ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 12
卒業式の日、桜は五分咲きに咲いていた。
長い退屈な式が終わり、卒業生はそれぞれ集団になって名残惜しげに立ち話をしている。これから卒業生は寮を出て、それぞれが所属することになる部署へと移ることになっていた。卒業してすぐに入隊が決まっている人間は殆どなく、多くは下位死神として勤務するか、鬼道衆、隠密機動に配属される。分析力や開発能力が認められた場合には技術開発局へ推薦されるが、それは希だった。
この年の卒業生の成績は殆どが平凡であったが、ただ二人、ギンと乱菊は抜きんでた成績を修めており、卒業前から入隊が決まっていた。特にギンは下位とはいえ席官の地位が与えられ、数十年に一人の逸材と、加えて裏では数十年に一度の問題児と言われていた。
風が広場に入り込み、桜の花びらを舞い散らせた。
山吹色の髪が揺れて乱菊は手で押さえる。腰の少し上まで伸びた髪は柔らかく風に踊り、春の陽射しを反射した。
「うー。結えばよかったかなあ」
乱菊が舞い上がる髪を手で押さえて言うと、スミレがおかしそうに笑った。
「だから朝、結ってあげるって言ったのに。昨日、お祝いにって、志波様だっけ? 髪飾りを贈って下さったんでしょう?」
「だって時間がなかったんだもの」
「あたしと同じように短くしたら楽だよ、乱菊」
ツワブキが相変わらずの短髪を手でくしゃくしゃとしてみせると、リンドウが自分の長い黒髪を手で掬い上げるようにして言った。黒髪の間を桜色に染められた爪が滑る。
「もったいないわよ。頑張って伸ばしたんだから。風くらい気にしていたら髪なんて伸ばせないのよ」
「あんたが言うと説得力あるわね」
風に遊ばれて絡まった髪を指で梳きながら、乱菊が笑った。隣でスミレも手伝っている。スミレは相変わらずのおさげをしていたが、結っている紐に小さな鈴をつけていた。
「……卒業だねえ」
ふいに、ツワブキが呟いた。リンドウが見上げて、手を伸ばして綿毛のような短髪を撫でる。
「そうよ。寂しくなったの?」
「そんなんじゃないよ。みんな確かにばらばらに配属されてるけど、でもお別れするわけじゃないんだし」
そう言ってツワブキは笑ったが、すぐに眉を下げて俯いた。リンドウが抱きつくようにして、笑って抱え込む。
「そうでしょ、お別れじゃないんだから。そんな寂しがらないで」
スミレもリンドウの反対側からツワブキに抱きついた。
「そうよ。休みの日にはお茶しましょうよ」
乱菊は抱きつく代わりに、手を伸ばしてツワブキの頭を撫でた。ツワブキはようやく笑い、照れくさそうに顔を赤くして頷く。
「そうだね、お茶してよね。あたしだけちょっと落ちこぼれだから、入隊するの遅くなりそうだし」
「大丈夫よ。乱ちゃんと市丸君以外はみんな似たり寄ったりの成績でしょ」
「あたしもギンには全然追いつかないわよ」
乱菊がそう言って笑うと、スミレが一人ふて腐れたように言った。
「私なんて、一人だけ鬼道衆なんだから、そんなこと言わないの」
「あ、そうだったよ」
ツワブキがきょとんとして言い、四人で顔を見合わせて笑った。
そのとき、人影の向こうに銀髪が見えた。
乱菊は遠い目をしてそれを何も言わずに一瞬だけ眺めていた。すぐにリンドウが気づき、ギンに向かって大きく手を振る。続いてツワブキが手を振り、スミレは小首を傾げて微笑んだ。
ギンもまたひらひらと右手を顔の横で振って、こちらに向かってきた。
「卒業、おめでとさん。別嬪さん方、今日は特に綺麗にしてはるなあ」
「市丸もおめでと。学生生活最後の説教は終わった?」
ツワブキがにやりと目線がほぼ同じギンに笑いかけた。ギンが困ったように笑う。
「長かったわあ。どうしたらあない話すことあるんやろ。ボクもう卒業するんになあ。できへんのか思うたわ」
リンドウが零れるように笑った。乱菊もつい普通に笑う。ギンは目の端にそれを捉えて、そして相好を崩す。
「まあええわ。卒業できるみたいやしな」
「ここまできて無理って言われたら、市丸君も困っちゃうわよね」
スミレが小さく笑ってギンを見上げた。ギンはスミレに振り返り、へらりと笑みを浮かべる。
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06月15日(木)
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