ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 11
「市丸君にも聞いてみたんだけどね。乱ちゃんのこと、どう思っているのかって」
 乱菊は意識的に口角を上げた。
「級長さんは乱暴者で怖い、なんて言ったんじゃない?」
「うん……ふふ、冗談よ。一言、どうしてそこに級長さんが出てくるん、って言ったわ。それで、もう私、それ以上は何も聞けなかった……聞いちゃいけなかったのね。きっと」
 何か言おうとして口を開き、けれど乱菊は何も言えずに口を閉じた。そして困ったように眉を寄せ、
「何なのかしらね、全く」
とだけ言って、首を傾げた。リンドウも同じように眉を寄せて苦く笑う。
「私、誰にも何も言わないわ。市丸君がそれで安心してくれるといいのだけれど。あーあ、でもこういうことを胸の中に秘めておくと、恋心までそのまま保存されそうで嫌よね。こんな時は、さっさと新しい恋をするに限るのに。卒業までには、上手に忘れていたいなあ」
「……とりあえず明日、あんみつでも食べようよ。おごるから」
 乱菊が提案すると、リンドウはやっと明るく笑って振り返る。
「そうね。慰めてもらおうかしら」
「食べて遊んで、そうしていたらそのうちに新しい恋とやらも巡ってくるんじゃないかしら……知らないけど」
「乱ちゃん、自分は恋なんてどうでもいいって言ったんだから、適当なこと言っちゃだめよ」
「だって知らないんだもの。仕方ないじゃない」
 二人は顔を見合わせて、そして笑い出した。


 それ以来、乱菊はリンドウからその恋心の行方を聞かなかった。ギンもリンドウも普段通りで、乱菊は何も言わずにそれを見ていた。一歩離れてただ見ていた。
 やがて周囲も乱菊もギンも、試験や卒業後の進路決定に忙しくなる。穏やかでどこか隔絶した学院という空間にも容赦なく時は流れた。




目次

06月14日(水)
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