ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雲の向こうの遠雷が呟きさえも掻き消すから 5
 一度、眼を閉じて、ギンはざわめくものを落ち着かせる。そしてゆっくりと細い眼を開け、藍染を見た。
 藍染は笑っていた。
 ギンの隣で東仙が、じっと佇んでいる。藍染が目を向けるとわずかに顔を上げ、小さく頷いて先を促した。藍染が苦笑する。
「四楓院家の使用人に育てられていた朽木ルキア。彼女が浦原の手によって行方不明になっており、その目的はおそらく彼女の行方を完全に眩ませること。これらを繋げて考えると、思い浮かぶことはただ一つ」
 藍染は言葉を味わうように、口を閉じたまま酷くゆっくりと笑みを浮かべる。そして笑みの形のまま口を開く。
「朽木ルキアが崩玉を保持している」
 爽やかな風が三人の間を吹き抜けた。その風は酔いそうな甘い香りを押し流し、ざわざわと葉擦れの音を微かに立てて通り過ぎていく。虫の羽音が掻き消され、そしてまた聞こえてきた。
「以前、話したろう? 浦原の研究の一つ、魂魄埋没法によって崩玉は隠されているだろうと。あんな危険なものをあの男が疎かにしておくはずがないからね。あの方法で彼女の中に隠しているはずだ」
 ギンは表情を崩さないまま、薄い笑みを崩さないまま、藍染の話を聞いていた。虫の羽音も葉擦れの音もどこか遠く感じる。降りそそぐ陽の光が一瞬、雲に隠れたのかふっと弱くなり、再び世界を照らす。ギンのすぐ横で揺れた葉からこぼれ落ちた水滴が光った。その光が目に入り、ギンはふと乱菊を思い出した。遠い光景の中にいる乱菊はギンに振り返り笑っている。ギンは眼を閉じた。あまりに眩しくて、眼を閉じてギンは乱菊に詫びる。
 これから始まることを、決して許してはもらえないだろうそのことをギンは詫びる。
 藍染は囁くように言う。
「……ようやく、ようやくそこまで辿り着いたよ。確証ではないが、かなり高い確率で彼女の中に崩玉が隠されているはずだ。どんなものなのかは、私も知らないがね」
 東仙は頷いてそれに返事をする。ギンもまた眼を薄く開け、頷いた。
 再び、梔子の香りが漂ってくる。




目次

07月12日(水)
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