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■ アンテナ
酒豪M子が、間もなく日本へ帰国する。 今夜は彼女が働いているバーでの最後の日なんで 深夜ではあったけど、顔を出すことにした。
そこのバーでは、今晩【赤味噌会】という 日系の大御所たちが集まる会が開かれていて その最中に顔を出すと面倒くさいので あえて、会が終わった頃を見計らって立ち寄ったのだ・・・ が、 まだ居た(笑)
速攻で顔がバレて、御大M社長の横へ座らされる。
「どうかね、絵の方は!?」
そうっすね、今は潜伏期間て感じですか。
「大して浮上もしてないのに、潜伏してるのか?」
・・・。 キツイねぇ、相変わらず。
何でもM社長、ベトナムの作家の作品を1万ドルで買ったとかで 今日はいつになく絵の話を振ってくる。 内心、オイラの絵を先に買えよ!と思いつつも 適当に話を合わせる。 ただ、この人も社長というだけあって たまに、かなり確信を突いたことを言うから気が抜けない。 今夜もひとつ、目からウロコがポロッと落ちるような話が聞けた。 たぶん、本人からすれば別段気に留めるような 言葉ではなかったかもしれないが オイラの心はピン!と反応を示したわけだ。
巷には【心に残る言葉】なんて本が売られているが 確信犯的なキナ臭さがあって、どうも好きになれない。 心に残る言葉なんて、本人が気付いていないだけで 本当は、その辺にゴロゴロ転がっているような 他愛も無い一言だったりするのが本当だと思うからだ。
世の中で、人間だけが言葉を使ってコミュニケーションをとる。 同じ言葉、同じ単語を使っても 話す人によって、言葉の持つ意味と輝きが変わってくる。 そういう力を言葉に乗せれる人は凄いな、と思う。 ってことは、言葉なんて単なる伝達記号で それを心に伝えるってのは全く別のパワーなのかもしれない。
昔、ある女優が監督と対立した際 「俳優の演技で人は感動するのだ、脚本じゃない!」 というのを実証したそうだ。 女優は、ただ「1・2・3・4・・・・」と数字を数えるだけ それがやがて50を超え、100を超えるあたりから様相が変わってきた。 周りで見ていた人々が涙を流し始めたという。 あまりの女優の迫力と感情に、言葉は言葉ではなく 全く別のものとして機能したからに違いない。
それはなにも、言葉だけに限ったことじゃない。 物にだって、料理にだって「これは普通と違う!」と感じることがある。 作り手の感情やプライドがはっきりと主張してくるモノに出会うこと。 それは、感じる方もそれなりにアンテナを伸ばしてないと 分からないかもしれないが、そんなもの本なんて買わなくても その辺にゴロゴロ転がっているんだよ、と。 アンテナ磨いて、伸ばしてさえおけば いくらでも、好きなだけキャッチすることが出来るのだ。
改めて、そんなことを気付かされた夜だった。
2004年10月22日(金)
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