるいは寿司屋の屋号。
さて、久しぶりの宮本作品です。タイトルも長いが中身も長い。 赤ん坊の自分を捨てて出て行った母の噂を聞き、正体を隠して ヨーロッパまで会いに行った中年男性。 目前で起きた飛び降り自殺とそれを疑う執拗な手紙、 そして、母は何故自分を置いて父と別れたのか……。 あまたの謎にまとわりつかれ、さまよう物語。
宮本さんの書く関西弁って好きです。何かでんがなまんがな してなくてちゃかちゃかに聞こえない。
『初夜』<林真理子/文藝春秋> この女は私だ。この女も、この女も私だ。 何となくそんな気になりながら読んだ短編集です。 どこにでもある話、どこにでもいる女達。 でも一つしかない話。一人しかいない女。 私もこうやって老いていくのか、と空恐ろしくなる。
『輝夜姫』22巻<清水玲子/白泉社> 碧、今まで子供とか小心者とか心狭いぞお前とかちびとか 思っててごめんねー。まだ君16歳なんだよねー。 あんた偉いよ。なかなか人としてできることじゃないです。 過去の過ちからきちんと学習している。このへんが長編マンガの 醍醐味ね。アッパレ。 それに引き換え柏木さん。(怖いからさんづけ。) この人は、ほんまに人でなしです。どこからここまで 修復不可能までに性格歪んじゃったのか知りませんが、 この男とこれを選んだ女の間に生まれ育ったまゆが、 性格悪く育っても仕方ないと思うぞ。
しっかし暗く重く果てしない物語の中、ミラーとサットンの ボケとツッコミ(やや激しすぎ)は一服の清涼剤……と 言うほど爽やかではないもののちょっと楽しめます。 意外といいコンビだと思うな。
『GO!ヒロミGO!』4巻<麻生みこと/白泉社> 冗談から連載、の本作もとうとう堂々の第4巻です。 通った後はぺんぺん草も残らない、爆走ヒロミのT大ライフ。 今回は幼い頃は神童と謳われ美人で優しいヒロミ憧れの人、 現在は地元の短大出て親父の信金に勤めるゆかり23歳が登場。 一見穏やか清楚、料理も上手でしっかり者、窓口チーフな美女ですが、 やっぱりヒロミの血縁者、タダモノではありませんでした。 商才あり、博才あり、趣味貯金。 ……これははっきり言ってかなりの難物だ。孤高のライダー ゴローもかなり浮かれてましたが、彼の手に余る人材だって気が ひしひしとすることであるよ。確かにビジュアルとしては お似合いですが。「行った所の記念スタンプ集めが趣味と言うより 習慣」男には扱えまい……。 姉に狂犬のような子、と呼ばれるヒロミも相手としては 難しいと思いますが。こうなってくると弟君にも是非登場して欲しい。 あのヒロミと『トムとジェリー』のように渡り合っていた相手。見たい。
| 2003年09月05日(金) |
心配しすぎも良くない |
おっかしいな……。この本について、絶対文章書いたはずなのに なくなってる。間違って消したのかな……。 内容が過激だと削除されるのか?そんな危ないこと書いた自覚ないぞ。 というか、わりと頑張って書いたことしか覚えてない。蘇れ内容。
『子供の脳が危ない』<福島章/PHP新書> えーっと、凶悪な犯罪者の中には脳になんらかの異常が見られる人がいて、 その率は一般の犯罪をしない人に比べるとはるかに高率である。 もっとも、自分の脳が「普通でない」ことに気づかないまま、 平穏に生涯を終える人も世の中にはたくさんいて、異常=犯罪者ではない。
脳の異常には母体からのダイオキシンなども影響を及ぼしている 可能性が高く、その意味では高齢出産より若年での出産が望ましく、 また母乳より汚染の少ない人工乳のほうが安全である。
統計的にどこまで合理性があるのかは読んでるこちら側に検証能力がないので わかりかねますが、おっしゃってることは大変説得力があるし、 読んでいて危機感めいたものはとても感じました。 でも、医師の中では最も自殺率が高いという精神科医さまの おっしゃることですから取り越し苦労な面もあるかと。 つーか、哺乳動物でありながら 自分の子に乳もやれないほど環境汚染が 進んじゃってるならもう人類もおしまいだと思う。 出るもんなら母乳で育てたいなぁ。生き物としてはそれが自然だもん。
| 2003年09月04日(木) |
私のイチオシエリアは梨大 |
『ハッピーソウル』<ハッピーソウル取材班/双葉社> このシリーズ、他にもニューヨークとかベトナムとか出てるんですね。 今回は私が行ったことのある唯一の海外(本当に、唯一。実は私、 これ以外で本州を出たことがないんです。佐渡島すらない。)。 より面白く読めるかと思ったんですが、意外にもロンドンほど 面白くなかった……。 行ったことのある土地について人に語られると、妙なライバル意識(?)でも 生まれるんでしょうか……。 きっと自分の旅行が本当に楽しかったので、また行きたくなっちゃうけど できない今の自分の状況に悲しくなっちゃうので脳が楽しまないように してるんでしょう、我ながら不憫。
| 2003年09月01日(月) |
長期滞在・上級者向き倫敦 |
『ハッピーロンドン』<ハッピーロンドン取材班/双葉社> 留学経験があるとか在住してるロンドン大好きな複数の 女性ライターさん達が教えてくれる生のロンドン情報。 今のところ鮮度も高いし、これは結構お役立ちなんじゃなかろうか。 特に自分だけのオリジナルな旅をしたい方にはきっとおすすめ! ちゃんとした地図の載ってるガイドブックともう1冊、 これを持っていっても損はないと思います。 短期滞在で、とりあえず名所は押さえておきたい〜とか、 英語にあんまり自信がないわ〜と言う方には、それほど 有効ではないかもしれませんが。英国なんていつになったら いけるんだよと言う私でも、読めばたちまち通気分。
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