無責任賛歌
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|藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2005年01月14日(金) エスパーにはなれません/マンガ『西の善き魔女』1、2巻(荻原規子・桃川春日子)ほか

 昨日の日記を読み返してみて、自分の女房に対してあまりに冷淡な書き方をしているかなあと思ったので、ちょっとだけ補足説明しておく。
 情緒不安定に陥っているしげの身を心配しないで、「オレの身が持たねえ」とか「車のローンはオレが払うのか」とか、自分のことばかり気にしているように書いているが、それはしげの身を心配したところでキリがないからである。
 しげの身を本気で案じていたら、私は仕事に出かけることもできない。しげのホンネは私とずっと一緒にいたいのである。あるいは自分が不安に陥った時には、どんなに遠く離れていても“それと察知して”飛んで帰ってきてほしいのである。あるいは私の分身がもう一人いて、一緒にいてほしいのだ。困ったことに、妄想としか言えないこれらの願望を、しげは半分本気で期待しているのだ。
 もちろんエスパーならぬ私にそんなことはできようはずもないので、私がどんなに優しく接しようと、しげにとっては「つれない態度」としか受け取られないのである。つれないどころか「甘やかし過ぎてんじゃないか」って回りからは見られてるんだけれどもねえ。しげのアタマがイカレた状態のときに喋ったことは、あとになって落ちついたときに聞き糾してみると、「オレそんなこと言ったっけ?」と本人が忘れちゃってることも多いので、ほったらかしとくのが吉なのである。


 夜中に何度かトイレに起きはしたが、ここ1、2週間のうちでは一番ゆっくりと眠れた。
 体調が優れずに〆切過ぎても片付いてなかった原稿があったんだけれども、半日かけて仕上げる。ちょうど印刷所の人が原稿を取りに来たと連絡の入った3秒前に完成。これまでにもいろんな綱渡りを経験してきはしたが、今回がマジで一番ヤバかった(つか、第1次シメキリと第2次シメキリはぶっちこいてるんで、印刷所さんの表情はかなり苦しげではあったのだが)。
 以前ほどに指は動かなくなっているので、400字詰めで10枚ちょっとの原稿を打つだけでも5時間くらいはかかってしまう。それでも手を抜けないのは、本職のほうでのこの仕事、意外なほどに人の眼に止まって読んでもらっているからなのだ。私はその都度好き勝手なことを書いてるだけなのだが、あとになって聞いてみると、私の書いた原稿を読んだ人が陰で私の便宜を図ってくれたことが結構あるのである。カラダ弱くてしょっちゅう仕事休んでる私が、今の職を曲がりなりにも続けてられているのは、もしかしたら私の文章のおかげもあるのかもしれない。そう考えると、つい一生懸命書いてしまうのだが、気を入れて書いた文章ほど自分ではつまらなく思えてしまうのは、いったいどういうことなんでしょうかねえ。


 今日はしげの通院の日であったのだが、仕事を辞める話を先生に相談してみたか聞いてみた。
 「相談じゃなくて報告しただけだけど」
 「で、返事は?」
 「別に?」
 「反応なし?」
 「ないよ。だって『仕事辞めるな』とか言えないじゃん」
 別にそういう返事を期待したわけではないのだけれど、本職の先生が患者の変化に対してどう対応するかは気になるじゃないの。先日しげが自殺を考えた時も「引いてた」そうだし、話を聞く限りではあまり「先生」らしい態度でいるようには感じられないのである。「薬は飲み過ぎないように」くらいの注意はちゃんとしてくれてるとは思うけれども。

 故障したDVDレコーダーの修理を依頼に「ヤマダ電器」へ。
 窓口で「いらっしゃいませ」とお辞儀する店員さんを見たら、昔馴染みの女の子だった。その昔、その子と、ある男の子との仲をちょっと取り持ってあげたようなこともあったので、その後どうしているかと時々思い出して気になってはいたのであるが、意外と身近にいたものである。名札を見ると名字は変わっていない。あれから7〜8年は経っているので、まだ彼氏と付き合っているのか別れたのか、微妙な年月であるが、いくら気になるとは言ってもいきなり「今はどうしてる?」とは聞けない。まあ聞かなくてもいいことではあるが。明日出張修理をしてもらうように依頼だけして帰るが、彼女がついタメ口になりそうなのが気になった。いくら旧知の間柄とは言っても、今は店員さんと客なんだからさあ(^_^;)。

 晩飯は鶏肉の雑炊。「家事ちゃんとやるから」の約束通り、洗濯もしていたようである。しげの約束はいつも最初の数日は守られるのだが、これまではたいてい三日坊主に終わっていた。さてこれがいつまで続くものやら。
 DVDデッキがこわれてるので、なんかテレビを見る気が起こらず、夜はマンガなど読んで過ごす。


 『特撮エース』��007。
 巻頭は新連載、矢吹豪のマンガ、『Sh15uya(シブヤフィフティーン)』。マンガのほうはヘタではないがよくあるオタ系の絵でもう一つ魅力がない。ただ、トーンの使用を抑え気味にして黒と白のコントラストをつけようとしているのはいい感じだ。意欲は伝わってくるので、今後化けてくれるといいかな。ドラマの方の特集記事を見ると、こちらもなかなか面白そうなんだけれど(女の子はそう好みではないが)、これ、福岡じゃ放送してないんだよね。ちょっと待てば「テレ朝チャンネル」に流れるだろうとは思うけれど、特撮のイチオシ新番組が(『響鬼』は置いとくとして)、全国放送じゃないってどういうこっちゃねん。特撮・アニメ番組に関しては今は「冬」とまではいかないまでも「秋」な時代なんだなあと思うのである。
 『とりが見た!』で、とり・みきさんが『ゴジラFW』について「10人が見て、5人が10点で残り半分が0点つける映画」と評していたのは言い得て妙。「個人的には『こういうふうにだけはしないでくれ』という要素だけで作られている作品」と批判しつつも、「力及ばず6点くらいで終わっている映画より見れちゃう部分がある。真逆のベクトルながら8点のパワーはある」と評価されている。
 実際、私もあれの評価には苦しんでるのだ。バカ映画が好きな人や、「ミニラ」が許せる人(^o^)、映画としての完成度とかそんなことはどうでもよくて「怪獣がいっぱい出てくるイベント」を楽しめる人なら、あれで充分楽しめるとは思う。私もそういう部分を楽しまなかったわけではないのだが、逆を言えば「いい大人がマジメに見ておもしろがれるもんじゃねえ」というのも事実なんである。ツッコミ入れ出したら全編入れまくれるから、たとえ怪獣映画嫌いのしげでも、連れていっていれば多分笑って楽しんでくれたとは思う。
 けれどねえ、なんかねえ、ゴジラを笑われる様子を見るのは私にはもうツライのよ。それだったらまだ思いっきり「なにこれ?」と貶してもらったほうが、「いや、これにはこれでいいところが」と弁護のしようもあるのだけれど。ああ、でもそれもあのバカ監督を擁護する形になっちゃうんだよなあ。全くどうすりゃいいんだか。


 マンガ、荻原規子原作、桃川春日子作画『西の善き魔女』1、2巻。
 一応、児童文学の研究を専門にしていた以上は荻原規子の小説もひと通り読んどかなきゃならないところなんだが、実はまだどれも未読。和製ファンタジーって、なんかとっつきにくくって(言い訳)。
 コミック版が出てたのに先日やっと気付いたので読んでみたのだけれど、ファンタジーはファンタジーだけれども少女マンガの要素がかなり強い。

 グラール王国の辺境、セラフィールドに住む少女フィリエルは、自分はごく平凡な農家の娘だと思っていた。母を幼い頃に亡くした彼女は、偏屈な天文学者の父、ディー博士とも別れて暮しており、彼の弟子の少年ルーンだけが唯一の友達だった。ある時、父から母の形見の首飾りを渡されたフィリエルは、ルアルゴー伯爵家のパーティにその首飾りをつけて参加する。しかしそれが彼女を大きな運命の渦に巻き込むことになるとは、そのときの彼女は知る由もなかった。フィリエルの母は、かつて異端の研究にいそしんだディー博士と恋に落ち、自らの身分を捨て追放された王女エディリーンだったのだ……。

 過去を知らぬ、運命の血を引く少女とそれを取り巻く人々の三角関係などなど、登場人物がカタカナ名前であることを気にせずに物語の要素だけを見ていけば、なんだか昼メロか往年の大映ドラマを見ているようである。もちろんこれはこのマンガを貶しているわけではなくて、充分面白く、ドラマチックにできあがっているということなのであるが、普通のファンタジーを期待して読むと、何となくカタスカシを味わうことにはなる。
 いやまあねえ、ファンタジーだって恋物語が出てくるものは多いけど、もうちょっと世界そのものの運命がキャラクターの一人一人にのしかかってくるものだからねえ。ある異世界を構築するってことは、そこに住む人々の文化、習俗、思想まで、細部に渡って作りあげなきゃならないんだけれど、一人一人のキャラクターの妙なストイックさに、どこか日本人的な好みが混じりこんでいるように見えるのである。だからこその「和製」ファンタジーなのだろうけれど。
 いや、普通の読者はもう、それがファンタジーかどうかってこととか気にせずに読んでるのか。「おもしろけりゃそれでいい」ってことなのかも知れないけれど、最近はどのマンガを見ても「ある一つの形式で語られるからこその面白さ」ってものはどんどんないがしろにされてるよな、実際。

2003年01月14日(火) ある「B級」監督の死/『風雲児たち ワイド版』9巻(みなもと太郎)/『復活! 大人まんが』(夏目房之介・呉智英編)ほか
2002年01月14日(月) 原作と映画の間/映画『走れメロス』/『朱色の研究 夕陽丘殺人事件』(有栖川有栖・麻々原絵里依)ほか
2001年01月14日(日) 雪の断章/アニメ『ポール・グリモー短編集〜ターニングテーブル〜』



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