無責任賛歌
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|藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2004年11月07日(日) 一面のボブ・サップ/永井豪『天空之狗』1巻

 夕べは加藤君とよしひと嬢がお泊り。練習の打ち合わせやらオタク話やらに花が咲いたが、ちょっとジェネレーションギャップを感じてしまったのは、加藤君が「『うる星やつら』、見たことないんですよ」と漏らしていたこと。ああ、20代前半だと当然そうだよなあ、とリクツでは納得できるのだが、自分が遠いところまで来てしまったような気にさせられてしまって、いささかショックではある。「平野文さんが“萌えキャラ”やってたってことですよね?」という発言にもダブルショックである。『うる星やつら』放映当時の80年代には、もちろん「萌え」なんてキーワードは存在していなかったのだが、今なら「ラムちゃん萌え〜」とか堂々と口にするやつらがいても全然おかしくはない。その事実と、まさにラムが「萌えキャラ」の元祖であったことを確認せざるをえないショックである。
 私は「萌え」という単語の表現力の薄さにかなり拒否反応を抱いていたのだが、もうたいていのオタクの間ではこれは完全に一般語化している。オタク間のディスコミュニケーションを埋める方法はないものかと日々ツラツラと考えてはいるのだが、何だか逆に城の外堀ばかり埋められているような気がしてならない。「そんな言葉使うな」とは言えんし、かと言って、「それは違うだろう」と感じている言葉を自主的に使う気にはなれない。
 今の若い世代の人たちも、次の世代の人たちが新しい言葉を使い出したら恐らくは珍妙に感じるに違いないのだから、自分たちの言葉だつて「絶対ではない」ことに気付いて、少しは「世代を越えた普遍的な言葉」がないものかどうか、考察してみるくらいのことはしてほしいものなのだが。


 朝方、寝惚けたしげが「ボブ・サップが邪魔〜」と何度も寝言を言っていた。なんだかまた変な夢を見たらしい(あとで聞いたのだが、部屋中がボブ・サップで埋め尽くされる夢だったとか。……なんじゃそりゃ)。寝言と言っても、半分目覚めちゃいるので、しげはみんなに聞こえるようにわざと口にしているのである。
 先に起きていた加藤君は、しげの寝言を聞いたことがなかったので「何言ってんだ?」とばかりに目を丸くしていたが、朝っぱらからアタマを混乱させられて、いい迷惑であったろう。半覚醒状態でしげがわけのわからぬことを口走るのはしげの「構ってほしい症候群」の表れである。私はもう聞くだに疲れて何を聞いてもリアクションを取らなくなってしまっているので、ここんとこおかしな寝言はあまり聞かなくなっていたのだが、人が増えた途端にこの始末である。自分に関わってほしいあまりに、他人を混乱に陥れようとするのは悪い癖だとそれこそ口を酸っぱくして言い続けてきたのだが、これも全然治らない。精神がハイになればなるほど、ウケ狙いのつもりでイカレた言動を繰り返すが、度を越しゃ鬱陶しいだけである。だからもちっと心のコントロールをしてほしいものなのだが、公演が日一日と近づいてきるせいもあって、そのバランスがかなり崩れてきているのだろう。ちょっとゆっくり寝かしてやんなきゃならんかなあ、とも思うのだが、今だって充分過ぎるくらいしげは寝ているのである。これ以上寝かせてたら、ほんとに「メシ食って寝る」だけの生活になってしまうので、それも困る。アタマの痛い日々はやっぱり続くのだなあ。


 しげたちが練習に出かけたあと、久しぶりに亀の水槽の掃除。
 ここ最近、バタバタと忙しくて、2週間くらい放っておいたら、中がかなり臭くなっていた。風呂場で敷き石を何度も繰り返し洗っても、匂いがまるで落ちない。小1時間かけて、どうやらこうやら水替えが終わったが、指先には亀臭ささが染み付いている。それどころか、部屋中に亀っぽい匂いが漂っているのが分かるくらいだった。
 クーラーを空気清浄に切り替えてフル回転させるが、あまり効果が上がらない。動物を飼う際、こまめな清掃は不可欠であると知っちゃいたけど、ついサボったのが災いした。一週間に一度は水替えしたいのだが、来週は来週で土曜出勤、日曜フル練習の予定なのである。時間の余裕がほしい。

 疲れて、ウトウトしていたところに、父から電話。寝惚け声で返事をしたら、「夜更かししようとや?」と勘繰られる。
 「別に?」
 「具合悪いとや」
 「そうでもないけど」
 私の要領が得ないので、父はいささか苛立ったらしく、詰問口調で「お前、今日が何の日か知っとうや」と聞いてきた。
 言われて、ああ、そうか、今日は母の命日だったな、と思い出したが、父の試すような口調が気に入らなかったので、知らんぷりを決めこんでこう言った。「何の日って?」
 「お母さんの命日やろうが」
 「それは知ってるけど何?」
 昔ながらの頑固者の父親に対して、こんなしらばっくれたような口のきき方をするもんじゃないとわかっちゃいるのだが、私も父の血を引いているので、機嫌が悪くなるとストレートに口答えしてしまうのである。もちろん、途端に「墓参りに行かんか!」とどやしつけられた。もっともである。
 父は仕事で今日は出かけられない。一人で行けということなので、練習に出かける前に菩提寺に回ることにした。何回忌というわけでもなく、特に法要が予定されているわけでもないので、線香をあげて手を合わせただけだが、盆と命日にはこうして拝んでるわけだから、たまにはこの世に化けて出て来てもいいようなものだが。
 そう言えば、ひと月くらい前に母親の夢を見た。帰りの電車の中で偶然乗り合わせたのだが、お袋は、乗客を見まわして「あれはみんなヤクザだから気をつけなさいよ」と忠告してくれたのだった。今んとこヤクザに絡まれるような事態には陥ってはいないので、特に正夢だったということはなさそうである。生前、さんざん賭け事ばかりしてたんだから、どうせならたから9時をどこで買ったら当たるかとか、そんな予言くらいしてほしいものである。

 かなり遅れたが、3時にパピオに回る。今日の参加者は、らぶきち(桜雅嬢)、加藤君、鴉丸嬢、其ノ他君、細川嬢、ハカセ(穂稀嬢)、よしひと嬢。
 とりあえず練習には参加できたのだが、ほとんどが美術や衣装の打ち合わせばかりで、役者の演技を見ることは殆どできなかった。劇中、しげが突き飛ばされてコケるシーンがあるのだが、そのコケ方にダメ出しをしたくらいである。しげにはバレエの足癖がついていて、コケたときにどうしても片足が上がるのだが、そんなコケ方をする一般人はいない(^_^;)。ともかくしげには妙な癖が付きすぎていて、それを矯正するのがひと苦労なのである。
 あと、加藤君には英語のセリフを練習するように指示。何しろいかにも日本人でござい、という発音なのである。台本にはフランス語のセリフもあって、そこの発音も矯正してあげたいのだが、そこまで詰めることができるかどうか。まあ、あえて日本語風の発音で軽い笑いを取る、という手もなくはないのだが、それはどちらかというとしげが負うべき役回りなので、ここのところは加藤君にぜひともかっこよく決めてもらいたいのである。
 演出補のよしひと嬢も来ていることでもあるし、鴉丸嬢の演技も見たかったのだが、彼女の描く衣装案がまだ間に合っておらず、芝居に参加できない。見たところ、かなりテンパッている感じで、ちょっと「危うい」雰囲気も漂っているのだが、あまりムリはしないでもらいたい。だいたいこの子も頗る美人で素材がいいのに、どういうわけだか自分に対してかなりなコンプレックスを持っていて、毎回うまくできないと思いこんでいるのである。基本は問題ないんで、他の役者とのバランスを調整するだけで充分なんだけどなあ。
 公演が近づいて来ているせいだろう、テンパってきているのは実は鴉丸嬢だけではない。今日はもともとパンフレットの案を出し合う予定になっていたはずなのに、私が「もう打ち合わせはしたの?」とその話を切り出すまで、みんな完全に失念していた。
 結局、練習時間内にパンフの打ち合わせは出来ず、ダイヤモンドシティに回って、そこのフードコートで夕食を食いながらみんなでパンフの打ち合わせをした。これも今月中にはラフをあげねばならない。やんなきゃならないことは目白押しであるから、多少テンパってくるのは仕方がないのだが、一人のヒステリーが連鎖して、メンバー全員に伝播してしまうと始末に負えなくなる。適度なガス抜きは必要なので、芝居の話抜きの飲み会とかもいいとは思うが、となると途端に私は参加できなくなるのが悲しい。下戸はどうしたって野暮ってことになるのである。

 帰宅してパソコンをやろうと思ったが、しげに取られて諦める。こうして日記の更新は少しずつ遅れていくのである。


 マンガ、永井豪『天空之狗』1巻。
 すいません、永井豪はもう「義理」で買ってます(-_-;)。『ハレンチ学園』以来、『凄ノ王』あたりまで、幼少年期をほとんど永井豪漬けで暮らしてきた身にしてみれば、現在の形骸化した永井さんのマンガを読みつづけれるのは苦痛ですらある。これも『ドロロンえん魔くん』以来の本格的“妖怪退治もの”だけど、まるでワクワクするところがない。ひょっとこやカマイタチの薀蓄は別にいいからさ、エロでもグロでも伝奇性でも、ちゃんとドラマで見せてほしいんだけどなあ。
 『ハニー』にしろ『デビルマン』にしろ、旧作のリメイクはやたらあるけれども、新作の映像化が殆ど見られないのは、やっぱり永井さんの創作力が落ちているからだ。もう一度『イヤハヤ南友』みたいな破天荒なギャグマンガ、描いてほしいんだけどなあ。


 マンガ、大島永遠『女子高生』1巻。
 先日、出張先の某所で見つけて、読んでみたくなったので買った。こういう本が置いてあるところに出入りしているなんて、私の本職はいったい何なのでしょう(^_^;)。「水泳部は垂れ流し」ネタには大笑い。女子校に限らず、共学でもそういうことってありそうな気はするが、とても同窓生の女性に「うちの高校はどうだった?」とは怖くて聞けないのである(^_^;)。

2002年11月07日(木) 吉野作造と鞍馬天狗/『トリック・ザ・コミック』(堤幸彦・蒔田光治・林誠人・西川淳)/『トラマガ』vol.2ほか
2001年11月07日(水) 暗号解読/アニメ『ヒカルの碁』第五局/「西原理恵子のご託宣ポストカード」ほか
2000年11月07日(火) 昔の映画も見よう……/『笑わない数学者』(森博嗣)


2004年11月06日(土) マイケル・ムーアの遠吠え/時雨沢恵一『キノの旅�次�

 真夜中にしげがいきなり部屋の模様替え。
 私は寝ていて気付かなかったのだが、しげは仕事から帰って来て、夜通しずっとこれにかかりっきりになっていたらしい。窓のあたりに積み上げられていた本の山を移動させて場所を空け、これまで隣に並んでた私としげのパソコン机を向かい合わせにしていた。しげは「個室だ個室だ」と喜んでいるけれども、隣にいられると鬱陶しいってことなのかね。
 周辺の棚なんかも一切合財移動である。机の上にあった荷物の類も片付けられたりしていたので、かなりな重労働だったと思うのだが、一人でよくもやれたものである。まあ、模様替えをすること自体に特に反対はしないのだけれども、私に全く何の相談もなくいきなりやられたのにはちょっとカチンと来た。しげが突発的に何かを思い立つのは今に始まったことではないが、たいていそれはトラブルの種になるからである。
 案の定、あれはどこへやった、これはどこに片付けたと、紛失物が続出。だからどうして記憶力ないのに一気に何でもかんでも片付けようとするかな。毎日少しずつやるんならこんなこともなかろうに。一番困ったのは薬をどっかにやられてしまったことである。一種類は床に落ちてたのを私が見つけたのだが、もう一つが見つからない。しげに聞いても「気がつかなかった」である。気がつかなかったですむか、ばかたれが。
 しげをどやしつけて、薬局まで薬を買いに行かせる。せっかくの連休だけれども、朝から気分が悪い。

 休日出勤がやたら多かったので、久しぶりにゆっくり休んでる気がする。
 のんべんだらりとテレビで『マーメイドメロディー ぴちぴちピッチ ピュア』『ロックマンエグゼ ストリーム』『ケロロ軍曹』と続けて見る。
 『ロックマン』のゲストキャラ、ドジで冴えない眼鏡っ娘OL・ユイを演じていたのが『プリンセスチュチュ』の加藤奈々絵さん。久しぶりにあのアヒル声を聞けたなあ。ちゃんと仕事をされていてよかったよかった。こういう個性的な声の人が伸びていってくれると嬉しい。
 『ケロロ軍曹』は動物達を兵士に変える光線銃のエピソード。ほぼ原作通りで、特段の改変はない。ネコの変身姿が一瞬だったのも原作のまんまで、ちょっともったいなかったけれど。夏美、鈍感なとこはやっぱりヒロインとしては今一つ魅力に欠けると思うんだけれど、なぜかマンガやアニメでは鈍感キャラの方が受けるというのは、やっぱりオタクには深くくらいトラウマがあるのかね。

 午前中のうちにレッド・キャベツに行って、水を汲む。
 帰宅してしげに親子丼を作ってやる。そのあと亀の水槽を洗うつもりだったけれど、一週間の疲れが溜まっていたらしく、眠りこむ。
 起きて日本映画専門チャンネルで、映画『天国にいちばん近い島』と『福耳』を続けて見る。まあ、『天国』は今見るといろんな意味でツライ。『福耳』は初見だったけれど、なかなかの佳作だった。幽霊の田中邦衛にカラダを乗っ取られたという設定の宮藤官九郎、一所懸命田中邦衛演技をしてるのがおかしい。決してうまくはないんだけれど、顔が全然主役顔じゃなくて間が抜けているので、何となくフラがあるのである。主役よりも脇の爺さん婆さんたち、谷啓や坂上次郎、千石規子といった連中が実にいい味を出している。録画すりゃよかったかな。
 夜はチャンネルNECOで『タッチ』一挙放送。三部作の映画にテレビスペシャル2本もくっ付けて。映画の方はともかく、テレビスペシャル2本は、昔一回だけ見て、ずっと心の中で封印していたのだけれど、封印したままにしといてよかったかも(^_^;)。というわけで感想は特に言わない。


 明日の練習に向けて、加藤君とよしひと嬢がお泊まりに来る。
 しげも今日は仕事が7時〜10時と短いので、帰宅して3人で台本読み。声の調子や演技の間はかなりよくなってきているのだけれど、加藤くん、まだ時々セリフが抜けるぞ。アドリブが出せるようになったのは急成長だけれど、本番では使えないアドリブばかりだから、やっぱセリフは覚えるように。


 読んだ本、時雨沢恵一『キノの旅�次 �the Beautiful World―』。
 実を言うと私は、キノ本人よりも師匠のエピソードの方が好きだ。やっぱ女性は凛々しく強く、「したたか」でなきゃねえ。第1話での暴れっぷりを読んで満足してしまったので(目次カラーイラストも師匠だ!)、メインエピソードの『救われた国』の印象が薄かった。久しぶりのシズ様との再会、しかも美少女キャラも登場ってのにねえ。


 さて、以下の文はマイケル・ムーアのホームページに掲載された「敗戦の弁」を要約したもの。( )内は、米選挙に興味なんてないであろう、しげその他の人に向けての注です(^o^)。

「『リストカットしないための17の理由』
1.ブッシュはもう2度と大統領に立候補できない。
 (知ってる人は多いと思うが、米大統領は法律で三選はできない)
2.ブッシュは辛うじて勝てたにすぎない。
  (前回からずっと不正疑惑はつきまとっている)
3.ケリーに投票した者は若者層が多かった。
 (未来に希望が持てると言いたいらしい)
4.アメリカ人の大半は「アメリカは間違った方向に進んでいる」「イラク戦争は戦う意義がない」と思っている。
  (でもブッシュが勝っちゃうんだよね。ムーアは「それがアメリカの不思議なところさ」とおちゃらけているけど)
5.上院では共和党は60議席に達しなかったから、フィルバスター戦術は有効である。
  (牛歩戦術みたいに長い演説で審議を遅らせること。『華氏911』でもやってたね。これも言うまでもないが、ブッシュは共和党、ケリーは民主党である)
6.ミシガンほか、北東部の州ではケリーが勝ったところが多い。西海岸もハワイも。
  (田舎はいざ知らず、リベラルな土地はちゃんと真実を分かっている、と言いたいのである)
7.オハイオ州がバカなのは仕方がない。
  (不正疑惑のある電子投票機を製作しているディーボルド社の本社はオハイオ州にある)
8.ブッシュに投票した88% は白人だが、50年後には少数派になる。
  (どうだかなあ?)
9.ゲイどうしの結婚が禁じられた州が増えたおかげで、御祝儀代が浮くようになった。
  (もちろんこれは皮肉で言ってるのだね。マイケル・ムーアはゲイ差別には反対である)
10. 下院に5人の黒人議員が増えた。
11.コロラド州ではクアーズ・ビールのCEOが上院議員に落選した。
 (社長のピーター・クアーズは、ゲイどうしの結婚を禁止するための憲法改正を支持していた)
12.おかげで「ブッシュ・ガールズ」は健在だ。
 (ポルノ規制が厳しいブッシュ政権への反対を表明して、ポルノ女優たちが自分のブッシュ〔茂み〕を剃って、「ノーモアブッシュ」を訴えている)
13.各州の立法府では、民主党が多数派となった議会が三つ増えた。
14.ブッシュはもう任期を消化するだけだ。残りの4年、ケネバンクポートの牧場で永遠の金曜日のように過ごすだろう。
  (メイン州ケネバンクポートにはブッシュ家の別荘がある。ハリウッド・セレブたちの豪華な別荘や、ギャラリー、アンティークショップ、お洒落なイタリアンレストランなどもあるアメリカ人にとって、憧れの海岸リゾート地だとか)
15. ブッシュは次のどちらかのシナリオを選択する。
 (A) 選挙に勝った以上、もはやキリスト教原理主義者に媚を売らなくなる。
 (B) 逆に再選で傲慢になり、ヘマをやらかす。共和党もブッシュを降ろすしかなくなるだろう。
  ((A)は殆ど希望的な観測で、ムーア本人も信じちゃいないだろう。となると(B)の「ヘマ」がどれほど世界にとって大迷惑なものか、想像するだに恐ろしいが、当然、これもむーあは充分想定した上で皮肉を放っている)
16. 選挙権のある2億人のうち、ブッシュに投票したのは5千8百50万票。ケリー5千5百万票との票差はたった350万票で、この程度の惜敗に落胆する必要はない。希望を持て。
17. ケリー5千5百万票の得票数は、レーガンやブッシュ父や(民主党右派の)クリントンやゴアより多い。こんなに多数のアメリカ人がリベラル派に乗り換えたのは画期的だ。2008年の選挙を見よ。」

 実際に「不正」が行われたどうかは正直分からない。
 選挙結果が僅差だった場合、やたら「不正」を訴えたがる連中は多いが、少なくとも露骨にそう主張しないだけ、ムーアの敗戦の弁は潔いとは言える。けれど、やっぱりジャン=リュック・ゴダールが指摘した「ムーアが考えているほどブッシュはバカではない。このブッシュ攻撃は相手を利するだけだ」という言葉が結局は正鵠を射ていた以上、ムーアの弁を「引かれものの小唄」としか受け取らない人も多かろうと思う。
 何度も書いている通り、ムーアの『華氏911』その他のブッシュ批判は、今更指摘されるまでもなく、誰もが先刻御承知のことである。ブッシュが標的をビン・ラディンからフセインにスライドさせた時も、イラクは大量破壊兵器を隠し持っていると主張したときも、それをマトモに信じた人間がどれだけいるというのだろう。アメリカも日本も、それが見え透いた「ウソ」だと承知した上で、自分たちの利益のためにあえて騙されて乗っかったのだ。だから、いくら「ブッシュに騙されるな」というキャンペーンを張られたところで、「騙されてるわけじゃない」としか返事のしようがない。「組織」に所属していれば保身のために不正と分かっていても、それを受け入れなきゃならないことだってあるというのに、それを真っ向から「不正をしていて良心に恥はないのか」と糾弾されても、我々は沈黙をもって答えるしかないのである。それが悔しくないわけではない。悔しいがどうすればいいのか。「選挙に行け?」それで何かが変わるわけでもないことが分かっているから、憤懣やる方ないのではないか。
 町山智浩氏は、日記中にメリーランド大学での調査を引用して、「ブッシュ支持者の72%が『イラクには大量破壊兵器が存在した』と誤解している。ブッシュ政権が『間違いだった』と公式に認めた現在でもだ。ブッシュ支持者の75パーセントがブッシュ政権の公式発表を聞いていないことになる。さらに、ブッシュ支持者の75%が『イラクがアルカイダのテロに関わっていた』と考えている。アメリカ政府の国家調査委員会が公式に『イラクとテロは無関係』と認定した今でもだ。しかもブッシュ支持者の55%が『調査委員会はイラクとアルカイダの関係を認めた』と逆に信じている」と、アメリカ人の無知を批判している。さて、それがおおむね事実であるとしても、中にはやはり「分かっちゃいるけどあえて知らぬフリをした」人間もかなりいるのではないか。どこの世界に、「私は悪いことと知っていて、あえて悪いことをしています」などと正直に告白する人間がいるだろうか。「イラクには大量破壊兵器がない? ブッシュも認めた? それがどうした。それでも大量破壊兵器はあったんだよ」そう嘯く人間など、腐るほどいておかしくはないのである。そういう連中を「愚か」であると言い切ることは簡単であるが、そういう「愚かな連中」を相手にしなければならないことを充分に想定しなかったムーアの“読みの浅さ”が結果としてブッシュを利することになったのではないか。『華氏911』の退屈さは、結局、アメリカ国民の良心に訴えようとしたムーアの「一人よがり」に起因したものだったと言えそうである。

2002年11月06日(水) あのころ/『コミック1970』
2001年11月06日(火) 10年ぶりのスプラッタ/『西原理恵子の人生一年生』(西原理恵子)ほか
2000年11月06日(月) 別に国際化したいわけでもなし/『大人の国イギリスと子どもの国日本』(マークス寿子)


2004年11月05日(金) 灯台下暗しと大正デモクラシーって似てるね(c.きたろう)/『キム・ポッシブル:タイムトラベル』

 しげは今日の午前中、細川嬢と公演会場のアクロス福岡に、照明その他の打ち合わせに出かけていた。メールで「担当さんに親切にしてもらえた」旨、連絡が入っていたから、準備は上々だったのだろう。
 細川嬢には照明だけでなく、全体美術も担当して頂くことになっているので、かなり仕事の負担は大きいのだが、話に聞くところによると、デザイン方面の仕事を目指しているそうで、本格的に取り組んでくれているそうである。先日見せてもらった照明プランもなかなかのものであったし、全く頼もしい限りなのであるが、そうなるとその分欲も出てきてしまって、演出上の要求も今まで以上にしたくなる。愚痴を言うわけではないが、スタッフ不足、キャスト不足だと、必然的にあのプランも諦める、これも諦めると妥協しなきゃなんなくなることも多いので、恐る恐るではあっても「こんなこと言っても大丈夫かな?」と思える状況は嬉しいしありがたいのだ。途端に「こんな演出はどうかあんな演出はどうか」とアイデアがいろいろ浮かんでくるのだから、やはり芝居にスタッフの熱意とやる気は必要不可欠なのである。
 アクロスの担当者さんに、舞台専門の布や衣料を販売している会社があると聞いたというので、仕事帰りにしげと寄ってみる。なんと自宅から目と鼻の先、車で5分とかからぬ距離の場所にあった。てゆーか、いつも買い物してる「ポプラ」のハス向かいにあるし。「灯台下暗し」とはこのことである(~_~;)。事務所自体はもう締まっていたので、しげは「そのうち昼間覗いてみる」と言う。アクロスは円形劇場なので、役者のデハケが難しい。幕を吊るして袖を作る予定だそうで、細川嬢にもデザインを考えてもらっているとか。いかにも幕を下げました、という感じじゃなくて、それが一つのデザインとして機能しているような感じにしてもらえるといいなあ。いや、実際これまで「美術」はうちの劇団のネックになっていたので、そこが補強できるというのはまさしく朗報なのである。


 帰宅して、日本映画専門チャンネルで録画しておいた映画『黒蜥蜴』を見る。
 京マチ子・大木実主演の大映版だが、ミュージカル仕立てになっているので、珍品扱いされることも多い。けれど、それはもともとこれが江戸川乱歩の原作からの直接の映画化ではなくて、三島由紀夫脚色の舞台の映画化であるからで、セリフや演技の臭さは同じ戯曲をもとに映画化した丸山(美輪)明宏・木村功主演の松竹版でも“違和感”はあったのだ。これをバカ映画扱いするなら、『サウンド・オブ・ミュージック』も『ウエスト・サイド物語』もバカ映画である。なんでもかんでも我田引水的に面白がろうとする風潮に乗っかると、映画の本質を見失いかねない。この映画を批判するなら、舞台劇を映像化する際のポイントを外している点、京マチ子はともかく、大木実や川口浩あたりの役者の「舞台演技」が今一つ板に付いていない点や、カット割りやカメラワークに切れがない点とかを指摘した方がいいんじゃないかと思うんだけどな。ミュージカルの映像化には「空間」が撮れていることが必須なのだが、それが不充分なのである。

 ディズニーチャンネルで『キム・ポッシブル:タイムトラベル』。
 昨年放映されたテレビスペシャルの長編。こういうのはたいてい主役の過去とかが明かされたりするものだが、まさに定番通り。ドクター・ドラッケン&シーゴー、ダフ・キリガン、モンキー・フィストの3悪プラス1が手を組んで過去にタイムスリップ、4歳児のキムを苛める展開。このとき3悪が自分たちも幼稚園児に変身するのがこいつらのおおマヌケなところ。大人のままで苛めるか殺せばいいのに、そんなこと思いつけないのである。助手の身に甘んじているホンモノの悪・シーゴー姉さんだけが歯噛みしてるのだけれども、これが伏線となって後半の展開に関わっていく構成がうまい。やっぱり悪役の中での一番人気はクール・ビューティーなシーゴー姉さんなのだなあ(* ̄∇ ̄*)。
 ちなみに4歳児のキムの声優は『アイ・アム・サム』の天才子役ダコタ・ファニング。ホントに売れっ子なんだなあ。ほかに、ルーファス3000の声に『スター・トレック/ネクストジェネレーション』シリーズのウォーフ少佐役のマイケル・ドーン、ロンの父ちゃんになんと『マッシュ』のエリオット・グールドという豪華キャスト。ディズニーがこのシリーズに思いっきり力入れてるのが分かるのだが、でももう手描きアニメは作らないって言ってるんだよなあ。新作が4シーズンも作られてるんだから、決して人気がないわけじゃないはずなんだけど、もったいない話である。それともテレビアニメだけは継続して作ってくれるのかね?


 アメリカ、映画芸術科学アカデミーは昨11月4日、第77回アカデミー賞最優秀アニメーション映画賞部門のエントリー作品を発表。でも、この中で実際にノミネートされるのは3作品。『ハウル』は公開が間に合わなかったみたいだけど、『スチームボーイ』はどうなったのかな(^o^)。
 今んとこのノミネート11作品は以下の通り。

“Clifford's Really Big Movie”
『イノセンス』
“Home on the Range”
『Mr.インクレディブル』
“The Legend of Buddha”
『ポーラー・エクスプレス』
『シュレック2』
『シャーク・テイル』
“Sky Blue”
“The SpongeBob SquarePants Movie”
“Teacher's Pet”

 『イノセンス』と『シュレック2』以外は未見だから憶測でしかものは言えないけれど、『イノセンス』のノミニーは難しいんちゃうかな。アメリカ、まだまだアニメ後進国だから。「ある程度のヒット作品であること」が暗黙のうちに賞の条件になってる面があるし、相変わらず「アニメは子供のもの」って意識のほうが支配的だからね。
 考えてみたら、長編アニメーションそのものを国際的にマトモに評価するイベント自体がすごく少ないんである。ベルリン、ベネチア、カンヌはアニメーション部門を設けてるわけじゃないし(だからこそ宮崎駿監督の受賞はものすごいことであるのだが)。ASIFAは短編専門だからなあ。
 だからアカデミー賞が権威であるかのように錯覚されがちだけれど、去年も今敏監督の『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』が結局ノミニーから外されたことを考えると(まあどっちも欠陥の多い作品ではあったが、かと言って『ファインディング・ニモ』に負けるほどのものではない)、結局はアニメーションの何をどう評価するかって指標がアメリカ人の中に形成されてないなとしか感じられないのである。まあそれ言い出しゃ、「萌えアニメ」しか見ない日本のアニメファンとか、アニメファンの名に値しないと言われちゃいそうだが。


 「おれおれ詐欺」の9月の被害額が、約29億円となり、1カ月間の被害としては6月から4カ月連続で過去最悪を更新したんだと。
 東京都調布市では、6人もの男が入れ代わり立ち代わり電話口に現れるという、最多登場人物記録の事件もあったとか。その内訳は「息子(加害者)」「警察官」「弁護士」「司法書士」「女の子の弁護士」「保険会社の社員」。これだけ出てくりゃ、かえってこういう連中が電話口だけでコトを済まそうとしてることに疑問を感じてもよさそうなものだが、引っかかるやつはどうしたって引っかかっちまうんだろうなあ。
 「おれおれ詐欺」が一向に収まらないのは、以前も書いたと思うが準備に手間がかからない、足がつきにくい、ということの他に、「罪悪感をあまり感じない」ということも確実にあると思うんである。ここまで簡単に騙される人間がいるなら、「騙される方が悪い」という自己正当化の方向に感覚をスライドさせる卑劣漢が続出したっておかしかない。私もいっぺんしげに試してみようかって欲求に駆られて仕方がないのである(私は間違っても電話で泣いて助けを呼ぶなんてことはしないってわかってるだろうから絶対バレるが)。
 思うんだけど、防衛手段としては、もはや「みだりに電話を取らない」とかまで思いきるしかないんじゃないか。家族や知人などの個人的な連絡は全て携帯を通すようにして、自宅の電話は基本的に使わない。どうせヨソから掛かってくるのはほとんどセールスだ(^o^)。そこまでしなくても、ナンバーディスプレイを設置するだけで殆どのイタズラ電話は無視できる。非通知や表示圏外の電話はすべて取らなきゃいいんだからね。「うちは自営業で仕事の電話と自宅の電話、同じだからそれできない」というお宅は無理して2台電話を持とう。ともかく犯罪を防止する一番の方法は「犯罪者よりリコウになる」しかないのだ。
 うちにかつて「おれおれ詐欺」が掛かってきたことがあるかどうかわからない。うちもホモオタさんがイタズラ電話かけまくって以来、ナンバーディスプレイを入れることにしたので、知合い以外からは電話取らないようになってるのである。つかもともとしげは電話自体取ろうとしないから(^_^;)。
 休日の昼間とか、よく電話はかかってるんだけどね。

2002年11月05日(火) バラエティに芸はない/『ガンダムエーススペシャル』/『カラダで感じる源氏物語』(大塚ひかり)
2001年11月05日(月) 行かなかった博覧祭/『陽だまりの樹』1〜7巻(手塚治虫)ほか
2000年11月05日(日) 「小鹿のバンビは」って歌は日本版だけ/アニメ『バンビ』ほか


2004年11月04日(木) だから日記書く時間なんてないんだってば。

 残業で帰宅が10時。今日も『黒皮の手帖』を見損なう。まあ、ヨネクラのファンってわけでもないし、それほど執着しちゃいないのだが。
 こういうやたらめったら忙しい日が多いもんで、日記がなかなか書けないのである。今日も職場じゃいろいろと楽しいトラブルは起きていたのだけれど、遠回しに書く余裕もない。短くて恐縮だけれどもご了承いただきたい。


 米大統領選挙、大方の予想通り、ブッシュ大統領が再選。
 自衛隊撤退の問題に関しては、選挙以前からケリーが勝てば即時撤退が可能だ、いや、ブッシュが勝った方が撤退の時期がはかれる、などなど、両陣営の賛同者が全く正反対のことを言っていた。日本に関わりが深いような煽りはやたら世間に溢れてるが、飛びかってる情報は所詮どれもアジである。そんなのに左右されて、日常生活がおろそかにならんよう気をつけましょうね。
 てなわけでとりあえずはマイケル・ムーアのコメントが出るのを待とう。町山さんはすでに選挙前から自己弁護に走ってたけど。

2002年11月04日(月) 勲章って文学賞じゃないでしょ?/舞台『父歸る』(見てないけど)/『鉄人』1・2巻(矢作俊彦・落合尚之)
2001年11月04日(日) デリケートにナビして/映画『紅い眼鏡』/アニメ『ターザン』/アニメ『サイボーグ009』第4話ほか
2000年11月04日(土) まさかあの人があんな人だなんて……


2004年11月03日(水) 女になって出直せよ/『DEATH NOTE(デスノート)』4巻

 こんな夢を見た(夢の話だからね。絶対に勘違いしないように)。

 よしひと嬢が引っ越しすることになった。
 それで私としげは、その手伝いに行くことになったのだが、その引っ越し先というのがとんでもないことに、総合アミューズメントパークになっているのである。しかもまだ建設途中で、あっちこっちに鉄パイプの骨組みが見えている。よしひとさん、なんてところに引っ越してんだ、と思ったが、手伝いに来た以上は逃げられない。しかも今日は肝心のよしひとさんが都合で来られないのだ。私としげだけで引っ越しは片付けなければならない。
 覚悟を決めて入口から入ろうとしたのだが、受付でなんだかやたら身体中ぴかぴかとネオンみたいに光るコスチュームを付けたねーちゃんに、「ここは女の子しか入れません」と制止されてしまった。
 「引っ越しの手伝いなんで入らないといけないんですよ」
 「規則ですからダメです」
 受付嬢はニベもない。そばで見ていたしげが「しかたないわね。えいっ!」と、急に魔法のステッキを振った。途端に私はハカセ(穂稀嬢)と身体と魂が入れ替わってしまった。思わず「ああ、オレ、ハカセになっちゃったよお!」と頭をかかえた(よく考えれば、頭をかかえなきゃなんないのは、身体を乗っ取られたハカセの方だと目覚めたあとで気付いた)。
 けれどこれで一応、問題はクリアーできたので、パークの中に入る。よしひと嬢の引っ越し先は何階か上なので、そこまでエレベーターかエスカレーターで上っていかなければならないのだが、やたらでかいパークなのに、入口がすごく狭くて、大人一人すら通れない。ハカセになっていなければ、もとの私だと確実に詰まってしまうくらい狭いのである。エレベーターとは言うものの、水圧で押し上げるダスターシュートみたいな構造になっていて、一人しか乗れない。しげ、そそくさとその中に入り込んで横たわり、どうすりゃいいんだかとおろおろしている私を尻目に、「あんた、これの乗り方も知らないの? 遅れてるう!」と言って、水飛沫を上げながらシュイン、と軽やかな音を立てて、先に上って行ってしまった(ダスターシュートなのになぜ上に昇れるのだろうか)。
 仕方なく私は横の狭くて細い鉄製の螺旋階段を、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』のしんちゃんのように、必死で昇るハメになってしまった。
 7階まで昇って、体力が尽き、もうダメだ、これから先はエレベーターで行こう、とそこの階で降りた。実はちゃんとした普通の、20人くらいは軽く乗れる大きなエレベーターもあったのである(だったら最初からそのエレベーターを使えばいいじゃん)、
 そこは帝国劇場のようなフロアで(つか内装はまんま帝劇で、当然舞台もあった)、森繁久彌のサインも売っていたのだが、もちろん今は引っ越しが優先されるので、そんなもんを買っているわけにはいかない。第一、今の私は身も心もハカセになっているので、モリシゲのサインなんぞ欲しくもないのである。
 「遅れちゃう、遅れちゃう」と言いながら、エレベーターに乗りこもうとしたら、しげがそこから降りてきた。「あんたがあんまり遅いから、もう一回来てやったよ。さあ、あっちから昇ろう」と言って、別の場所に無理やり連れて行く。「あの、そのエレベーターで昇ればよいのでは?」とハカセ口調で反駁するが、しげは聞く耳持たない。「下りのエレベーターが昇ってくるの待つより、こっちのほうが早いよ」とむりやり私の手を引いていくのである。いつもの私ならともかく、今はハカセになっているので、私はしげに抗う力もないのだ。
 と、客がやたら並んでいる行列に並ばされたのだが、それ、エレベーターに乗ろうとする行列じゃなくて、ウォータースライダーの並びだった。「これ、下に降りちゃうじゃん!」と慌てたが、時既に遅し。もう後ろにも人がたくさん並んでいて、どうにも逃げられない。しかたなく、しげと一緒にウォータースライダーに乗ったのだが、しげ、ずぶ濡れになりなから「きゃははははは」と笑って喜んでいる。要するにこいつ、遊びたかっただけなのだ。
 「どうするんですか、ずぶ濡れになっちゃったじゃないですか!」とやはりハカセ口調の私がしげに文句を言うと、しげ、「だいじょーぶ。ちゃんと乾かすところあるから」と言って、また別のフロアにま連れて行く。
 そこはいくつものエスカレーターが風船のようにつやつややとしたオブジェと明滅するネオンに囲まれた幻想的な空間で、しげはその一つに乗れと言うのである。私が躊躇していると、しげ、嬉しそうに「怖いの?」と問いかけてくる。もちろん、今の私はハカセなので、怖くて仕方がないのだ。しかし、このまま立ち往生しているわけにもいかない。よく見るとエスカレーターの隣にはあのダスターシュートがまたあって、しげはまたそれに乗ってサッサと昇って行きそうな気配なのである。
 意を決して、エスカレーターに乗りこんだ途端、四方のオブジェがゆらゆらと揺れながら私に迫ってきた。
 「イマカラ、アナタヲ、ケンエキシマス」
 どこかから、無機質な機械音のアナウンスが聞こえてくる。それと同時にプシューッ!と音がして、なんだかねばねばした液体が全身に浴びせかけられる。身体を乾かすどころか、余計に濡らしているじゃないか、と思ったが、どうやらこれは消毒液らしい。なんか病気持ってたのかハカセのからだ。
 ともかくそのあとようやく身体を乾かしてもらえた。そのままエスカレーターを昇っていくと温風が吹くのと同時にでっかい羽毛が迫って来て、私のからだを優しく撫でてくれたのである。ようやく頂上が見えてきて、例のネオンのコスプレのねーちゃんたちが出口付近に並んでいて、「いらっしゃいませ〜!」とニコヤカに迎えてくれる。
 やれやれ、これでやっと降りられる、とホッとしていると、ねーちゃんの一人が突然、「はい、見事にカップル成立でーす!」と言って、手に持った鐘をガランガランと打ち鳴らした。
 「え?」と思う間もなく、私の(ハカセの)からだはポン、と投げ出されて、ベッドだかイスだかよくわかんない、プラスチックの器のようなものの中に放り込まれた。ハッと気付くと、隣には禿げた中年のオヤジがニヤニヤしながらこっちを見つめているのである(男子禁制じゃなかったのかよ)。どこかで見た顔だ、と思ったら作家の田中芳樹にそっくりなのだ。
 「かかかか、かっぷるせいりつって、どどどど、どういうことですか?!」と目をシロクロさせている私にお構いなく、田中芳樹もどきは私に熱い視線を向けてくる。いや、今確かに私はハカセの身体の中に入っているからオンナになっているのだけれども、心はやはり私でオトコなのであって、カップルなんぞとんでもないのであって、と言いたいのだが、身体が震えて声も出ない。回りのねーちゃんは、「どうしたんですか? ここは“そういうところ”なんですよ?」と私を責め立てる。ふと向こうを見ると、しげもやはり中年のオヤジに迫られてるんだけれど、それがなんかいい雰囲気になっていて、まんざらでもない顔をしているのである。
 アンニャロメと思った瞬間、ようやく身体が動いて、私は外に飛び出した。よく見るとそこは野球ドームで、あちこちに出口がある。引っ越しの手伝いはどこへやら、私はほうほうの体で、そこから逃げ出したのであった。

 この夢には続きがあって、実はこの場所、よしひとさんの引っ越し先でもなんでもないのであった。道理でよしひとさんの姿が見えなかったわけである(それ以前に、アミューズメントパークに引っ越しするわけがない)。
 翌日、今度はホントによしひとさんの引っ越し先にしげと出かけていったのだが(夢のフシギなところで、しげがあの後中年オヤジとどうなったかについては、私は全然気にしていない)、そこはまだ骨組みだけで、まだ家自体、建ってはいなかった。ジャングルジムのような鉄骨の横の敷地では、水道がまだ完備されていないのか、地面から水が幾筋も噴水のように吹き出ている。
 そのへんの石に座って鼻歌なんぞ歌っていたよしひと嬢を見つけて、私は昨日のいきさつを逐一語って聞かせた。「ふーん、そんなおもしろいことがあったんだ」と、よしひと嬢はまるで他人事である。
 おもむろによしひと嬢がつぶやいた。
 「で、あなたはけいちんさんなの? ハカセなの? どっち?」
 私はハッと気付いた。私は未だにハカセの身体の中にいたのだ。
 「どっちって……。どっちなんでしょう?」
 私にも私が私なのかハカセなのか分からなくなっていた。ふと、背後に気配を感じて後ろを振り向くと、ジャングルジムの上に、誰かが座っている。確かに知っている顔なのだが、誰だか分からない。鴉丸嬢でもなければカトウ君でもない。男か女かすら、判然としないのである。
 “誰か”は、ホースを持っていた。怒っているような、無表情のような、どっちともつかない顔で、ホースの口を私に向ける。水流がほとばしり、私を打った。
 「やめて、やめて」
 水流は止まらない。私の全身が滝に包まれた。しげもよしひと嬢も、にやにやと笑うばかりで私を助けてはくれない。バチがあたったのだ、という顔つきで、私を嘲笑っているのだ。
 ばち? 何のばちか? ハカセのからだを乗っ取ってしまったこと?
 でもそれは、そもそもしげのやらかしたことじゃないか!
 しかしその私の反論はしげには届かなかった。私の身体は水流の中で、とうの昔に消え去ってしまっていたからである。

 そこでようやく目覚めた。
 夢はたいてい見た直後に忘れちゃうのだが、これは知った顔がたくさん出たせいもあったのか、珍しくも鮮明に覚えていた。
 オチはなんだかホラーっぽくなってしまったが、目が覚めてふと気になったのは私の魂がハカセの身体に入っていた間、ハカセの魂はどこに行っていたのか、ということである。それを想像すると、ハカセが気の毒でならない。つか、シツレイ千万な夢見るよなあ、オレも。


 全体集合の練習日ではないのだけれども、朝からカラダの空いてる者を集めての公演の練習。
 香椎のジャスコの屋上駐車場で、加藤くん、細川嬢、よしひと嬢と合流。人がいないのはいいけれど、風は強いわ雨はときおりパラつくわでめっちゃ寒い。初めは外で演技してもらって様子を見るつもりだったのだけれど、しげも加藤くんも「たまらんごつなって」(^o^)、車の中に避難、本読み中心の練習になった。
 しげの「セリフが上ずる」クセはかなり治ってはきているのだけど、それでもまだ喋りが「普通の人」っぽくない。こないだの練習の日に見学者の方が来られたとき、しげはずいぶん恐縮して、たどたどしく控え目に喋っていたのだが、例えばあんな感じで演技をしてくれればいいのである。それが興奮するとヤンキー口調になったり広島ヤクザ風になったりするので、かなり細かく修正を入れてかねばならないのである。一つカンを掴んでくれれば、かなりいい線まで行くとは思うのだが。
 細川嬢は、かなり詳しく照明プランを立てて来てくれていた。会場のアクロスに提出する見取り図のほかに、脚本に合わせた各画面ごとの照明設定図を十数枚、照明の位置から色合いから考案して描いて来てくれていたのである。脚本段階ではとてもそこまで計算に入れてはいられなかったので(つか、色弱で色彩感覚がないので、設定のしようがないのである)、実にありがたい。
 演劇関係者でも、こういう一見地味に思える裏方の仕事をいやがる人もいたりするのだが、細川嬢、「いえ、おもしろいです」と言ってくれる。なんだか今回の公演はホントにいい子が集まってるなあ。
 細川嬢は午前中で引き上げて、あとは3時ごろまで練習と打ち合わせ。
 加藤くんは、先日脚本を改訂して付け足した部分の覚えがまだまだ。「明後日までに覚えといてね♪」とダメ出しする。
 加藤くんは、先日、見学者の方に誉められた途端に演技の固さがひょいと取れたので、どうやら誉められて伸びるタイプのようだ。ところが私は、男は滅多に誉めない(なんか男が男を誉めるのに抵抗あるのよ)。加藤くんにしてみれば相性の悪い演出家、というより、努力の芽を摘むよくない演出家ということになろう。そのことは申し訳ないと思っているので、あまりキツイことは言わないように気をつけようと心に決めちゃいたのだが、つい口が滑ってしまうのである。でもよしひと嬢の寸鉄ヒトを刺すヒトコトには敵わないからなあ(^o^)。


 帰宅した途端にしげは爆睡。今日もよしひと嬢から「しげさんって、けいちんさんの日記読むといつも寝てるみたいなんだけど」と言われていたが、ホントに寝てばかりいるのである。でもお握り作ってやって、「食うか?」と声をかけると、そのときだけ起きて食って、また寝るのである。これで家事なんぞできるわけないわなあ(T∇T)。


 ディズニーがアニメーションの老舗としての意地をかけて日本のテレビアニメに対抗すべく送り出したという専らの噂の『キム・ポッシブル』をディズニーチャンネルでようやく見る。
 女子高生が正義のヒーローとしてマッド・サイエンティストの魔の手から平和を守る、という設定はありふれているけれど、これまでのディズニー制作のテレビシリーズ、例えば『リトル・マーメイド』だの『アラジン』だのと言った、毒にも薬にもならないような作品に比べると、かなり『バットマン』風というか『パワーパフガールズ』風な味付けがしてあって、なかなか「見られる」。キャラクターの絵柄もそれほどアメコミアメコミしてないので、拒否反応は起こらない。
 今回のエピソードは、キムの親友、マヌケなロンが、ある発明のおかげで数学の天才少年になってしまって大騒動(実はホントに天才になってたのはペットのモグラのルーファス)、というお話。なんか『アルジャーノンに花束を』っぽいけれども、オチがちょっとひねってある。ディズニーがこういう“おちょくり”をするのは珍しい。なりふり構ってられないのかな(^o^)。主役のキムより、マッド・サイエンティストの助手のね〜ちゃんがせくしいでなかなかいいから、これから時々チェックしてみようと思う。DVDは3話収録の単品が1巻のみ発売中とか。
 その後引き続きディズニーチャンネルで『メリー・ポピンズ』を再見。これ見たおかげで、「ディズニーはアニメより実写の方が出来がいい」と認識した記念の一本だけど、うっかり録画し損ねた。これもそのうちDVDを手に入れたい一本。


 マンガ、大場つぐみ原作・小畑健漫画『DEATH NOTE(デスノート)』4巻。
 第2のキラ・ミサの登場で、ライトとLの推理合戦がまた更に複雑化し、陳腐な表現ではあるけれども、まさに「息をも吐かせぬ展開」と形容するしかないくらいにハラハラドキドキの連続となった第4巻。短絡的に殺人を繰り返してきたライトが、ここにきて最も抹殺したいLとミサを殺せない、という皮肉な演出を作者が仕掛けてきたのが実に小気味いい。アタマが切れるが故にLはキラの魔の手から逃れ得ている反面、ミサは“愛”という名の愚かさに捕らわれているが故に“守られる”結果となった。こういう両極端な形での「絆」もあり得るのが人間界の不思議かつ面白いところ。
 これだけ“濃い”マンガを読まされると、薄っぺらな「絆」しか描けていない最近の『ワンピース』とか、つまんなくて読めなくなっちゃうのである。……ああ、このマンガ、ホントに『“裏”ワンピース』になってるんだなあ。

 マンガ、明日賀じゅん『ティム・バートン ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』。
 ミュージカルシーンを絵にするのはかなり難しかったと思うし、決して成功しているとも言えないのだが、実に誠実に映画をコミカライズしようとしている姿勢は好感が持てる。けれど、正直、映画の面白さには遠く及ばない。
 ティム・バートンの毒々しいイラストのまま、マンガに移し変えるのは日本の読者には拒絶反応があるだろうという判断での少女マンガ家さんの起用なのだろうけれど、それは結局バートンの“味”を殺すことになる。線は確かにキレイだけれど、マンガは映画と筋が同じだけの別モノなのだ。表紙のイラストは映画のポスターのものがそのまま使われていて本編の絵柄とは全然違うので、御注意。

2002年11月03日(日) 妻にはナイショ(^_^;)/映画『OUT』/『プリティフェイス』1巻(叶恭弘)ほか
2001年11月03日(土) 10000HIT!o(^▽^)o /映画『エボリューション』/『電脳なをさん4』(唐沢なをき)ほか
2000年11月03日(金) 文化の日スペシャル/映画『マン・オン・ザ・ムーン』ほか



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藤原敬之(ふじわら・けいし)