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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年11月13日(木) --

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『風にのってきたメアリー・ポピンズ』

メアリー・ポピンズのシリーズ第一作。

黒いコウモリ傘をさして、東風にのってやってくる 背の高い、家庭教師のお守りさん。 若すぎず、かといって年齢不詳、 黒い髪、青い目、やせてキリッとしたその姿は、 「ちょっと、木のオランダ人形みたいね」とジェイン。

その登場のしかたは、昨日紹介した『フレッドウォード氏のアヒル』に 似ていなくもなくて、またシンクロしているようだ。

主人公は、桜町通りに住むバンクス家の子どもたち、 姉のジェインと弟のマイケル、双子の赤ん坊に、 彼らをつかさどるメアリー・ポピンズ。 メアリーと一緒なら、何をしていても冒険が待ち受けている。 たとえ子ども部屋のなかにいても。

口調はかなり手きびしいけれど、 決して甘やかしもしないけれど、 子どもたちを磁石のように惹き付ける。 わかっているのかいないのか、それすらもわからない同志。 魔力と魅力の境い目が見えなくなってしまうほど 不可解なあの女性、それがメアリー・ポピンズ。

ショー・ウィンドウに自分の姿を映して見るのが、 街を歩く第一の理由にすらなる、うぬぼれの強さ。 たとえば、ガイ・フォークスが一週おきの日曜の晩ごはんに 何を食べたかまで知っているような、 とんでもないほどすばらしい知り合いがたくさんいて、 次の瞬間にはなにごともなかったかのように切り替える。 今私たちの隣にいても、その眼の奥は、 空の星と踊っているのかもしれなくて。

メアリーがお休みの日に、うきうきと街に出て、 貧しいボーイフレンドとデートする場面には ああ、メアリーも普通の女性なんだ、と思ったりするけれど。 帰ってきて、子どもたちに行き先をたずねられると、 「おとぎの国。」と答え、質問責めにされるや、 「知らないんですか?だれだって、じぶんだけの おとぎの国があるんですよ!」とあわれむように言うのだ。

大人になると、プチご褒美を自分にあげて、 ちょっとした達成感を日々味わってゆくのが健康上良いという。 それはたぶん、私たちがもう、 本当に必要なときにだけ、メアリーがくれる 甘さひかえめの愛情を、子どもたちがするように、 せいいっぱい大事に受け取ることができないから。

気持ちがしずんだときは、メアリーのおまじないを唱えてみる。(マーズ)

「しんぱいをしんぱいしてたら、しんぱいになっていいでしょ!」 (/引用)


『風にのってきたメアリー・ポピンズ』 著者:P・L・トラヴァース / 絵:メアリー・シェパード / 訳:林容吉 / 出版社:岩波少年文庫2000(新版)

2001年11月13日(火) 『イギリスのかわいいアンティークと雑貨たち』

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