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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年11月14日(金) --

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『バカの壁』

☆書き言葉の敗北?

半年も前の事になります。 学生時代から時々エッセイ等を愛読している先生の 新刊が書店に出ていたので、何気なく手に取りました。 ふーん、新潮も新書を出す事にしたのか。 家にかえってぺらぺらと見たら、御本人の文体ではなくて、 話し言葉を編集者が文章に置き換えたものでした。 雑誌のインタヴューや講演内容の書き起こしのような感じです。 なんだかいつもと勝手が違います。 日頃文章を書き慣れている著者(?)からみても、 喋った内容が他人の手によって文章になっているのは 不思議な感覚だったようで、まえがきで「一種の実験」と仰っています。

その「実験」は誰もの予想を超える大成功を納めました。 半年前私が首を傾げたお手軽な新書は、発売後半年で今だに 書店のトップセールスを続けています。 その本こそ今年最大のベストセラー『バカの壁』。 驚きましたね。 かつての東大解剖学教室の主、ヒット作『唯脳論』の著者、 読み易い評論や楽しい随筆で人気の養老孟司先生御自身も、 このブームは予想外だったのではないでしょうか。 あえて崩した話し言葉にしたとたん爆発的に本が売れたというのは、 つまりこれまでは内容が面白くても文章が難しくて読めなかったという事? あるいは「著作」というより話の「ネタ本」という感じが受けたのでしょうか。

御自分自身の文章より語り下しのほうが売れてしまった養老先生、 やはり先日新聞インタヴューに書き言葉について語っていました。 『新聞の文章などは、今の私達が樋口一葉を読むように難しく感じるのかも』 今や教科書に漱石が載らなくなるくらいですものね。 私達はたまたま家族や友人等周囲に本好きがひしめいているので 普段はそれほど感じませんが、そうか、わざわざ固い書き言葉を読む事に 喜びを覚えるというのは今どきかなり変な趣味なのかもしれません。

以前シィアルが 『新書ブームにもの申す』として書いた内容が やはりこの新書でも感じられます。

『どれも「素材」がいいから、興味深いし、面白く読める。 でも、「本」としては、作りが荒い、雑な印象を受ける(シィアル)』

しかしこれだけ「雑」なほうが売れてしまうと、 本来の「本」のほうが特殊な嗜好品になる日も近い? (ナルシア)


『バカの壁』 著者:養老孟司 / 出版社:新潮新書

2001年11月14日(水) 『最新ニュースが一気にわかる本』
2000年11月14日(火) 『魔女の1ダース』

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