-A VAGRANT LIFE IN NEW YORK-
飯沼省



 陽気なイタリアン

午後1時、Peppino'sへ搬入の為指定された時間にレストランへ向かった。どうやらここはランチ営業はしないらしく、キッチンの仕込みが始まる2時前に展示を済ませたいようだった。

オーナーのジョセフ一人が待っていて、「ようやく仕上がったか。止めたんじゃないかと思って心配してたんだ、息子よ」と肩を叩いてくれた。そうだ、このオッサンは初対面でも「息子よ」と言ってきたのを思い出した。

まぁ、気にせず2人で展示場所をあれこれ検討してるうちにジョセフの故郷であるイタリアの話しになった。彼には出来の悪い息子がいるらしく、イタリアを離れる前に家を出て行ったきり20年も会っていないと言った。

どうやら、その息子が俺に似ているらしいのだ。俺もどんな人だったか気になったので質問したり、逆に質問されたりしてるうちに2時になり、キッチンのスタッフが集まり出した。基本的にイタリア系のスタッフが多いらしく、陽気に話しに紛れ込んでくる。それが一人増え、二人増え、最後にはその日出勤のスタッフ全員がひとつのテーブルを囲んでいた。

ジョセフが俺を紹介すると、スタッフの一人が以前どこかで俺の絵を見たと言い出し、何故か日本の有名画家という設定になってしまい焦って取り消そうとしたが、これがイタリア気質か一向に構う気配なし。結局全員で記念撮影して、後日その写真にサインすることになった!いいのかお前ら!?

撮影が終わったあと、ジョセフがワインを持ち出し、スタッフがチーズを運んできて乾杯!何なんだ、これは?物怖じするとみっともないんで、俺も負けじと飲んでしまい、案の定酔っ払った。

相変わらず「息子」と呼びかけるジョセフにも親近感が生まれ、お互いの家族の話から、日本とイタリアの話を延々と話し、気づいたら3時過ぎてて慌てて残りの絵を展示した。帰る時も店員総出で見送ってくれたし、なんだか故郷を後にするような妙な気分だった。

ちなみに、ここには96年、ビートルズのリンゴ・スターも来てて、俺の写真をリンゴの隣に飾ってくれと念を押した(笑)

帰る道すがら、俺はパスタが大好物だし、きっとイタリアには何か縁があるに違いないと、大いなる錯覚をしながら、いつかイタリアに行ける日を夢見て爆睡したのだった。

2002年04月26日(金)
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