-A VAGRANT LIFE IN NEW YORK-
飯沼省



 早く起きた朝

珍しく、というか初めて日記を朝に書いてます。なぜかというと単に早く起きてしまったからで、早朝4時から起きてHome Depoという24時間営業のホーム・センターに行ってきた。

まだ太陽も出ていないのに店内は結構な客がいて、レジも列ができていた。一体こんな朝から何を買いに来てるんだ?まぁ俺もその一人だけど(笑)俺が買ったのは新作用の額縁のための金具。オーダーしてあった額縁が昨日出来上がってきたのでそれに付けるためだ。9月からのPeter Pan Bistroに展示する特大サイズの額縁なのだが、通常の金具だと重さに耐え切れないので手作業で取り付けることにした。

そのPeter Pan用の新作は、もうあと3〜4点描かなければいけないのだが、最近何だかスランプで進んでいない。夏バテだろうか?周りの友達はバーベキューだとかジャネット・ジャクソンのコンサートとか、乗馬とか、リゾート地で避暑だとか楽しそうにやっているのを見ると羨ましかったりするね。

tomolennon家では、俺が難しい顔して壁と睨めっこしてるんで暑さも倍増って感じです。う〜ん、ここはリフレッシュにニューヨークでも行きたいなぁ。何かを考えたりする時には音楽をかけたりするんだけど只今CDプレーヤーが故障中なんでお気に入りのルファスも聞けないし、ちょっと溜まってます。

今日はこれから街へ出て、友達のJUNOが経営するギャラリーへ行ってきます。今年になって移転してスペースが広くなったみたいなんで様子を伺ってこよう。

2001年08月01日(水)



 虫騒動

いや〜、昨日のトロントは凄かった!小さな冬虫みたいのが大量発生したのだ。家を出て自転車に乗ったところ、凄い数の虫の大群が襲ってきた。手で払いながら走ったがとても払いきれるものではなかった。
周りをみると皆手で払ったり防御したりで大騒動。バスに乗ってる人たちも皆格闘してた。家の近所だけかと思ったらダウンタウンは更に凄くて、まるで虫の隙間に空気がある感じ。

「この虫何て言うの?」と聞いても誰もしらない。「こんなの初めてだ。」と口を揃えて言う。ダウンタウンに到着するころには俺の胸ポケットには虫がぎっしりつまっていて卒倒しそうになった。髪の毛の中も虫が一杯で、払うと砂をかぶったあとのようにバラバラと落ちてくる・・・おぞましかった。

昨日の大気のせいもあるんだろう、低気圧が近づいてて湿度が異常に高かった。シカゴで大雨を降らせた低気圧がこっちまで来たみたい。ニュースでもこの虫を取り上げていて”Fair Fly"とか何とか言っていた。

そんな最悪の日だったが、新作に着手することにした。来月のPeter Pan用の作品で割りと小さめ。雨の夜のPeter Panを題材にした。紫のキャンソンペーパーに黒と茶で下地を塗った。今回は下絵を全く描かずにいきなり塗り始めたので自由に描けてる。
下絵を描くこともあるけど、最近はいきなり描く方がスラスラいく気がする。もちろん頭の中には完成のイメージが出来上がっているんだけど、予想のつかない色の変化などがあってイメージよりも良い物に仕上がる事も多い。

もう次作の構想も出来上がっているので2枚同時進行で描くつもり。こういうのは気分次第なので乗ってる時に描くにかぎる。

2001年08月03日(金)



 カリバナ

8月4日(SUN)は北米で最大のカリブ人祭り「カリバナ」が行なわれた。メインの会場となるLake Shore通りはウチの目の前ということもあって、朝9時からカリビアン・ミュージックが爆音で鳴らされて強制的に目覚めさせられた。

色取り取り、極彩色に塗られたトラックや車の上に伝統衣装を身に纏ったカリビアン達が歌い踊る。一年で彼らが主役になれる唯一の日なので、ほぼ1年掛かりで準備をしている。もちろん、アメリカや本国から参戦する人も多い。
ウチの前の通りは通行止めで、バスやストリートカーも混雑のため運行中止になったりする。ちょうど去年の今頃ここに引越したので一年前の喧騒が蘇る・・・。街でもカリブ人が道を塞ぎ、警察や地元住民とのトラブルも絶えない。ちなみにウチのマンションの入り口のガラスもこの祭りの最中に壊された。

そんなカリビアン一色のトロントを抜け出しアルゴンキン・パークへ行った。先週訪れたCamp Wenonahへ再び出向いた。そこで出会った3人の日本の子供達がどういう成長をみせているのか確かめる為だ。

朝7時、3人の子供達と付き添いの英語塾長Kさんと会った。9歳のユウタは3日前の誕生日を総勢250人の子供達とスタッフに祝ってもらい、忘れられない思い出になった様子。残る2人の女の子は顔に多少疲労の色をみせていた。年齢的にも10歳、11歳の女の子は思春期ということや、慣れない英語の環境のせいで精神的、肉体的にもキツかっただろう。
やはりホームシックにかかりスタッフを心配させたそうだ。彼らは通常2週間滞在のこのキャンプを一週間で離れ、これからトロント郊外の外国人ファミリーの家でホームステイが始まるのだ。

ついでに施設の中も案内してもらったのだが、これが豪華だった。まず食堂ロッジには常時15人のコックがおり、1日たりとも同じ食事は出さず、ベジタリアンや宗教にあわせて250人分の食料を調理する。さらに絞りたてのフルーツジュース6種類は24時間飲み放題!食事に関しての心配は何も無い。

トイレやシャワーは水洗。だが、トイレだけは節水のため2〜3人までは水を流さないで溜めておくように張り紙があった。公衆電話は無く、親とのコンタクトは手紙か、10台以上のコンピューターを使ってのE−Mailのみ。
年齢別に別れたバンガローには14〜5人が泊り、必ずスタッフが一人常駐する。このスタッフ達もCAMPに参加するために2年以上特別にトレーニングを受けたエキスパートばかりだという。

このCamp Wenonahの主催者は北米YMCAの理事長であるが、儲けを抜きにして個人的理想を追求した世界にも稀に見るCAMPだ。現在も世界中から子供が集まっているが、やはり裕福な階級の子供が多いという印象も受けた。実際にこの日本人の子供達は目が飛び出るくらいの高額を支払って参加している。キューバやメキシコ、ベトナムからの参加者も特別階級の子供達ばかり。

このキャンプに参加している子供達の何パーセントが大人になってから貧富の差を認識して、そこに疑問を見出すことが出来るのかわからないが、このキャンプの理念でもある「国境の無い世界」という意味では、この年齢の子供達にとって大きなキッカケとなるに違いないだろう。


2001年08月05日(日)



 熱波!

あつい暑い熱いあちい・・・・!!トロント猛暑です!昨日と今日が34℃で、明日は36℃の体感気温42℃らしいです。

日本の皆さんからすると「屁」でもない気温でしょうが、このトロントでは実に1937年以来の猛暑なのです!暑さに慣れていないトロントニアン&tomolennonは死にそうです。基本的にこちらでエアコンを持っている家庭は少なく、扇風機が主流なのですが、温風をただ循環させているだけで「って言うか、もっと熱くなってない?」と扇風機に突っ込みを入れてしまい、故障の原因ともなってます(笑)

そんなんで、冷房の入っている図書館は連日超満員&公営プールも深夜営業など何かがおかしくなってる気がする。儲かってるのはアイス売りのニイちゃんくらいかも。

そんな、やる気が失せる中でも来月の展覧会は迫ってくるので新作に着手しました。会場になるPeter Panに先日取材に行ってきたので、その店内のイメージを具体化したものになりそうです。俺の作品にはめずらしく草花が描かれるし、昼下がりの夏の憂鬱といった感じです。

暑いんで爽やかな色合いになるかもね、というより是非そうしたい(笑)

2001年08月08日(水)



 Gallery

久々の更新になります。いや、ただダラケてただけなんです。心配かけてごめんなさい。
さて、トロントの暑さも峠を過ぎて過ごし易い日々が続いてます。Brown Stoneでの展示もそろそろ引き揚げて9月4日からのPeter Panに向けて頑張ろうかと思ってます。

そんな昨今、自分の店を持つという事を考え始めています。もちろんギャラリースペースなんだけど、カフェも併設したいと思ってます。以前から漠然と考えてはいたんだけど、友人のJUNOがそうしているように誰かと共同経営という形が望ましい。ちょうどユキさんも同じような考えを持っているんで一緒に何か出来ればいいなと思っている。

そんな訳で、行動力しか取り得のない俺は早速下調べに出かけた。カナダは州ごとに建築基準規格が違うのだが、オンタリオ州は特に厳しいらしい。例えば、中古の店舗を買い取った場合、もともとカフェだった場所ならカフェをオープンするのは簡単なのだが、床屋だった場所にカフェを開くとしたら政府からの許可を取るのは大変だとか、またギャラリーとカフェのスペース配分も何%以上とか決まっているらしいし、通路は壁から何センチとか障害者用のスロープを付けるとかね。

他にもドア・ノブは右か左か、端から何センチ離すとかも決まっているらしい。あとリカー・ライセンスの所得も至難のワザだという。結局、内装をするなら業者に頼まなければ不可能で、自分で決められるのは壁などの素材くらいだろうか。

もちろんロケーションによってレント(家賃)も雲での差だ。狙うならQUEEN STと決めているのだが月に$4、000を下る物件は皆無だろう。
実は20歳の時にコーヒー・ショップで働いていた時、新しいカフェのプロデュースの話があった。外観の設計までしたところで御破算になったのだが、その時から漠然と「自分の店」に対する夢を持ってきた。この国では日本より簡単にオーナーになることは出来るが、失敗しないためにもう少し煮詰めていきたいと思う。

2001年08月16日(木)



 言葉

この頃トロントは曇りや雨のはっきりしない天気が続いている。でもこれが結構好きだったりする。今日の気温は24℃で最高です。

何だか最近接する人はフランス語を話す人が多いので、ちょっとフランス語を勉強しようかな?という気になってます。英語も完璧じゃないのに手を伸ばすのもどうかと思うんだけど、早いうちに越したことは無いからね。

フランス語の言葉の発する「浮遊感」みたいのが心地よかったりして、ボソボソしてるとも言えるけど。単語自体は英語の発音に近い言葉もあるので取っ付きやすそうだ。ただ、英語の場合は教本で「ハロー」と書かれていれば”Hello"と発音できるのだが、フランス語をカタカナで「ボンジュール」と書かれても実際の発音とはニュアンスが違ってくるので、これは実際に聞いて耳で覚えるしか無さそうだ。

友達でフランス語もイタリア語もスペイン語も話す人がいて、彼女いわく後者の2つは大阪弁ができればアクセントは完璧に理解できるそうだ。標準語とは違って大阪弁独特の起伏のあるアクセントがそれに近いという。それにNYの街などでスペイン語やイタリア語の聞こえてくる頻度が高いそうで、第三言語ならフランス語よりもこっちのほうが使えるらしい。

確かに使えるのは、後者2つだと思うのだが、言葉は興味自体がないと覚える気が失せるので俺にとってはフランス語だろう。
Rufus Wainwrightというモントリオール出身のシンガーにハマっていて、彼はカナダ人らしく英語もフランス語も操る。アルバムの中では主に英詩だが、映画のサントラではフランス語詩の新曲を披露したりしてて、これがまた違和感がない。古くはBEATLESのポールが”ミッシェル”という曲でフランス語を歌ってたっけ。その辺の影響もある。

まずはフランス系の友達を見つけることから始めようか。

2001年08月19日(日)



 嬉しい悲鳴って?

久々にCasa Cafeに顔を出したら正面エントランスが改装されてパティオになってて驚いた。メニューもロシア料理が増えてて、ビーフ・ストロガノフとロール・キャベツを試食させてくれた。メッチャ美味くてビビッたね。特に本物のビーフ・ストロガノフって色白いんだ!と思った(笑)

当初”Russian Cuisine"(ロシア料理店)と看板にも出す予定だったらしいが、客の反応が寒いんで止めたそうだ。やっぱり少し人種問題も絡んでくるらしい。店内で食ってると、以前俺の作品を見ていたお客さんがいて「今度はいつ、どこでやるんだい?」と話し掛けてきた。レイチェル曰く、未だに俺の作品について聞いてくるお客さんがいるそうで、来年早々にでももう一回やるべきだという結論になった。

その後Brown Stoneにも顔を出して、新作展の様子を伺って来た。9月4日から次の展覧会が始まるので来週にも撤去したいと言うと、「客の反応が良いので、もう1ヶ月延長してくれないか?」とPeterが申し出てきた。
5作飾っている内の一点は、次の店のオーナーから「必ず展示して欲しい」と言われている作品なので、その作品だけは撤去することにして、その代わりもう一枚新作を追加して9月の末まで延長することにした。

そうなると次の展覧会の為に、更に5枚新作を描かなければいけなくなった!あと2週間弱で5枚とは、かなりの難題だ。どうしよう・・・決めたのは俺なんで描くしかないんだけど。
HPの更新もままならない現状なのに出来るのだろうか?他にも山ズミの問題もあるけど一旦停止して描きまくる他ないね。こういうのが嬉しい悲鳴なのか?


2001年08月21日(火)
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