ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 10
 春の夜、リンドウ達と話していたことを乱菊は思い出した。乱菊も、おそらくはギンも、恋に落ちるための穴は塞がれているようだった。もう二人はそれぞれ、恋愛ではない別の物でその穴を埋めているのだろう。それは恋に近いかもしれないし、もしかするとそのものかもしれなかった。けれど乱菊にはどうしてもそれが恋とは思えない。血も憤りも汚れも幸福も喜びも、全てをギンと分かち合おうと決めた幼い頃からの気持ちに変化はなかったが、それもあの少女の持っていた狂気のような激情とは違う気がする。そしてギンもそう感じているだろうと、確信に近く乱菊は思う。
 ふと乱菊は、微笑む口元を覆うリンドウの爪を思い出した。爪を染めるのは密やかな紅色。その手でリンドウは口元を隠して笑う。乱菊は、急に今の自分の状況を申し訳なく感じた。
「ギン、そろそろ行かないと見つかるよ」
 その言葉に額を離し、ギンは憮然として当然のように乱菊の手を握った。
「何言うとるん。乱菊が眠るまでボクここにおるわ」
 乱菊は困ったように眉を寄せ、けれど笑みが自然と浮かぶ。
「久しぶりだね」
「……そうやねえ」
 ギンは空いている手で、乱菊の顔にかかっていた髪をどかし、そのままゆっくりと髪を梳くように撫でた。
「疲れてるやろ。よう眠り。乱菊が眠るまでここおるから」
「……あの子には何もしちゃだめよ」
「しぃひんよ」
「ギン」
「何やろ」
「ありがとう。おやすみ」
 乱菊の眼がすぅと細められた。ギンは背を屈めて、額に自分の額をつける。
「……おやすみ。乱菊」
 そっと額を離すと、乱菊の息はすでに寝息にかわっていた。片手で頬杖をついて、ギンは柔らかい顔をして乱菊を眺めていた。寝顔を眺めるのは、流魂街以来だった。




目次

06月13日(火)
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