雲間の朝日に想うこと


< 声が聞こえましたか >


もう声を聞かなくなってから、
もう文字すら見なくなってから、
どれくらいの時間が過ぎ去ったのだろうか。

密かに指折り数えてみたけれど、
半年も経っていない事に気付かされる。



 「元気やで」



友人の携帯から漏れて来る声は、
正真正銘アイツの声。


代わって欲しさ半分。
声を聞く事への怖さが半分。




 「頑張ってる?」
 「俺も元気だよ」
 「新しい男は出来たのか?」
 「俺には大切な人が居るよ」
 「またみんなで会おうよ」



出て来る言葉は、
どれもこれも地雷そのもの。




心の中で必死に伝えてみたけれど、
身体の方は一歩も動かない。

友人が電話を切った後、
初めて呼吸していなかった事に気付いた。


2002年09月30日(月)


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2001年09月30日(日) あきらめとは違いますか



< まだ癒えて無いのか >


久々に降り立つ空港。
アイツに必ず見送られて飛び立った空港。
アイツが必ず待っていた空港。


今日はアイツの姿が見当たらない。
居る筈も無い。





 「別れるのかもな・・・」





確かに一人になった俺は、
あの時そっと呟いたかも知れないけれど。

今のこの状況の様に、
音信不通の関係に戻ってしまう事は、
全く想像出来なかった。






気持ちが残っているわけでも無く、
何が起こっても関係を戻す気は無いのに、
言い様の無い寂しさだけは、
何故か消えない。


2002年09月26日(木)


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< 自分を取り戻せましたか >


きっとちょっと嬉しそうに微笑みながら、
君は話しているんだろうな。


 「こんなにすぐ電話くれると思わなかった!」


俺を頼って来る時は、
彼女は間違い無く瀕死の重傷だ。
それが痛すぎる程わかるから、
放って置けない。


 「誰でも良いから暇な人紹介して!」


最悪の精神状態。
彼女らしさなんて何処かに吹っ飛んで、
目の前の快楽しか見えていない。









自棄になるなよ。
そんな風に自棄になっちゃ駄目だ。
一時的な快楽で其の場を乗り切ったとしても、
残る傷には君じゃ耐えられない。

例えあの男への不満が自分の閾値を超えたとしても、
一度彼を生涯の伴侶と決めた責任からは、
絶対に逃げられないんだから。





それでも限界なら俺が相手してあげるから。

だからもう少しだけ、
真正面に立ち向かってみようよ?








 「電話ありがとう」
 「うれしかったよ」







そう。

其の言葉。
其の気持ち。
其の雰囲気。


其れが君の一番の魅力で、
其れが俺の好きになった所だったよね。


2002年09月22日(日)


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2001年09月22日(土) 責任って何者ですか



< 弱気を跳ね除けられますか >


貴女の言葉が、
どんどん自信のない物になっている。



 「私って疫病神だね」



後ろ向きの言葉一つ一つが、
どうしても気に障って許せない。




 「そんな事無い」



優しい声でも聞かせれば、
それで自己満足して解決出来るのだろうか?

嘘も方便と言うけれど、
此処で嘘を吐かざるを得ないなんて皮肉過ぎる。







今更そんな言葉をもらっても、
俺は何にも出来ないよ。

貴女の言葉で謝れば良いんだ。
顔を上げて。
前を向いて。





親友が欲しいのは俺の意志じゃない。
貴女の意志なんだから。


2002年09月18日(水)


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2001年09月18日(火) 単純だから純粋な気持ちなんですか



< 疑問を抱いて良いのか >


貴女が好きだ。


どんなに喧嘩をしても、
どんなに言い合いをしても、
どんな態度をとられても、
貴女との関係を止めようと想った事は、
今まで一度も無かった。

貴女を離そうなどと想った事も、
決して無かった。
貴女じゃ駄目かもと想った事も、
決して無かった。







初めてだ。
貴女との関係に疑問を持ったのは。

初めてだ。
貴女の人間性が許せなくなったのは。




俺はどうしたら良い?


2002年09月17日(火)


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2001年09月17日(月) 歩みが遅かったのは俺の方か



< 何の為の嘘だったのですか >


嘘が表に出れば皆が傷付く事など、
わかり切っている。
だからこそ吐かなくて良い嘘なら必要ない。
嘘は最小限で良い。

そして。
後で事実を話さなければならない嘘なら、
覚悟を決めて嘘を吐くんだ。









貴女が俺の存在を隠した理由は、
貴女の隣に居た男の為だと思っていた。
俺と貴女が少しでも長く続く様に、
事を表沙汰にしない為だと思っていた。

今なら嘘を吐く必要もない。
今なら俺の存在を隠す必要はない。






親友に対して嘘を突き通して来た事は、
親友に対する大きな裏切りだ。

嘘で固められた貴女を必死で支え続けてくれた親友に、
全ての事実を話して、
処刑台の上で審判を待てば良い。
嘘の代償として受ける罪は、
俺も一緒に被ってやる。


そう思っていた。






違っていた。









 「貴男と親友が話し辛くなるから・・・」
 「貴男の為に嘘を吐いた・・・」









人のせいにして、
人のせいにして、
人のせいにして。

そんなふざけた嘘に傷付けられた貴女の親友達に、
俺はもう顔向け出来ない。


2002年09月16日(月)


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< 助けちゃ駄目ですか >


動揺して収拾のつかない貴女。

俺の言葉が通じていない。
俺の言葉は全く耳に入っていない。



 「全部話して良い?」



たった数文字に込められた不安感。


文字なのに。
声ですらないのに。

今にも壊れそうな貴女の姿が、
目に浮かんで、
目に焼き付いて、
目から決して離れない。








貴女を助けちゃいけない。
貴女は自分で考えなければならない。

俺の頭では答えが出ている。


貴女が成長する為には、
俺の手助けは邪魔者でしかないのだから。






 「全部話して良いって言ったじゃん」
 「嘘を吐いたのは貴女でも、俺と一緒に吐いた嘘でしょ?」
 「俺の事は後回しで良いから」
 「裏切った友達の事だけ考えろよ」
 「俺は大丈夫だから」





昨日懸命に伝えた筈の、
けれども全く届いていない言葉達。

もう一度だけ言いかけて、
やっぱり飲み込んだ。


2002年09月14日(土)


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< 本気の覚悟がありますか >


本当の事がわかれば、
分が悪いのは明らかに貴女の方だ。
貴女が大切に想って来た小さな宝物も、
もしかしたら失うかも知れない。

その覚悟が出来たからこそ、
貴女は紙切れに印鑑を押して別れたんじゃないのか。





隠して来た事は何時か明らかになる。
隠して来た事は何時か明らかにしなければならない。
嘘を付いた人間にのし掛かる義務であり、
嘘を付いた人間に課せられる罰なのだから。

それを理解した上で、
初めて嘘を吐く権利が得られるんだ。







遂に事実が明るみに出ようとしている。

貴女の覚悟は本気の覚悟であったのか・・・
右往左往する貴女を見て、
そんな疑問が浮かんでは不安になる。








なんだよ。

弱いのは俺の方じゃないか。
不安なのは俺の方じゃないか。


2002年09月12日(木)


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2001年09月12日(水) 近づけば解決できますか



< 何色に光っていましたか >


目の前にいるのは、
貴女よりもたった一年だけ早く、
この世に生を受けた人。

祝宴にも満たない小さな宴で、
彼女の為の乾杯をした。




俺はどうして此処に居るんだろう。
俺はどうして貴女の側に居ないんだろう。




たまたま用事があって訪れたこの地に、
たまたま友人が何人も居て、
たまたまその内の一人が誕生日だっただけ。


そう言い聞かせながらも、
心はこの地に無い。




 「お誕生日おめでとう」




乾杯と共に、
友人達とグラスをぶつけ合った後、
そっと一人で呟いた。


天にかざしたグラスの色は、
何色でしたか?


2002年09月08日(日)


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< 目を輝かせていますか >


貴女の質問は、
なぞなぞのレベルだ。


「今日は何の日だ〜?」


こんな簡単な問いに答えられない俺だと、
本気で思ってるのか?

二人の始まりを忘れるとでも、
本気で思ってるのか?




そんな貴女を焦らしたくて、
忙しさを理由に返事を滞らせた。

きっと貴女は目を爛々とさせた事だろう。
鬼の首を捕ったように上目遣いで俺を見る姿が、
可愛くて堪らない。





俺をヤキモキさせたかったら、
もっと難しい問いをぶつけて来い。


2002年09月02日(月)


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2001年09月02日(日) 両想いでも平気ですか





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