ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雲の向こうの遠雷が呟きさえも掻き消すから 6-1
朽木ルキアが行方不明になっていることは、先日行われた緊急の隊首会で報告され、各隊の上位席官まで知ることとなった。技術局で現世の監視を行っている課には空座町を重点的に監視するよう通達がなされ、空座町付近を担当している隊には駐在している死神に一日に二回、情報を送るようにそれぞれ連絡された。
そうして送られてきた夕刻の報告書を確認し、乱菊は思わず溜息をつく。日番谷が顔を上げ、物言いたげな表情をした。乱菊は苦笑して首を傾げてみせる。
「いえ、単に面倒なことになってきたなあって」
日番谷は不機嫌そうに頷く。
「人数集めてさっさと探しに行きゃ済む話なんだよな。ったく、どいつもこいつも面倒くせぇ」
「色々としがらみがあるんですよ。人手が有り余っているわけでもないですしね」
報告書をまとめてファイルに放り込み、乱菊は苦笑いでそう言う。実際、現世に派遣できるレベルの人員は余っておらず、世界の安定を崩しかねない隊長格の死神ならともかく、ただの平である死神の捜索に割く労力を惜しむのは当然だった。見つかれば罪になるが、見つからなければそのまま放置されることになるだろう。そういうことを乱菊はぽつりぽつりと日番谷に話す。日番谷は大きく息をつき、面倒だよな、と吐き捨てた。
「捜すならきっちり捜す、放置するなら最初から放置する。その方がすっきりするじゃねえか。浮竹だってその方が気が楽なんじゃねえの? 放置してくれた方が勝手に捜索できるだろ。浮竹は見つけ出したいだろうしな」
「そうですねえ。なんか確かに、中途半端ですよね」
考え込むように二人とも黙り込むと、西日の射し込む執務室はしんと静まりかえった。廊下や、窓下のざわめきが静寂の底を這うようにして耳に届く。乱菊は窓に目をやった。赤く染まった空が切り取られて絵のようにそこにあった。どことなく不確かな感覚に乱菊は眉を寄せる。普段なら暖かく感じる空の赤が、何かを掻き立てているような気がした。
そのとき、窓枠の中にひらひらと舞う黒い影が見えた。
「あら、隊長。地獄蝶ですよ。何でしょうか」
乱菊はそう言って窓に歩み寄ると開かれていた窓から手を伸ばした。地獄蝶が指先に留まる。その現実味のない軽さに乱菊は無意識に微笑んだ。地獄蝶はひらりひらりとその黒い羽を揺らしながら伝言を乱菊に示した。
乱菊は一瞬だけ息を止め、大きく吐き出した。
「…………隊長」
硬い声で乱菊は日番谷を呼んだ。その声の硬さに日番谷は顔を引き締める。
「何だ」
逆光の中、乱菊は厳しい顔を日番谷に向けた。
「二つ、あります。一つは、つい先程、現世の空座町で大量の虚が出現し、続けて大虚が出現しました。それは正体不明の死神に退治されたそうです」
正体不明。日番谷は低い声で繰り返した。乱菊は頷く。
「続けろ」
「もう一つは……その死神のそばで、行方不明だった朽木ルキアが義骸に入った状態で発見されました。これの対応について中央四十六室がこれから会議を始めるそうです。よって、現世駐在の死神には先日の命令を取り消すよう伝えろ、とのことです」
日番谷が眉間の皺を深めた。
乱菊の指の先から黒い蝶が音もなく離れていく。乱菊はひらりひらりと飛んでいく蝶を見送って赤い空を見た。夕暮れの空に黒い蝶がくっきりと切り取られた闇の色で舞っている。乱菊は眉をひそめ、そして日番谷を振り返った。
「……朽木ルキアからは義骸要請はなかったはずだったな」
日番谷が低い声で言う。乱菊は無言で頷いた。
「まず、その正体不明の死神ってのは誰なのか。そして、朽木ルキアが発見された状況がどうなのか……まあ」
自分で確認するように呟いて、そこで日番谷は口を引き結んで黙り、溜息をついた。
「俺らが首を突っ込める問題でもねえけどな」
「そうですね」
窓枠に軽く腰掛けるようにして寄りかかり、乱菊が口元を歪める。
「あたし達が関わることでもないんでしょうけど、でも……気になりますね」
「そうなんだよな」
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07月13日(木)
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